全米の大学でパレスチナ自治区ガザへのイスラエルの軍事行動を巡る抗議デモが広がっている。
大学生たちは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権(挙党一致内閣)の無差別殺戮を弾劾、即時完全停戦を要求。
一方、ユダヤ系学生からは、「抗議デモは反ユダヤ主義を増長させるものだ」と反発する者も出て、キャンパスは一触即発状態。
ユダヤ系億万長者からの寄付金なしに米大学はやっていけない。
世論調査では、米国人全体の58%がイスラエル支持で、若者の28%はパレスチナ支持、20%がイスラエル支持だと、米国在住のジャーナリスト、高濱 賛氏。
2023年10月7日、パレスチナ武装組織ハマスがイスラエル領に侵入、イスラエル人1410人を殺害し、204人を拉致している。
これに対し、イスラエル軍は空爆や地上軍の展開によってこれまでにガザ住民3万4000人以上を殺害した。
イスラエル軍の過剰防衛ともいえる行動に対し、国際社会からは「ジェノサイド」「無差別殺戮」といった批判が出ている。
SNSを通じて共鳴した大学生たちは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権(挙党一致内閣)の無差別殺戮を弾劾、即時完全停戦を要求していると、高濱氏。
まず東部アイビーリーグのコロンビア大学のパレスチナ系学生たちが立ち上がった。同キャンパスで4月18日、抗議集会を開いた。
これをきっかけに他の人種の学生、教職員らが参加、構内に野宿する者も出ていると、高濱氏。
一方、ユダヤ系学生の一部からは「ユダヤ人だということでハラスメントを受けている」として「抗議デモは反ユダヤ主義を増長させるものだ」と反発する者も出て、キャンパスは一触即発状態になったと。
大学当局の対応は様々で、コロンビア大学やUSC(南カリフォルニア大学)など私立大学は、キャンパス警察だけでなく市警まで導入して抗議集会参加者を排除。
学生側はこれに猛反発、緊張状態は今も続いている。
一方、UCLAなどの公立大学は、「言論の自由」と「治安秩序」を両立させるとして実力排除は避け、集会デモ、野宿を許しているのだそうです。
60年代のベトナム反戦時と今回とは根本的に違うと、高濱氏。
コロンビア大学は1960年代のベトナム戦争への反戦デモの発祥の地でもある。
当時、デモに参加したジェームズ・クネンが1968年に書いた「いちご白書」(The Strawberry Statement)は映画化され、大反響を呼んだ。
ベトナム戦争当時、徴兵されて戦死した若者は全戦死者(3万6954人)の32%(1万1946人)もおり、学生にとっては生きるか死ぬかの問題だった。
ところが、今回は自分たちの生命とは無関係であり、パレスチナ住民に対する殺戮にいても立ってもいられないという正義感が根底にあったと、高濱氏。
一方で、「SNSが親パレスチナ感情を学生に植え付けた」(トランプ支持派の米テレビ・コメンテーター)といった見方もあるとも。
世論調査では、現在進行中のイスラエル・ガザ戦争について18歳から29歳までの米国の若者の28%はパレスチナ支持、20%がイスラエル支持となっている。
米国人全体の58%がイスラエル支持(22%がパレスチナ支持)に比べると、大きな違いがあるのだそうです。
今回の反イスラエル運動は、果たして11月の大統領選で再選を目指すジョー・バイデン大統領にとってダメージになるかどうかは、現時点ではまだ分からないと、高濱氏。
ユダヤ系企業や個人から米大学に出される研究費、運用資金は計り知れないのだそうです。
例えば、ハーバード大学ケネディ行政大学院には女性向けアパレル大手「ビクトリアズ・シークレット」創業者、レスリー・ウェクスナー氏が過去30年間に5600万ドルを寄付した。
しかし、イスラエルの攻撃に抗議する同大学の学生グループ声明文を学長が批判しなかったとして寄付を中止すると言い出しているのだと。
USC(南カリフォルニア大学)ハリウッド界の重鎮、スティーブン・スピルバーグ氏が1000万ドル、億万長者のリー・リーバーマン氏が500万ドルと巨額の寄付金を出している。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にはローウエル・ミルケン氏がユダヤ音楽促進を目的に150万ドルをポンと出している。
ユダヤ系億万長者からの寄付金なしに米大学はやっていけないのであると、高濱氏。
パレスチナ支持の学生たちが、イスラエルの「ジェノサイド」を糾弾してユダヤ系億万長者からの寄付を受け取るなと言っても、大学経営上、おいそれとはいかないのである。
それに何よりも米アカデミア界を牛耳る「ユダヤ・ブレーン」は、原子爆弾開発から現在に至る物理、化学、先端技術に至るまで米国を超大国にしている核だとも。
今回の大学キャンパスでのパレスチナ支持運動に対して、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)スポークスマン、ジョン・カービー氏は
「米国政府は、抗議する学生の権利を尊重している。その一方で反ユダヤ的言動、ヘイト・クライム、暴力を伴う脅迫を断固糾弾する」
と。
イスラエルは、米国にとっては大西洋条約機構(NATO)メンバーに準ずる同盟国であり、米国の中東政策にとってのリンチピン(物事の要)。
イスラエル建国以降これまでに米国はイスラエルに対し、3179億ドルの経済軍事援助(うち軍事支援は1580億ドル)を行ってきた。
キャンパスにパレスチナの旗がなびいているからといって、いかにも学生たちがパレスチナを選んでいるというような錯覚を起こしてはならないと、高濱氏。
もしトラが姦しいトランプ前大統領はどう考えているのか。
4月29日、SNSで「Stop the protests now! 」という文を投稿したのだそうです。
バイデン、トランプ両氏ともに抗議デモについてはしばらく様子見。大統領選への影響を見極める姿勢だが、親パレスチナの若者票をユダヤ票と天秤にかけるそぶりは見せていない。
イスラエルへの緊急軍事支援法案は、民主、共和両党が一緒になって決めた法案で、バイデン氏が署名しているのだそうです。
AFP通信は、パレスチナ自治区ガザで交戦が続くイスラエルとの戦闘休止を巡り、イスラエル側が示した案についてハマスが間接交渉の仲介国エジプトに回答すると報道。
ハマス幹部はこの案に「大きな問題はない」と述べている。
停滞していた交渉が本格化する可能性が出てきたと、高濱氏。
ハマスに停戦協議を初提案 人質解放後、イスラエル大幅譲歩:時事ドットコム
ハマスは早急にイスラエルの休戦条件に返答を-ブリンケン米国務長官 - Bloomberg
今回のイスラエルのハマスへの攻撃は、冒頭に触れられていた通り、2023年10月7日、パレスチナ武装組織ハマスがイスラエル領に侵入、イスラエル人1410人を殺害し、204人を拉致した事へのイスラエルの反撃と人質の救出!
それに対し、ハマス側が一般市民を盾にし、人質を質に立て篭もってのが実態。イスラエルの反抗を、非人道的と喧伝し、自分達を防衛する戦術。非人道的なのはどちらか!
その戦術に嵌められず、喧嘩両成敗の姿勢を保つことが肝心と考えます。米国の一流大学の賢い人々がハマスの戦術に乗せられず、賢明な判断をされることを願います。
# 冒頭の画像は、パレスチナの旗を持って行進するコロンビア大学の学生
この花の名前は、一輪草
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
大学生たちは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権(挙党一致内閣)の無差別殺戮を弾劾、即時完全停戦を要求。
一方、ユダヤ系学生からは、「抗議デモは反ユダヤ主義を増長させるものだ」と反発する者も出て、キャンパスは一触即発状態。
ユダヤ系億万長者からの寄付金なしに米大学はやっていけない。
世論調査では、米国人全体の58%がイスラエル支持で、若者の28%はパレスチナ支持、20%がイスラエル支持だと、米国在住のジャーナリスト、高濱 賛氏。
米大学キャンパスで燃え上がる「ガザ無差別虐殺」糾弾のインパクト 大統領選に影響なしと両候補は言うが、動き始めた国際社会 | JBpress (ジェイビープレス) 2024.5.1(水) 高濱 賛
■ネタニヤフ政権批判、国際世論を動かす
全米の大学でパレスチナ自治区ガザへのイスラエルの軍事行動を巡る抗議デモが広がっている。
コロンビア大学やUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)ほか20校近くのキャンパスで約900人の学生、教職員が逮捕された(4月29日現在)
キャンパスの抗議:ガザのデモが続く中、米国中の大学で数百人が逮捕された
第三政党「緑の党」の大統領候補、ジル・スターン氏はワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)でデモ中に逮捕されている。
2023年10月7日、パレスチナ武装組織ハマスがイスラエル領に侵入、イスラエル人1410人を殺害し、204人を拉致している。
これに対し、イスラエル軍は空爆や地上軍の展開によってこれまでにガザ住民3万4000人以上を殺害した。
イスラエル軍の過剰防衛ともいえる行動に対し、国際社会からは「ジェノサイド」「無差別殺戮」といった批判が出ている。
しかし、イスラエル軍による殺戮は今現在続いている。
SNSを通じて共鳴した大学生たちは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権(挙党一致内閣)の無差別殺戮を弾劾、即時完全停戦を要求している。
まず東部アイビーリーグのコロンビア大学のパレスチナ系学生たちが立ち上がった。同キャンパスで4月18日、抗議集会を開いたのだ。
これをきっかけに他の人種の学生、教職員らが参加、構内に野宿する者も出ている。
パレスチナ住民弾圧に抗議するユダヤ系学生、知識人もいる。
このことは意外と報じられていない。そうしたスタンスをとるユダヤ系メディアもある。
一方、ユダヤ系学生の一部からは「ユダヤ人だということでハラスメントを受けている」として「抗議デモは反ユダヤ主義を増長させるものだ」と反発する者も出て、キャンパスは一触即発状態になった。
大学当局の対応は様々で、コロンビア大学やUSC(南カリフォルニア大学)など私立大学は、キャンパス警察だけでなく市警まで導入して抗議集会参加者を排除。
学生側はこれに猛反発、緊張状態は今も続いている。
一方、UCLAなどの公立大学は、「言論の自由」と「治安秩序」を両立させるとして実力排除は避け、集会デモ、野宿を許している。
(カリフォルニア大学は、2011年11月18日、デイビス校=UC Davis=で起こった学生の抗議デモで、キャンパス警察が催涙ガスを使って学生を逮捕し負傷者を出したとして訴えられ、100万ドルの罰金を支払った前例があり警察力導入には慎重になっている)
■60年代のベトナム反戦とは根本的に違う点
コロンビア大学は1960年代のベトナム戦争への反戦デモの発祥の地でもある。
当時、デモに参加したジェームズ・クネンが1968年に書いた「いちご白書」(The Strawberry Statement)は映画化され、大反響を呼んだ。
1960年代の反戦デモは当時のリンドン・ジョンソン政権の求心力を弱め、その後のベトナム停戦に向けたモメンタムになった。
ただ、当時と今回の抗議運動との間には大きな違いがある。
ベトナム戦争当時、徴兵されて戦死した若者は全戦死者(3万6954人)の32%(1万1946人)もおり、学生にとっては生きるか死ぬかの問題だった。
ところが、今回は自分たちの生命とは無関係であり、パレスチナ住民に対する殺戮にいても立ってもいられないという正義感が根底にあった。
こうした正義感に共鳴する動きはカナダの大学キャンパスにも飛火している(日本の学生はどんな反応を示しているのだろうか)。
若者たちはIdealist(理想主義者)であり、純粋なのだ。
一方で、「SNSが親パレスチナ感情を学生に植え付けた」(トランプ支持派の米テレビ・コメンテーター)といった見方もある。
世論調査では、現在進行中のイスラエル・ガザ戦争について18歳から29歳までの米国の若者の28%はパレスチナ支持、20%がイスラエル支持となっている。
米国人全体の58%がイスラエル支持(22%がパレスチナ支持)に比べると、大きな違いがある。
■喉から手が出るほど欲しいユダヤ系寄付金
今回の反イスラエル運動は、果たして11月の大統領選で再選を目指すジョー・バイデン大統領にとってダメージになるかどうか。
複雑な要因が絡み合っており、現時点ではまだ分からない。なぜか。
それは学生たちのパレスチナ支持は、ガザでの「ジェノサイド」即時停止を要求しているのであって、米・イスラエルの準NATO(北大西洋条約機構)同盟関係破棄を要求しているわけではないからだ。
(学生たちは、イスラエルと商業取引をしているユダヤ系企業・個人からの研究費寄付を拒否することも要求している。UCLAなどはこれを即、拒否している)
ユダヤ系企業や個人から米大学に出される研究費、運用資金は計り知れない。
例えば、ハーバード大学ケネディ行政大学院には女性向けアパレル大手「ビクトリアズ・シークレット」創業者、レスリー・ウェクスナー氏が過去30年間に5600万ドルを寄付した。
イスラエルの攻撃に抗議する同大学の学生グループ声明文を学長が批判しなかったとして寄付を中止すると言い出している。
USCにはハリウッド界の重鎮、スティーブン・スピルバーグ氏が1000万ドル、億万長者のリー・リーバーマン氏が500万ドルと巨額の寄付金を出している。
UCLAにはローウエル・ミルケン氏がユダヤ音楽促進を目的に150万ドルをポンと出している。
ユダヤ系億万長者からの寄付金なしに米大学はやっていけないのである。
パレスチナ支持の学生たちが、イスラエルの「ジェノサイド」を糾弾してユダヤ系億万長者からの寄付を受け取るなと言っても、大学経営上、おいそれとはいかないのである。
それに何よりも米アカデミア界を牛耳る「ユダヤ・ブレーン」は、原子爆弾開発から現在に至る物理、化学、先端技術に至るまで米国を超大国にしている核だ。
■「学生の抗議権利は尊重」という建前
今回の大学キャンパスでのパレスチナ支持運動に対して、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)スポークスマン、ジョン・カービー氏はこう言い切っている。
「米国政府は、抗議する学生の権利を尊重している。その一方で反ユダヤ的言動、ヘイト・クライム、暴力を伴う脅迫を断固糾弾する」
イスラエルは、米国にとっては大西洋条約機構(NATO)メンバーに準ずる同盟国であり、米国の中東政策にとってのリンチピン(物事の要)だ。
だからこそ、イスラエル建国以降これまでに米国はイスラエルに対し、3179億ドルの経済軍事援助(うち軍事支援は1580億ドル)を行ってきた。
両国間の貿易額は506億ドル。イスラエルから輸入するパール、ストーンメタル、オプティカル器具、医療器具、原子炉などは米ハイテク産業にとっては必要不可欠であり、両国の軍事産業は新兵器開発で切っても切れない関係にある。
特に、シスコシステムズ、インテル、モトローラなどはイスラエル製の部品で世界市場での競争力をつけているとされる。
そのイスラエルと、外交関係のないパレスチナと天秤にかけて「どちらをとるのか?」といったような論議などあるわけがない。
キャンパスにパレスチナの旗がなびいているからといって、いかにも学生たちがパレスチナを選んでいるというような錯覚を起こしてはならない。
■トランプは一言「Stop the protests now!」
一方、今やバイデン氏に対する共和党の反論の窓口になった感のするドナルド・トランプ前大統領はどう考えているのか。
トランプ氏は4月29日、SNSで「Stop the protests now!」という文を投稿した。
共和党のマイク・ジョンソン下院議長は4月25日、コロンビア大学を訪ね、抗議デモの中止を訴えたが、学生たちのブーイングに遭遇して退散している(何しに行ったのかは不明のままだ)。
バイデン、トランプ両氏ともに抗議デモについてはしばらく様子見。大統領選への影響を見極める姿勢だが、親パレスチナの若者票をユダヤ票と天秤にかけるそぶりは見せていない。
イスラエルへの緊急軍事支援法案は、民主、共和両党が一緒になって決めた法案である。それにバイデン氏が署名したのだ。
国際的には、学生の抗議デモはすでにインパクトを与えている。
国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相やハマス指導者らの逮捕状を発付するとの見方が強まっている。ニューヨーク・タイムズが4月28日に伝えた。
同紙によると、ネタニヤフ氏を含むイスラエル政府関係者がパレスチナ自治区ガザへの人道支援物資搬入を妨害し、2023年10月7日のハマスによる奇襲に対する過剰な反撃を行ったことが罪に問われる可能性があるという。
一方、ハマスの代表団が4月29日、エジプトに向けてカタールを出発した。
AFP通信は、パレスチナ自治区ガザで交戦が続くイスラエルとの戦闘休止を巡り、イスラエル側が示した案についてハマスが間接交渉の仲介国エジプトに回答すると報道。
ハマス幹部はこの案に「大きな問題はない」と述べている。
停滞していた交渉が本格化する可能性が出てきた。
バイデン、トランプ両氏の大統領選に向けた政治的駆け引きを横目に学生たちは国際情勢を突き動かし始めたかに見える。
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高濱 賛 Tato Takahama
米国在住のジャーナリスト
1941年生まれ、65年米カリフォルニア大学バークレー校卒業(国際関係論、ジャーナリズム専攻)。67年読売新聞入社。ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1997年同上級研究員。1998年パシフィック・リサーチ・インスティテュート(PRI、本部はサウスパサデナ)上級研究員、1999年同所長
■ネタニヤフ政権批判、国際世論を動かす
全米の大学でパレスチナ自治区ガザへのイスラエルの軍事行動を巡る抗議デモが広がっている。
コロンビア大学やUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)ほか20校近くのキャンパスで約900人の学生、教職員が逮捕された(4月29日現在)
キャンパスの抗議:ガザのデモが続く中、米国中の大学で数百人が逮捕された
第三政党「緑の党」の大統領候補、ジル・スターン氏はワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)でデモ中に逮捕されている。
2023年10月7日、パレスチナ武装組織ハマスがイスラエル領に侵入、イスラエル人1410人を殺害し、204人を拉致している。
これに対し、イスラエル軍は空爆や地上軍の展開によってこれまでにガザ住民3万4000人以上を殺害した。
イスラエル軍の過剰防衛ともいえる行動に対し、国際社会からは「ジェノサイド」「無差別殺戮」といった批判が出ている。
しかし、イスラエル軍による殺戮は今現在続いている。
SNSを通じて共鳴した大学生たちは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権(挙党一致内閣)の無差別殺戮を弾劾、即時完全停戦を要求している。
まず東部アイビーリーグのコロンビア大学のパレスチナ系学生たちが立ち上がった。同キャンパスで4月18日、抗議集会を開いたのだ。
これをきっかけに他の人種の学生、教職員らが参加、構内に野宿する者も出ている。
パレスチナ住民弾圧に抗議するユダヤ系学生、知識人もいる。
このことは意外と報じられていない。そうしたスタンスをとるユダヤ系メディアもある。
一方、ユダヤ系学生の一部からは「ユダヤ人だということでハラスメントを受けている」として「抗議デモは反ユダヤ主義を増長させるものだ」と反発する者も出て、キャンパスは一触即発状態になった。
大学当局の対応は様々で、コロンビア大学やUSC(南カリフォルニア大学)など私立大学は、キャンパス警察だけでなく市警まで導入して抗議集会参加者を排除。
学生側はこれに猛反発、緊張状態は今も続いている。
一方、UCLAなどの公立大学は、「言論の自由」と「治安秩序」を両立させるとして実力排除は避け、集会デモ、野宿を許している。
(カリフォルニア大学は、2011年11月18日、デイビス校=UC Davis=で起こった学生の抗議デモで、キャンパス警察が催涙ガスを使って学生を逮捕し負傷者を出したとして訴えられ、100万ドルの罰金を支払った前例があり警察力導入には慎重になっている)
■60年代のベトナム反戦とは根本的に違う点
コロンビア大学は1960年代のベトナム戦争への反戦デモの発祥の地でもある。
当時、デモに参加したジェームズ・クネンが1968年に書いた「いちご白書」(The Strawberry Statement)は映画化され、大反響を呼んだ。
1960年代の反戦デモは当時のリンドン・ジョンソン政権の求心力を弱め、その後のベトナム停戦に向けたモメンタムになった。
ただ、当時と今回の抗議運動との間には大きな違いがある。
ベトナム戦争当時、徴兵されて戦死した若者は全戦死者(3万6954人)の32%(1万1946人)もおり、学生にとっては生きるか死ぬかの問題だった。
ところが、今回は自分たちの生命とは無関係であり、パレスチナ住民に対する殺戮にいても立ってもいられないという正義感が根底にあった。
こうした正義感に共鳴する動きはカナダの大学キャンパスにも飛火している(日本の学生はどんな反応を示しているのだろうか)。
若者たちはIdealist(理想主義者)であり、純粋なのだ。
一方で、「SNSが親パレスチナ感情を学生に植え付けた」(トランプ支持派の米テレビ・コメンテーター)といった見方もある。
世論調査では、現在進行中のイスラエル・ガザ戦争について18歳から29歳までの米国の若者の28%はパレスチナ支持、20%がイスラエル支持となっている。
米国人全体の58%がイスラエル支持(22%がパレスチナ支持)に比べると、大きな違いがある。
■喉から手が出るほど欲しいユダヤ系寄付金
今回の反イスラエル運動は、果たして11月の大統領選で再選を目指すジョー・バイデン大統領にとってダメージになるかどうか。
複雑な要因が絡み合っており、現時点ではまだ分からない。なぜか。
それは学生たちのパレスチナ支持は、ガザでの「ジェノサイド」即時停止を要求しているのであって、米・イスラエルの準NATO(北大西洋条約機構)同盟関係破棄を要求しているわけではないからだ。
(学生たちは、イスラエルと商業取引をしているユダヤ系企業・個人からの研究費寄付を拒否することも要求している。UCLAなどはこれを即、拒否している)
ユダヤ系企業や個人から米大学に出される研究費、運用資金は計り知れない。
例えば、ハーバード大学ケネディ行政大学院には女性向けアパレル大手「ビクトリアズ・シークレット」創業者、レスリー・ウェクスナー氏が過去30年間に5600万ドルを寄付した。
イスラエルの攻撃に抗議する同大学の学生グループ声明文を学長が批判しなかったとして寄付を中止すると言い出している。
USCにはハリウッド界の重鎮、スティーブン・スピルバーグ氏が1000万ドル、億万長者のリー・リーバーマン氏が500万ドルと巨額の寄付金を出している。
UCLAにはローウエル・ミルケン氏がユダヤ音楽促進を目的に150万ドルをポンと出している。
ユダヤ系億万長者からの寄付金なしに米大学はやっていけないのである。
パレスチナ支持の学生たちが、イスラエルの「ジェノサイド」を糾弾してユダヤ系億万長者からの寄付を受け取るなと言っても、大学経営上、おいそれとはいかないのである。
それに何よりも米アカデミア界を牛耳る「ユダヤ・ブレーン」は、原子爆弾開発から現在に至る物理、化学、先端技術に至るまで米国を超大国にしている核だ。
■「学生の抗議権利は尊重」という建前
今回の大学キャンパスでのパレスチナ支持運動に対して、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)スポークスマン、ジョン・カービー氏はこう言い切っている。
「米国政府は、抗議する学生の権利を尊重している。その一方で反ユダヤ的言動、ヘイト・クライム、暴力を伴う脅迫を断固糾弾する」
イスラエルは、米国にとっては大西洋条約機構(NATO)メンバーに準ずる同盟国であり、米国の中東政策にとってのリンチピン(物事の要)だ。
だからこそ、イスラエル建国以降これまでに米国はイスラエルに対し、3179億ドルの経済軍事援助(うち軍事支援は1580億ドル)を行ってきた。
両国間の貿易額は506億ドル。イスラエルから輸入するパール、ストーンメタル、オプティカル器具、医療器具、原子炉などは米ハイテク産業にとっては必要不可欠であり、両国の軍事産業は新兵器開発で切っても切れない関係にある。
特に、シスコシステムズ、インテル、モトローラなどはイスラエル製の部品で世界市場での競争力をつけているとされる。
そのイスラエルと、外交関係のないパレスチナと天秤にかけて「どちらをとるのか?」といったような論議などあるわけがない。
キャンパスにパレスチナの旗がなびいているからといって、いかにも学生たちがパレスチナを選んでいるというような錯覚を起こしてはならない。
■トランプは一言「Stop the protests now!」
一方、今やバイデン氏に対する共和党の反論の窓口になった感のするドナルド・トランプ前大統領はどう考えているのか。
トランプ氏は4月29日、SNSで「Stop the protests now!」という文を投稿した。
共和党のマイク・ジョンソン下院議長は4月25日、コロンビア大学を訪ね、抗議デモの中止を訴えたが、学生たちのブーイングに遭遇して退散している(何しに行ったのかは不明のままだ)。
バイデン、トランプ両氏ともに抗議デモについてはしばらく様子見。大統領選への影響を見極める姿勢だが、親パレスチナの若者票をユダヤ票と天秤にかけるそぶりは見せていない。
イスラエルへの緊急軍事支援法案は、民主、共和両党が一緒になって決めた法案である。それにバイデン氏が署名したのだ。
国際的には、学生の抗議デモはすでにインパクトを与えている。
国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相やハマス指導者らの逮捕状を発付するとの見方が強まっている。ニューヨーク・タイムズが4月28日に伝えた。
同紙によると、ネタニヤフ氏を含むイスラエル政府関係者がパレスチナ自治区ガザへの人道支援物資搬入を妨害し、2023年10月7日のハマスによる奇襲に対する過剰な反撃を行ったことが罪に問われる可能性があるという。
一方、ハマスの代表団が4月29日、エジプトに向けてカタールを出発した。
AFP通信は、パレスチナ自治区ガザで交戦が続くイスラエルとの戦闘休止を巡り、イスラエル側が示した案についてハマスが間接交渉の仲介国エジプトに回答すると報道。
ハマス幹部はこの案に「大きな問題はない」と述べている。
停滞していた交渉が本格化する可能性が出てきた。
バイデン、トランプ両氏の大統領選に向けた政治的駆け引きを横目に学生たちは国際情勢を突き動かし始めたかに見える。
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高濱 賛 Tato Takahama
米国在住のジャーナリスト
1941年生まれ、65年米カリフォルニア大学バークレー校卒業(国際関係論、ジャーナリズム専攻)。67年読売新聞入社。ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1997年同上級研究員。1998年パシフィック・リサーチ・インスティテュート(PRI、本部はサウスパサデナ)上級研究員、1999年同所長
2023年10月7日、パレスチナ武装組織ハマスがイスラエル領に侵入、イスラエル人1410人を殺害し、204人を拉致している。
これに対し、イスラエル軍は空爆や地上軍の展開によってこれまでにガザ住民3万4000人以上を殺害した。
イスラエル軍の過剰防衛ともいえる行動に対し、国際社会からは「ジェノサイド」「無差別殺戮」といった批判が出ている。
SNSを通じて共鳴した大学生たちは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権(挙党一致内閣)の無差別殺戮を弾劾、即時完全停戦を要求していると、高濱氏。
まず東部アイビーリーグのコロンビア大学のパレスチナ系学生たちが立ち上がった。同キャンパスで4月18日、抗議集会を開いた。
これをきっかけに他の人種の学生、教職員らが参加、構内に野宿する者も出ていると、高濱氏。
一方、ユダヤ系学生の一部からは「ユダヤ人だということでハラスメントを受けている」として「抗議デモは反ユダヤ主義を増長させるものだ」と反発する者も出て、キャンパスは一触即発状態になったと。
大学当局の対応は様々で、コロンビア大学やUSC(南カリフォルニア大学)など私立大学は、キャンパス警察だけでなく市警まで導入して抗議集会参加者を排除。
学生側はこれに猛反発、緊張状態は今も続いている。
一方、UCLAなどの公立大学は、「言論の自由」と「治安秩序」を両立させるとして実力排除は避け、集会デモ、野宿を許しているのだそうです。
60年代のベトナム反戦時と今回とは根本的に違うと、高濱氏。
コロンビア大学は1960年代のベトナム戦争への反戦デモの発祥の地でもある。
当時、デモに参加したジェームズ・クネンが1968年に書いた「いちご白書」(The Strawberry Statement)は映画化され、大反響を呼んだ。
ベトナム戦争当時、徴兵されて戦死した若者は全戦死者(3万6954人)の32%(1万1946人)もおり、学生にとっては生きるか死ぬかの問題だった。
ところが、今回は自分たちの生命とは無関係であり、パレスチナ住民に対する殺戮にいても立ってもいられないという正義感が根底にあったと、高濱氏。
一方で、「SNSが親パレスチナ感情を学生に植え付けた」(トランプ支持派の米テレビ・コメンテーター)といった見方もあるとも。
世論調査では、現在進行中のイスラエル・ガザ戦争について18歳から29歳までの米国の若者の28%はパレスチナ支持、20%がイスラエル支持となっている。
米国人全体の58%がイスラエル支持(22%がパレスチナ支持)に比べると、大きな違いがあるのだそうです。
今回の反イスラエル運動は、果たして11月の大統領選で再選を目指すジョー・バイデン大統領にとってダメージになるかどうかは、現時点ではまだ分からないと、高濱氏。
ユダヤ系企業や個人から米大学に出される研究費、運用資金は計り知れないのだそうです。
例えば、ハーバード大学ケネディ行政大学院には女性向けアパレル大手「ビクトリアズ・シークレット」創業者、レスリー・ウェクスナー氏が過去30年間に5600万ドルを寄付した。
しかし、イスラエルの攻撃に抗議する同大学の学生グループ声明文を学長が批判しなかったとして寄付を中止すると言い出しているのだと。
USC(南カリフォルニア大学)ハリウッド界の重鎮、スティーブン・スピルバーグ氏が1000万ドル、億万長者のリー・リーバーマン氏が500万ドルと巨額の寄付金を出している。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にはローウエル・ミルケン氏がユダヤ音楽促進を目的に150万ドルをポンと出している。
ユダヤ系億万長者からの寄付金なしに米大学はやっていけないのであると、高濱氏。
パレスチナ支持の学生たちが、イスラエルの「ジェノサイド」を糾弾してユダヤ系億万長者からの寄付を受け取るなと言っても、大学経営上、おいそれとはいかないのである。
それに何よりも米アカデミア界を牛耳る「ユダヤ・ブレーン」は、原子爆弾開発から現在に至る物理、化学、先端技術に至るまで米国を超大国にしている核だとも。
今回の大学キャンパスでのパレスチナ支持運動に対して、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)スポークスマン、ジョン・カービー氏は
「米国政府は、抗議する学生の権利を尊重している。その一方で反ユダヤ的言動、ヘイト・クライム、暴力を伴う脅迫を断固糾弾する」
と。
イスラエルは、米国にとっては大西洋条約機構(NATO)メンバーに準ずる同盟国であり、米国の中東政策にとってのリンチピン(物事の要)。
イスラエル建国以降これまでに米国はイスラエルに対し、3179億ドルの経済軍事援助(うち軍事支援は1580億ドル)を行ってきた。
キャンパスにパレスチナの旗がなびいているからといって、いかにも学生たちがパレスチナを選んでいるというような錯覚を起こしてはならないと、高濱氏。
もしトラが姦しいトランプ前大統領はどう考えているのか。
4月29日、SNSで「Stop the protests now! 」という文を投稿したのだそうです。
バイデン、トランプ両氏ともに抗議デモについてはしばらく様子見。大統領選への影響を見極める姿勢だが、親パレスチナの若者票をユダヤ票と天秤にかけるそぶりは見せていない。
イスラエルへの緊急軍事支援法案は、民主、共和両党が一緒になって決めた法案で、バイデン氏が署名しているのだそうです。
AFP通信は、パレスチナ自治区ガザで交戦が続くイスラエルとの戦闘休止を巡り、イスラエル側が示した案についてハマスが間接交渉の仲介国エジプトに回答すると報道。
ハマス幹部はこの案に「大きな問題はない」と述べている。
停滞していた交渉が本格化する可能性が出てきたと、高濱氏。
ハマスに停戦協議を初提案 人質解放後、イスラエル大幅譲歩:時事ドットコム
ハマスは早急にイスラエルの休戦条件に返答を-ブリンケン米国務長官 - Bloomberg
今回のイスラエルのハマスへの攻撃は、冒頭に触れられていた通り、2023年10月7日、パレスチナ武装組織ハマスがイスラエル領に侵入、イスラエル人1410人を殺害し、204人を拉致した事へのイスラエルの反撃と人質の救出!
それに対し、ハマス側が一般市民を盾にし、人質を質に立て篭もってのが実態。イスラエルの反抗を、非人道的と喧伝し、自分達を防衛する戦術。非人道的なのはどちらか!
その戦術に嵌められず、喧嘩両成敗の姿勢を保つことが肝心と考えます。米国の一流大学の賢い人々がハマスの戦術に乗せられず、賢明な判断をされることを願います。
# 冒頭の画像は、パレスチナの旗を持って行進するコロンビア大学の学生
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA