イスラム組織ハマスが今月、多数の人命を奪う奇襲攻撃をイスラエルに仕掛けた際、米国と同盟国は自分たちがテロ組織とみなすハマスにイランが資金を提供していると非難した。
だが国際社会が――イスラエル自身でさえ――うかつにもハマスの財政をさまざまな面で助けていたという実態は、語られないままだった。ハマスは実効支配するパレスチナ自治区ガザで、人道支援をくすねたり、貿易開放により活発化した経済活動に課税したりして数千万ドルを調達していたと、WSJ。
ハマスは2007年、国際社会に認められたパレスチナ自治政府からガザ地区の支配権を奪い取った。
イスラエルと西側が突きつけられている難問とは、どうすればイスラエルに対する暴力を助長することなく、ガザのパレスチナ住民を支援できるかというものだ。最近のハマスの相次ぐ攻撃は、国際社会にとってその綱渡りがいかに危ういかを示すと、WSJ。
国際的な援助は「本来人道上の目的で行われるが、お金は代替性があるため、住民に提供するはずの資金を、ハマスが軍事力を支えるために流用することも可能になる」。米財務省の国家安全保障担当高官を務めたアレックス・ザーダン氏はそう話すと。
バイデン大統領は18日、イスラエルで行った演説の中でハマスに対し、世界中の国々がこの地域に送り込む人道支援を盗んだり流用したりしないよう警告したと、WSJ。
イスラエル政府は過去2年間、より多くのパレスチナ人労働者が同国で働けるようにしたが、結果的にハマスがガザでの税金を引き上げることを可能にした。エジプトはガザ地区との商業ルートを開き、物品の輸出入を促進したが、ハマスはこれにも課税した。
カタールは米政府の要請を受け、ガザ地区に毎月数千万ドルを提供した。大半は困窮した家庭に支給され、一部は政府で働くハマスの職員の給与に充てられた。だが、それ以外のカタールの資金はハマスの軍事活動に流用されたことが西側の情報活動で明らかになった、と西側の現・元治安当局者は言う。
10月7日の攻撃で残された物から国際援助の痕跡をたどれる。イスラエル当局によると同日の攻撃でハマスはイスラエル人1400人以上を殺害し、人質を連れ去った。
イスラエル南部のキブツ(農業共同体)ベエリへの襲撃(100人強を殺害)の最中に死亡したハマス戦闘員はパレスチナ内務省の給与小切手を所持していた。それによると、月給は5000シェケル(約18万5000円)とガザでは非常に高給だ。ガザの政府給与は主にカタールとパレスチナ自治政府が賄っている。
襲撃者が乗り捨てたピックアップトラックの1台からは、国連児童基金(ユニセフ)の救急キットも発見された。ユニセフにコメントを求めたが返答はなかったと、WSJ。
カタール当局者によると、ガザ地区への同国の支援はイスラエルや国連、米国と十分調整されたものであり、厳格な不正使用対策が講じられている。支援の「狙いは、ガザ地区の安定とパレスチナ人家庭の生活の質を維持するのに役立てることだ」と。
西側の当局者たちは、イランが武器や情報の提供に加え、ここ数年は年間約1億ドルをハマスの軍事活動専用の資金として与えていると話す。
「イランは広い意味でこの攻撃に加担している。ハマス軍事部門の資金源の大半を提供しているからだ」。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はハマスによる攻撃後、記者団にそう語ったのだそうです。
「2007年以降、領土支配のおかげで彼らは徴税し、金を巻き上げられるようになった」。米財務省の元副次官補(情報・分析担当)で現在はワシントン近東政策研究所に在籍するマシュー・レビット氏はそう指摘。
一方、イスラエル政府はハマスが攻撃拠点にできないよう、何年もの間ガザ地区への出入りを制限した。
ハマスとイスラエルは暴力の応酬を繰り返し、2014年に大規模な衝突が発生。パレスチナ自治政府によると、空爆や地上戦を含めたガザ地区の死者は2200人、破壊された家屋は1万1000棟、被害額は推定44億ドルだったのだそうです。
各国はガザ再建に35億ドルの拠出を約束。だが湾岸諸国の主な支援国の思惑が交錯したことなどで支払いは遅れた。
支援に伴い、国連、イスラエル、パレスチナ自治政府の三者は「デュアルユース(軍民両用可能な)」物資がガザに運び込まれるのを監視するシステムを構築。
このシステムは「ガザ再建メカニズム」と呼ばれ、ガザの家屋・インフラの再建に効果を上げたと考えられている。だが同時に、ハマスの懐に入るものも含めてガザ地区に資材を売る闇市場を作り出した、と請負業者や資材を受け取った人々は言うと、WSJ。
2018年にはエジプトがシナイ半島とガザの間に新たな商業用の国境検問所を開設し、同メカニズムはほとんど無用になった。
「エジプトの関心は、ハマス支配下のガザ地区を自国の反政府勢力の温床にしないことにあった」と、2017~21年まで国連でガザとヨルダン川西岸地区を担当した、ジョナサン・リンカーン米ジョージタウン大学教授。
一方、パレスチナ自治政府は、ガザへの資金援助を減らしていた。ハマスに支配権の譲渡を迫るための危険な賭けだった。これはイスラエルを動揺させた。この動きが経済的痛みを増し、新たな衝突の火種になることを懸念したからだ。
イスラエルと国際社会はガザへの経済的圧力を和らげる方法を探り、カタールを頼みとした。同国の首都ドーハにはハマスの政治指導部がある。カタールはハマス職員の給与を支払い、貧困家庭に現金を配り、ガザの発電所の燃料費を提供するなどした。
「ハマスのガザ統治を助ければ、ハマスが一定の平穏で責任ある指導力を発揮し、テロ攻撃に手を染めなくなる、とわれわれは考えた」。イスラエル軍情報機関の元調査責任者ヨッシ・クーパーワッサー氏はそう語る。「その論理はハマスがテロ組織だという事実を完全に無視していた」。
現・元西側当局者は、ハマスは支配下に置く慈善団体(特に欧州の団体)からも相当な額の資金を集めていると指摘。
2021年にイスラエルとハマスの間で再び11日間の小競り合いが発生。ガザ地区の多くの住宅や事業所が破壊された。これを受け、イスラエルは暴力の高まりを防ぐためガザ支援を一段と強化。
最も重要なのは新たな労働許可証により大勢のガザ住民がイスラエルで仕事に就けるようになったことだと、WSJ。
数カ月後、ハマスは輸入品に新たな関税を課した。
米財務省の推計では、2022年までにハマスは外国で利益を得るための5億ドル相当の事業投資ポートフォリオをスーダン、トルコ、サウジアラビア、アルジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)などに保有していた。
ワシントン近東政策研究所のレビット氏によると、ハマスが現在、毎年数億ドルを得ていることが最近の調査で分かった。最多はイランからの資金、次いでガザ地区の税金となっているのだそうです。
「国際社会はハマスのガザ統治を支援する態勢を整え、資金がハマスの懐に流れ込むのを許した」。元イスラエル当局者のクーパーワッサー氏はそう指摘すると、WSJ。
テロ組織のハマスを育てたのは、国際社会だったのですね。
# 冒頭の画像は、ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏(右)とカタールの首都ドーハで会談するイランのアブドラヒアン外相
この花の名前は、シロヨメナ
↓よろしかったら、お願いします。
だが国際社会が――イスラエル自身でさえ――うかつにもハマスの財政をさまざまな面で助けていたという実態は、語られないままだった。ハマスは実効支配するパレスチナ自治区ガザで、人道支援をくすねたり、貿易開放により活発化した経済活動に課税したりして数千万ドルを調達していたと、WSJ。
ハマスに意図せず資金供給 西側のガザ支援が裏目に - WSJ 2023年 10月 23日 By Rory Jones, Ian Talley and Benoit Faucon (WSJと総称)
イスラム組織ハマスが今月、多数の人命を奪う奇襲攻撃をイスラエルに仕掛けた際、米国と同盟国は自分たちがテロ組織とみなすハマスにイランが資金を提供していると非難した。
だが国際社会が――イスラエル自身でさえ――うかつにもハマスの財政をさまざまな面で助けていたという実態は、語られないままだった。ハマスは実効支配するパレスチナ自治区ガザで、人道支援をくすねたり、貿易開放により活発化した経済活動に課税したりして数千万ドルを調達していた。独立系調査機関や西側の現・元治安当局者の話で明らかになった。
こうした資金の流れは、イスラエルと西側が2007年以降突きつけられている難問を浮き彫りにする。ハマスは同年、国際社会に認められたパレスチナ自治政府からガザ地区の支配権を奪い取った。その難問とは、どうすればイスラエルに対する暴力を助長することなく、ガザのパレスチナ住民を支援できるかというものだ。最近のハマスの相次ぐ攻撃は、国際社会にとってその綱渡りがいかに危ういかを示す。
国際的な援助は「本来人道上の目的で行われるが、お金は代替性があるため、住民に提供するはずの資金を、ハマスが軍事力を支えるために流用することも可能になる」。米財務省の国家安全保障担当高官を務めたアレックス・ザーダン氏はそう話す。
ジョー・バイデン大統領は18日、米国が1億ドル(約150億円)の人道支援を送ると発表。ガザ地区とヨルダン川西岸地区のパレスチナ住民に清潔な水や食料、医療品など必要な物資を提供するとした。同氏はイスラエルで行った演説の中でハマスに対し、世界中の国々がこの地域に送り込む人道支援を盗んだり流用したりしないよう警告した。
歴史に照らせば、こうした行為を取り締まるのは難しい。イスラエル政府は過去2年間、より多くのパレスチナ人労働者が同国で働けるようにしたが、結果的にハマスがガザでの税金を引き上げることを可能にした。エジプトはガザ地区との商業ルートを開き、物品の輸出入を促進したが、ハマスはこれにも課税した。
カタールは米政府の要請を受け、ガザ地区に毎月数千万ドルを提供した。大半は困窮した家庭に支給され、一部は政府で働くハマスの職員の給与に充てられた。だが、それ以外のカタールの資金はハマスの軍事活動に流用されたことが西側の情報活動で明らかになった、と西側の現・元治安当局者は言う。
国際社会もまた、国連機関が運営する学校や病院への資金提供を通じ、ハマスが支配地域の統治にかかる費用を実際には払わずにすむよう支援していた。
10月7日の攻撃で残された物から国際援助の痕跡をたどれる。イスラエル当局によると同日の攻撃でハマスはイスラエル人1400人以上を殺害し、人質を連れ去った。
イスラエル南部のキブツ(農業共同体)ベエリへの襲撃(100人強を殺害)の最中に死亡したハマス戦闘員はパレスチナ内務省の給与小切手を所持していた。殺りく現場の映像を集めているボランティアグループ「サウス・ファースト・レスポンダーズ」が投稿した写真で明らかになった。それによると、月給は5000シェケル(約18万5000円)とガザでは非常に高給だ。ガザの政府給与は主にカタールとパレスチナ自治政府が賄っている。
襲撃者が乗り捨てたピックアップトラックの1台からは、国連児童基金(ユニセフ)の救急キットも発見された。ユニセフにコメントを求めたが返答はなかった。
ハマスの広報担当ハゼム・カッセム氏は、ガザ統治に使用される財源は軍事部門とは別だと述べたが、資金源についてそれ以上のコメントを控えた。
カタール当局者によると、ガザ地区への同国の支援はイスラエルや国連、米国と十分調整されたものであり、厳格な不正使用対策が講じられている。支援の「狙いは、ガザ地区の安定とパレスチナ人家庭の生活の質を維持するのに役立てることだ」と同当局者は述べた。
西側の当局者たちは、イランが武器や情報の提供に加え、ここ数年は年間約1億ドルをハマスの軍事活動専用の資金として与えていると話す。
「イランは広い意味でこの攻撃に加担している。ハマス軍事部門の資金源の大半を提供しているからだ」。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はハマスによる攻撃後、記者団にそう語った。
イスラエルの首相官邸と国防省はコメントの求めに応じなかった。エジプト外務省、イランの国連代表部(ニューヨーク)もコメントの求めに応じなかった。
ハマスが16年前にガザを掌握した際、イスラエルや米国、国際社会にはハマスに利することなくガザ住民を支援する選択肢がほぼなかった。それまで国連機関やパレスチナ自治政府が協力して運営していた学校や病院など多くのサービスは、200万人のガザ住民を支えるために維持された。パレスチナ自治政府の主流派ファタハはガザを追い出されたが、政府予算の3分の1はガザの各種サービスに振り向けられた。ハマスによる支配は短命で終わると見込んでのことだった。
だがそうならなかった。ハマスは自ら公務員や警察官を雇い始め、独自の課税制度も設けた。しかしハマスが予算や歳出計画を公表したことは一度もない。
「2007年以降、領土支配のおかげで彼らは徴税し、金を巻き上げられるようになった」。米財務省の元副次官補(情報・分析担当)で現在はワシントン近東政策研究所に在籍するマシュー・レビット氏はそう指摘する。
一方、イスラエル政府はハマスが攻撃拠点にできないよう、何年もの間ガザ地区への出入りを制限した。
ハマスとイスラエルは暴力の応酬を繰り返し、2014年に大規模な衝突が発生した。パレスチナ自治政府によると、空爆や地上戦を含めたガザ地区の死者は2200人、破壊された家屋は1万1000棟、被害額は推定44億ドルだった。
各国はガザ再建に35億ドルの拠出を約束。だが湾岸諸国の主な支援国の思惑が交錯したことなどで支払いは遅れた。
支援に伴い、国連、イスラエル、パレスチナ自治政府の三者は「デュアルユース(軍民両用可能な)」物資がガザに運び込まれるのを監視するシステムを構築した。
このシステムは「ガザ再建メカニズム」と呼ばれ、ガザの家屋・インフラの再建に効果を上げたと考えられている。だが同時に、ハマスの懐に入るものも含めてガザ地区に資材を売る闇市場を作り出した、と請負業者や資材を受け取った人々は言う。
国連の広報担当者にコメントを求めたが返答を得られなかった。
2018年にはエジプトがシナイ半島とガザの間に新たな商業用の国境検問所を開設し、同メカニズムはほとんど無用になった。当時シナイ半島ではエジプト政府が反政府勢力の「イスラム国(IS)」と対峙(たいじ)していた。
「エジプトの関心は、ハマス支配下のガザ地区を自国の反政府勢力の温床にしないことにあった」。2017~21年まで国連でガザとヨルダン川西岸地区を担当し、現在は米ジョージタウン大学教授を務めるジョナサン・リンカーン氏はそう指摘する。「そのため(ガザの)経済支援にもある程度の関心はあったはずだ」
一方で、マフムード・アッバス議長率いるパレスチナ自治政府は、ガザへの資金援助を減らしていた。ハマスに支配権の譲渡を迫るための危険な賭けだった。これはイスラエルを動揺させた。この動きが経済的痛みを増し、新たな衝突の火種になることを懸念したからだ。
イスラエルと国際社会はガザへの経済的圧力を和らげる方法を探り、カタールを頼みとした。同国の首都ドーハにはハマスの政治指導部がある。カタールはハマス職員の給与を支払い、貧困家庭に現金を配り、ガザの発電所の燃料費を提供するなどした。
「ハマスのガザ統治を助ければ、ハマスが一定の平穏で責任ある指導力を発揮し、テロ攻撃に手を染めなくなる、とわれわれは考えた」。イスラエル軍情報機関の元調査責任者ヨッシ・クーパーワッサー氏はそう語る。「その論理はハマスがテロ組織だという事実を完全に無視していた」
支援がガザに流入し始めると、ハマスはたばこなどの輸入品に税金を課し、事業者から手数料を徴収した。パレスチナのメディアやガザ地区のエコノミストはそう話している。
ガザのエコノミスト、モハメド・アブ・ジャヤブ氏によると、ハマスは月に約4000万ドルの税金を徴収し、それは統治に使われたが、ハマスの軍事部門は独自の資金ルートを持っていた。
ガザでの慈善活動にも厳しい監視の目が向けられた。イスラエルは国際的キリスト教慈善団体「ワールド・ビジョン」のパレスチナ人職員を裁判にかけた。ガザ地区のプロジェクトに供与するはずの約5000万ドルの支援金をハマスに流した疑いがあった。
同慈善団体とワールド・ビジョン・インターナショナルのガザ支部長のモハメド・エル・ハラビ被告はこの容疑を否定。同被告は後に有罪判決を受け、テロ資金供与の罪で12年の実刑を言い渡された。
同団体の広報担当者は、ワールド・ビジョンはガザ地区で8年近く活動しておらず、モハメド被告に対する容疑を立証する実質的な証拠はないとし、同被告の上訴を支持する、と述べた。
現・元西側当局者は、ハマスは支配下に置く慈善団体(特に欧州の団体)からも相当な額の資金を集めていると指摘する。
2021年にイスラエルとハマスの間で再び11日間の小競り合いが発生。ガザ地区の多くの住宅や事業所が破壊された。これを受け、イスラエルは暴力の高まりを防ぐためガザ支援を一段と強化した。
同地区への輸入規制を緩和し、輸出を促進したほか、最も重要なのは新たな労働許可証により大勢のガザ住民がイスラエルで仕事に就けるようになったことだ。これはハマスの権力掌握後初めてだった。
数カ月後、ハマスは輸入品に新たな関税を課した。パレスチナのメディアによると、ハマスはイスラエル攻撃の直前に公務員の給与を引き下げた。
米財務省の推計では、2022年までにハマスは外国で利益を得るための5億ドル相当の事業投資ポートフォリオをスーダン、トルコ、サウジアラビア、アルジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)などに保有していた。
ワシントン近東政策研究所のレビット氏によると、ハマスが現在、毎年数億ドルを得ていることが最近の調査で分かった。最多はイランからの資金、次いでガザ地区の税金となっている。
「国際社会はハマスのガザ統治を支援する態勢を整え、資金がハマスの懐に流れ込むのを許した」。元イスラエル当局者のクーパーワッサー氏はそう指摘する。「誰もがそれを承知していた」
イスラム組織ハマスが今月、多数の人命を奪う奇襲攻撃をイスラエルに仕掛けた際、米国と同盟国は自分たちがテロ組織とみなすハマスにイランが資金を提供していると非難した。
だが国際社会が――イスラエル自身でさえ――うかつにもハマスの財政をさまざまな面で助けていたという実態は、語られないままだった。ハマスは実効支配するパレスチナ自治区ガザで、人道支援をくすねたり、貿易開放により活発化した経済活動に課税したりして数千万ドルを調達していた。独立系調査機関や西側の現・元治安当局者の話で明らかになった。
こうした資金の流れは、イスラエルと西側が2007年以降突きつけられている難問を浮き彫りにする。ハマスは同年、国際社会に認められたパレスチナ自治政府からガザ地区の支配権を奪い取った。その難問とは、どうすればイスラエルに対する暴力を助長することなく、ガザのパレスチナ住民を支援できるかというものだ。最近のハマスの相次ぐ攻撃は、国際社会にとってその綱渡りがいかに危ういかを示す。
国際的な援助は「本来人道上の目的で行われるが、お金は代替性があるため、住民に提供するはずの資金を、ハマスが軍事力を支えるために流用することも可能になる」。米財務省の国家安全保障担当高官を務めたアレックス・ザーダン氏はそう話す。
ジョー・バイデン大統領は18日、米国が1億ドル(約150億円)の人道支援を送ると発表。ガザ地区とヨルダン川西岸地区のパレスチナ住民に清潔な水や食料、医療品など必要な物資を提供するとした。同氏はイスラエルで行った演説の中でハマスに対し、世界中の国々がこの地域に送り込む人道支援を盗んだり流用したりしないよう警告した。
歴史に照らせば、こうした行為を取り締まるのは難しい。イスラエル政府は過去2年間、より多くのパレスチナ人労働者が同国で働けるようにしたが、結果的にハマスがガザでの税金を引き上げることを可能にした。エジプトはガザ地区との商業ルートを開き、物品の輸出入を促進したが、ハマスはこれにも課税した。
カタールは米政府の要請を受け、ガザ地区に毎月数千万ドルを提供した。大半は困窮した家庭に支給され、一部は政府で働くハマスの職員の給与に充てられた。だが、それ以外のカタールの資金はハマスの軍事活動に流用されたことが西側の情報活動で明らかになった、と西側の現・元治安当局者は言う。
国際社会もまた、国連機関が運営する学校や病院への資金提供を通じ、ハマスが支配地域の統治にかかる費用を実際には払わずにすむよう支援していた。
10月7日の攻撃で残された物から国際援助の痕跡をたどれる。イスラエル当局によると同日の攻撃でハマスはイスラエル人1400人以上を殺害し、人質を連れ去った。
イスラエル南部のキブツ(農業共同体)ベエリへの襲撃(100人強を殺害)の最中に死亡したハマス戦闘員はパレスチナ内務省の給与小切手を所持していた。殺りく現場の映像を集めているボランティアグループ「サウス・ファースト・レスポンダーズ」が投稿した写真で明らかになった。それによると、月給は5000シェケル(約18万5000円)とガザでは非常に高給だ。ガザの政府給与は主にカタールとパレスチナ自治政府が賄っている。
襲撃者が乗り捨てたピックアップトラックの1台からは、国連児童基金(ユニセフ)の救急キットも発見された。ユニセフにコメントを求めたが返答はなかった。
ハマスの広報担当ハゼム・カッセム氏は、ガザ統治に使用される財源は軍事部門とは別だと述べたが、資金源についてそれ以上のコメントを控えた。
カタール当局者によると、ガザ地区への同国の支援はイスラエルや国連、米国と十分調整されたものであり、厳格な不正使用対策が講じられている。支援の「狙いは、ガザ地区の安定とパレスチナ人家庭の生活の質を維持するのに役立てることだ」と同当局者は述べた。
西側の当局者たちは、イランが武器や情報の提供に加え、ここ数年は年間約1億ドルをハマスの軍事活動専用の資金として与えていると話す。
「イランは広い意味でこの攻撃に加担している。ハマス軍事部門の資金源の大半を提供しているからだ」。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はハマスによる攻撃後、記者団にそう語った。
イスラエルの首相官邸と国防省はコメントの求めに応じなかった。エジプト外務省、イランの国連代表部(ニューヨーク)もコメントの求めに応じなかった。
ハマスが16年前にガザを掌握した際、イスラエルや米国、国際社会にはハマスに利することなくガザ住民を支援する選択肢がほぼなかった。それまで国連機関やパレスチナ自治政府が協力して運営していた学校や病院など多くのサービスは、200万人のガザ住民を支えるために維持された。パレスチナ自治政府の主流派ファタハはガザを追い出されたが、政府予算の3分の1はガザの各種サービスに振り向けられた。ハマスによる支配は短命で終わると見込んでのことだった。
だがそうならなかった。ハマスは自ら公務員や警察官を雇い始め、独自の課税制度も設けた。しかしハマスが予算や歳出計画を公表したことは一度もない。
「2007年以降、領土支配のおかげで彼らは徴税し、金を巻き上げられるようになった」。米財務省の元副次官補(情報・分析担当)で現在はワシントン近東政策研究所に在籍するマシュー・レビット氏はそう指摘する。
一方、イスラエル政府はハマスが攻撃拠点にできないよう、何年もの間ガザ地区への出入りを制限した。
ハマスとイスラエルは暴力の応酬を繰り返し、2014年に大規模な衝突が発生した。パレスチナ自治政府によると、空爆や地上戦を含めたガザ地区の死者は2200人、破壊された家屋は1万1000棟、被害額は推定44億ドルだった。
各国はガザ再建に35億ドルの拠出を約束。だが湾岸諸国の主な支援国の思惑が交錯したことなどで支払いは遅れた。
支援に伴い、国連、イスラエル、パレスチナ自治政府の三者は「デュアルユース(軍民両用可能な)」物資がガザに運び込まれるのを監視するシステムを構築した。
このシステムは「ガザ再建メカニズム」と呼ばれ、ガザの家屋・インフラの再建に効果を上げたと考えられている。だが同時に、ハマスの懐に入るものも含めてガザ地区に資材を売る闇市場を作り出した、と請負業者や資材を受け取った人々は言う。
国連の広報担当者にコメントを求めたが返答を得られなかった。
2018年にはエジプトがシナイ半島とガザの間に新たな商業用の国境検問所を開設し、同メカニズムはほとんど無用になった。当時シナイ半島ではエジプト政府が反政府勢力の「イスラム国(IS)」と対峙(たいじ)していた。
「エジプトの関心は、ハマス支配下のガザ地区を自国の反政府勢力の温床にしないことにあった」。2017~21年まで国連でガザとヨルダン川西岸地区を担当し、現在は米ジョージタウン大学教授を務めるジョナサン・リンカーン氏はそう指摘する。「そのため(ガザの)経済支援にもある程度の関心はあったはずだ」
一方で、マフムード・アッバス議長率いるパレスチナ自治政府は、ガザへの資金援助を減らしていた。ハマスに支配権の譲渡を迫るための危険な賭けだった。これはイスラエルを動揺させた。この動きが経済的痛みを増し、新たな衝突の火種になることを懸念したからだ。
イスラエルと国際社会はガザへの経済的圧力を和らげる方法を探り、カタールを頼みとした。同国の首都ドーハにはハマスの政治指導部がある。カタールはハマス職員の給与を支払い、貧困家庭に現金を配り、ガザの発電所の燃料費を提供するなどした。
「ハマスのガザ統治を助ければ、ハマスが一定の平穏で責任ある指導力を発揮し、テロ攻撃に手を染めなくなる、とわれわれは考えた」。イスラエル軍情報機関の元調査責任者ヨッシ・クーパーワッサー氏はそう語る。「その論理はハマスがテロ組織だという事実を完全に無視していた」
支援がガザに流入し始めると、ハマスはたばこなどの輸入品に税金を課し、事業者から手数料を徴収した。パレスチナのメディアやガザ地区のエコノミストはそう話している。
ガザのエコノミスト、モハメド・アブ・ジャヤブ氏によると、ハマスは月に約4000万ドルの税金を徴収し、それは統治に使われたが、ハマスの軍事部門は独自の資金ルートを持っていた。
ガザでの慈善活動にも厳しい監視の目が向けられた。イスラエルは国際的キリスト教慈善団体「ワールド・ビジョン」のパレスチナ人職員を裁判にかけた。ガザ地区のプロジェクトに供与するはずの約5000万ドルの支援金をハマスに流した疑いがあった。
同慈善団体とワールド・ビジョン・インターナショナルのガザ支部長のモハメド・エル・ハラビ被告はこの容疑を否定。同被告は後に有罪判決を受け、テロ資金供与の罪で12年の実刑を言い渡された。
同団体の広報担当者は、ワールド・ビジョンはガザ地区で8年近く活動しておらず、モハメド被告に対する容疑を立証する実質的な証拠はないとし、同被告の上訴を支持する、と述べた。
現・元西側当局者は、ハマスは支配下に置く慈善団体(特に欧州の団体)からも相当な額の資金を集めていると指摘する。
2021年にイスラエルとハマスの間で再び11日間の小競り合いが発生。ガザ地区の多くの住宅や事業所が破壊された。これを受け、イスラエルは暴力の高まりを防ぐためガザ支援を一段と強化した。
同地区への輸入規制を緩和し、輸出を促進したほか、最も重要なのは新たな労働許可証により大勢のガザ住民がイスラエルで仕事に就けるようになったことだ。これはハマスの権力掌握後初めてだった。
数カ月後、ハマスは輸入品に新たな関税を課した。パレスチナのメディアによると、ハマスはイスラエル攻撃の直前に公務員の給与を引き下げた。
米財務省の推計では、2022年までにハマスは外国で利益を得るための5億ドル相当の事業投資ポートフォリオをスーダン、トルコ、サウジアラビア、アルジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)などに保有していた。
ワシントン近東政策研究所のレビット氏によると、ハマスが現在、毎年数億ドルを得ていることが最近の調査で分かった。最多はイランからの資金、次いでガザ地区の税金となっている。
「国際社会はハマスのガザ統治を支援する態勢を整え、資金がハマスの懐に流れ込むのを許した」。元イスラエル当局者のクーパーワッサー氏はそう指摘する。「誰もがそれを承知していた」
ハマスは2007年、国際社会に認められたパレスチナ自治政府からガザ地区の支配権を奪い取った。
イスラエルと西側が突きつけられている難問とは、どうすればイスラエルに対する暴力を助長することなく、ガザのパレスチナ住民を支援できるかというものだ。最近のハマスの相次ぐ攻撃は、国際社会にとってその綱渡りがいかに危ういかを示すと、WSJ。
国際的な援助は「本来人道上の目的で行われるが、お金は代替性があるため、住民に提供するはずの資金を、ハマスが軍事力を支えるために流用することも可能になる」。米財務省の国家安全保障担当高官を務めたアレックス・ザーダン氏はそう話すと。
バイデン大統領は18日、イスラエルで行った演説の中でハマスに対し、世界中の国々がこの地域に送り込む人道支援を盗んだり流用したりしないよう警告したと、WSJ。
イスラエル政府は過去2年間、より多くのパレスチナ人労働者が同国で働けるようにしたが、結果的にハマスがガザでの税金を引き上げることを可能にした。エジプトはガザ地区との商業ルートを開き、物品の輸出入を促進したが、ハマスはこれにも課税した。
カタールは米政府の要請を受け、ガザ地区に毎月数千万ドルを提供した。大半は困窮した家庭に支給され、一部は政府で働くハマスの職員の給与に充てられた。だが、それ以外のカタールの資金はハマスの軍事活動に流用されたことが西側の情報活動で明らかになった、と西側の現・元治安当局者は言う。
10月7日の攻撃で残された物から国際援助の痕跡をたどれる。イスラエル当局によると同日の攻撃でハマスはイスラエル人1400人以上を殺害し、人質を連れ去った。
イスラエル南部のキブツ(農業共同体)ベエリへの襲撃(100人強を殺害)の最中に死亡したハマス戦闘員はパレスチナ内務省の給与小切手を所持していた。それによると、月給は5000シェケル(約18万5000円)とガザでは非常に高給だ。ガザの政府給与は主にカタールとパレスチナ自治政府が賄っている。
襲撃者が乗り捨てたピックアップトラックの1台からは、国連児童基金(ユニセフ)の救急キットも発見された。ユニセフにコメントを求めたが返答はなかったと、WSJ。
カタール当局者によると、ガザ地区への同国の支援はイスラエルや国連、米国と十分調整されたものであり、厳格な不正使用対策が講じられている。支援の「狙いは、ガザ地区の安定とパレスチナ人家庭の生活の質を維持するのに役立てることだ」と。
西側の当局者たちは、イランが武器や情報の提供に加え、ここ数年は年間約1億ドルをハマスの軍事活動専用の資金として与えていると話す。
「イランは広い意味でこの攻撃に加担している。ハマス軍事部門の資金源の大半を提供しているからだ」。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はハマスによる攻撃後、記者団にそう語ったのだそうです。
「2007年以降、領土支配のおかげで彼らは徴税し、金を巻き上げられるようになった」。米財務省の元副次官補(情報・分析担当)で現在はワシントン近東政策研究所に在籍するマシュー・レビット氏はそう指摘。
一方、イスラエル政府はハマスが攻撃拠点にできないよう、何年もの間ガザ地区への出入りを制限した。
ハマスとイスラエルは暴力の応酬を繰り返し、2014年に大規模な衝突が発生。パレスチナ自治政府によると、空爆や地上戦を含めたガザ地区の死者は2200人、破壊された家屋は1万1000棟、被害額は推定44億ドルだったのだそうです。
各国はガザ再建に35億ドルの拠出を約束。だが湾岸諸国の主な支援国の思惑が交錯したことなどで支払いは遅れた。
支援に伴い、国連、イスラエル、パレスチナ自治政府の三者は「デュアルユース(軍民両用可能な)」物資がガザに運び込まれるのを監視するシステムを構築。
このシステムは「ガザ再建メカニズム」と呼ばれ、ガザの家屋・インフラの再建に効果を上げたと考えられている。だが同時に、ハマスの懐に入るものも含めてガザ地区に資材を売る闇市場を作り出した、と請負業者や資材を受け取った人々は言うと、WSJ。
2018年にはエジプトがシナイ半島とガザの間に新たな商業用の国境検問所を開設し、同メカニズムはほとんど無用になった。
「エジプトの関心は、ハマス支配下のガザ地区を自国の反政府勢力の温床にしないことにあった」と、2017~21年まで国連でガザとヨルダン川西岸地区を担当した、ジョナサン・リンカーン米ジョージタウン大学教授。
一方、パレスチナ自治政府は、ガザへの資金援助を減らしていた。ハマスに支配権の譲渡を迫るための危険な賭けだった。これはイスラエルを動揺させた。この動きが経済的痛みを増し、新たな衝突の火種になることを懸念したからだ。
イスラエルと国際社会はガザへの経済的圧力を和らげる方法を探り、カタールを頼みとした。同国の首都ドーハにはハマスの政治指導部がある。カタールはハマス職員の給与を支払い、貧困家庭に現金を配り、ガザの発電所の燃料費を提供するなどした。
「ハマスのガザ統治を助ければ、ハマスが一定の平穏で責任ある指導力を発揮し、テロ攻撃に手を染めなくなる、とわれわれは考えた」。イスラエル軍情報機関の元調査責任者ヨッシ・クーパーワッサー氏はそう語る。「その論理はハマスがテロ組織だという事実を完全に無視していた」。
現・元西側当局者は、ハマスは支配下に置く慈善団体(特に欧州の団体)からも相当な額の資金を集めていると指摘。
2021年にイスラエルとハマスの間で再び11日間の小競り合いが発生。ガザ地区の多くの住宅や事業所が破壊された。これを受け、イスラエルは暴力の高まりを防ぐためガザ支援を一段と強化。
最も重要なのは新たな労働許可証により大勢のガザ住民がイスラエルで仕事に就けるようになったことだと、WSJ。
数カ月後、ハマスは輸入品に新たな関税を課した。
米財務省の推計では、2022年までにハマスは外国で利益を得るための5億ドル相当の事業投資ポートフォリオをスーダン、トルコ、サウジアラビア、アルジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)などに保有していた。
ワシントン近東政策研究所のレビット氏によると、ハマスが現在、毎年数億ドルを得ていることが最近の調査で分かった。最多はイランからの資金、次いでガザ地区の税金となっているのだそうです。
「国際社会はハマスのガザ統治を支援する態勢を整え、資金がハマスの懐に流れ込むのを許した」。元イスラエル当局者のクーパーワッサー氏はそう指摘すると、WSJ。
テロ組織のハマスを育てたのは、国際社会だったのですね。
# 冒頭の画像は、ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏(右)とカタールの首都ドーハで会談するイランのアブドラヒアン外相
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