遊爺雑記帳

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訪中した米国務長官はなぜ南シナ海に言及しなかったのか

2017-03-24 23:58:58 | 中国 全般
 トランプ政権は、ジェームズ・マティス国防長官、スティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問、ピーター・ナバロ国家通商会議(NTC)委員長、そして、ロバート・ライトハイザー次期通商代表部(USTR)代表等、対中強硬派が揃っていて、パンダハガーが多かったオバマ政権時代とは異なり、対中強硬姿勢を示し、南シナ海での「航行の自由作戦」も、及び腰だったオバマ政権時代とは異なり、強化される様子でした。
 しかし、ティラーソン国務長官が日中韓歴訪で北京を訪問時、南シナ海問題には触れなかった様で、むしろ、トランプ大統領の訪中、習近平の訪米を進める話をまとめていました。
 今回の歴訪は、北朝鮮のミサイル実験結果でその脅威が増したことから急遽行われたもので、米国にとって、南シナ海の脅威よりも、より大きな、米国にミサイル(核搭載も目指している)が打ちこまれる危惧が優先されることになったため、優先度が変更されたと説くのは、戦争平和社会学者の北村淳氏。

 
米軍 「航行の自由作戦」を活発化 - 遊爺雑記帳
 米国務長官、習氏と会談 トランプ氏の訪中意向伝達 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
 【中国大混乱】米中戦争は「不可避」なのか トランプ大統領は「中国敵視」発言を後退 - ZAKZAK
 
米国務長官はなぜ南シナ海に言及しなかったのか トランプ政権の南シナ海政策に揺さぶりをかける中国 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2017.3.23(木) 北村 淳

<前略>
■米国の“本気度”を試した?
 
トランプ政権は、中国による南シナ海の支配権獲得行動に強い危機感を表明している。
ティラーソン国務長官は、「中国が南シナ海をコントロールすることは何としてでも阻止しなければならない。そのためには中国艦船が人工島などに接近するのを阻止する場合もあり得る」といった趣旨の強固な決意を語った。

 その
ティラーソン国務長官が訪中する直前、三沙市市長がスカボロー礁を含む6カ所の島嶼環礁に「環境観測所」を建設することを公表
した(三沙市は、南シナ海の“中国海洋国土”を統括する行政単位。政庁は西沙諸島の永興島に設置されている)。「環境観測所」建設の準備作業は2017年の三沙市政府にとって最優先事項であり、港湾施設をはじめとするインフラも併設するという。
 これまで中国が誕生させてきた人工島の建設経緯から判断するならば、観測所に併設される港湾施設や航空施設などの各種インフラ設備は、いずれも軍事的使用を前提に建設され、観測所は同時に軍事基地となることは必至である。この種の施設を建設するには、スカボロー礁の埋め立て拡張作業は不可欠と考えられている。

 
中国に対して弱腰であったオバマ政権ですら、「スカボロー礁の軍事基地化を開始することは、すなわちレッドラインを踏み越えたものとみなす」と宣言していた
そして、トランプ政権が誕生するや、外交の責任者であるティラーソン国務長官は「中国による南シナ海支配の企ては、中国艦船を封じ込める軍事作戦(ブロケード)を実施してでも阻止する」といった強硬な方針を公言した。

 そのティラーソン国務長官が訪中する直前に、中国側はスカボロー礁に環境観測所を建設する計画を発表したのである。まさにトランプ政権の南シナ海問題に対する“本気度”を試した動きということができよう。

■南シナ海問題は後回しに
 中国を訪問したティラーソン国務長官がどの程度南シナ海問題(とりわけスカボロー礁に関する中国の動き)を牽制するのか、アメリカ海軍関係者は大いなる関心を持っていた。
 ところが、
ここに来て急遽、アメリカにとって中国との関係悪化を食いとどめなければならない事態が発生してきた。すなわち、北朝鮮のアメリカに対する脅威度が大きくレベルアップ
したのだ。

 
軍事力の行使を含めて「あらゆるオプション」を考えているトランプ政権としては、中国の北朝鮮に対する影響力を最大限活用せざるを得ない。
要するに「あらゆるオプション」には、いわゆる斬首作戦をはじめとする軍事攻撃に限らず、「中国を当てにする」というオプションも含まれているのだ。
 そのため
ティラーソン長官としては、この時期に中国側とギクシャクするのは得策ではないと判断したためか、北京での会談では南シナ海問題に言及することはなかった。

 いくら中国が南シナ海をコントロールしてしまったとしても、それによってアメリカに直接的な軍事的脅威や経済的損失が生ずるわけではない。ところが北朝鮮の核弾道ミサイルはアメリカ(本土はともかく、日本やグアムのアメリカ軍基地)に直接危害を加えかねない。したがって、南シナ海問題を後回しにして北朝鮮問題を片付けるのが先決という論理が現れるのは当然であろう。

■日本は腹をくくった戦略が必要
 
アメリカが強硬な態度に出られないのは、中国がすでに南シナ海での軍事的優勢を確保しつつあり、その状況を覆せないという事情もある。

 いくらトランプ政権が「スカボロー礁はレッドライン」と警告し、ティラーソン長官のように「南シナ海でのこれ以上の中国海軍の動きは阻止する」と言ったところで、現実的には現在のレベルのアメリカ海洋戦力では虚勢に過ぎない。
トランプ政権が着手する350隻海軍が誕生してもまだ戦力不足であると指摘する海軍戦略家も少なくない。そのため、アメリカ海軍が南シナ海で中国の軍事的支配を封じ込めようとしても、それが実行できるのは5年あるいは10年先になることは必至である(そのときは南シナ海は完全に“中国の海”になっているかもしれない)。

 いずれにせよ、
老獪な中国、そして怪しげな中国─北朝鮮関係によってアメリカの外交軍事政策が翻弄されているのは間違いなく、アメリカが強硬な南シナ海牽制行動をとることは難しい。その結果、中国による南シナ海のコントロールはますます優勢になるであろう。


 南シナ海の海上航路帯は“日本の生命線”である。そうである以上、日本は“中国の圧倒的優勢”を前提にした戦略を打ち立てなければならない。


 アメリカにとって、北朝鮮の脅威度が大きくレベルアップし、中国との関係悪化を食いとどめなければならなくなってしまったのですね。
 北朝鮮に対し、軍事力の行使を含めて「あらゆるオプション」を考えていると公言するトランプ政権。「あらゆるオプション」には、斬首作戦をはじめとする軍事攻撃に限らず、「中国を当てにする」というオプションも含まれているのだと。
 後者の選択肢がある為、ティラーソン長官としては、この時期に中国側とギクシャクするのは得策ではないと判断したためか、北京での会談では南シナ海問題に言及することはなかったのだと。

 保守系シンクタンクや論客の間には、南シナ海ばかりか、沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との戦争は避けられないとする意見があるのも事実ですが、まずは北朝鮮のミサイルと核の脅威対策に「中国をあてにする」というオプションを優先させようというところなのでしょうか。



 # 冒頭の画像は、会談したティラーソン国務長官と習近平




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