のんびりぽつぽつ

日常のこと、本のこと、大好きなこと・・・
いろいろ、と。
のんびりと。

「グリーン・レクイエム」

2005年12月02日 22時34分00秒 | ★★新井素子
新井 素子 著 講談社文庫。

昭和58年10月15日第一刷。・・・・昭和58年!さあ、私は何してたっけ?(苦笑)
突然、読み直しました。どうにも、読みたくなったのでした。その理由はさておき・・・

今までに何度となく読み直しているんですが、ショパンのノクターンに彩られるこの作品は、何時読んでも色あせることがないですね。
悲しくて、美しいお話。

明日香と信彦。
「雨の降る星 遠い夢」では、太一郎さんはあゆみちゃんに「人間だからです」という答えを用意してくれた。生きることは同時に他の命をもらうことなのだということを、きちんと受け止めろと。
けれど、この二人にこの「答え」は通用しない。なぜなら明日香は人ではないから。植物に拠り近い生き物だから。
ラストの明日香の叫びと、信彦の背中が切ない。

「植物だって生きているのに!人間の、どこがそんなに偉いわけよ。同じ生き物のくせに、何一つ造りださない人間の!」

人は、こう言われてしまったら、答えるすべを持たない。
どう、答えたらいいのかわからない。でも、やっぱりそれでも。
人は人だから。人として生きていかなくてはならない。

そう、生まれついたのだから。

生きること、命のこと。SFというはっきりとした分野でのお話のため、「異星人」という位置づけはされているけれど、これはやっぱり、地球上の生命のお話。
ああ、だから、
昨日読み終えた「沼地のある森を抜けて」
そのどこかが、似ているって感じるのか。作風も著される内容も、まるっきり違うんだけれど。

グリーン・レクイエムの続編、「緑・幻想」。次はこちらにいきましょうか。
コメント (5)
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「沼地のある森を抜けて」

2005年12月02日 14時52分32秒 | ★★梨木香歩
梨木 香歩 著 新潮社。

梨木さんの最新刊。ぬか床と沼地のお話ですってことで、今回お終い・・・って、分けわかんないですね。
帯には、 「からくりからくさ」に連なる、命のものがたり とあります。なるほど、とも思うし、ちょっと印象は違うかなあ、とも思います。

両親を事故で亡くしてから、いままでずっと一人暮らしを通してきた上淵久美。母親の妹、時子叔母が自宅で亡くなったことから、家宝の「ぬか床」を受け取ることになる。この、ぬか床が・・・只者ではないのだ。手入れする人を選ぶは、うめくは、叫ぶは、卵は産む(??)は・・・
そして、「カッサンドラ」という不気味でとても気分の悪い女が卵から孵った後、状態が悪くなってしまったぬか床のために、「和からし」を入れたことから話が動き出す・・のかな。帰りだす・・といった方がいいのかな・・・?
自分の祖先をたどり、出身の島にわたって「ぬか床」を沼に帰すために、風野という酵母菌の専門家で亡くなった叔母ともぬか床のことで知り合っていた男性(だけれど、男という精神を否定している人。というか、性を否定しているのかな?)と共に久美は島に渡る。

その合間に3話、別のお話が組み込まれる。違う視点から描かれるお話。それがまた絶妙に本編に絡まる。大木にからまる蔦のように、からくさ模様の、ように。

命。
その一番小さな単位ともいえる、細胞。太古の昔にうまれた、たった一つの細胞が、生き残ろうといろいろなことを試みる。分裂と再生と変化と変異と・・・その中の1つの方法として、沼地という特殊な状態が生まれ、島と、そして受け容れるだけのゆとりをもった人々に守られつつ時を経て、時代の流れに逆らえず、島を出てぬか床となる。
それがいま、人のいなくなった島の沼地に帰ったとき、その後がどう変わっていくものかそれは、まだ誰にもわからない。

平和に滅びていくという、沼の人たち。
変わっていくタモツくんとアヤノちゃん。
風野さんと久美さん。

どんな形を取っても、何に形を変えても、伝わってゆく何かがある。生命は、いつか必ず、光のように生まれてくる。

今までの、梨木作品とは、ちょっと違う印象を受ける。
やわらかさ、だろうか。
物語のなかに、激しいものが確かに存在するんだけれど、そこを今までのように鋭利に切り込まずやさしく描く。
生命に対するあたたかさを感じるような・・・なんとも言いがたいのだけれど、あえて言うならば、非常にやさしい物語。

命とは何なのか。白銀の世界とは何なのか。変わるというのは、どういうことか。
その先にあるものは、一体何なのか。


余談。
久美さんがぬか床をかき回している、物語導入部。ぬか床のにおいがしてきた。実家のぬか床。おいしいお漬物。冬はちゃんと塩で蓋をして、すっぱくなりそうだと「和からし」を入れて・・・母がそうして手入れをして、もう何十年も生きているぬか床。うーん!ぬか漬が食べたい!!でも、来春までお預けだよなあ。今は冬。ぬか床は「お休み中」なんだもの・・・。
コメント (2)
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