のんびりぽつぽつ

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『被害者は誰?』

2006年06月18日 23時11分28秒 | ☆本☆
貫井徳郎 著 講談社文庫

ぬっくんは、「慟哭」のあの本当にびっくりさせられたラストシーンと、ちょっとマニアックな舞台設定から、かっちりきっかりややっこしいけれど読み進めずにはいられないタイプの作品を書く人だと思っていた。だから、ちょっと元気の無いときには手に取れない作家さん、という位置づけだったんだ。私の中で。

ところが、この本は違う。
とにかくおもしろい。おかしい。楽しい。
解説で葉山響氏が書いているけれど、肩肘張らずに気楽に読めて、おもしろくって後味もあっさりで。。。それでいて、きっちり組み立てられたお話。
読後感のとてもさわやかな、気持ちのいい本だった。

とんでもない美貌と頭脳を持つ大人気ミステリー作家吉祥院義彦。性格はかなり破綻していてケチでワガママで意地悪。大学時代の後輩で、今は警視庁捜査一課の刑事桂島ちゃんをあごで使い、いじり倒すのが生きがいのような人物。そして、この桂島ちゃんが持ち込んでくる「おもしろい」事件を、話を聞いただけで解決する名探偵でもあったりする。
それがね。
そこらにいる、いわゆる『名探偵』とは違うんだ。これが。
桂島ちゃんの話からハヤトチリして推理を微妙に間違えてみたり、思いつきをいいたい放題だったり。。
いやはや、、とにかく、端にいたらあんまりお付き合いしたくないタイプの「名・探偵」

一冊読み終えて、なんだか「吉祥院先輩にだまされた~~ふりまわされた~~~」って気分があったりなかったり。。

で、ねぇ。
ラストにある、書き下ろしの1篇がね。
いやあ~~さすがぬっくん!ギャフンと言わされましたよ。まったく、ここら辺はやっぱり「慟哭」の人ですねぇ。。くそー。だまされた。。。

お遊びで書いているような雰囲気。舞台設定。
でも、そこにはほんの少しの手抜きもなくて、隅から隅まで、きっちりと計算されて描かれる。だから、とても読んでいて安心できて気持ちがいい。
短編だから途中で止められるかと思ったら、読み終えると次にいきたくなって、、結局あっという間に読んでしまった。

う~ん。楽しかった!!!