米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=81ドルから83ドル台の間で推移している。先週に比べて価格のレンジが1ドルほど下方に推移している。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの主要メンバーであるイラクとカザフスタン、ロシアは減産目標を上回る生産を続けている。
ロシアは6月に減産を実施したものの、3カ国全体で年初に設定された割当量を日量数十万バレル上回る供給を続けている。
このこともあって、OPECプラスが望む水準にまで原油価格は上昇していない。
OPECプラスは今年10月以降、徐々に増産することを計画している。原油価格が伸び悩めば、OPECプラスの結束に亀裂が入る事態が想定されると、藤和彦氏。
直近の原油生産量は前週に比べて10万バレル増加し日量1330万バレルとなり、再び過去最高水準となっていると、藤氏。
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は9日、「世界の来年の原油需要は日量平均1億470万バレルで供給(同1億460万バレル)を上回る」との見方を示した。
OPECは前述の月報の中で従来の見通し(世界の今年の原油需要は前年比225万バレル増加、来年の原油需要は前年比185万バレル増加)を据え置いた。
一方、弱気の見方も出ている。
英石油大手BPは10日、「電気自動車(EV)などの普及など脱炭素の動きが加速することから、世界の原油需要は来年ピークを迎える可能性がある」との予測を示した。
原油需要の見通しにばらつきが生じている中、「中国を始めとするアジアの原油需要が鍵を握るのではないか」と考えていると、藤氏。
中国の今年上半期の原油輸入量は前年比20万バレル減の日量1108万バレルだった。下半期も前年割れすることが予想されており、中国の原油需要が世界を牽引する時代は終わった感がある。
インドの原油需要は日量約500万バレルと中国の3分の1程度に過ぎないのだそうです。
来年になるかどうかはわからないが、世界の原油需要がピークを迎えるのは時間の問題だと思うと、藤氏。
「需給状況にかんがみ、原油価格は下半期から下落トレンドに入る」と考えているが、産油国を巡る地政学リスクが依然として攪乱要因だとも。
ロシアの石油関連施設へのウクライナ軍のドローン攻撃が続いているが、市場はこれに反応しなくなっている。
戦闘開始から9カ月が過ぎた中東情勢。
「中東産原油供給が支障をきたす事態がこれから起きてしまうのではないか」と危惧していると、藤氏。
紅海を航行する船舶への妨害活動を続けているイエメンの親イラン武装組織フーシ派は7日、サウジアラビアが米国に協力すればサウジを攻撃すると警告したという。サウジアラビアの空港や港湾など重要拠点やインフラのドローン映像のビデオも公開された模様で、その中にはラス・タヌラ港が含まれているようだ。
具体的な攻撃ターゲットを示唆するかたちでフーシ派がサウジラビアに明確な敵意を示したのは、ガザ紛争勃発以降初めてなのだそうです。
ラス・タヌラ港には世界最大規模の石油貯蔵施設があるが、フーシ派は2021年3月に同港にドローン攻撃を仕掛けた「前科」がある。
攻撃能力を向上させているフーシ派が再び牙をむけば、日量600万バレルを誇るサウジアラビアの輸出能力が大きく毀損する可能性は排除できないと、藤氏。
5日に大統領選挙の決選投票が行われたイランの政情も心配だとも。
現在のイランの国家体制の起点は1979年のイスラム革命にある。王政支配に反発した民衆の蜂起が革命のエネルギーになったことから、「民衆の支持」が現体制を支える重要な柱。
大統領が直接投票で選出されることになっているが、ハメネイ氏の下、大統領の権限は縮小の一途を辿っているのだそうです。
現時点で「イランで再び革命が起きる」と断言するつもりはないが、45年前のイラン革命を契機に第2次石油危機が起こったことは歴史の事実だ。
イランの地政学リスクについてもこれまで以上の警戒が必要だろうと、藤氏。
今回の大統領選は、欧米と対立していた保守強硬派のライシ前大統領が5月にヘリコプター事故で急死したことを受けて行われた。
選挙戦でペゼシュキアン氏は、高い失業率やインフレを改善するためには「核合意」を立て直し、欧米に制裁を解除させることが必要だと主張した。
国際協調を重視する改革派のペゼシュキアン元保健相が、保守強硬派の候補を破って勝利した。対外融和を掲げる大統領は、ロウハニ師以来3年ぶりだ。体制に強い不満を持ち、変化を求めた民意の表れだと産経。
<主張>イラン新大統領 具体的行動で対話を開け 社説 - 産経ニュース
国政全般の決定権は、最高指導者のハメネイ師が握っている。大統領は行政府の長にすぎず、国会も保守強硬派が7割を占めている。
当初は有力候補とみなされなかったペゼシュキアン氏を選んだのはイラン国民だ。ハメネイ師ら指導部は、この事実を真摯(しんし)に受け止め、ペゼシュキアン氏の改革路線を阻むべきではないと、産経。
イランは、イスラム原理主義組織ハマスやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを支援し、ウクライナ侵略を続けるロシアに無人機を供給している。これら国際秩序を乱す行為もやめるべきである。
日本はイランと友好関係にある。米イラン双方に対話を促す外交努力が求められるとも。
ペゼシュキアン新大統領誕生で、融和が進むことを期待します。
# 冒頭の画像は、反イスラエル・反米国を掲げるフーシ派の支持者達
この花の名前は、ツユクサ
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月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの主要メンバーであるイラクとカザフスタン、ロシアは減産目標を上回る生産を続けている。
ロシアは6月に減産を実施したものの、3カ国全体で年初に設定された割当量を日量数十万バレル上回る供給を続けている。
このこともあって、OPECプラスが望む水準にまで原油価格は上昇していない。
OPECプラスは今年10月以降、徐々に増産することを計画している。原油価格が伸び悩めば、OPECプラスの結束に亀裂が入る事態が想定されると、藤和彦氏。
迫る原油需要ピークアウト、下期から原油価格は下落トレンドに…波乱要因はフーシ派のサウジ攻撃とイランの民衆蜂起 | JBpress (ジェイビープレス) 2024.7.12(金) 藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー
・原油需要のピークアウトが2025年にも訪れるとの見方が出ている。需給で見れば原油価格は今年下期から下落トレンドに入る可能性が高い。
・ただし、波乱要因が2つある。イスラム武装組織フーシ派がサウジアラビアを攻撃する可能性と、改革派が大統領に選ばれたイランの内政が混乱に陥る可能性だ。
・足元では地政学リスクは原油価格に大きな影響を及ぼしていないが、注意が必要だ。
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=81ドルから83ドル台の間で推移している。先週に比べて価格のレンジが1ドルほど下方に推移している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの主要メンバーであるイラクとカザフスタン、ロシアは減産目標を上回る生産を続けている。
OPECが7月10日に公表した月報によれば、ロシアは6月に減産を実施したものの、3カ国全体で年初に設定された割当量を日量数十万バレル上回る供給を続けている。
このこともあって、OPECプラスが望む水準にまで原油価格は上昇していない。
国際通貨基金(IMF)によれば、減産を主導しているサウジアラビアは大規模な政府支出を賄うために1バレル=100ドル近い原油価格を必要としている。
OPECプラスは今年10月以降、徐々に増産することを計画している。原油価格が伸び悩めば、OPECプラスの結束に亀裂が入る事態が想定される。
世界最大の原油産油国である米国では、ハリケーン「ベリル」がテキサス州に上陸したが、米国の原油生産への目立った影響はなかった。
直近の原油生産量は前週に比べて10万バレル増加し日量1330万バレルとなり、再び過去最高水準となっている。
需要面では主要機関の見通しの発表が相次いだ。
原油の需要は2025年にもピークアウトか
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は9日、「世界の来年の原油需要は日量平均1億470万バレルで供給(同1億460万バレル)を上回る」との見方を示した。
OPECは前述の月報の中で従来の見通し(世界の今年の原油需要は前年比225万バレル増加、来年の原油需要は前年比185万バレル増加)を据え置いた。「夏のドライブや休暇シーズンにより、輸送用燃料の需要が押し上げられる」というのがその理由だ。
主要機関が強気の見方を堅持する一方、弱気の見方も出ている。
英石油大手BPは10日、「電気自動車(EV)などの普及など脱炭素の動きが加速することから、世界の原油需要は来年ピークを迎える可能性がある」との予測を示した。
原油需要の見通しにばらつきが生じている中、筆者は「中国を始めとするアジアの原油需要が鍵を握るのではないか」と考えている。
中国の今年上半期の原油輸入量は前年比20万バレル減の日量1108万バレルだった。下半期も前年割れすることが予想されており、中国の原油需要が世界を牽引する時代は終わった感がある。「第2の中国」と期待されるインドの原油需要は日量約500万バレルと中国の3分の1程度に過ぎない。
来年になるかどうかはわからないが、世界の原油需要がピークを迎えるのは時間の問題だと思う。
筆者は「需給状況にかんがみ、原油価格は下半期から下落トレンドに入る」と考えているが、産油国を巡る地政学リスクが依然として攪乱要因だ。
フーシ派がサウジを攻撃する可能性
ロシアの石油関連施設へのウクライナ軍のドローン攻撃が続いているが、市場はこれに反応しなくなっている。
中東情勢に対する市場の懸念も和らぎつつある。
パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム組織ハマスによる停戦交渉が再開されており、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師も10日、「停戦交渉が成立すれば、イスラエルへの攻撃を停止する」と述べている。
戦闘開始から9カ月が過ぎ、中東情勢がようやく沈静化の方向に向かうことが期待されている。だが、筆者は「中東産原油供給が支障をきたす事態がこれから起きてしまうのではないか」と危惧している。
一部の中東メディアによると、紅海を航行する船舶への妨害活動を続けているイエメンの親イラン武装組織フーシ派は7日、サウジアラビアが米国に協力すればサウジを攻撃すると警告したという。サウジアラビアの空港や港湾など重要拠点やインフラのドローン映像のビデオも公開された模様で、その中にはラス・タヌラ港が含まれているようだ。
具体的な攻撃ターゲットを示唆するかたちでフーシ派がサウジラビアに明確な敵意を示したのは、ガザ紛争勃発以降初めてとみられる。
サウジアラビア東部に位置するラス・タヌラ港には世界最大規模の石油貯蔵施設があるが、フーシ派は2021年3月に同港にドローン攻撃を仕掛けた「前科」がある。当時の被害は軽微だったが、攻撃能力を向上させているフーシ派が再び牙をむけば、日量600万バレルを誇るサウジアラビアの輸出能力が大きく毀損する可能性は排除できない。
5日に大統領選挙の決選投票が行われたイランの政情も心配だ。
イランで民衆蜂起が起きるリスク
改革派のペゼシュキアン氏が大統領に選ばれたが、イランの実質的なトップは最高指導者ハメネイ氏のままであり、「イランは何も変わらない」との嘆き節が聞こえてくる。
現在のイランの国家体制の起点は1979年のイスラム革命にある。王政支配に反発した民衆の蜂起が革命のエネルギーになったことから、「民衆の支持」が現体制を支える重要な柱だ。このため、大統領が直接投票で選出されることになっているが、ハメネイ氏の下、大統領の権限は縮小の一途を辿っている。
民意をないがしろにする政策をとり続ければ、現状に不満を抱える民衆の怒りは高まるばかりだろう。
現時点で「イランで再び革命が起きる」と断言するつもりはないが、45年前のイラン革命を契機に第2次石油危機が起こったことは歴史の事実だ。
イランの地政学リスクについてもこれまで以上の警戒が必要だろう。
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藤 和彦(ふじ・かずひこ) 経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。
・原油需要のピークアウトが2025年にも訪れるとの見方が出ている。需給で見れば原油価格は今年下期から下落トレンドに入る可能性が高い。
・ただし、波乱要因が2つある。イスラム武装組織フーシ派がサウジアラビアを攻撃する可能性と、改革派が大統領に選ばれたイランの内政が混乱に陥る可能性だ。
・足元では地政学リスクは原油価格に大きな影響を及ぼしていないが、注意が必要だ。
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=81ドルから83ドル台の間で推移している。先週に比べて価格のレンジが1ドルほど下方に推移している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの主要メンバーであるイラクとカザフスタン、ロシアは減産目標を上回る生産を続けている。
OPECが7月10日に公表した月報によれば、ロシアは6月に減産を実施したものの、3カ国全体で年初に設定された割当量を日量数十万バレル上回る供給を続けている。
このこともあって、OPECプラスが望む水準にまで原油価格は上昇していない。
国際通貨基金(IMF)によれば、減産を主導しているサウジアラビアは大規模な政府支出を賄うために1バレル=100ドル近い原油価格を必要としている。
OPECプラスは今年10月以降、徐々に増産することを計画している。原油価格が伸び悩めば、OPECプラスの結束に亀裂が入る事態が想定される。
世界最大の原油産油国である米国では、ハリケーン「ベリル」がテキサス州に上陸したが、米国の原油生産への目立った影響はなかった。
直近の原油生産量は前週に比べて10万バレル増加し日量1330万バレルとなり、再び過去最高水準となっている。
需要面では主要機関の見通しの発表が相次いだ。
原油の需要は2025年にもピークアウトか
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は9日、「世界の来年の原油需要は日量平均1億470万バレルで供給(同1億460万バレル)を上回る」との見方を示した。
OPECは前述の月報の中で従来の見通し(世界の今年の原油需要は前年比225万バレル増加、来年の原油需要は前年比185万バレル増加)を据え置いた。「夏のドライブや休暇シーズンにより、輸送用燃料の需要が押し上げられる」というのがその理由だ。
主要機関が強気の見方を堅持する一方、弱気の見方も出ている。
英石油大手BPは10日、「電気自動車(EV)などの普及など脱炭素の動きが加速することから、世界の原油需要は来年ピークを迎える可能性がある」との予測を示した。
原油需要の見通しにばらつきが生じている中、筆者は「中国を始めとするアジアの原油需要が鍵を握るのではないか」と考えている。
中国の今年上半期の原油輸入量は前年比20万バレル減の日量1108万バレルだった。下半期も前年割れすることが予想されており、中国の原油需要が世界を牽引する時代は終わった感がある。「第2の中国」と期待されるインドの原油需要は日量約500万バレルと中国の3分の1程度に過ぎない。
来年になるかどうかはわからないが、世界の原油需要がピークを迎えるのは時間の問題だと思う。
筆者は「需給状況にかんがみ、原油価格は下半期から下落トレンドに入る」と考えているが、産油国を巡る地政学リスクが依然として攪乱要因だ。
フーシ派がサウジを攻撃する可能性
ロシアの石油関連施設へのウクライナ軍のドローン攻撃が続いているが、市場はこれに反応しなくなっている。
中東情勢に対する市場の懸念も和らぎつつある。
パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム組織ハマスによる停戦交渉が再開されており、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師も10日、「停戦交渉が成立すれば、イスラエルへの攻撃を停止する」と述べている。
戦闘開始から9カ月が過ぎ、中東情勢がようやく沈静化の方向に向かうことが期待されている。だが、筆者は「中東産原油供給が支障をきたす事態がこれから起きてしまうのではないか」と危惧している。
一部の中東メディアによると、紅海を航行する船舶への妨害活動を続けているイエメンの親イラン武装組織フーシ派は7日、サウジアラビアが米国に協力すればサウジを攻撃すると警告したという。サウジアラビアの空港や港湾など重要拠点やインフラのドローン映像のビデオも公開された模様で、その中にはラス・タヌラ港が含まれているようだ。
具体的な攻撃ターゲットを示唆するかたちでフーシ派がサウジラビアに明確な敵意を示したのは、ガザ紛争勃発以降初めてとみられる。
サウジアラビア東部に位置するラス・タヌラ港には世界最大規模の石油貯蔵施設があるが、フーシ派は2021年3月に同港にドローン攻撃を仕掛けた「前科」がある。当時の被害は軽微だったが、攻撃能力を向上させているフーシ派が再び牙をむけば、日量600万バレルを誇るサウジアラビアの輸出能力が大きく毀損する可能性は排除できない。
5日に大統領選挙の決選投票が行われたイランの政情も心配だ。
イランで民衆蜂起が起きるリスク
改革派のペゼシュキアン氏が大統領に選ばれたが、イランの実質的なトップは最高指導者ハメネイ氏のままであり、「イランは何も変わらない」との嘆き節が聞こえてくる。
現在のイランの国家体制の起点は1979年のイスラム革命にある。王政支配に反発した民衆の蜂起が革命のエネルギーになったことから、「民衆の支持」が現体制を支える重要な柱だ。このため、大統領が直接投票で選出されることになっているが、ハメネイ氏の下、大統領の権限は縮小の一途を辿っている。
民意をないがしろにする政策をとり続ければ、現状に不満を抱える民衆の怒りは高まるばかりだろう。
現時点で「イランで再び革命が起きる」と断言するつもりはないが、45年前のイラン革命を契機に第2次石油危機が起こったことは歴史の事実だ。
イランの地政学リスクについてもこれまで以上の警戒が必要だろう。
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藤 和彦(ふじ・かずひこ) 経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。
直近の原油生産量は前週に比べて10万バレル増加し日量1330万バレルとなり、再び過去最高水準となっていると、藤氏。
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は9日、「世界の来年の原油需要は日量平均1億470万バレルで供給(同1億460万バレル)を上回る」との見方を示した。
OPECは前述の月報の中で従来の見通し(世界の今年の原油需要は前年比225万バレル増加、来年の原油需要は前年比185万バレル増加)を据え置いた。
一方、弱気の見方も出ている。
英石油大手BPは10日、「電気自動車(EV)などの普及など脱炭素の動きが加速することから、世界の原油需要は来年ピークを迎える可能性がある」との予測を示した。
原油需要の見通しにばらつきが生じている中、「中国を始めとするアジアの原油需要が鍵を握るのではないか」と考えていると、藤氏。
中国の今年上半期の原油輸入量は前年比20万バレル減の日量1108万バレルだった。下半期も前年割れすることが予想されており、中国の原油需要が世界を牽引する時代は終わった感がある。
インドの原油需要は日量約500万バレルと中国の3分の1程度に過ぎないのだそうです。
来年になるかどうかはわからないが、世界の原油需要がピークを迎えるのは時間の問題だと思うと、藤氏。
「需給状況にかんがみ、原油価格は下半期から下落トレンドに入る」と考えているが、産油国を巡る地政学リスクが依然として攪乱要因だとも。
ロシアの石油関連施設へのウクライナ軍のドローン攻撃が続いているが、市場はこれに反応しなくなっている。
戦闘開始から9カ月が過ぎた中東情勢。
「中東産原油供給が支障をきたす事態がこれから起きてしまうのではないか」と危惧していると、藤氏。
紅海を航行する船舶への妨害活動を続けているイエメンの親イラン武装組織フーシ派は7日、サウジアラビアが米国に協力すればサウジを攻撃すると警告したという。サウジアラビアの空港や港湾など重要拠点やインフラのドローン映像のビデオも公開された模様で、その中にはラス・タヌラ港が含まれているようだ。
具体的な攻撃ターゲットを示唆するかたちでフーシ派がサウジラビアに明確な敵意を示したのは、ガザ紛争勃発以降初めてなのだそうです。
ラス・タヌラ港には世界最大規模の石油貯蔵施設があるが、フーシ派は2021年3月に同港にドローン攻撃を仕掛けた「前科」がある。
攻撃能力を向上させているフーシ派が再び牙をむけば、日量600万バレルを誇るサウジアラビアの輸出能力が大きく毀損する可能性は排除できないと、藤氏。
5日に大統領選挙の決選投票が行われたイランの政情も心配だとも。
現在のイランの国家体制の起点は1979年のイスラム革命にある。王政支配に反発した民衆の蜂起が革命のエネルギーになったことから、「民衆の支持」が現体制を支える重要な柱。
大統領が直接投票で選出されることになっているが、ハメネイ氏の下、大統領の権限は縮小の一途を辿っているのだそうです。
現時点で「イランで再び革命が起きる」と断言するつもりはないが、45年前のイラン革命を契機に第2次石油危機が起こったことは歴史の事実だ。
イランの地政学リスクについてもこれまで以上の警戒が必要だろうと、藤氏。
今回の大統領選は、欧米と対立していた保守強硬派のライシ前大統領が5月にヘリコプター事故で急死したことを受けて行われた。
選挙戦でペゼシュキアン氏は、高い失業率やインフレを改善するためには「核合意」を立て直し、欧米に制裁を解除させることが必要だと主張した。
国際協調を重視する改革派のペゼシュキアン元保健相が、保守強硬派の候補を破って勝利した。対外融和を掲げる大統領は、ロウハニ師以来3年ぶりだ。体制に強い不満を持ち、変化を求めた民意の表れだと産経。
<主張>イラン新大統領 具体的行動で対話を開け 社説 - 産経ニュース
国政全般の決定権は、最高指導者のハメネイ師が握っている。大統領は行政府の長にすぎず、国会も保守強硬派が7割を占めている。
当初は有力候補とみなされなかったペゼシュキアン氏を選んだのはイラン国民だ。ハメネイ師ら指導部は、この事実を真摯(しんし)に受け止め、ペゼシュキアン氏の改革路線を阻むべきではないと、産経。
イランは、イスラム原理主義組織ハマスやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを支援し、ウクライナ侵略を続けるロシアに無人機を供給している。これら国際秩序を乱す行為もやめるべきである。
日本はイランと友好関係にある。米イラン双方に対話を促す外交努力が求められるとも。
ペゼシュキアン新大統領誕生で、融和が進むことを期待します。
# 冒頭の画像は、反イスラエル・反米国を掲げるフーシ派の支持者達
この花の名前は、ツユクサ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
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