実はこれ、携帯電話の話。
スマートフォンとはよくネーミングしたものだと思う。盛沢山の機能を付けてスマートな道具、スマートな生活とでも言おうか。世の中、猫も杓子もスマートフォンにしがみついている。NY拠点のLight Phone創業者曰く「宇宙人が地球に来たら、優性種スマホが全て人間をコントロールしている、と言うだろう」。
日本ではひと昔前に「ガラケー」と呼ばれていた携帯がある。おとなしい英語表現ではFeature Phoneと呼ばれるが、他にも言い方がある。最も古くからあるのがBrick Phoneである。直訳すればレンガ型携帯電話。筆者がアメリカに来た1995年、まだ日本ではお目見えしなかったが、すでにモトローラ社が長方形の大きい携帯電話を市販していて、早速仕事用に購入したものだ。確かにレンガに匹敵する大きさであった。だからBrickとは納得である。
もう一つの呼び方がDumb Phone。語呂合わせではないが、「ダメ携帯」と聞こえなくもない。過剰な機能が付いている”スマート”携帯に比べれば、電話とメッセージの基本機能だけなので「ダメ」なのかもしれぬが、このDumb携帯が欧米で見直されつつあるどころか、急速に広まっているというから面白い。調査によると、Dumb携帯の世界販売が2019年4億個に対し、2021年は10億個を突破した。因みにスマホは14億個だが今年から減少に転じているようだ。
広まっている理由は、コストパフォーマンスの一語に尽きる。スマホは本来の携帯の機能よりインターネット接続アプリのSNSやエンターテインメント機能の充実を重点化し、利用者を維持拡大する為に次々と新アプリで利用者を誘い込む。「ハンディで便利」に惑わされて利用者は新アプリの追っかけとなっていった。ここにきて、過剰に不必要な機能に翻弄されていた人達が必要以上にお金を払わされていることに気づき、昔ながらのDumb携帯に戻る流れが出てきたのである。しかも面白いことに、Dumb携帯の主流が老人層ではなくて30~40代らしい。
因みに筆者は何を使ってるかって?もちろん昔も今もDumb携帯、しかもPrepaid携帯である。