ご近所の見事な南天
私は新聞を読まないが、事情があって新聞は取っている。そのまま捨て置くにはもったいないので、見出しだけをざっと見渡し、掲載広告の質が落ちたな、などと思っている。
そんな中、12月18日づけ朝日新聞は1、2面の大半を使って、内閣の支持率に関する世論調査の結果を報じている。その報じ方が、気になったので記しておきたい。
リード面で「11月の前回調査にくらべ、支持率は40%にやや下がり、不支持率41%と拮抗した。特に女性の支持率が前回11月調査の39%から34 %に下落。不支持率が34%→43%に増えて支持率を上回った。」と、政局が動いているかのように述べている。
本当なのだろうか。
私は統計学の専門家ではないが、世論調査の些細なデータの変化を過度にバイアスをかけ言論を誘導しているようにしか思えないのだ。そもそもSNSが発達した今日、私は世論調査という、そのものに疑問を持っていいる。というのも、社会調査による統計法というのは、今日の社会を類推するにはふさわしい手法とは思えないからだ。この調査法というのはマスメディアによって一元化された大衆社会を前提にしているものなのである。
朝日新聞の場合、この調査について、次のように説明している。
「調査方法=コンピュータで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調査員が電話をかけるRDD方式、15,16の両日に全国の有権者を対象に調査した。固定は有権者がいると判明した1928世帯から1003人(回答率52%)、携帯は有権者につながった1942件のうち916人(同47%)、計1919人の有効回答を得た。」という。
この調査方法によって獲得した支持率が、40%ということである。
ここですぐ問題となるのは全有権者と、調査対象者として抽出された人々との関係である。社会統計法では、母集団(ここでは全有権者)の動向を把握するためには、どのくらいの量をピックアップすれば、どのくらいの確率で全動向を把握することができるかが、公式づけられているが、今回の調査では母集団と、固定電話と携帯電話の関係がどう関連付けられるのものなのか。
すぐ疑問に思うのは、固定電話の場合、対象者は誰かということ。有権者というのはあくまでも個人であるが、固定電話は家族全員が使用する。だから対象者は、主人なのか、奥さんなのか、子どもなのかという問題。携帯電話の場合は、有権者ではなく子どもの保有者もいるし、男女構成も把捉できない。さらに番号だけでは地域性は調整できないから、全国調査にはならにのではないか。つまり今日の多様なメディア環境、生活環境の中で、有権者を電話の所有者として抽出することの客観性をどのように保障しているのかという疑問である。さらに言えば、2000名弱の回答者で、全国の動向を把握できるのか。などなど疑問がある。また根本的には回答率の問題だ。今回の調査では回答率は50%前後である。該当者のうちの半数の人が回答を拒否しているのである。
そうした基底の上にたって、調査結果の、安倍内閣の支持率40%と前回の43%の間に統計学的有意な差があるのかどうか。私には誤差の範囲内でしかないのでなのではないか、と思う。
この世論調査に限らず、各種の支持率、好感度などの数値化されたデータが報道される。そして、それがさも客観的であるかのような装いをほどこして伝えられる。私には、こうした言辞を扱う連中に対する警戒心が膨らむばかりである。【彬】