米国抜きの「TPP11」の発効に向けた閣僚会合が、チリ(閣僚級)、カナダ(主席交渉官)に続いての3回目となる会合として、ベトナムで開催されました。
各国の思惑が異なるなか、閣僚会合での政治判断での行方が注目されましたが、分裂霧散は避けられた様ですね。しかし、思惑の隔たりの溝は埋まらなかった。11月のAPEC首脳会合までに詰めを進めることとなりました。
「TPP11」は、原署名国のオーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国及びベトナムの合計12ヵ国から米国を除いた11ヵ国。 カナダとメキシコは、NAFTAの再交渉を控え、「TPP11」への態度は保留。チリ、ペルーは、中国の参加での米国の抜けた穴を埋める主張。オーストラリアとニュージランドは米国抜き、更には国内認証を得た国での先行発効推進派。ベトナムとマレーシアは米国復帰説得派。日本は、チリでの会合では閣僚の参加を見合わせて、米国の復帰説得を唱えていましたが、トランプ大統領の離脱大統領令発効後は、オーストラリアやニュージランドと歩調を合わせた、「TPP11」推進に転じたのでしたね。
カナダの主席交渉官会合でこの各国の思惑の溝が埋まらず、今回のベトナムでの閣僚会合での政治判断にゆだねられたのでしたが、状況に変わりはなかったのですね。
ただ、現実的な対応として、日豪など5ヵ国程度で、既に合意済みの内容を踏襲する形で先行発効させる案も取りざたされる様になってきているとも。
TPP閣僚会合 11か国で早期発効へ歩み寄れ : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
5ヵ国程度とは、11ヵ国から、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、チリ、ペルーの6ヵ国を除いた、日本、オーストラリア、ニュージランド、ブルネイ、シンガポールというとですね。
遊爺は、去る者は追わず、来るものは拒まず、参加可能な国々での早期発効を唱えています。
理由はふたつ。ひとつは、再交渉をすると、発効の時間が伸びてしまうこと。その間に、AIIBを軸とした、中国の「一帯一路」が先行して実績を造り、アジアでの市場の主導権を握ってしまうこと。凌ぎを削る協議を延々と行い、ようやくまとめあげたTPPの内容で、先ずは国内の批准が得られた国々で発効させ、実績を造り、国際市場にTPPの存在を示し、一つの先行する国際ルールとしての存在を認知させる。
二つ目は、日本が「TPP11」に方向転換した理由の一つでもある、対米2国間交渉での抑止力とすることです。
TPP 11 主席交渉官会合 意見隔たり大きく年内にどこまで道筋をつけられるかが焦点 - 遊爺雑記帳
日本からの閣僚会議への出席者が、優柔不断な石原氏と言う点が不安です。
対米交渉ではテーブルを叩きながらの厳しい交渉を重ね合意に至った甘利氏を、TPP大臣とするなど、何らかの手段で復帰参加していただく手はないのでしょうか。
少子・高齢化で人口減が進み、国内市場が縮小する日本。海外の成長市場と繋げる構造改革こそが、アベノミクス第3の矢の柱となります。米国抜きで規模が縮小し経済効果が減ると言いますが、ないよりは効果が得られる分ましですし、対米貿易の2国間交渉時の牽制力にもなります。
「TPP X」の早期発効で、アジア経済圏での中国の独占を牽制・対抗する勢力結集の雄として期待される日本の役割を果たすべきだと考えます。
# 冒頭の画像は、ハノイでのTPP閣僚会議に参加した、石原TPP相
この花は、ソメイヨシノ
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各国の思惑が異なるなか、閣僚会合での政治判断での行方が注目されましたが、分裂霧散は避けられた様ですね。しかし、思惑の隔たりの溝は埋まらなかった。11月のAPEC首脳会合までに詰めを進めることとなりました。
「米抜き」そろわぬ歩調 TPP閣僚会合 (5/22 読売朝刊)
【ハノイ=関根晃次郎】米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11か国は、21日の閣僚会合で、早期発効に向けて引き続き連携する方針を確認した。ただ、共同声明案が会合の直前まで固まらないなど、各国の立場の違いも改めて浮き彫りになった。目標とする11月までに発効への道筋を示すことができるのか、予断を許さない状況が続く。
「11か国で発効」強調せず
閣僚会合の開始が約30分後に迫った21日午前7時過ぎ、石原TPP相はハノイ市内のホテルで、カナダのシャンパーニュ貿易相と会談した。カナダは、前夜から21日明け方まで断続的に続いた首席交渉官会合で、声明案への賛否の判断を先送りしており、政治レベルで決着をつけるためだった。
今回の閣僚会合で、各国が大きな関心を示したのは、TPPから離脱した米国の扱いだった。交渉筋によると、閣僚会合では多くの国から、「11か国でTPPを進めることを強調しすぎると、米国を刺激しかねない」との懸念が相次いだという。
共同声明には、各国の懸念に配慮した苦心の跡がうかがえる。日本と豪州、ニュージーランドの3か国は、米国抜きの11か国によるTPPの早期発効に前向きだが、共同声明は、早期発効が11か国によるものか、米国を含む12か国によるものなのかを明確にしていない。マレーシアやベトナムがTPPの交渉過程で自国の規制緩和を受け入れたのは、巨大市場を抱える米国への輸出拡大を見込んでいたからで、両国は今も米国の復帰を求めている。
また、共同声明には、「高い合意水準を受け入れることを条件に、TPPを拡大していく」との一文も加わった。これはチリやペルーが、中国などを含めた新たな参加国も加えた枠組みでの発効に、前向きな姿勢を示しているためだ。共同声明の内容は様々な選択の余地を残した格好で、「11か国による発効にこだわれば、結束が崩れかねなかった」(交渉筋)とされる。
11か国は今回の会合で、「合意済みの関税の撤廃や削減の部分は変えない」(石原氏)ことで一致したが、米国を除いたままTPPを発効させるには、新たな協定文を交わすことが必要になるとみられ、難航も予想される。
米通商代表 復帰を否定
一方、11か国の配慮に対し、米国はTPPへの復帰を明確に否定した。TPP関係の会合と同期間に、同じハノイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席していた米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は21日、記者会見で「米国はTPPから離脱した。トランプ大統領の判断であり、変わることはない」と断言した。
日本などは引き続き、米国に働きかけを続ける方針だが、米国の復帰が実現しなければ、不満を持つ参加国から、合意内容の見直しを求める声が高まる可能性がある。
11か国は今後、早期発効に向けた協議を加速させることになる。だが、「米国不在」を理由に、仮に協定を見直すような事態になれば、再交渉の長期化は避けられず、早期発効のメドが立たなくなる可能性もある。
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■TPP閣僚会合 共同声明の要旨
TPP閣僚会合の共同声明の要旨は次の通り。
地域経済統合を促進し、各国の経済成長見通しに積極的に寄与するTPPのバランスの取れた成果や戦略的・経済的意義を再確認した。
TPPの利益を実現する価値に合意した。各大臣は原署名国(米国)の参加を促進する方策も含めた、包括的で質の高い協定の早期発効のための選択肢の検討で合意した。
各大臣は貿易担当の政府高官に、この検討作業を11月のAPEC首脳会合までに完了するよう求めた。
各大臣はTPPの高い水準を受け入れる他の国を含めてTPPを拡大していくとの将来展望を強調した。
こうした努力は、保護主義への懸念に応え、自由市場の維持、ルールに基づく国際貿易体制の強化、世界の貿易の拡大、生活水準の向上に貢献する。
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【ハノイ=関根晃次郎】米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11か国は、21日の閣僚会合で、早期発効に向けて引き続き連携する方針を確認した。ただ、共同声明案が会合の直前まで固まらないなど、各国の立場の違いも改めて浮き彫りになった。目標とする11月までに発効への道筋を示すことができるのか、予断を許さない状況が続く。
「11か国で発効」強調せず
閣僚会合の開始が約30分後に迫った21日午前7時過ぎ、石原TPP相はハノイ市内のホテルで、カナダのシャンパーニュ貿易相と会談した。カナダは、前夜から21日明け方まで断続的に続いた首席交渉官会合で、声明案への賛否の判断を先送りしており、政治レベルで決着をつけるためだった。
今回の閣僚会合で、各国が大きな関心を示したのは、TPPから離脱した米国の扱いだった。交渉筋によると、閣僚会合では多くの国から、「11か国でTPPを進めることを強調しすぎると、米国を刺激しかねない」との懸念が相次いだという。
共同声明には、各国の懸念に配慮した苦心の跡がうかがえる。日本と豪州、ニュージーランドの3か国は、米国抜きの11か国によるTPPの早期発効に前向きだが、共同声明は、早期発効が11か国によるものか、米国を含む12か国によるものなのかを明確にしていない。マレーシアやベトナムがTPPの交渉過程で自国の規制緩和を受け入れたのは、巨大市場を抱える米国への輸出拡大を見込んでいたからで、両国は今も米国の復帰を求めている。
また、共同声明には、「高い合意水準を受け入れることを条件に、TPPを拡大していく」との一文も加わった。これはチリやペルーが、中国などを含めた新たな参加国も加えた枠組みでの発効に、前向きな姿勢を示しているためだ。共同声明の内容は様々な選択の余地を残した格好で、「11か国による発効にこだわれば、結束が崩れかねなかった」(交渉筋)とされる。
11か国は今回の会合で、「合意済みの関税の撤廃や削減の部分は変えない」(石原氏)ことで一致したが、米国を除いたままTPPを発効させるには、新たな協定文を交わすことが必要になるとみられ、難航も予想される。
米通商代表 復帰を否定
一方、11か国の配慮に対し、米国はTPPへの復帰を明確に否定した。TPP関係の会合と同期間に、同じハノイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席していた米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は21日、記者会見で「米国はTPPから離脱した。トランプ大統領の判断であり、変わることはない」と断言した。
日本などは引き続き、米国に働きかけを続ける方針だが、米国の復帰が実現しなければ、不満を持つ参加国から、合意内容の見直しを求める声が高まる可能性がある。
11か国は今後、早期発効に向けた協議を加速させることになる。だが、「米国不在」を理由に、仮に協定を見直すような事態になれば、再交渉の長期化は避けられず、早期発効のメドが立たなくなる可能性もある。
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■TPP閣僚会合 共同声明の要旨
TPP閣僚会合の共同声明の要旨は次の通り。
地域経済統合を促進し、各国の経済成長見通しに積極的に寄与するTPPのバランスの取れた成果や戦略的・経済的意義を再確認した。
TPPの利益を実現する価値に合意した。各大臣は原署名国(米国)の参加を促進する方策も含めた、包括的で質の高い協定の早期発効のための選択肢の検討で合意した。
各大臣は貿易担当の政府高官に、この検討作業を11月のAPEC首脳会合までに完了するよう求めた。
各大臣はTPPの高い水準を受け入れる他の国を含めてTPPを拡大していくとの将来展望を強調した。
こうした努力は、保護主義への懸念に応え、自由市場の維持、ルールに基づく国際貿易体制の強化、世界の貿易の拡大、生活水準の向上に貢献する。
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「TPP11」は、原署名国のオーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国及びベトナムの合計12ヵ国から米国を除いた11ヵ国。 カナダとメキシコは、NAFTAの再交渉を控え、「TPP11」への態度は保留。チリ、ペルーは、中国の参加での米国の抜けた穴を埋める主張。オーストラリアとニュージランドは米国抜き、更には国内認証を得た国での先行発効推進派。ベトナムとマレーシアは米国復帰説得派。日本は、チリでの会合では閣僚の参加を見合わせて、米国の復帰説得を唱えていましたが、トランプ大統領の離脱大統領令発効後は、オーストラリアやニュージランドと歩調を合わせた、「TPP11」推進に転じたのでしたね。
カナダの主席交渉官会合でこの各国の思惑の溝が埋まらず、今回のベトナムでの閣僚会合での政治判断にゆだねられたのでしたが、状況に変わりはなかったのですね。
ただ、現実的な対応として、日豪など5ヵ国程度で、既に合意済みの内容を踏襲する形で先行発効させる案も取りざたされる様になってきているとも。
TPP閣僚会合 11か国で早期発効へ歩み寄れ : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
5ヵ国程度とは、11ヵ国から、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、チリ、ペルーの6ヵ国を除いた、日本、オーストラリア、ニュージランド、ブルネイ、シンガポールというとですね。
遊爺は、去る者は追わず、来るものは拒まず、参加可能な国々での早期発効を唱えています。
理由はふたつ。ひとつは、再交渉をすると、発効の時間が伸びてしまうこと。その間に、AIIBを軸とした、中国の「一帯一路」が先行して実績を造り、アジアでの市場の主導権を握ってしまうこと。凌ぎを削る協議を延々と行い、ようやくまとめあげたTPPの内容で、先ずは国内の批准が得られた国々で発効させ、実績を造り、国際市場にTPPの存在を示し、一つの先行する国際ルールとしての存在を認知させる。
二つ目は、日本が「TPP11」に方向転換した理由の一つでもある、対米2国間交渉での抑止力とすることです。
TPP 11 主席交渉官会合 意見隔たり大きく年内にどこまで道筋をつけられるかが焦点 - 遊爺雑記帳
日本からの閣僚会議への出席者が、優柔不断な石原氏と言う点が不安です。
対米交渉ではテーブルを叩きながらの厳しい交渉を重ね合意に至った甘利氏を、TPP大臣とするなど、何らかの手段で復帰参加していただく手はないのでしょうか。
少子・高齢化で人口減が進み、国内市場が縮小する日本。海外の成長市場と繋げる構造改革こそが、アベノミクス第3の矢の柱となります。米国抜きで規模が縮小し経済効果が減ると言いますが、ないよりは効果が得られる分ましですし、対米貿易の2国間交渉時の牽制力にもなります。
「TPP X」の早期発効で、アジア経済圏での中国の独占を牽制・対抗する勢力結集の雄として期待される日本の役割を果たすべきだと考えます。
# 冒頭の画像は、ハノイでのTPP閣僚会議に参加した、石原TPP相
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