遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

露のクリミア併合で日露の北方領土問題はどうなる

2014-04-16 23:58:58 | ロシア全般
 安倍首相の地球儀俯瞰外交(=21世紀版防共回廊)による対中外交で、ロシアとの接近は、台頭する中国の覇権拡大主義への抑止力という共通利益で進められ、安倍、プーチン両首脳関係も良好になりつつありました。それは、北方領土問題の交渉再開に向けても進展を期待させるところでした。
 一方、その北方領土問題に対する日本側の動きは、前のめりすぎる過熱が観られました。
 今回、ウクライナへのロシアの進攻は、その日露関係に対し、大きくブレーキをかけるもので、安倍政権はロシアと欧米の間に挟まれて窮地に陥ったという声が大勢ですが、遊爺は、過熱して暴走気味の北方領土問題への期待に、一服して頭を冷やす好機だと考えています。産経が専門家の意見をまとめていました。
 

クリミア併合で北方領土交渉は? 専門家の見方 (4/16 産経)

■「大国主義」譲歩なし/「日本固有」に説得力
 ロシアのクリミア併合は、他国の主権も意に介さず国益を追求する外交姿勢を浮き彫りにした。今回の動きは北方領土問題にどのような影響を及ぼしうるのか。日露関係の専門家らに聞いた。(黒川信雄)

 「プーチン露大統領が国家の主権問題でいかに厳しい対応をするかが浮き彫りになった。
プーチン氏が訪日したら領土問題で譲歩するという考え方は幻想だ」。新潟県立大の袴田茂樹教授
はこう分析する。
 クリミア併合後、ロシア国内の支持が急拡大したのは、プーチン氏が大国主義やナショナリズムの風潮を満足させたためで、「その状況を見れば、熱狂的な雰囲気を裏切る形で
日本に譲歩することはありえない
」と分析する。
 また、先進7カ国(G7)の中で信用されなくなるため、
岸田文雄外相は訪露を中止するのが当然
だとし、「その結果としてプーチン氏の訪日延期も覚悟すべきだ」と主張する。

 「
プーチン氏がクリミアで行ったことは、旧ソ連の独裁者スターリンが日本に行ったこと(北方領土の占拠)と同根だ」。北海道大の木村汎名誉教授はそう断言し、クリミア併合がソ連時代の領土拡張の動きと酷似していると非難する。また、プーチン氏が来日しても北方四島の歯舞、色丹の2島返還を超える選択肢は考えていないとの見方がロシア側研究者の間でも支配的だとした上で、「なぜ日本はウクライナの問題で遠慮しなくてはならないのか。むしろ、積極的に対露制裁に踏み込むべき
だ」と、日本政府の姿勢に疑問を投げかけた。

 作家で
元外務省主任分析官の佐藤優氏
は、クリミア併合は「北方領土交渉の意義」を根源的に問い直すことにつながると指摘する。
 「仮に4島が返還されるとしても、日本人は移り住まない。そこで何らかの不満が噴出した際に
住民投票が行われ、ロシアへの帰属を望むとの結果が出る
可能性があるからだ」。佐藤氏はそう解説し、住民投票を経てクリミアが併合されたプロセスが持つ意味を熟慮すべきだと警告した。

 一方で、プーチン氏が3月18日の演説で併合を宣言したクリミアを「ロシア固有の領土」と表現したことをふまえ、領土交渉の好機だととらえる向きもある。
 
拓殖大の名越健郎教授は、「日本としてはG7の一員としてクリミア併合を非難すべきで、日露交渉が後退するのは仕方がない」と断りつつ、「ロシアは日本が北方領土を固有の領土と表現していることを知っており、『固有の領土論』が説得力を持ちうる
」と指摘する。

 
法政大の下斗米伸夫教授もこの発言にふれ、「意外なことだが、ロシアの専門家の間でも日露関係、領土問題を含めて(交渉が)動くという説が出ている」と述べる。

 安倍首相は岸田外相の訪ロと、その後のプーチン大統領の来日を実現させたい意向の様ですが。
 
宙に浮く岸田外相訪露 首相は“強行”模索も - MSN産経ニュース

 孤立するロシアの弱みにつけ込む巧みな中国外交で、中露の接近が復活しています。
 

中露連携強化、鮮明に 外相会談 米主導路線に対抗 (4/16 読売朝刊)

 【モスクワ=緒方賢一、北京=牧野田亨】北京で15日行われたロシアのラブロフ外相と中国の 習近平シージンピン 国家主席、 王毅ワンイー 外相との一連の会談は、中露がウクライナ情勢を巡って立場の隔たりを抱えながらも、連携して米国主導の国際秩序に対抗していく姿勢
を鮮明にした。

 タス通信によると、外相会談後の記者会見で、ラブロフ外相はウクライナ情勢について、「中国の公平で慎重な立場に感謝する」と語った。これに対し、王外相は「(ウクライナの)不安定化は望ましくなく、問題の適切な解決方法を見いだすことが大切だ」と述べるにとどめた。国内に少数民族の分離独立問題を抱え、表立ってロシアを支持できない立場の違いがにじみ出た。
 だが、中露協調の利点はますます大きくなっている。双方は、
5月に予定されるプーチン大統領の訪中に向け、協力関係の強化で一致
した。特に、ウクライナ南部クリミアを編入し、米国や欧州連合(EU)の制裁を受けているロシア側には、中国など新興国との関係を重視することで、制裁による政治、経済的な打撃を最小限に抑える狙いがある。主要国(G8)首脳会議から事実上、排除されたロシアは欧米への対抗上、新興国との関係が欠かせない。
 ロシア外務省は15日、中露が国連や主要20か国・地域(G20)、新興5か国(BRICS)、上海協力機構などの枠組みで協力する点を確認したと発表した。
 一方、
中国はウクライナ問題を利用して、ロシア側から、さらに利益を獲得しようとしている。今回の外相会談では、中露両国が来年、反ファシスト戦争・抗日戦争勝利記念70年の共同記念式典を開くことも改めて確認した。中国にとっては、対日けん制で重要だ

 また、ラブロフ氏は中国英字紙「チャイナ・デイリー」との会見で、習主席が提唱する「シルクロード経済ベルト構想」について、双方の専門家協議が始まることを明らかにした。同構想は旧ソ連圏の再統合を目指すプーチン大統領の「ユーラシア同盟」と一部地域が重なり、中露の摩擦となる恐れが指摘されていた。だが、ラブロフ氏は支持を表明し、対中接近姿勢を強調している。


 ロシアの弱みにつけ込みながら接近する巧みな中国の王外相は「(ウクライナの)不安定化は望ましくなく、問題の適切な解決方法を見いだすことが大切だ」と、欧米向けの発言で釘をさしても、「シルクロード経済ベルト構想」に反対していたロシアに支持を表明させています。

 日露関係の専門家の指摘で共通しているのは、岸田外相の訪ロや、プーチン大統領の来日があっても、北方領土については、プーチン大統領が主張する、二島返還の日ソ共同宣言以上の答えはないというところです。
 従って、筋を曲げてロシアになびいてもG7間での信頼を失うことがあっても、得る国益はないということですね。
 拓殖大の名越健郎教授や、法政大の下斗米伸夫教授の論では、G7の一員としてクリミア併合を非難すべきで、「ロシアは日本が北方領土を固有の領土と表現していることを知っており、『固有の領土論』が説得力を持ちうる」と、毅然としたたいどが好結果を産むとさえ唱えておられます。

 遊爺も、G7の一員として力での領土の併合を非難すべきだと考えます。
 そこで一旦は、前のめりで接近した日本の過熱の状況に水をかけて、冷静に戻すことは必要です。
 ウクライナ情勢で孤立したロシアは、藁にもすがる気持ちで中国のつけ込みに甘んじていますが、基本的に中国の脅威が薄まって接近しているのではなく、いやいやしかたなくこの場は接近せざるを得なくての接近です。存在していた中国の覇権拡大の脅威は減るどころか、ここでつけ込まれたことで逆に増えているのです。
 いつも唱えている、主力天然ガス田の枯渇による極東や北極圏での新規ガス田の開発とその販路開拓の窮状に変わりはありません。それどころか、今回の騒動で、脱露依存のエネルギー安全保障は、欧州で一段と加速します。欧州からパイプラインを逆送させてのウクライナへの天然ガス供給も始まります。
 ロシアの台所の窮状は、ウクライナ騒動で加速されるのです。
 日本は頭を冷やして、門戸は開いて待っていれば、ロシアの方から、極東の開発支援と、資源の購入を頼みに来ます。対中牽制の関係強化(例=2 +2 )の推進も擦り寄ってきます。

 安倍首相の冷静な判断に期待します。



 # 冒頭の画像は、北京で会談に臨む、中国の王外相とロシアのラブロフ外相




  この花の名前は、藤袴


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)




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