アムール川の中露国境画定では、面積を折半する形で政治決着し(2004年)、タラバロフ島(中国名・銀竜島)と、大ウスリー島(同・黒瞎子島)の一部が中国へ移譲されました。住民には知らされず、突然立ち入りが禁止され、補償も一切なかったのだそうです。
住民が政府を相手に訴訟に踏み切ったのだそうですが、昨春、裁判で補償が認められたのだそうで、同様に所有する土地を失った約50人の人々が続々と訴訟をおこしているのだそうです。
ノルウェーとの北極海などでの海域境界問題でも「折半方式」で解決したのだそうですが、ここでも補償問題は後回しになったのだとか。
ロシアで、政府に対して補償請求の裁判をおこせるだけでもびっくりですが、政府が敗訴するのにもさらに驚きました。
チェルノブイリ原発事故の処理では、ソ連の専制政治体制が事故処理を短時間に終わらせたと自慢しているとの報道をみかけましたが、最近では普通の国に近づいてきているのですね。
住民どころか地元政府にも極秘で領土問題の決着を図ってきたとのことですが、日本との北方領土交渉では、17千人と住民の数も多く、「一島でも渡したらロシア崩壊につながる」との世論があるのだそうで、補償の規模も、移転の人道問題も大きくなるとのことです。
政府のインフラ整備が行き届かなかった時代には、住民も日本領になることで豊かな暮らしが出来るとの意向もあったと聞きますが、著しく開発が進められ改善もしてきている今日では、そんなことを言う住民はいなくなっていることでしょう。
それはそれとして、不法に占拠し実効支配を高めいる北方四島は、日本のものなのですから返していただかねばなりません。
ただ、交渉は、ロシア国内での政府の板挟みの立場への配慮・支援も必要なのだと考えさせられる話ではあります。それが「静かな環境」なのですね。
だけど、現状の開発推進状況は、これまでの両国の交渉の積み重ねを放棄する大統領の発言や行動とともに、中韓を巻き込んだ積極的かつ本格的なものであり、「静かな環境」要求に騙されてしまうことになりかねないと憂慮されます。
朝日の記事が、はじめから「折半」での解決を前提としているかの様な姿勢にも、問題はあります。
【ソ連崩壊20年-解けない呪縛-】第2部 動くか領土交渉(1)(産経新聞) - goo ニュース
【ソ連崩壊20年-解けない呪縛-】第2部 動くか領土交渉(2)(産経新聞) - goo ニュース
【ソ連崩壊20年-解けない呪縛-】第2部 動くか領土交渉(3)(産経新聞) - goo ニュース
ソ連崩壊20年-解けない呪縛-第2部 動くか領土交渉(4)(産経新聞) - goo ニュース
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住民が政府を相手に訴訟に踏み切ったのだそうですが、昨春、裁判で補償が認められたのだそうで、同様に所有する土地を失った約50人の人々が続々と訴訟をおこしているのだそうです。
ノルウェーとの北極海などでの海域境界問題でも「折半方式」で解決したのだそうですが、ここでも補償問題は後回しになったのだとか。
ロシア強権の国境画定 住民補償後回し 裁判で敗訴続く 中国移譲の島広がる憤り (4/22 朝日朝刊)
中ロ国境画定交渉で中国に領有権が移った島にあった農地を失ったロシア住民19人が、ロシア政府への損害賠償訴訟で相次いで勝訴した。政府への反発は強いが、秘密で交渉を進め、住民に有無を言わさぬ「強引さ」がなければ解決できない現実ものぞく。
「領土を返すのは勝手だが、我々もロシアに不要だというのか。精神的苦痛の賠償も含め徹底的に争う」
2008年にタラバロフ島(中国名・銀竜島)とともに一部がロシアから中国に移譲された大ウスリー島(同・黒瞎子島)。この島に農地約7ヘクタールを持ち、養蜂を営んでいたハバロフスク郊外在住のセルゲイ・アブラモフさん(51)と妻のナタリアさん(55)は憤る。
両島の帰属は返還交渉の最大の懸案で、プーチン大統領(当時)と胡錦濤国家主席が04年、面積で折半する形で政治決着した。だが、決定は土地所有者には知らされず、交渉の最終合意後の06年ごろ、農地への立ち入りが突然禁じられたという。
補償は一切なかったため、アブラモフさん夫妻は政府を相手取って提訴に踏み切り、昨春、農地に対する補償が裁判で認められた。秋には06年以降の営業損失の補償を求めた訴訟でも勝訴。これを受け、中国に引き渡された部分にあった76区画の農地を所有していた約50人の一部が続々と提訴した。弁護士は「ほとんどの土地所有者が提訴に踏み切るだろう」と見る。
反発恐れて極秘交渉
裁判の背景には、領土交渉という性格上、極秘裏に進められた事情がある。
90年代に交渉が本格化すると、ロシア側が一定の領土を返還する可能性が浮上。4千キロに及ぶ国境各地で強い反発が出た。大ウスリー島周辺でも、地元ハバロフスク地方の知事を筆頭に反対運動が起きた。中国の膨大な人口と軍事力への懸念も強かった。
一方、中国側には、19世紀に清朝が帝政ロシアに割譲したアムール川北側とウスリー川東側の土地は「不当に奪われた自国領」という意識が強い。国境の小幅な修正にとどまれば、広大な領土を放棄するに等しいとの反発もあった。
こうした情勢の中、地元政府でさえモスクワから交渉の内情は知らされなかったという。地元政府は住民説明会などを開いたが、補償問題では明確な回答を避けた。領土返還時の土地の法的処理が想定されていなかったことも混乱を招いたと地元関係者は指摘する。
この問題に詳しい地元記者はこう振り返る。「国は事前に住民に知らせて反発が広がり、交渉に影響することを恐れた。首脳間の政治決着を最優先し、住民対策は全部後回しにした」
(藩陽=西村大輔)
トップダウン世論過熱嫌う 北方領土交渉と共通点
中ロ国境画定をめぐる動きには、日本がロシアとの間で抱える北方領土返還交渉とも共通点がある。日ロ間では、昨年11月のメドェフ大統領による北方領土訪問を機に批判や反発が強まった。東日本大震災でロシアが日本への支援に乗り出し、非難の応酬は静まったが、2月の日ロ外相会談では「静かな環境下で協議を継続する」ことで一致していた。
「静かな環境」を求める姿勢は、秘密裏に進めた中国との交渉と同じだ。ロシア側にあるのは、世論の過熱を避けたいとの思いだ。40年に及ぶ論争に終止符を打ったノルウェーとの北極海などでの海域境界問題でもそうだった。
中国と同じく係争区域の「折半方式」で解決したノルウェーとの合意は昨年4月末、メドベージェフ氏のオスロ訪問の際に唐突に発表された。このときは、ロシア漁民の利害調整が後回しにされた。
1万7千人が暮らす北方領土では、返還に伴う補償規模はこれまでと比較にならないほど大きい。住民が立ち退く事態になれば人道問題にも発展しかねない。ロシアの世論には、「一島でも渡したらロシア崩壊につながる」との懸念もある。
返還すれば全土で国民の怒りが噴出▽警察や軍の政権への忠誠が崩れる▽極東から西へ住民が流出▽日米の軍事基地ができてロシアの核戦力低下━━といったシミュレーションを描く学者もいる。
高支持率が基盤のロシア「双頭政権」は、譲歩を伴う領土解決をトップダウンで進めることが可能だが、国内で反対が広がらないよう静かに物事を進める必要がある。
また、中ロ国境での一連の訴訟を機に「折半方式」に問題があったとの見方が広がれば、今後の領土交渉の進め方にも影響が出る可能性もある。(モスクワ=副島英樹)
中ロ国境画定交渉で中国に領有権が移った島にあった農地を失ったロシア住民19人が、ロシア政府への損害賠償訴訟で相次いで勝訴した。政府への反発は強いが、秘密で交渉を進め、住民に有無を言わさぬ「強引さ」がなければ解決できない現実ものぞく。
「領土を返すのは勝手だが、我々もロシアに不要だというのか。精神的苦痛の賠償も含め徹底的に争う」
2008年にタラバロフ島(中国名・銀竜島)とともに一部がロシアから中国に移譲された大ウスリー島(同・黒瞎子島)。この島に農地約7ヘクタールを持ち、養蜂を営んでいたハバロフスク郊外在住のセルゲイ・アブラモフさん(51)と妻のナタリアさん(55)は憤る。
両島の帰属は返還交渉の最大の懸案で、プーチン大統領(当時)と胡錦濤国家主席が04年、面積で折半する形で政治決着した。だが、決定は土地所有者には知らされず、交渉の最終合意後の06年ごろ、農地への立ち入りが突然禁じられたという。
補償は一切なかったため、アブラモフさん夫妻は政府を相手取って提訴に踏み切り、昨春、農地に対する補償が裁判で認められた。秋には06年以降の営業損失の補償を求めた訴訟でも勝訴。これを受け、中国に引き渡された部分にあった76区画の農地を所有していた約50人の一部が続々と提訴した。弁護士は「ほとんどの土地所有者が提訴に踏み切るだろう」と見る。
反発恐れて極秘交渉
裁判の背景には、領土交渉という性格上、極秘裏に進められた事情がある。
90年代に交渉が本格化すると、ロシア側が一定の領土を返還する可能性が浮上。4千キロに及ぶ国境各地で強い反発が出た。大ウスリー島周辺でも、地元ハバロフスク地方の知事を筆頭に反対運動が起きた。中国の膨大な人口と軍事力への懸念も強かった。
一方、中国側には、19世紀に清朝が帝政ロシアに割譲したアムール川北側とウスリー川東側の土地は「不当に奪われた自国領」という意識が強い。国境の小幅な修正にとどまれば、広大な領土を放棄するに等しいとの反発もあった。
こうした情勢の中、地元政府でさえモスクワから交渉の内情は知らされなかったという。地元政府は住民説明会などを開いたが、補償問題では明確な回答を避けた。領土返還時の土地の法的処理が想定されていなかったことも混乱を招いたと地元関係者は指摘する。
この問題に詳しい地元記者はこう振り返る。「国は事前に住民に知らせて反発が広がり、交渉に影響することを恐れた。首脳間の政治決着を最優先し、住民対策は全部後回しにした」
(藩陽=西村大輔)
トップダウン世論過熱嫌う 北方領土交渉と共通点
中ロ国境画定をめぐる動きには、日本がロシアとの間で抱える北方領土返還交渉とも共通点がある。日ロ間では、昨年11月のメドェフ大統領による北方領土訪問を機に批判や反発が強まった。東日本大震災でロシアが日本への支援に乗り出し、非難の応酬は静まったが、2月の日ロ外相会談では「静かな環境下で協議を継続する」ことで一致していた。
「静かな環境」を求める姿勢は、秘密裏に進めた中国との交渉と同じだ。ロシア側にあるのは、世論の過熱を避けたいとの思いだ。40年に及ぶ論争に終止符を打ったノルウェーとの北極海などでの海域境界問題でもそうだった。
中国と同じく係争区域の「折半方式」で解決したノルウェーとの合意は昨年4月末、メドベージェフ氏のオスロ訪問の際に唐突に発表された。このときは、ロシア漁民の利害調整が後回しにされた。
1万7千人が暮らす北方領土では、返還に伴う補償規模はこれまでと比較にならないほど大きい。住民が立ち退く事態になれば人道問題にも発展しかねない。ロシアの世論には、「一島でも渡したらロシア崩壊につながる」との懸念もある。
返還すれば全土で国民の怒りが噴出▽警察や軍の政権への忠誠が崩れる▽極東から西へ住民が流出▽日米の軍事基地ができてロシアの核戦力低下━━といったシミュレーションを描く学者もいる。
高支持率が基盤のロシア「双頭政権」は、譲歩を伴う領土解決をトップダウンで進めることが可能だが、国内で反対が広がらないよう静かに物事を進める必要がある。
また、中ロ国境での一連の訴訟を機に「折半方式」に問題があったとの見方が広がれば、今後の領土交渉の進め方にも影響が出る可能性もある。(モスクワ=副島英樹)
ロシアで、政府に対して補償請求の裁判をおこせるだけでもびっくりですが、政府が敗訴するのにもさらに驚きました。
チェルノブイリ原発事故の処理では、ソ連の専制政治体制が事故処理を短時間に終わらせたと自慢しているとの報道をみかけましたが、最近では普通の国に近づいてきているのですね。
住民どころか地元政府にも極秘で領土問題の決着を図ってきたとのことですが、日本との北方領土交渉では、17千人と住民の数も多く、「一島でも渡したらロシア崩壊につながる」との世論があるのだそうで、補償の規模も、移転の人道問題も大きくなるとのことです。
政府のインフラ整備が行き届かなかった時代には、住民も日本領になることで豊かな暮らしが出来るとの意向もあったと聞きますが、著しく開発が進められ改善もしてきている今日では、そんなことを言う住民はいなくなっていることでしょう。
それはそれとして、不法に占拠し実効支配を高めいる北方四島は、日本のものなのですから返していただかねばなりません。
ただ、交渉は、ロシア国内での政府の板挟みの立場への配慮・支援も必要なのだと考えさせられる話ではあります。それが「静かな環境」なのですね。
だけど、現状の開発推進状況は、これまでの両国の交渉の積み重ねを放棄する大統領の発言や行動とともに、中韓を巻き込んだ積極的かつ本格的なものであり、「静かな環境」要求に騙されてしまうことになりかねないと憂慮されます。
朝日の記事が、はじめから「折半」での解決を前提としているかの様な姿勢にも、問題はあります。
【ソ連崩壊20年-解けない呪縛-】第2部 動くか領土交渉(1)(産経新聞) - goo ニュース
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