
米国の経済政策当局者はこの1年間、インフレを抑えながら景気後退は回避する「ソフトランディング(軟着陸)」の実現に専念してきた。だが、今では新たな操縦士のチームが針路修正を検討している。彼らはそれが米経済を「ハードランディング(強行着陸)」に向かわせる可能性があることを自ら認めていると、WSJ・ニック・ティミラオス。
トランプ大統領と側近たちはここ数日、貿易を巡る不確実性が民間部門の投資を冷え込ませるリスクが高まっているにもかかわらず、それを意に介さない考えを示していると、ニック・ティミラオス。
トランプ氏はFOXニュースが9日放送したインタビューで、景気後退に陥る可能性についての質問をかわした。「われわれが行っていることは非常に大きいので、移行期間がある」とし、「強い国を作ることが私の仕事だ。株式市場を見ているわけにはいかない」と述べたと。
その日遅く、大統領専用機「エアフォースワン」内でも、記者団に同じ発言を繰り返した。「関税はわが国が今までに行った中で最も素晴らしいものになる。わが国を再び豊かにする」と述べたと、ニック・ティミラオス。
トランプ氏のコメントは10日の米株式市場を混乱させた。ダウ工業株30種平均は前週末比2.1%安、S&P500種指数は2.7%安となった。ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は4%下落し、2022年以来の大幅な下げとなった。3指数はいずれも昨年11月の大統領選投票日の水準を下回った。
トランプ氏が、安定的に成長している経済と高値圏の株式市場を引き継いだのは確かだが、住宅セクターの停滞と労働市場の冷え込みという脆弱(ぜいじゃく)性も継承した。
投資家は、株価は昨年11月のトランプ氏の当選後に急騰し、投資家は第1次トランプ政権初年の2017年に起きたような減税と規制緩和の強気な組み合わせを予想。
英市場調査会社グローバルデータTSロンバードのエコノミスト、ダリオ・パーキンス氏は「人々はトランプ氏が約束したことの良い面しか見ていなかった。それはほぼ消え去り、今やわれわれは景気後退に陥らないか監視する作業に戻っている」と話す。
アナリストたちは、トランプ氏とその側近のトーンがここ数日の間に変わったことを特に重要視。
トランプ氏は、成長鈍化の責任をバイデン前政権に押しつけて予防線を張ることに焦点を当てているように見えたと、ニック・ティミラオス。
保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)マイケル・ストレイン氏は「7日の時点で私の考えは、トランプ政権は自らの政策が経済を本当に減速させることを懸念し、下降中の経済を引き継いだと訴えるための布石を打とうとしている」と語る。
パーキンス氏は「今や、経済に何か問題が起きても構わないという感覚に近いものがある」と言う。「それは人々をかなり不安にさせている。なぜなら、まさに景気後退に陥るという段階に達した場合、それがすぐに過ぎ去る保証はないからだ」と。
市場経済は独自の均衡状態に落ち着く傾向がある。
それは、外部の出来事が経済を軌道から外れさせ、負のフィードバックのループを生み出すまで続くと。
JPモルガン・チェースのエコノミスト陣は10日、「米国の極端な政策」により景気後退リスクが30%から40%に上昇したと述べたのだそうです。
ゴールドマン・サックスは現在、他の米金融機関よりも弱気だ。同社のエコノミスト陣は12カ月以内に景気後退入りする確率を15%から20%に引き上げた。
「われわれはこれが景気の後退というよりも成長の恐怖だと考えている」とキー・プライベート・バンクのジョージ・マテイオ最高投資責任者(CIO)。
トランプ政権はここ数週間、連邦政府職員を削減し、最大級の貿易相手国に巨額の関税を課すという二正面の電撃戦で、政界と市場を驚かせた。同氏はすでに中国に大幅な追加関税を課しており、6年前に免除されていた消費者向け電子機器や衣料品などの幅広い商品が対象となっている。
「トランプ政権は米経済が関税引き上げを許容できる境界線を試そうとしているようだ。そして、その境界線がどこにあるのかよく分かっていない」とストレイン氏。
投資支出は「1-3月期に完全に停滞する可能性がある」とも。
リスクは山積している。例えば、連邦政府職員を削減しつつ失業率の持続的な上昇を回避しようとすれば、解雇された労働者の吸収を民間部門に頼ることになる。しかし、輸入する商品や材料に対する関税がどの程度上昇するか分からない状況で、民間企業にそれを行う準備はできているだろうか。トランプ政権は、「雇用と解雇に慎重」という危うい均衡を覆すリスクがあると、ニック・ティミラオス。
ストレイン氏は、不安を抱える労働者の買い控えが消費支出に及ぼす影響を懸念していると述べた。
一部のアナリストはトランプ氏のメッセージについて、貿易相手国との交渉における米国の立場を有利にし、債券投資家と米連邦準備制度理事会(FRB)に金利低下バイアスを維持するよう促す戦略的な取り組みの一環かもしれないと警鐘を鳴らすと、ニック・ティミラオス。
中国・欧州当局はすでに経済刺激策と防衛への支出拡大措置を講じている。
米投資銀行パイパー・サンドラーの米国政策調査責任者、アンディ・ラペリエール氏は「彼は自分の行い全てについて、真剣なのだとわれわれに伝えている。関税について、彼は骨の髄まで信じている」と述べたのだそうです。
ラペリエール氏は「景気が低迷すれば、トランプ氏は政策目標を再考するよりも、経済を混乱させる他の政策を検討する可能性の方がはるかに高い」とし、FRBに利下げを迫るなどのもっと攻撃的な試みに出るだろうとも述べた。
関税は少なくとも一時的には物価を押し上げる可能性が高いため、FRB関係者は、経済を守るために動くのが遅くなる可能性が高い。
「金融政策対応が速やかに取られ、その潜在的なフィードバックのループを断ち切れるか確信が持てない。そうした不安がある」とパーキンス氏。
二期目で後がないトランプ氏。中間選挙までの2年間でのレジェンド創りに焦っているのでしょうか。前期の様な深謀がなく、世界を敵にまわし孤立化。その隙をプーチンに付け込まれていると感じるのは、遊爺の素人の勘ぐり?
# 冒頭の画像は、トランプ氏とその側近

この花の名前は、スイセン
↓よろしかったら、お願いします。

遊爺さんの写真素材 - PIXTA
米経済の軟着陸、トランプ氏が阻止? 警戒する市場 - WSJ
トランプ政権から「シートベルトを締めよ」との新たなメッセージ
By ニック・ティミラオス 2025年3月11日
米国の経済政策当局者はこの1年間、インフレを抑えながら景気後退は回避する「ソフトランディング(軟着陸)」の実現に専念してきた。だが、今では新たな操縦士のチームが針路修正を検討している。彼らはそれが米経済を「ハードランディング(強行着陸)」に向かわせる可能性があることを自ら認めている。
ドナルド・トランプ大統領と側近たちはここ数日、貿易を巡る不確実性が民間部門の投資を冷え込ませるリスクが高まっているにもかかわらず、それを意に介さない考えを示している。彼らは支出と雇用の「デトックス(解毒)」が必要かもしれないと主張し、株価下落は大きな懸念材料ではなく、インフレは一時的に上昇する可能性があると述べている。
トランプ氏はFOXニュースが9日放送したインタビューで、景気後退に陥る可能性についての質問をかわした。「われわれが行っていることは非常に大きいので、移行期間がある」とし、「強い国を作ることが私の仕事だ。株式市場を見ているわけにはいかない」と述べた。
トランプ氏はその日遅く、この一連のコメントについて説明する機会を大統領専用機「エアフォースワン」内で得たが、そこでも記者団に同じ発言を繰り返した。「関税はわが国が今までに行った中で最も素晴らしいものになる。わが国を再び豊かにする」と述べた。
トランプ氏のコメントは10日の米株式市場を混乱させた。ダウ工業株30種平均は前週末比2.1%安、S&P500種指数は2.7%安となった。ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は4%下落し、2022年以来の大幅な下げとなった。3指数はいずれも昨年11月の大統領選投票日の水準を下回っている。
10日の取引終了後、デルタ航空は国内需要の鈍化を理由に1-3月期(第1四半期)の1株利益・売上高見通しを下方修正した。同社のエド・バスチャン最高経営責任者(CEO)はCNBCの番組で、2月に「かなり大きな」センチメントの変化があり、「消費者の支出が停滞し始めた」と述べた。
トランプ氏が、安定的に成長している経済と高値圏の株式市場を引き継いだのは確かだが、住宅セクターの停滞と労働市場の冷え込みという脆弱(ぜいじゃく)性も継承した。
投資家は年初、新政権が経済成長の加速に焦点を当てると予想していたため、これらのマイナス面に無関心だった。株価は昨年11月のトランプ氏の当選後に急騰し、投資家は第1次トランプ政権初年の2017年に起きたような減税と規制緩和の強気な組み合わせを予想した。
英市場調査会社グローバルデータTSロンバードのエコノミスト、ダリオ・パーキンス氏は「人々はトランプ氏が約束したことの良い面しか見ていなかった。それはほぼ消え去り、今やわれわれは景気後退に陥らないか監視する作業に戻っている」と話す。
アナリストたちは、トランプ氏とその側近のトーンがここ数日の間に変わったことを特に重要視している。トランプ政権は当初、インフレ高進が米国債利回りを上昇させるリスクを一蹴することや、成長鈍化の責任をバイデン前政権に押しつけて予防線を張ることに焦点を当てているように見えた。
保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)で経済政策研究責任者を務めるマイケル・ストレイン氏は「7日の時点で私の考えは、トランプ政権は自らの政策が経済を本当に減速させることを懸念し、下降中の経済を引き継いだと訴えるための布石を打とうとしている、というものだった」と語る。
直近のコメントは、それどころでは済まなかったようだ。
パーキンス氏は「今や、経済に何か問題が起きても構わないという感覚に近いものがある」と言う。「それは人々をかなり不安にさせている。なぜなら、まさに景気後退に陥るという段階に達した場合、それがすぐに過ぎ去る保証はないからだ」
市場経済は独自の均衡状態に落ち着く傾向がある。支出と雇用の増加がさらなる支出と雇用を維持する。それは、外部の出来事(戦争、石油価格ショック、借り入れコストの大幅な上昇など)が経済を軌道から外れさせ、負のフィードバックのループを生み出すまで続く。
JPモルガン・チェースのエコノミスト陣は10日、「米国の極端な政策」により景気後退リスクが30%から40%に上昇したと述べた。近年一貫して市場予想を上回る経済成長を予想してきたゴールドマン・サックスは現在、他の米金融機関よりも弱気だ。同社のエコノミスト陣は12カ月以内に景気後退入りする確率を15%から20%に引き上げた。
「われわれはこれが景気の後退というよりも成長の恐怖だと考えている」とキー・プライベート・バンクのジョージ・マテイオ最高投資責任者(CIO)は言う。「これは非常に人為的に作られた状況だ」
トランプ政権はここ数週間、連邦政府職員を削減し、最大級の貿易相手国に巨額の関税を課すという二正面の電撃戦で、政界と市場を驚かせた。同氏はすでに中国に大幅な追加関税を課しており、6年前に免除されていた消費者向け電子機器や衣料品などの幅広い商品が対象となっている。
「トランプ政権は米経済が関税引き上げを許容できる境界線を試そうとしているようだ。そして、その境界線がどこにあるのかよく分かっていない」とストレイン氏は述べた。
輸入品価格がどれだけ変動するかを予測するのは難しいため、投資支出は「1-3月期に完全に停滞する可能性がある」と同氏は述べた。
リスクは山積している。例えば、連邦政府職員を削減しつつ失業率の持続的な上昇を回避しようとすれば、解雇された労働者の吸収を民間部門に頼ることになる。しかし、輸入する商品や材料に対する関税がどの程度上昇するか分からない状況で、民間企業にそれを行う準備はできているだろうか。トランプ政権は複数の政策実験を同時に行うことで、新型コロナウイルス禍後の経済を特徴づけてきた、「雇用と解雇に慎重」という危うい均衡を覆すリスクがある。
ストレイン氏は、不安を抱える労働者(連邦政府に直接雇用されている人々や、連邦政府の資金・契約に依存する何百万人もの人々)の買い控えが消費支出に及ぼす影響を懸念していると述べた。ハーバード大学は10日、採用凍結を発表した。
一部のアナリストはトランプ氏のメッセージについて、貿易相手国との交渉における米国の立場を有利にし、債券投資家と米連邦準備制度理事会(FRB)に金利低下バイアスを維持するよう促す戦略的な取り組みの一環かもしれないと警鐘を鳴らす。トランプ氏の貿易・安全保障面での衝撃的な行動を受けて、中国・欧州当局はすでに経済刺激策と防衛への支出拡大措置を講じている。
アナリストらは過去2週間について、トランプ氏が株価急落に基づいて方針を変更する可能性が低いことが示されたため、ウォール街の期待値を再設定するのに役立ったと述べた。米投資銀行パイパー・サンドラーの米国政策調査責任者、アンディ・ラペリエール氏は「彼は自分の行い全てについて、真剣なのだとわれわれに伝えている。関税について、彼は骨の髄まで信じている」と述べた。
ラペリエール氏は、経済成長が落ち込む中で政策が穏健化せず、混沌(こんとん)に向かう可能性があることを、投資家が懸念するのは当然だと述べた。同氏は「景気が低迷すれば、トランプ氏は政策目標を再考するよりも、経済を混乱させる他の政策を検討する可能性の方がはるかに高い」とし、FRBに利下げを迫るなどのもっと攻撃的な試みに出るだろうと述べた。
関税は少なくとも一時的には物価を押し上げる可能性が高いため、FRB関係者は、今よりも金利が高くインフレが着実に低下していた昨年よりも、成長への潜在的な脅威から経済を守るために動くのが遅くなる可能性が高い。
「金融政策対応が速やかに取られ、その潜在的なフィードバックのループを断ち切れるか確信が持てない。そうした不安がある」とパーキンス氏は述べた。
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Nick Timiraos(ニック・ティミラオス)
ウォールストリートジャーナルの最高経済特派員であり、ワシントンを拠点としています。彼は連邦準備制度と米国の経済政策における他の主要な進展をカバーする責任があります。
2006年にジャーナルに参加。2008年にジャーナルの大統領選挙報道に貢献。
トランプ政権から「シートベルトを締めよ」との新たなメッセージ
By ニック・ティミラオス 2025年3月11日
米国の経済政策当局者はこの1年間、インフレを抑えながら景気後退は回避する「ソフトランディング(軟着陸)」の実現に専念してきた。だが、今では新たな操縦士のチームが針路修正を検討している。彼らはそれが米経済を「ハードランディング(強行着陸)」に向かわせる可能性があることを自ら認めている。
ドナルド・トランプ大統領と側近たちはここ数日、貿易を巡る不確実性が民間部門の投資を冷え込ませるリスクが高まっているにもかかわらず、それを意に介さない考えを示している。彼らは支出と雇用の「デトックス(解毒)」が必要かもしれないと主張し、株価下落は大きな懸念材料ではなく、インフレは一時的に上昇する可能性があると述べている。
トランプ氏はFOXニュースが9日放送したインタビューで、景気後退に陥る可能性についての質問をかわした。「われわれが行っていることは非常に大きいので、移行期間がある」とし、「強い国を作ることが私の仕事だ。株式市場を見ているわけにはいかない」と述べた。
トランプ氏はその日遅く、この一連のコメントについて説明する機会を大統領専用機「エアフォースワン」内で得たが、そこでも記者団に同じ発言を繰り返した。「関税はわが国が今までに行った中で最も素晴らしいものになる。わが国を再び豊かにする」と述べた。
トランプ氏のコメントは10日の米株式市場を混乱させた。ダウ工業株30種平均は前週末比2.1%安、S&P500種指数は2.7%安となった。ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は4%下落し、2022年以来の大幅な下げとなった。3指数はいずれも昨年11月の大統領選投票日の水準を下回っている。
10日の取引終了後、デルタ航空は国内需要の鈍化を理由に1-3月期(第1四半期)の1株利益・売上高見通しを下方修正した。同社のエド・バスチャン最高経営責任者(CEO)はCNBCの番組で、2月に「かなり大きな」センチメントの変化があり、「消費者の支出が停滞し始めた」と述べた。
トランプ氏が、安定的に成長している経済と高値圏の株式市場を引き継いだのは確かだが、住宅セクターの停滞と労働市場の冷え込みという脆弱(ぜいじゃく)性も継承した。
投資家は年初、新政権が経済成長の加速に焦点を当てると予想していたため、これらのマイナス面に無関心だった。株価は昨年11月のトランプ氏の当選後に急騰し、投資家は第1次トランプ政権初年の2017年に起きたような減税と規制緩和の強気な組み合わせを予想した。
英市場調査会社グローバルデータTSロンバードのエコノミスト、ダリオ・パーキンス氏は「人々はトランプ氏が約束したことの良い面しか見ていなかった。それはほぼ消え去り、今やわれわれは景気後退に陥らないか監視する作業に戻っている」と話す。
アナリストたちは、トランプ氏とその側近のトーンがここ数日の間に変わったことを特に重要視している。トランプ政権は当初、インフレ高進が米国債利回りを上昇させるリスクを一蹴することや、成長鈍化の責任をバイデン前政権に押しつけて予防線を張ることに焦点を当てているように見えた。
保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)で経済政策研究責任者を務めるマイケル・ストレイン氏は「7日の時点で私の考えは、トランプ政権は自らの政策が経済を本当に減速させることを懸念し、下降中の経済を引き継いだと訴えるための布石を打とうとしている、というものだった」と語る。
直近のコメントは、それどころでは済まなかったようだ。
パーキンス氏は「今や、経済に何か問題が起きても構わないという感覚に近いものがある」と言う。「それは人々をかなり不安にさせている。なぜなら、まさに景気後退に陥るという段階に達した場合、それがすぐに過ぎ去る保証はないからだ」
市場経済は独自の均衡状態に落ち着く傾向がある。支出と雇用の増加がさらなる支出と雇用を維持する。それは、外部の出来事(戦争、石油価格ショック、借り入れコストの大幅な上昇など)が経済を軌道から外れさせ、負のフィードバックのループを生み出すまで続く。
JPモルガン・チェースのエコノミスト陣は10日、「米国の極端な政策」により景気後退リスクが30%から40%に上昇したと述べた。近年一貫して市場予想を上回る経済成長を予想してきたゴールドマン・サックスは現在、他の米金融機関よりも弱気だ。同社のエコノミスト陣は12カ月以内に景気後退入りする確率を15%から20%に引き上げた。
「われわれはこれが景気の後退というよりも成長の恐怖だと考えている」とキー・プライベート・バンクのジョージ・マテイオ最高投資責任者(CIO)は言う。「これは非常に人為的に作られた状況だ」
トランプ政権はここ数週間、連邦政府職員を削減し、最大級の貿易相手国に巨額の関税を課すという二正面の電撃戦で、政界と市場を驚かせた。同氏はすでに中国に大幅な追加関税を課しており、6年前に免除されていた消費者向け電子機器や衣料品などの幅広い商品が対象となっている。
「トランプ政権は米経済が関税引き上げを許容できる境界線を試そうとしているようだ。そして、その境界線がどこにあるのかよく分かっていない」とストレイン氏は述べた。
輸入品価格がどれだけ変動するかを予測するのは難しいため、投資支出は「1-3月期に完全に停滞する可能性がある」と同氏は述べた。
リスクは山積している。例えば、連邦政府職員を削減しつつ失業率の持続的な上昇を回避しようとすれば、解雇された労働者の吸収を民間部門に頼ることになる。しかし、輸入する商品や材料に対する関税がどの程度上昇するか分からない状況で、民間企業にそれを行う準備はできているだろうか。トランプ政権は複数の政策実験を同時に行うことで、新型コロナウイルス禍後の経済を特徴づけてきた、「雇用と解雇に慎重」という危うい均衡を覆すリスクがある。
ストレイン氏は、不安を抱える労働者(連邦政府に直接雇用されている人々や、連邦政府の資金・契約に依存する何百万人もの人々)の買い控えが消費支出に及ぼす影響を懸念していると述べた。ハーバード大学は10日、採用凍結を発表した。
一部のアナリストはトランプ氏のメッセージについて、貿易相手国との交渉における米国の立場を有利にし、債券投資家と米連邦準備制度理事会(FRB)に金利低下バイアスを維持するよう促す戦略的な取り組みの一環かもしれないと警鐘を鳴らす。トランプ氏の貿易・安全保障面での衝撃的な行動を受けて、中国・欧州当局はすでに経済刺激策と防衛への支出拡大措置を講じている。
アナリストらは過去2週間について、トランプ氏が株価急落に基づいて方針を変更する可能性が低いことが示されたため、ウォール街の期待値を再設定するのに役立ったと述べた。米投資銀行パイパー・サンドラーの米国政策調査責任者、アンディ・ラペリエール氏は「彼は自分の行い全てについて、真剣なのだとわれわれに伝えている。関税について、彼は骨の髄まで信じている」と述べた。
ラペリエール氏は、経済成長が落ち込む中で政策が穏健化せず、混沌(こんとん)に向かう可能性があることを、投資家が懸念するのは当然だと述べた。同氏は「景気が低迷すれば、トランプ氏は政策目標を再考するよりも、経済を混乱させる他の政策を検討する可能性の方がはるかに高い」とし、FRBに利下げを迫るなどのもっと攻撃的な試みに出るだろうと述べた。
関税は少なくとも一時的には物価を押し上げる可能性が高いため、FRB関係者は、今よりも金利が高くインフレが着実に低下していた昨年よりも、成長への潜在的な脅威から経済を守るために動くのが遅くなる可能性が高い。
「金融政策対応が速やかに取られ、その潜在的なフィードバックのループを断ち切れるか確信が持てない。そうした不安がある」とパーキンス氏は述べた。
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Nick Timiraos(ニック・ティミラオス)
ウォールストリートジャーナルの最高経済特派員であり、ワシントンを拠点としています。彼は連邦準備制度と米国の経済政策における他の主要な進展をカバーする責任があります。
2006年にジャーナルに参加。2008年にジャーナルの大統領選挙報道に貢献。
トランプ大統領と側近たちはここ数日、貿易を巡る不確実性が民間部門の投資を冷え込ませるリスクが高まっているにもかかわらず、それを意に介さない考えを示していると、ニック・ティミラオス。
トランプ氏はFOXニュースが9日放送したインタビューで、景気後退に陥る可能性についての質問をかわした。「われわれが行っていることは非常に大きいので、移行期間がある」とし、「強い国を作ることが私の仕事だ。株式市場を見ているわけにはいかない」と述べたと。
その日遅く、大統領専用機「エアフォースワン」内でも、記者団に同じ発言を繰り返した。「関税はわが国が今までに行った中で最も素晴らしいものになる。わが国を再び豊かにする」と述べたと、ニック・ティミラオス。
トランプ氏のコメントは10日の米株式市場を混乱させた。ダウ工業株30種平均は前週末比2.1%安、S&P500種指数は2.7%安となった。ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は4%下落し、2022年以来の大幅な下げとなった。3指数はいずれも昨年11月の大統領選投票日の水準を下回った。
トランプ氏が、安定的に成長している経済と高値圏の株式市場を引き継いだのは確かだが、住宅セクターの停滞と労働市場の冷え込みという脆弱(ぜいじゃく)性も継承した。
投資家は、株価は昨年11月のトランプ氏の当選後に急騰し、投資家は第1次トランプ政権初年の2017年に起きたような減税と規制緩和の強気な組み合わせを予想。
英市場調査会社グローバルデータTSロンバードのエコノミスト、ダリオ・パーキンス氏は「人々はトランプ氏が約束したことの良い面しか見ていなかった。それはほぼ消え去り、今やわれわれは景気後退に陥らないか監視する作業に戻っている」と話す。
アナリストたちは、トランプ氏とその側近のトーンがここ数日の間に変わったことを特に重要視。
トランプ氏は、成長鈍化の責任をバイデン前政権に押しつけて予防線を張ることに焦点を当てているように見えたと、ニック・ティミラオス。
保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)マイケル・ストレイン氏は「7日の時点で私の考えは、トランプ政権は自らの政策が経済を本当に減速させることを懸念し、下降中の経済を引き継いだと訴えるための布石を打とうとしている」と語る。
パーキンス氏は「今や、経済に何か問題が起きても構わないという感覚に近いものがある」と言う。「それは人々をかなり不安にさせている。なぜなら、まさに景気後退に陥るという段階に達した場合、それがすぐに過ぎ去る保証はないからだ」と。
市場経済は独自の均衡状態に落ち着く傾向がある。
それは、外部の出来事が経済を軌道から外れさせ、負のフィードバックのループを生み出すまで続くと。
JPモルガン・チェースのエコノミスト陣は10日、「米国の極端な政策」により景気後退リスクが30%から40%に上昇したと述べたのだそうです。
ゴールドマン・サックスは現在、他の米金融機関よりも弱気だ。同社のエコノミスト陣は12カ月以内に景気後退入りする確率を15%から20%に引き上げた。
「われわれはこれが景気の後退というよりも成長の恐怖だと考えている」とキー・プライベート・バンクのジョージ・マテイオ最高投資責任者(CIO)。
トランプ政権はここ数週間、連邦政府職員を削減し、最大級の貿易相手国に巨額の関税を課すという二正面の電撃戦で、政界と市場を驚かせた。同氏はすでに中国に大幅な追加関税を課しており、6年前に免除されていた消費者向け電子機器や衣料品などの幅広い商品が対象となっている。
「トランプ政権は米経済が関税引き上げを許容できる境界線を試そうとしているようだ。そして、その境界線がどこにあるのかよく分かっていない」とストレイン氏。
投資支出は「1-3月期に完全に停滞する可能性がある」とも。
リスクは山積している。例えば、連邦政府職員を削減しつつ失業率の持続的な上昇を回避しようとすれば、解雇された労働者の吸収を民間部門に頼ることになる。しかし、輸入する商品や材料に対する関税がどの程度上昇するか分からない状況で、民間企業にそれを行う準備はできているだろうか。トランプ政権は、「雇用と解雇に慎重」という危うい均衡を覆すリスクがあると、ニック・ティミラオス。
ストレイン氏は、不安を抱える労働者の買い控えが消費支出に及ぼす影響を懸念していると述べた。
一部のアナリストはトランプ氏のメッセージについて、貿易相手国との交渉における米国の立場を有利にし、債券投資家と米連邦準備制度理事会(FRB)に金利低下バイアスを維持するよう促す戦略的な取り組みの一環かもしれないと警鐘を鳴らすと、ニック・ティミラオス。
中国・欧州当局はすでに経済刺激策と防衛への支出拡大措置を講じている。
米投資銀行パイパー・サンドラーの米国政策調査責任者、アンディ・ラペリエール氏は「彼は自分の行い全てについて、真剣なのだとわれわれに伝えている。関税について、彼は骨の髄まで信じている」と述べたのだそうです。
ラペリエール氏は「景気が低迷すれば、トランプ氏は政策目標を再考するよりも、経済を混乱させる他の政策を検討する可能性の方がはるかに高い」とし、FRBに利下げを迫るなどのもっと攻撃的な試みに出るだろうとも述べた。
関税は少なくとも一時的には物価を押し上げる可能性が高いため、FRB関係者は、経済を守るために動くのが遅くなる可能性が高い。
「金融政策対応が速やかに取られ、その潜在的なフィードバックのループを断ち切れるか確信が持てない。そうした不安がある」とパーキンス氏。
二期目で後がないトランプ氏。中間選挙までの2年間でのレジェンド創りに焦っているのでしょうか。前期の様な深謀がなく、世界を敵にまわし孤立化。その隙をプーチンに付け込まれていると感じるのは、遊爺の素人の勘ぐり?
# 冒頭の画像は、トランプ氏とその側近

この花の名前は、スイセン
↓よろしかったら、お願いします。

遊爺さんの写真素材 - PIXTA