ユキヤナギ
尖閣列島付近で中国の警備船が連日出没し、日本の漁業を妨害しているらしい。日本の警備隊も応戦しているが、軍隊ではないので戦闘には至っていないとのこと。が、中国は警備隊の役割を変更し、軍事も可能なように法改正したとの報道がされている。中国は東シナ海に新たな国境を設けようとしているのだ。
尖閣に限らず最近の中国の膨張路線は露骨で、内モンゴルからインド国境、香港、南シナ海と諍いが絶えない。そんな状況に対して、日本、アメリカ、インド、オーストラリアの四国が共同声明を発し、地域の平和で自由な活動を宣言した(クワッド)。いうまでもなく、中国に対抗する政治的な動きである。
かつて日中が平和的に和解した時は、周恩来は戦前の日本の中国国内での横暴を許すとして共同宣言を調印したのだが、今昔の思いがする。当時中国は社会主義的建国の真っ最中、周辺国家の動向にかまっていられなかったことも原因していよう。ところが今日、中国はアメリカに次ぐ強大国となって、周辺を睥睨するようになった。
こうした変化を顧みると、国家という政体はアメーバのように増殖していくものなのだな、とつくづく思う。なぜそうなるのか、説明はつかないが、それが国家というものなのだ。つまり領地を1ミリたりとも広く獲得しようとし、そこに利権が付き纏う。
中国が国境に食指を動かしているのは、単に利権の問題だけではないだろう。はっきりしているのは、かつての西欧帝国主義時代に中国はアヘン戦争に始まって散々列強諸国に簒奪され、ついに香港をイギリスに割譲するに至ったわけである。香港に限らない。遼東半島、青島なども国外の手に渡った。それを回復することが最大の願いなのではないのだろうか。で、どの時代に戻すのかが問題だが、おそらく漢帝国あたりか。譲歩して清か。
さらに問題なのは、中国の国共内戦の結果、台湾が分離した。これも中国という国の避けて通れない道なのだろう。
だから中国の膨張路線と見えるものは、漢か清に戻る欲望とも取れる。王毅外相の尊大で大仰な立ち居振る舞いを見ていると、そんな感じがする。
そうした中国の思想的核心に触れないで、現在の政治的な動向だけで云々するのは、歴史を蔑ろにするものである。中国の事情をよく調べよく考えるべきではないだろうか。【彬】