安倍首相が提唱する「インド太平洋戦略」に賛同するトランプ大統領は、今回のアジア歴訪で、「自由で開かれたインド太平洋」として、文在寅韓国大統領との共同発表文、ベトナム・ダナンでの演説などで「自由で開かれたインド太平洋」として言及しました。
オーストラリアやインドでは次第に市民権を得ているが、ASEAN各国はこの概念に関心を示していない。
日印協力や日米豪印協力を進めていくとしても、当面は、経済でのTPP加盟国の拡大と、安全保障面での日米比越の海洋安全保障上の連携を強めることが重要と説くのは、平和安全保障研究所・西原正理事長。
ASEAN10カ国の人口 6億人は2030年には 7.3億人になると予測され、GDPで20年代半ばには日本のGDPを追い越すとされていて、インド太平洋戦略の中核は依然としてアジア、とくに東南アジアであると西原理事長。
ティラーソン国務長官は、インド太平洋地域の片側をインドが、もう片方を日本が固定し、その両国を米豪が支える形で 4カ国連携が進むことは「自由で開かれたインド太平洋地域」を守る点で肝要と述べているのだそうです。
日印協力や日米豪印協力を進めていくとしても、当面のインド太平洋地域の重要地帯は東南アジアにあると見るべきとの西原理事長。両大洋の接点にあたる東南アジアの戦略的重要性も看過すべきではない。マラッカ海峡や南シナ海は両大洋をつなぐ死活的に重要なシーレーンのある地域であるとの説です。中国が食指を伸ばしているのも、ASEAN10ヵ国。南シナ海への中国の覇権拡大に抵抗し行動規範設定を主導していたのはベトナムとフィリピンでした。なかでもフィリピンは仲裁裁判所に提訴し勝訴、中国の「九段線」を根拠とする人口島の領有権は否定されたのですが、札束攻勢に折れたドゥテルテ大統領は、今回、議長国でありながら南シナ海の中国の行動には触れない議事運営の姿勢でした。
ASEAN10ヵ国への個別札束攻勢での分断、韓国文政権の取り込みでの日米韓連携の分断を、ゆっくりしかし着実に進める中国。
日印協力や日米豪印協力をすすめることで、日本単独や米国、インドが単独で中国の覇権拡大に対抗するのではなく、日米豪印が連携主導し、中国の覇権拡大を抑止し、諸国の自由を守ることが重要で、TPPを離脱するなどして、国内に重点をおこうとするトランプ大統領を、アジアに引き戻した安倍首相の「インド太平洋戦略」の功績は大きいのですが、当面は中心の東南アジア諸国へのアプローチが必要と言う話。
当然の事ですし、日米だけでなく、豪印を含めてより強力となった 4ヵ国がASEAN諸国を支援するとなればASEAN諸国も、中国の攻勢へのより強い抑止力を得たことになります。
この4ヵ国の力を背景に、中国に南シナ海での行動規範を求めていけばよいのですね。「自由で開かれたインド太平洋」構想の早期具現化に期待します。
先ずは、TPPに感心を示していた、インドネシア、タイの「CPTPP」への加入勧誘でしょうか。
# 冒頭の画像は、11月12日 マニラで会談したトランプ大統領とドゥテルテ大統領
トランプ米大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領とは「偉大な関係」 - Bloomberg
この花の名前は、ムラサキツユクサ
↓よろしかったら、お願いします。
オーストラリアやインドでは次第に市民権を得ているが、ASEAN各国はこの概念に関心を示していない。
日印協力や日米豪印協力を進めていくとしても、当面は、経済でのTPP加盟国の拡大と、安全保障面での日米比越の海洋安全保障上の連携を強めることが重要と説くのは、平和安全保障研究所・西原正理事長。
インド太平洋戦略の要はどこか 平和安全保障研究所理事長・西原正 (12/5 産経 【正論】)
安倍晋三首相は日本の外交の重要な柱となる「インド太平洋戦略」のアピールに努めている。その影響を受けて、米大統領の訪日前の10月18日にティラーソン国務長官がワシントンの演説で「インド太平洋地域重視」を繰り返し強調した。その後、アジア歴訪を始めたトランプ大統領も、横田基地での演説や安倍首相との会談、文在寅韓国大統領との共同発表文、ベトナム・ダナンでの演説などで「自由で開かれたインド太平洋」に言及した。
◆対中改善になびく韓国は距離
しかし日本や米国は「インド太平洋地域」重視を説くことで、外交上の得点を稼いでいるのだろうか。実は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国はこの概念に関心を示していない。筆者が11月初めに出席したフィリピン・マニラでの会議でも同様の印象を受けた。
安倍首相はもともと2007年にインドを訪問した際の議会演説で「インド太平洋地域」という表現を用いた。さらに昨年8月にケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)の演説でも使用した。本年の『外交青書』には「自由で開かれたインド太平洋戦略」が特集されている。もちろんオーストラリアやインドでは相当以前から、近年ではハワイの米太平洋軍司令部でも使用されているので、次第に市民権を得ていることになる(もっとも同司令部は「インド・アジア・太平洋地域」という表現も使っている)。
しかし中国は、この概念は中国を包囲するものであり、一帯一路構想に対抗するものだとして反発している。11月13日、外務省の耿爽報道官はトランプ大統領のダナンでの演説に対して「(米国が)政治的あるいは排他的な動きを回避することを望む」と述べて牽制(けんせい)した。
それと前後するが、11月8日に韓国は米国との共同発表文で、米韓同盟がインド太平洋地域の安全保障・繁栄のための「核心軸」だと強調したことに距離を示唆した。韓国は中国との関係改善を図るうえで中国を批判することは避けたいのだろう。金顕哲経済担当大統領補佐官は「日本は豪印米をつなぐ外交ラインを構築しようとしているが、われわれは編入される必要はない」と述べて、米国務省から不快感を買った。
◆日米豪印の連携は意義深い
このように、中国と韓国は既に国際関係で共同歩調をとる姿勢を見せ始めており、日米のインド太平洋戦略を批判的に見ている。そのため日米韓の連携にもひびが入っている。
中国や韓国がインド太平洋戦略を批判するとしても、日米はこの戦略を進めるべきである。中国の一帯一路構想こそ、アジア、中東、アフリカ方面のインフラ構築支援を説きながら、その裏でインド洋周辺国の要所に中国軍の基地を設け、インドを包囲し中国の覇権の拡張を狙っているのである。
11月12日、東アジア首脳会議(EAS)でマニラに集まった日米豪印4カ国の外交当局が局長級会合を行ったのは意義深い。ワシントンでのティラーソン国務長官の演説では、インド太平洋地域の片側を「きわめて重大かつ重要な民主国家」インドが、そしてもう片側を「非常に重要なかつ強力な民主国家」日本が固定していると述べている。この両国を米豪が支える形で4カ国連携が進むことは「自由で開かれたインド太平洋地域」を守る点で肝要である。
しかし「インド太平洋地域」というとその中央にある東南アジアを薄く見る印象を与えてしまう。戦略的に見ればティラーソン国務長官の説明は説得力があるが、同時に両大洋の接点にあたる東南アジアの戦略的重要性も看過すべきではない。マラッカ海峡や南シナ海は両大洋をつなぐ死活的に重要なシーレーンのある地域である。
◆当面の重要地帯は東南アジア
インド太平洋戦略の中核は依然としてアジア、とくに東南アジアである。ASEAN10カ国の人口6億人は2030年には7・3億人になると予測されている。また名目国内総生産(GDP)で20年代半ばには日本のGDPを追い越すとされている。そしてその間経済統合が進めば、貿易はさらに拡大し、30年には経済成長率4%に達しているとされる。
もちろんこの過程で既に進んでいる東南アジア大陸部の南北、東西の高速鉄道や自動車道路網(経済回廊)のインフラ整備へのさらなる投資が必要である。ここにアジア開発銀行(ADB)と中国が始めたアジア・インフラ投資銀行(AIIB)との競合が絡んでくるが、日本は両者の共生を促しながらも、長期的には自由貿易圏の拡大、ASEAN諸国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟国拡大を図り、東南アジアの自由で開かれた地域秩序の保持に貢献すべきである。
それとあわせて、安全保障面では日本は日米比越の海洋安全保障上の連携を強めることが重要である。日印協力や日米豪印協力を進めていくとしても、当面のインド太平洋地域の重要地帯は東南アジアにあると見るべきである。(にしはら まさし)
安倍晋三首相は日本の外交の重要な柱となる「インド太平洋戦略」のアピールに努めている。その影響を受けて、米大統領の訪日前の10月18日にティラーソン国務長官がワシントンの演説で「インド太平洋地域重視」を繰り返し強調した。その後、アジア歴訪を始めたトランプ大統領も、横田基地での演説や安倍首相との会談、文在寅韓国大統領との共同発表文、ベトナム・ダナンでの演説などで「自由で開かれたインド太平洋」に言及した。
◆対中改善になびく韓国は距離
しかし日本や米国は「インド太平洋地域」重視を説くことで、外交上の得点を稼いでいるのだろうか。実は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国はこの概念に関心を示していない。筆者が11月初めに出席したフィリピン・マニラでの会議でも同様の印象を受けた。
安倍首相はもともと2007年にインドを訪問した際の議会演説で「インド太平洋地域」という表現を用いた。さらに昨年8月にケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)の演説でも使用した。本年の『外交青書』には「自由で開かれたインド太平洋戦略」が特集されている。もちろんオーストラリアやインドでは相当以前から、近年ではハワイの米太平洋軍司令部でも使用されているので、次第に市民権を得ていることになる(もっとも同司令部は「インド・アジア・太平洋地域」という表現も使っている)。
しかし中国は、この概念は中国を包囲するものであり、一帯一路構想に対抗するものだとして反発している。11月13日、外務省の耿爽報道官はトランプ大統領のダナンでの演説に対して「(米国が)政治的あるいは排他的な動きを回避することを望む」と述べて牽制(けんせい)した。
それと前後するが、11月8日に韓国は米国との共同発表文で、米韓同盟がインド太平洋地域の安全保障・繁栄のための「核心軸」だと強調したことに距離を示唆した。韓国は中国との関係改善を図るうえで中国を批判することは避けたいのだろう。金顕哲経済担当大統領補佐官は「日本は豪印米をつなぐ外交ラインを構築しようとしているが、われわれは編入される必要はない」と述べて、米国務省から不快感を買った。
◆日米豪印の連携は意義深い
このように、中国と韓国は既に国際関係で共同歩調をとる姿勢を見せ始めており、日米のインド太平洋戦略を批判的に見ている。そのため日米韓の連携にもひびが入っている。
中国や韓国がインド太平洋戦略を批判するとしても、日米はこの戦略を進めるべきである。中国の一帯一路構想こそ、アジア、中東、アフリカ方面のインフラ構築支援を説きながら、その裏でインド洋周辺国の要所に中国軍の基地を設け、インドを包囲し中国の覇権の拡張を狙っているのである。
11月12日、東アジア首脳会議(EAS)でマニラに集まった日米豪印4カ国の外交当局が局長級会合を行ったのは意義深い。ワシントンでのティラーソン国務長官の演説では、インド太平洋地域の片側を「きわめて重大かつ重要な民主国家」インドが、そしてもう片側を「非常に重要なかつ強力な民主国家」日本が固定していると述べている。この両国を米豪が支える形で4カ国連携が進むことは「自由で開かれたインド太平洋地域」を守る点で肝要である。
しかし「インド太平洋地域」というとその中央にある東南アジアを薄く見る印象を与えてしまう。戦略的に見ればティラーソン国務長官の説明は説得力があるが、同時に両大洋の接点にあたる東南アジアの戦略的重要性も看過すべきではない。マラッカ海峡や南シナ海は両大洋をつなぐ死活的に重要なシーレーンのある地域である。
◆当面の重要地帯は東南アジア
インド太平洋戦略の中核は依然としてアジア、とくに東南アジアである。ASEAN10カ国の人口6億人は2030年には7・3億人になると予測されている。また名目国内総生産(GDP)で20年代半ばには日本のGDPを追い越すとされている。そしてその間経済統合が進めば、貿易はさらに拡大し、30年には経済成長率4%に達しているとされる。
もちろんこの過程で既に進んでいる東南アジア大陸部の南北、東西の高速鉄道や自動車道路網(経済回廊)のインフラ整備へのさらなる投資が必要である。ここにアジア開発銀行(ADB)と中国が始めたアジア・インフラ投資銀行(AIIB)との競合が絡んでくるが、日本は両者の共生を促しながらも、長期的には自由貿易圏の拡大、ASEAN諸国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟国拡大を図り、東南アジアの自由で開かれた地域秩序の保持に貢献すべきである。
それとあわせて、安全保障面では日本は日米比越の海洋安全保障上の連携を強めることが重要である。日印協力や日米豪印協力を進めていくとしても、当面のインド太平洋地域の重要地帯は東南アジアにあると見るべきである。(にしはら まさし)
ASEAN10カ国の人口 6億人は2030年には 7.3億人になると予測され、GDPで20年代半ばには日本のGDPを追い越すとされていて、インド太平洋戦略の中核は依然としてアジア、とくに東南アジアであると西原理事長。
ティラーソン国務長官は、インド太平洋地域の片側をインドが、もう片方を日本が固定し、その両国を米豪が支える形で 4カ国連携が進むことは「自由で開かれたインド太平洋地域」を守る点で肝要と述べているのだそうです。
日印協力や日米豪印協力を進めていくとしても、当面のインド太平洋地域の重要地帯は東南アジアにあると見るべきとの西原理事長。両大洋の接点にあたる東南アジアの戦略的重要性も看過すべきではない。マラッカ海峡や南シナ海は両大洋をつなぐ死活的に重要なシーレーンのある地域であるとの説です。中国が食指を伸ばしているのも、ASEAN10ヵ国。南シナ海への中国の覇権拡大に抵抗し行動規範設定を主導していたのはベトナムとフィリピンでした。なかでもフィリピンは仲裁裁判所に提訴し勝訴、中国の「九段線」を根拠とする人口島の領有権は否定されたのですが、札束攻勢に折れたドゥテルテ大統領は、今回、議長国でありながら南シナ海の中国の行動には触れない議事運営の姿勢でした。
ASEAN10ヵ国への個別札束攻勢での分断、韓国文政権の取り込みでの日米韓連携の分断を、ゆっくりしかし着実に進める中国。
日印協力や日米豪印協力をすすめることで、日本単独や米国、インドが単独で中国の覇権拡大に対抗するのではなく、日米豪印が連携主導し、中国の覇権拡大を抑止し、諸国の自由を守ることが重要で、TPPを離脱するなどして、国内に重点をおこうとするトランプ大統領を、アジアに引き戻した安倍首相の「インド太平洋戦略」の功績は大きいのですが、当面は中心の東南アジア諸国へのアプローチが必要と言う話。
当然の事ですし、日米だけでなく、豪印を含めてより強力となった 4ヵ国がASEAN諸国を支援するとなればASEAN諸国も、中国の攻勢へのより強い抑止力を得たことになります。
この4ヵ国の力を背景に、中国に南シナ海での行動規範を求めていけばよいのですね。「自由で開かれたインド太平洋」構想の早期具現化に期待します。
先ずは、TPPに感心を示していた、インドネシア、タイの「CPTPP」への加入勧誘でしょうか。
# 冒頭の画像は、11月12日 マニラで会談したトランプ大統領とドゥテルテ大統領
トランプ米大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領とは「偉大な関係」 - Bloomberg
この花の名前は、ムラサキツユクサ
↓よろしかったら、お願いします。