ランニングの練習では、夏場は暑さを避け、小金井公園の日陰コースで200m*10本のインターバル走をやっていたが、冬場になった今でも続けている。寒さの中の短距離走は体がシャキッとして気合が入る。そして、楽しみなのは「冬の匂い」を感じられることだ。冬が近づき寒くなると、鼻の奥がツーンとして爽やかな匂いがする。街中でもあるのだが、自然の中では特に強い。そして「冬の音」もある。この二つの不思議な感覚は、今は、この練習の時に得られるものだ。
「冬の匂い」とはどういうものなのか?よく観察すると、春、夏、秋、の季節に感じる様々な花や、葉、木々、果実などからの匂いが全て削ぎ落された「無」の状態を、「匂い」として感じているようなのだ。外部からの実際の匂いが無いなかでの感覚、心理状態のようなのだ。それが何故か爽やかで甘いミントのような匂いなのだ。
それでは「冬の音」とはどういうものなのか? 昆虫たちの鳴き声は消え、人々は家の中にこもり、木々は葉を落とし、葉のざわめきはなくなる。僅かに遠くから鳥の声が乾いた空気を通して甲高くきこえるくらい。そういう時に、キーンという耳鳴りのような「冬の音」が聞こえてくる。それが精神を浄化してくれるような感覚なのだ。
三年前まで住んでいた自然豊かな茨城県北西部では、冬場のランニングは、里山の中の道を走っていたが、今は、小金井公園の自然の中を走る。そして、「冬の匂い、音」を感じることがある。このような時は、凛とした自己というもの、自分の存在というものを強く感じることができるのだ。これが冬の練習の楽しみであり充実感でもある。
絵は冬の小金井公園
2018年12月12日 岩下賢治