ぼくらの日記絵・絵心伝心 

日々の出来事や心境を絵日記風に伝えるジャーナリズム。下手な絵を媒介に、落ち着いて、考え、語ることが目的です。

違憲判断と賠償問題

2024年07月08日 | 日記

       ノウゼンカズラ

 NHKの報ずるところによると「旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求めている裁判のうち、仙台や東京などで起こされた5つの裁判の判決が3日、最高裁判所大法廷で言い渡されました。
 戸倉三郎裁判長は「旧優生保護法の立法目的は当時の社会状況を考えても正当とはいえない。生殖能力の喪失という重大な犠牲を求めるもので個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反し、憲法13条に違反する」と指摘しました。
 また、障害のある人などに対する差別的な取り扱いで、法の下の平等を定めた憲法14条にも違反するとして、「旧優生保護法は憲法違反だ」とする初めての判断を示しました。(以上NHKによる)
 旧法は廃止されたが、その際、違憲立法の審査は行われていなかったのか。あるいは違憲のような論議が行われなかったのか。行われなかったとするならば、なぜ廃止されたのか。その間の経緯が、不明である。違憲立法審査は、最高裁判事13名全員による判定である。今回の判決によって法文そのものが内閣に差し戻される。ところが既に廃止されているのだから、この間の経緯をどう判断するのかが、問題となる。そして最高裁は、原告被害者に賠償するよう指示したのである。つまり廃止された法とはいえ、効力の点で生きているというわけである。それが賠償につながっている。
 私は法律の専門家ではないが、賠償について疑念を持つ。
 賠償については、個々の法律に則して行われるものである。今回は法律そのものはもはや廃止されている。だから賠償問題は生じないはずである。ところが今回は違憲判断というのが加わったための判断である。
「判事の一人である学者出身の宇賀克也裁判官は、賠償を求める権利を定めた改正前の民法の規定について、多数意見とは異なる法律上の解釈を示しました。
 多数意見は20年で権利がなくなる「除斥期間」ととらえたうえで、今回の裁判では適用されないと判断しましたが、宇賀裁判官は、3年で権利が消える「消滅時効」と解釈するのが望ましいとしています。そのうえで、今回の裁判で国が主張することは、権利の乱用で許されないという意見を述べました。」(以上NHK)
 とある。
 法文一般については次のような解釈もある。
 「ある法令が違憲・無効とされ、その判決が確定しても、その法令は当該事件には適用しないというだけで、その法令自体の効力が判決によってただちになくなるわけではない(個別的効力という)。そして、違憲無効と判定された法令は、その裁判書の正文を送付された内閣なり国会によって廃止もしくは是正の措置がとられるので、不都合はおこらないと考えられている」[池田政章]
 ところが、今回の訴訟のように、民法がらみで巨額の賠償という難題がつきまとう。
 原告側は勝利したと喜んでいるが、この法律は既に廃止されているのである。廃止以前の被害をどうすべきか、宇賀判事のように期間を短縮すべきなのか。私は賠償のような利害が直接に絡んでくる判決は、最高裁にそぐわないと思う。廃止された法律の判断を求めることもさることながら、賠償など利害に関わる問題は、国会=内閣の行政的な処理の問題だと思う。最高裁は違憲だと判決すればそれで良いので、賠償のような民事に関わることには関わるべきではないと思う。
 今後、再開される国会で大きな論点になると思う。なるべきだと思う。【彬】

 

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