米大統領選に向けたコロラド州予備選へのドナルド・トランプ前大統領の出馬資格を剝奪するとの判決を、同州最高裁が4対3の賛成多数で下した。この判断は誤りであり、トランプ氏の力を強めるだけだということは、同氏のファンでなくても理解できるはずだと、カール・ローブ氏。
コロラド州最高裁の判断は、1866年に連邦議会が提案し、1868年に各州で批准された憲法修正14条3項に基づくものだ。
同項にはこう書かれていると、カール・ローブ氏。
「合衆国憲法を支持すると宣誓しておきながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院ないし下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない」
彼を排除する取り組みは少なくとも他の15州で進行しているほか、16州で実行されたとも。
連邦最高裁がコロラド州の判断を支持する可能性は低い。修正14条をこのように使うことには多くの法的な問題があると、カール・ローブ氏。
まず、3項は「上院ないし下院の議員」に言及しているものの「大統領」には言及していない。加えて、トランプ氏は「暴動または反乱に加わった」として有罪判決を受けていないという小さな問題があると。
修正14条3項は極めて厄介な案件と見なされており、当時の共和党主導の議会は1872年の一般恩赦法で同条項の大半を骨抜きにした。
その結果、1874年の下院選では南部連合の元兵士や元役人51人が当選し、民主党が16年ぶりに下院での議席数を逆転させたのだそうです。
彼らはかつて戦場や南部連合の政府評議会で北部諸州への軽蔑の念を示していた。しかし、憲法修正14条によって公職から排除されることはなかったとも。
米議会襲撃事件の際のトランプ氏の行動を忌まわしく思い、前回の大統領選には大規模な不正があり選挙結果が盗み取られたと主張し続けていることを妄想的だと見なし、選挙人投票で自身が勝利したとする偽の証明書で混乱を招こうとした試みを、非難に値すると考えるのは構わない。
しかし、選挙の候補者を排除する「バナナ共和国(政情が不安定な小国)」のやり方をまねることが、われわれの民主主義にとって好ましいと言えるだろうかと、カール・ローブ氏。
選挙で選出するのは、規制ではなく有権者の投票ということですね。
# 冒頭の画像は、アイオワ州ウォータールーでの集会で演説するドナルド・トランプ前大統領(19日)
この花の名前は、ヒナソウ
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【寄稿】トランプ氏排除のコロラド州判決は誤り - WSJ カール・ローブ 2023年12月21日
米大統領選に向けたコロラド州予備選へのドナルド・トランプ前大統領の出馬資格を剝奪するとの判決を、同州最高裁が4対3の賛成多数で下した。この判断は誤りであり、トランプ氏の力を強めるだけだということは、同氏のファンでなくても理解できるはずだ。
コロラド州最高裁の判断は、1866年に連邦議会が提案し、1868年に各州で批准された憲法修正14条3項に基づくものだ。同項にはこう書かれている。「連邦議会議員、合衆国の公務員、州議会議員、または州の執行部もしくは司法部の官職にある者として、合衆国憲法を支持すると宣誓しておきながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院ないし下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない」
トランプ氏は既に、自身を候補者名簿から排除しようとする左派の試みを利用して資金集めをし、支持者を鼓舞している。確かに、同氏が来秋にコロラド州で勝利できる可能性は低い。前回は13.5ポイント差で敗北した。しかし彼を排除する取り組みは少なくとも他の15州で進行しているほか、16州で実行された。
トランプ氏の名前を候補者名簿から排除するための訴訟は、アリゾナ州とミシガン州で上訴がなされているほか、他の13州(アラスカ、ネバダ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、オレゴン、サウスカロライナ、テキサス、バーモント、バージニア、ウェストバージニア、ウィスコンシン、ワイオミング)で係争中となっている。
トランプ氏を候補者名簿に載せるのに反対する訴えは、既にフロリダ、ミネソタ、ニューハンプシャー、ロードアイランドの4州で退けられた。原告は勝ち目が薄いことを認識し、他の12州(カリフォルニア、コネティカット、デラウェア、アイダホ、カンザス、メーン、マサチューセッツ、モンタナ、ノースカロライナ、オクラホマ、ペンシルベニア、ユタ)で訴訟を取り下げた。
連邦最高裁がコロラド州の判断を支持する可能性は低い。修正14条をこのように使うことには多くの法的な問題がある。まず、3項は「上院ないし下院の議員」に言及しているものの「大統領」には言及していない。加えて、トランプ氏は「暴動または反乱に加わった」として有罪判決を受けていないという小さな問題がある。
修正14条3項は極めて厄介な案件と見なされており、当時の共和党主導の議会は1872年の一般恩赦法で同条項の大半を骨抜きにした。ユリシーズ・グラント大統領はこれを受け、国内の司法関係者に大半の訴追案件を取り下げるよう命じた。その結果、1874年の下院選では南部連合の元兵士や元役人51人が当選し、民主党が16年ぶりに下院での議席数を逆転させた。
それにまつわる皮肉な話がある。ジョン・F・ケネディ元大統領がピュリツァー賞を受賞した著書「勇気ある人々」の中で、政治的に勇気ある人々として挙げた8人の連邦上院議員の一人は、ミシシッピ州出身のルーシャス・Q・C・ラマーだった。ラマーは1878年、銀貨の鋳造再開を決めるブランド・アリソン法に賛成票を投じるよう求めた州議会の要求を拒否した。彼はインフレにつながる銀貨の流通に反対する理由を説明しながら地方遊説を行い、ミシシッピ州有権者の考えに反対する姿勢を貫いた。その結果、「有権者は(州議会の要求に反対することで)彼が示した誠実さと勇気」に応え、ラマーは「圧倒的な大差」で上院議員に再選された。その後、グローバー・クリーブランド大統領の指名により、内務長官や連邦最高裁判事を務めた。
しかしラマーは南北戦争前に、米議会下院で「一部の人々はユニオン(北部諸州)への熱烈な支持を表明するかもしれない」が、自身は「南部の利益の促進は南部の名誉の保持に次いで重要だ」と感じていると言明した。彼は、ミシシッピ州の離脱宣言を起草し、南軍で軍務に就き、南部連合の駐ロシア大使を務め、南部連合の大統領ジェファソン・デービスの最側近となった。歴史家のヘンリー・アダムスはラマーのことを「南軍側の最悪の暴れ者」の一人と呼んだ。
19世紀の最後の30年間から20世紀にかけ、連邦議会の上下両院ではラマーのような旧南部連合側の議員が、高齢で引退するまで多くの議席を占めた。彼らはかつて戦場や南部連合の政府評議会で北部諸州への軽蔑の念を示していた。しかし、憲法修正14条によって公職から排除されることはなかった。
米議会襲撃事件の際のトランプ氏の行動を忌まわしく思い、前回の大統領選には大規模な不正があり選挙結果が盗み取られたと主張し続けていることを妄想的だと見なし、選挙人投票で自身が勝利したとする偽の証明書で混乱を招こうとした試みを、非難に値すると考えるのは構わない。しかし、選挙の候補者を排除する「バナナ共和国(政情が不安定な小国)」のやり方をまねることが、われわれの民主主義にとって好ましいと言えるだろうか。
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筆者のカール・ローブ氏は政治活動委員会「アメリカン・クロスロード」の設立に関わった。著書に「The Triumph of William McKinley(ウィリアム・マッキンリーの勝利)」(サイモン&シュスター2015年刊行)がある。
米大統領選に向けたコロラド州予備選へのドナルド・トランプ前大統領の出馬資格を剝奪するとの判決を、同州最高裁が4対3の賛成多数で下した。この判断は誤りであり、トランプ氏の力を強めるだけだということは、同氏のファンでなくても理解できるはずだ。
コロラド州最高裁の判断は、1866年に連邦議会が提案し、1868年に各州で批准された憲法修正14条3項に基づくものだ。同項にはこう書かれている。「連邦議会議員、合衆国の公務員、州議会議員、または州の執行部もしくは司法部の官職にある者として、合衆国憲法を支持すると宣誓しておきながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院ないし下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない」
トランプ氏は既に、自身を候補者名簿から排除しようとする左派の試みを利用して資金集めをし、支持者を鼓舞している。確かに、同氏が来秋にコロラド州で勝利できる可能性は低い。前回は13.5ポイント差で敗北した。しかし彼を排除する取り組みは少なくとも他の15州で進行しているほか、16州で実行された。
トランプ氏の名前を候補者名簿から排除するための訴訟は、アリゾナ州とミシガン州で上訴がなされているほか、他の13州(アラスカ、ネバダ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、オレゴン、サウスカロライナ、テキサス、バーモント、バージニア、ウェストバージニア、ウィスコンシン、ワイオミング)で係争中となっている。
トランプ氏を候補者名簿に載せるのに反対する訴えは、既にフロリダ、ミネソタ、ニューハンプシャー、ロードアイランドの4州で退けられた。原告は勝ち目が薄いことを認識し、他の12州(カリフォルニア、コネティカット、デラウェア、アイダホ、カンザス、メーン、マサチューセッツ、モンタナ、ノースカロライナ、オクラホマ、ペンシルベニア、ユタ)で訴訟を取り下げた。
連邦最高裁がコロラド州の判断を支持する可能性は低い。修正14条をこのように使うことには多くの法的な問題がある。まず、3項は「上院ないし下院の議員」に言及しているものの「大統領」には言及していない。加えて、トランプ氏は「暴動または反乱に加わった」として有罪判決を受けていないという小さな問題がある。
修正14条3項は極めて厄介な案件と見なされており、当時の共和党主導の議会は1872年の一般恩赦法で同条項の大半を骨抜きにした。ユリシーズ・グラント大統領はこれを受け、国内の司法関係者に大半の訴追案件を取り下げるよう命じた。その結果、1874年の下院選では南部連合の元兵士や元役人51人が当選し、民主党が16年ぶりに下院での議席数を逆転させた。
それにまつわる皮肉な話がある。ジョン・F・ケネディ元大統領がピュリツァー賞を受賞した著書「勇気ある人々」の中で、政治的に勇気ある人々として挙げた8人の連邦上院議員の一人は、ミシシッピ州出身のルーシャス・Q・C・ラマーだった。ラマーは1878年、銀貨の鋳造再開を決めるブランド・アリソン法に賛成票を投じるよう求めた州議会の要求を拒否した。彼はインフレにつながる銀貨の流通に反対する理由を説明しながら地方遊説を行い、ミシシッピ州有権者の考えに反対する姿勢を貫いた。その結果、「有権者は(州議会の要求に反対することで)彼が示した誠実さと勇気」に応え、ラマーは「圧倒的な大差」で上院議員に再選された。その後、グローバー・クリーブランド大統領の指名により、内務長官や連邦最高裁判事を務めた。
しかしラマーは南北戦争前に、米議会下院で「一部の人々はユニオン(北部諸州)への熱烈な支持を表明するかもしれない」が、自身は「南部の利益の促進は南部の名誉の保持に次いで重要だ」と感じていると言明した。彼は、ミシシッピ州の離脱宣言を起草し、南軍で軍務に就き、南部連合の駐ロシア大使を務め、南部連合の大統領ジェファソン・デービスの最側近となった。歴史家のヘンリー・アダムスはラマーのことを「南軍側の最悪の暴れ者」の一人と呼んだ。
19世紀の最後の30年間から20世紀にかけ、連邦議会の上下両院ではラマーのような旧南部連合側の議員が、高齢で引退するまで多くの議席を占めた。彼らはかつて戦場や南部連合の政府評議会で北部諸州への軽蔑の念を示していた。しかし、憲法修正14条によって公職から排除されることはなかった。
米議会襲撃事件の際のトランプ氏の行動を忌まわしく思い、前回の大統領選には大規模な不正があり選挙結果が盗み取られたと主張し続けていることを妄想的だと見なし、選挙人投票で自身が勝利したとする偽の証明書で混乱を招こうとした試みを、非難に値すると考えるのは構わない。しかし、選挙の候補者を排除する「バナナ共和国(政情が不安定な小国)」のやり方をまねることが、われわれの民主主義にとって好ましいと言えるだろうか。
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筆者のカール・ローブ氏は政治活動委員会「アメリカン・クロスロード」の設立に関わった。著書に「The Triumph of William McKinley(ウィリアム・マッキンリーの勝利)」(サイモン&シュスター2015年刊行)がある。
コロラド州最高裁の判断は、1866年に連邦議会が提案し、1868年に各州で批准された憲法修正14条3項に基づくものだ。
同項にはこう書かれていると、カール・ローブ氏。
「合衆国憲法を支持すると宣誓しておきながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院ないし下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない」
彼を排除する取り組みは少なくとも他の15州で進行しているほか、16州で実行されたとも。
連邦最高裁がコロラド州の判断を支持する可能性は低い。修正14条をこのように使うことには多くの法的な問題があると、カール・ローブ氏。
まず、3項は「上院ないし下院の議員」に言及しているものの「大統領」には言及していない。加えて、トランプ氏は「暴動または反乱に加わった」として有罪判決を受けていないという小さな問題があると。
修正14条3項は極めて厄介な案件と見なされており、当時の共和党主導の議会は1872年の一般恩赦法で同条項の大半を骨抜きにした。
その結果、1874年の下院選では南部連合の元兵士や元役人51人が当選し、民主党が16年ぶりに下院での議席数を逆転させたのだそうです。
彼らはかつて戦場や南部連合の政府評議会で北部諸州への軽蔑の念を示していた。しかし、憲法修正14条によって公職から排除されることはなかったとも。
米議会襲撃事件の際のトランプ氏の行動を忌まわしく思い、前回の大統領選には大規模な不正があり選挙結果が盗み取られたと主張し続けていることを妄想的だと見なし、選挙人投票で自身が勝利したとする偽の証明書で混乱を招こうとした試みを、非難に値すると考えるのは構わない。
しかし、選挙の候補者を排除する「バナナ共和国(政情が不安定な小国)」のやり方をまねることが、われわれの民主主義にとって好ましいと言えるだろうかと、カール・ローブ氏。
選挙で選出するのは、規制ではなく有権者の投票ということですね。
# 冒頭の画像は、アイオワ州ウォータールーでの集会で演説するドナルド・トランプ前大統領(19日)
この花の名前は、ヒナソウ
↓よろしかったら、お願いします。