道端の日本水仙
東京都のコロナ感染情報、我々がメディアから得るものは、感染者が2000人になったとか、あるいは1200人で先週の火曜日より増えたとか、さらには重傷者が何人増えたとか、そんな情報ばかりだ。メディアにとっては感染者や重傷者が増えることが嬉しくて仕方がないよう。そこに専門家だと称する医者がタレントよろしく得々と喋る。
こうした感染情報やコメントに私は納得できない。大事なことは感染の実態なのに、その様相がよく伝わってこないからである。
私たちが知りたいのは、このウィルスの特徴に即した情報であって、一般的な感染症のデータ云々デアはない。伝えられところによると、このウイルスは、潜伏期間が長いと言うこと、弱毒性であること、飛沫感染らしいこと、感染力が強いらしいこと、などが挙げられている。だから、そうした状況を見るためのデータが知りたいのだ。一般的な病状者の数ではない。少なくとも発症者の数以外に、例えば以下のような指標のデータが求められよう。
陽性者(潜伏者)はどのように発見されているのか、陽性者のうちまだ発症しない人による伝染力はどうなのか、飛沫感染すると言われているが、どういう場所が多いのか、などである。飲食店の営業の自粛、マスク装着など行動規制をしているのであるから、その根拠となるデータ、すなわち上記のような情報は必須のはずである。
当然のことながら、特定感染症であるから、こうしたデータ情報は保健所が中心になって各自治体が取りまとめているはずだ。東京都の場合は、独特な方法を駆使しているらしく、モニター情報などを加え、特設サイトをウェブ上に設け、公表している。ところがここに発表されているものは、統計学に無知な素人が見てもよくわからない。NHKも同じように特設サイトを設け、独自にデータを集め発表している。ところがここで集約されたデータを、通常のニュースで解説しながら放送することはない。なぜなのだろうか。
基本データはありながら、メディアで云々されるのは、感染者が増えたとか、重傷者が増えたとか、と言った事ばかりである。これは言ってみればデータの秘匿であり、事態の煽りをしているとの謗りを免れない。
清水幾太郎の名著「流言蜚語」ではないが、情報が一方的であるとき、噂、現代風に言えばヘイクが蔓延る。せっかくのデータなのだから、東京都はメディアを通じて明瞭にデータの意味することを解説し、伝えてほしい。それが広報というものだ。知事がパネルを片手に自粛自粛というより、ずっと説得的である。私たち都民は無知ではない。知的大衆(関川夏央さんの言い方)なのだ。
NHKは東京都に対して無料で番組帯を提供すべきである。それこそが公共放送である。【彬】