韓国 与党が過半数割れに 朴大統領の求心力低下

　韓国総選挙の結果は、与党が第一党の座を奪われる結果となり、公認を外れて無所属で出馬して当選した議員が復党しても、過半数には達しないというものでした。
　5年の任期のうち、3年を経過し、ただでさえレームダック化する大統領の宿命にある朴槿恵ですが、金大中政権時代の2000年以来の16年振りの少数与党体制となってしまい、求心力を欠き、困難な政権運営を迫られることとなりました。
　

韓国与党、過半数割れ　朴大統領の求心力低下　　：日本経済新聞　2016/4/14 11:23日本経済新聞　電子版

　【ソウル＝峯岸博】13日投開票の韓国総選挙（定数300）は14日午前、開票作業を終えた。韓国メディアによると保守政党の与党「セヌリ党」が122議席にとどまり、革新系の最大野党「共に民主党」の123議席を下回った。第三極の新党「国民の党」は38議席と躍進した。韓国で少数与党体制となるのは2000年以来16年ぶり。

　与党の公認を外れて無所属で出馬した議員が復党すると、セヌリ党は第１党に復帰する可能性が大きいが、過半数には及ばない。内政・外交を強気で押し通してきた朴槿恵（パク・クネ）大統領の求心力低下は必至。従軍慰安婦問題の日韓合意や北朝鮮への強硬路線など韓国国内で賛否が割れるテーマでの反対・慎重論が勢いづきそうだ。
　総選挙は小選挙区253、比例代表47議席を争った。選挙前勢力はセヌリ党が146議席、共に民主党が102議席、国民の党が20議席だった。
　韓国総選挙で20議席以上の第３勢力が誕生するのは1996年以来20年ぶり。セヌリ党は小選挙区の半数近くを占める首都圏の惨敗に加え、地盤の南東部慶尚道地域でも野党に牙城の一角を崩された。長引く経済低迷や公認候補者選びをめぐる党内対立で若い世代や支持層の離反を招いた。

　セヌリ党は小選挙区の半数近くを占める首都圏の惨敗に加え、地盤の南東部慶尚道地域でも野党に牙城の一角を崩された。長引く経済低迷や公認候補者選びをめぐる党内対立で若い世代や支持層の離反を招いたと記事で指摘されるように、党内の朴派と非朴派の分裂による公認候補者選定での強引なドタバタ劇が支持者の離反を招いたのですね。お父さんの時代からの支持者に支えられた朴槿恵でしたが、古くからの支持者も失ってしまっていました。
　北に厳しい姿勢で接する一方で、中国に接近し、歴史認識で共闘を図ると共に、依存する輸出の円滑化も進めていましたが、北の核実権やミサイル発射への中国の制裁要求の回答を得られず、日米への接近回帰に転ずるといった、コウモリ外交での揺れも見せました。大型旅客船「セウォル（世越）」の転覆・沈没事件では、対応行動を巡り、支持率を大きく下げました。
　求心力を失った朴槿恵、残りの政権運営で、日本にとってもっとも危惧されるのは、慰安婦問題で日韓合意に至った内容の履行です。
　

日韓関係 慰安婦合意履行 鈍化か　（4/14 読売 朝刊）
　総選挙後の日韓関係をめぐっては、韓国政局が2017年12月の大統領選に向かう中、朴槿恵政権が昨年末の日韓慰安婦合意を履行できるかどうかが最大の焦点となる。
　朴政権の残り2年弱の任期中、元慰安婦を支援する財団の設立が進められるが、ソウルの日本大使館前の少女像の撤去を日本側が求めていることもあり、大統領選の出馬を目指す野党候補から猛反発を受けるシナリオも予想される。
　今回の総選挙で、最大野党「共に民主党」のほか、野党第2党の「国民の党」が議席を伸ばせば、今後、野党両党の発言力が増すのは確実だ。特に「国民の党」の共同代表の安哲秀氏は次期大統領選の有力候補の1人とされており、日韓合意に否定的な立場を取っている。
　韓国の金亨俊・明知大学教授(政治学)は「安氏が今後、朴政権に対する批判を一層強め、改めて日韓合意を問題視する可能性がある」と指摘する。
　今回の総選挙は日韓合意後、初めての国政選挙だった。日韓両政府は日韓合意が争点になることを警戒していたが、ひとまず批判が集中することは避けられた。しかし、韓国では依然として、元慰安婦や支援団体を中心に日韓合意に対する否定的な世論は根強い。ソウルの日本大使館前では投開票日の13日にも、元慰安婦の支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」の毎週水曜日の抗議集会が開かれ、尹美香代表は「どのような選挙結果になっても諦めない」と訴え、日韓合意への抗議を続けていく考えを示した。
　財団設立に向けた動きが本格化するのは、今夏行われる日本の参院選以降になる可能性が高いが、次期大統領選をにらんだ与野党の反主流派や野党の動きが活発になる時期と重なる。与党セヌリ党内も、次の大統領候補の支援に向けた動きを見せ始めるとみられる。朴政権は日韓合意を着実に履行しようとしても周辺の圧力で動きが鈍くなる可能性もある。

　1996年以来20年ぶりとされる、20議席以上の第3勢力の「国民の党」の共同代表の安哲秀氏は、日韓合意に否定的な姿勢を明らかにしていて、野党が共闘して日韓合意の見直しを迫ってくることが考えられます。
　岸田外務大臣の失政（安倍首相の失政でもある）である、日韓合意内容の、慰安婦問題への政府の関与を認めて補償することにした事実だけが残り、合意内容は実行されない可能性が強くなりました。
　また、北との融和を唱える野党の台頭は、暴走する金正恩の北朝鮮との接し方でどのような姿勢を打ち出すのでしょう。
　日米韓の安全保障連携が、中国によって韓国の分断切り離しが進められていましたが、ここへきて戻ろうとしていました。今後はどう転ぶのでしょう。
　思わしくない韓国国内経済状況に加え、過半数割れの与党体制で不安定化する政権運営。お隣のお家の中の騒動と、知らないふりで済ませるには影響が少なくない。かといって、手の出しようもない。せめて、朴槿恵が冷遇した、知日派の方々の復活を支援できる術はあるのでしょうか？





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