蛤(ハマグリ)
【語源】
ハマグリの語源は、「浜栗」です。浜で採れる栗に似た貝と言う説が
最も有力です。
もう一説に「浜小石」。「ぐり」とは小石のことで、砂浜の小石ほど
たくさん採れるからという説もあります。
漢字では「蛤」と書きますが大蛤は「蜃」と書きます。
その理由は後ほど記します。
【旬】
遺跡から出土した貝の約80%が ハマグリとのことです。
縄文時代にはハマグリが多く生息していたのか、縄文人が好んで食べ
たのかは、今となってはわかりませんが・・・・。
ハマグリについての神話は数多くあり、雛祭りにサザエと一緒に供え
るという風習は、日本人の食文化の中で重要な地位を占めています。
昔から旧暦の3月3日雛祭り(現在の4月)がハマグリの食べ納めと
いわれてきました。
ハマグリ旬は初春です。
地はまぐり(チョウセンハマグリ)茨城産
【ハマグリの種類】
ハマグリは「ハマグリ」「チョウセンハマグリ」「シナハマグリ」の
3種があります。
本家本元の「ハマグリ」は今や絶滅の危機にさらされている・・と
言っても過言ではないほど貴重品。今は、瀬戸内海、九州西岸でしか
漁獲がありません。
ハマグリを使ったイタリアン
「チョウセンハマグリ」は別名「ゴイシハマグリ」とも呼ばれ、
白の碁石の原料として最高級品。「日向のハマグリ碁石」と言えば
知る人ぞ知る、最高級品。 殻が非常に奇麗な種です。
ちなみに、この「チョウセン」と言うのは朝鮮産と言う意味ではなく
、本家ハマグリに対して「異国的なハマグリ」と言う意味で名付けら
れたようです。
今や「地ハマグリ」と言えばチョウセンハマグリのこと。殻に留まら
ず身も高級品とされています。
最後の「シナハマグリ」は本来、日本には分布していなかった種。
韓国・中国から輸入されています。現在、最も流通しているのが
この「シナハマグリ」です。また、業者が種苗として、海にまいて
いるため、国産物との混血が相当進んでいるとの事。
シナハマグリ(中国産)
【うんちく】
ハマグリはアサリやシジミと比べ、環境の変化・水質汚染には弱い
貝です。
しかし、その分、ハマグリはアサリやシジミにはない能力を備えて
います。 海中を素早く移動できる能力です。
ハマグリは1~3mにも及ぶ粘液の紐を分泌し、これを使って移動し
ます。潮の干満を利用すると、その分速は1mに達するとも言われ、
「ハマグリは一夜に三里走る」という言い伝えも、まんざら大げさ
でもないですね。
【語源】で記しましたとおり、ハマグリは「蛤」と書き、大きなハマ
グリは「蜃」と漢字で書きます。
これは中国において、大ハマグリ(蜃)の吐く気によって海上に楼閣
が現れると信じられていた為。
蜃気楼(しんきろう)は大蜃(おおはまぐり)の仕業であると思われ
ていたのです。 面白いですね~!
ハマグリの酒蒸し
【雛祭りとハマグリ】
桃の節句、ひな祭にハマグリを備えるのは、ハマグリの二枚の貝殻を
はずしてしまうと、他の貝殻とピタリと合うことは決してありません
。このことから、夫婦和合と女性の貞節の象徴としてひな祭りの祝い
膳にハマグリが登場することとなったようです。
また、相性の良い相手が見つかる様にという、願いもこめられている
とか・・・!
地ハマグリ(熊本産)
【蛤御門】
京都御所に蛤御門(はまぐりごもん)と呼ばれる門があります。
幕末に長州藩が薩摩・会津連合と戦って破れた戦を「蛤御門の変」
(1864年)と呼び、歴史の教科書にも登場します。
この門は元来は新在家御門と呼ばれ常に閉ざされていました。
それが「宝永の大火(1708年)」の際に初めて開門されたことか
ら「焼けて口開く蛤御門」と言われ、その後、蛤御門と呼ばれるように
なったのです。
日本の歴史にも登場するハマグリ。文化に根ざした食材と言えま
すね!
ハマグリのお吸い物
【百人一首とハマグリ】
源氏物語にも出てくる昔の貴族たちの遊びの一つに「貝合せ」と言う
のがあります。
貝殻の内側2枚1組の絵や文字が描かれた蛤を片方を伏せて、それに
合うもう片方を探し当てるという、いわばトランプの「神経衰弱」の
ようなものです。
これはハマグリが左右の貝殻が同じ貝のものでなければ合わさらない
という特性を生かしています。
この「貝合わせ」が江戸時代に「歌貝」という、遊びにかわり、
百人一首の原形になったと言われています。
煮ハマグリのにぎり寿司
【ブランド・産地】
ハマグリのブランドで有名なのは三重県「桑名のはまぐり」。
漁獲量の多い産地は、茨城県。過半数に近いシェアを持っています。
次いで、千葉、熊本、大分の順。
これらのハマグリはいづれも、朝鮮蛤(チョウセンハマグリ)です。
日本一の産地である茨城県の鹿島灘では、この「ひびき」を嫌い、
「汀線蛤(チョウセンハマグリ)」の字を当てて、ブランド化を目指
した時期もあったとか・・・・。
しかし、標準名に誤解が生じる恐れがあるとし、「鹿島灘蛤(かしま
なだはまぐり)」という名前でブランド化を目指している様です。
焼ハマグリ
【産地ならではの漁師料理】
ハマグリは煮ても焼いても、お鍋、バター焼、酒蒸しなどなど・・
どんな料理にでも使える食材です。
漁師さんに伺ったところ、「ハマグリは身より、むしろ殻に残る
体液が美味いんじゃ。だから殻ごと調理する料理が最高!
やっぱり、殻ごと火にかける焼ハマグリと吸い物かな」・・・と。
鮮度の良いものは刺身でも食す様です。
また、ハマグリを殻のまま焼いたり蒸したりする時には注意が必要で
す。ハマグリを加熱すると熱を加えた側の貝柱がはずれ、身が反対側
の殻にくっついた状態で勢いよく口を開きます。
この時、せっかくの旨味汁がこぼれてしまいます。
これを避けるには、火にかける前に蝶番(ちょうつがい)の外側に
ある黒い突起(靱帯)を包丁で削り取っておきます。
こうすれば口は開かず、蓋の役目も果たすため汁が蒸発するのも抑え
ることができます。
調理のコツは、火を通し過ぎない事。すぐ硬くなってしまします
よ~!
シナハマグリ(中国産)
【栄養と効果・健康】
ハマグリは、貝類の中では低エネルギー食材です。
鉄分、ビタミンB1・B2を豊富に含んでいるので、貧血気味の女性には
嬉しい食材です。
また、貝類の中では珍しくカルシュームを多く含み、マグネシューム
、リンもバランスよく含むため、骨粗鬆症の方にも良い食材です。
その他 亜鉛、カリウム、ナトリウムなどもバランスよく含んでい
ます。
いつも応援ありがとう~
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