遊爺雑記帳

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新型コロナで「世界の敵」になった中国の内憂外患

2020-04-29 23:57:08 | 武漢肺炎
 武漢肺炎の中国国内での感染は収まったとの習近平政権のアピールが強まっている今日ですが、同時に武漢での発生当初の隠蔽が今日の世界中のパンデミックを産んだとする対中非難の声も高まってきていますね。
 李克強首相に責任を負わそうとした習近平でしたが、自身の視察の姿勢から国内の支持を失い、第1四半期のGDP成長率が1992年以降では史上初のマイナス成長を記録、年間でも1976年以来のマイナス成長が懸念される状況。
 国内からも、国外からも突き上げられる習近平。苦しい局面が今後数年続くと指摘しておられるのは、ルポライターの安田峰俊氏。
 
新型コロナで「世界の敵」になった中国の内憂外患 「中国の夢」は潰え、世界の中国バッシングは不可避の流れ | JBpress(Japan Business Press) 2020.4.29(水) 安田 峰俊:ルポライター

 3月中旬以降、全世界で新型コロナウイルスの流行が猛威を振るったのとは対象的に、中国国内での流行はかなり鈍化した。たとえば4月25日の発表では、この日に中国全土で報告された新規感染者は11人で、うち5人が海外からの帰国・入国者の感染者。新たな死亡者や疑い例はなし・・・などとなっている。

 生活の緊張感も徐々に緩んできた。広東省深圳市を例にすれば、現在でも外出時のマスク着用や各地での検温の実施、職場や学校のリモートワークやリモート授業などは継続されているものの、すでに「広東省内」の旅行は解禁された。繁華街には人があふれ、以前の日常がジワジワと戻り始めているように見える。

 いっぽうで3月以降、
中国共産党はウイルスを抑え込んだ自国の体制の優秀さを国民向けに強調し、「中国は必ず『双勝利(ふたつの勝利)』ができる」といったプロパガンダを盛んに提唱するようになった。ここでいう「双勝利」とは、ウイルス流行(疫情)の克服と経済復興という2方面作戦をおこなうことだ。

 だが、仮にコロナ禍が比較的早い時期に収束したとしても、今回のパニックが中国に与えた影響ははかりしれない。今回の記事ではそれらをまとめつつ、
一足早い「アフターコロナ」の中国の姿を予測していこう。

成長率マイナス6.8%の衝撃
 まず、
特筆すべきは2020年第1四半期の中国のGDP成長率が、前年の同時期と比べてマイナス6.8%を記録したことだ。これは1月23日の武漢市の封鎖を皮切りに、2月いっぱいの期間を通じて中国全土の主要都市がほとんどロックダウンかそれに近い状態に置かれたためだろうが、マイナス6.8%は想定以上の数字と言っていい。

 もっとも、GDPの「マイナス成長」という言葉が中国において持つ特別なショッキングさについて、おそらく大多数の日本人は肌感覚として理解できないはずである。
 たとえば日本の場合、もちろん大規模なGDPの落ち込みはインパクトが大きいとはいえ、昨年の第4四半期の消費増税(マイナス6.3%)や、2009年の世界金融危機など、同様の経済後退をごく近い過去に何度も体験済みである。
 そもそも「失われた三十年」の低調な経済環境に慣れた日本人にとって、GDPのゼロ成長やマイナス成長は、未知の大災厄ではなく既視感のある悲劇にとどまる。非常に大変な事態には違いないが、それは大地震の経験と同じく、ある程度は被害規模を想定して心の準備ができる種類の出来事だ。

明日が必ず今日よりも豊かになった国
 いっぽう
中国の場合、四半期ごとの統計データが公表されるようになった1992年以降、GDPのマイナス成長は、なんと今回が史上初のことである。

 過去、中国はSARS流行の影響を最も受けた2003年の第2四半期でもプラス9.1%、世界金融危機のさなかの2009年第1四半期でもプラス6.4%の成長を記録している。いずれも中国社会が現在と比べてまだ貧しく発展の余地が大きかった時代とはいえ、中国の経済成長の勢いを実感する話だ。

 年間データも見てみたい。そもそも中国において、年間GDP成長率がマイナスを記録した直近の年は、なんと周恩来・毛沢東が死去して文化大革命最末期の混乱がピークに達した1976年までさかのぼる。なんと、あの六四天安門事件の発生後ですら、中国の通年の経済成長率はプラスを維持していた。

 
現代中国は、過去40年以上にわたって必ず経済が成長し、明日が必ず今日よりも豊かになる社会しか経験していないという、非常に特殊な環境に置かれた国家だったのだ。しかしコロナが暴れまわる2020年、中国経済は前代未聞のマイナス成長に見舞われる可能性さえ出てきた。

成長ストップと「中国の夢」の終焉
 過去(特に1989年の六四天安門事件の後)、
中国の経済成長神話は、中国共産党が自分たちの統治の正当性を国民にアピールするうえで最大の根拠になってきた

 すなわち、仮に中国が西側式の議会制民主主義体制を採用していればこれほどの発展が可能だっただろうか、中国共産党は中国人を豊かにできる唯一の存在である、ゆえに共産党は偉くて正しいのである――、などといった主張がなされてきたのだ。しかし、事実として40数年間にわたって経済成長を継続させた実績がある以上、この主張はそれなりの説得力を持っていた。

 
習近平政権のスローガンである「中国夢(チャイニーズ・ドリーム)」とは、そんな党の理屈のもとで中国の明るい未来を信じることを意味している。事実、中国の豊かさが末端の庶民にも実感されるようになった2010年代以降は、この主張を素直に受け入れる中国人がかなり増えた。

 特に
1990年代以降の豊かな中国で生まれ育った若い世代には、共産党体制に肯定的な傾向が強い。たとえ西側諸国に海外留学に行っても、議会制民主主義や言論の自由の意味を積極的に理解しようとする考えが薄く、中国の体制の正しさを疑わずに暮らし続けるような人が非常に多くなっていた

 だが、
今回のコロナ禍は、そんな「中国の夢」を支える経済成長神話をストップさせてしまった。すなわち、コロナ不況は単なる不景気現象ではなく、庶民に中国共産党政権のレーゾンデートル(存在理由)を疑わせかねない危険性を強くはらんだ非常事態なのだ。

 日本においてすら、バブル崩壊後やリーマンショック後に政権交代が起きて自民党が下野したように、社会混乱や大不況は庶民の現政権に対するいらだちや怒りを招きやすい。
コロナ禍の経済的影響が深刻になるとみられる今後数年間中国共産党はかなり深刻な「統治の危機」を迎えることになるだろう。

ここ一番で存在感が薄かった習近平
 
中国共産党の統治の危機は、経済問題以外の面でも深刻だ。たとえば今回の騒ぎを通じて、習近平の共産党内や中国社会の内部における求心力は確実に低下したと考えられる。

 習近平は2013年の政権発足以来、金融やネットセキュリティなどさまざまな分野で、既存の国家機関を頭越しにする形で「指導小組」と呼ばれる直轄組織を作り、その組長を兼任することで権力を固めてきた。これは習近平とは派閥を異にするナンバー2の李克強や、国務院系の官僚の権力を骨抜きにする目的のもとで進められたものでもあった。

 だが、
今回の新型コロナ流行に際して、1月末に新設された国務院の対策指導特別チームの組長は珍しく李克強になった。しかも習近平は1月28日にWHOのテドロス・アダノム事務局長と会談後、2月5日まで1週間にわたり表舞台に一度も顔を出さず、その後もウイルスが猛威を振るっていた2月いっぱいは非常に存在感が薄かった

 また、
李克強がはやくも1月27日に武漢を訪れたのに対して、習近平のコロナ関連での現場視察は2月10日にガチガチのガードをおこなったうえで北京市内の病院を訪れたのが最初だ。2020年の1〜2月時点で習近平がコロナ対策を李克強に丸投げしていたのは、この段階では当局が「失敗」する可能性が高いかとみられたコロナ問題の解決に自分が関わることで、責任を負うことを避けたためかとも思える。

アンチ習近平の世論強まる?
 習近平の存在感が復活するのは、中国国内のコロナ禍が一段落ついたとみられた3月10日に武漢市を訪問して、事実上のパニック終結宣言を出した前後からである。その後、中国のメディアには習近平に対する賛美が溢れるようになった。

 だが、
平時は独裁者然としていたのに大規模なピンチの際には他人に処理と責任を丸投げし、成果だけを横取りするようなトップに人心が集まらないことは想像に難くない。

 事実、2月末には習近平指導部の新型コロナウイルス感染対策をまとめたプロパガンダ・ドキュメンタリー『大国戦“疫”』が出版されたが、ほどなくネット書店から書籍が撤去されてしまった。これは習近平が「戦略的な先見性と卓越した指導力」を発揮して感染の封じ込めに成果を上げたと自画自賛する内容だったが、世論の反発があまりにも大きすぎたことで撤回された形だ。

 従来、強権的な習近平に対する不満の声は常にひそかに囁かれてきたが、習近平政権の権力が強すぎることで、メディアはもちろんネット上においてすら異論の表出は抑え込まれてきた。だが、
新型コロナ問題が深刻化した1月下旬以降、風向きがかなり変わった感がある。習近平の個人崇拝的なプロパガンダや、ピンチの際の腰砕けの姿勢に対して、言論統制の壁の下から批判的な意見が漏れ出すようになったのだ。

「世界の敵」中国
 ほかに、
新型コロナのパンデミックが中国にもたらす国際政治上の影響については、中国が主要各国から「世界の敵」として認定されていく点も無視できない

 新型コロナによる、英米両国をはじめとした主要国の経済的・社会的ダメージは天文学的である。各国の庶民レベルにおいても、自分の身近な人や著名人が生命を奪われたり、自分自身がコロナに感染していないかと不安を覚えたり、外出自粛による仕事や家庭内のトラブルに苦しんだりしている人は膨大な数にのぼっている。

 
理不尽な問題にぶつかると、原因を究明してそこに怒りの矛先を向けたがるのが人間の常だ。新型コロナは流行の初期段階で習近平政権の隠蔽体質が災いしたことで拡大した経緯がある。世界から中国が深く恨まれることは、その是非はともかく不可避の流れだろう。

 事実、アメリカのコロナ禍が深刻化しはじめた
3月中旬から、トランプ大統領の中国批判は非常に激烈になった。それのみならず、4月半ばには従来は中国に比較的穏健な接し方をしていたドイツのメルケル首相ですら、中国の情報公開の不透明さに苦言を呈する声明を発表している。イギリスのラーブ外相もメルケルと同様の苦言を呈している。

 コロナの原因究明について、
米仏独豪などの各国が連携して国際調査を検討しはじめたという話も出ている。中国はオーストラリアの動きに対して激怒し、将来的な中国人観光客の引き上げやワインの不買などをちらつかせて恫喝をはじめているが、コロナ以前の状況とは違ってオーストラリア側もそう簡単には折れないだろう。全地球規模のパンデミックを生んでしまった中国は、全世界からその責任を追及される段階に入りつつある

報復を呼ぶ「研究所漏洩」説
 現在、
新型コロナが人工的に作られた生物兵器だと主張するデマはさすがに減ったが、野生生物由来のウイルスがずさんな管理体制の研究所から漏洩したとする説については、トランプがそうした指摘を繰り返し、4月中旬にはNHKがこの疑惑を大きく報じるなどかなりの市民権を得るようになった(ちなみに私は2月24日時点でこの疑惑についてJBpress上で記事にしている。参考:「新型コロナ「バイオ兵器説」の裏に隠された真実とは」)。

 もちろん「研究所漏洩説」も、真偽のほどはかなり怪しい。だが、今回のコロナ禍は、アメリカの主観的な感覚では1941年の真珠湾攻撃や2001年の911同時多発テロに匹敵する、アジアの不気味な敵対勢力から自国に対する「理不尽な不意打ち攻撃」に近い(そうした思いは、欧州各国もほぼ同様だろう)。

 かつて911テロの「報復」という文脈のなかで、アフガニスタンに加えてイラクまで多国籍軍の攻撃を受けたことがある。今回のコロナ問題についても、ショッキングな被害の犯人探しに躍起になっている世界の世論にとっては、
ウイルスの「研究所漏洩説」程度の疑惑であっても、八つ当たり的に報復感情をぶつけて中国をバッシングする口実には充分だともいえる。

 さすがに核保有国である中国を相手に、すぐに戦争を仕掛ける国はないだろう。だが、
世界規模での中国叩きの流れは強まるはずだ。国内的な経済停滞と政権の危機、さらに国際的に「世界の敵」認定を受けて吊し上げされ・・・と、今後数年間の中国が置かれる環境はかなり厳しいものになる

 来年2021年の中国共産党建党100年と、2022年の冬季北京五輪を、中国は無事に迎えることができるだろうか。コロナの流行からは「一抜け」した中国だが、その前途はかなり多難である。


 3月以降、ウイルスを抑え込んだと、自国の体制の優秀さを国民向けに強調し、「中国は必ず『双勝利(ふたつの勝利)』ができる」といったプロパガンダを盛んに提唱するようになった習近平。
 ウイルス流行(疫情)の克服と経済復興という2方面作戦を展開し始めていますね。
 しかし、武漢の都市封鎖(ロックダウン)を解除したら、高速道路も駅も武漢から脱出する人々で大混乱といった現象が生じていました。
 日本でも武漢由来のコロナウイルスではなく、欧米由来のコロナウイルスが蔓延し始めていると言われていますが、峠を越したとされる中国や韓国では第二波の感染拡大が懸念されている状況ですね。

 中国で、四半期ごとの統計データが公表されるようになった1992年以降、史上初のGDPのマイナス成長を記録した中国経済。
 年間GDP成長率がマイナスを記録した直近の年は、周恩来・毛沢東が死去して文化大革命最末期の混乱がピークに達した1976年までさかのぼるのだそうですが、その可能性もある。
 
 過去40年以上にわたって必ず経済が成長し、明日が必ず今日よりも豊かになる社会しか経験していない中国。
 しかも、高い成長率の陰では貧富の差がありながらもそれぞれれが成長してきたので、格差への不満は目立たなかった。

 安田氏は、中国の経済成長神話は、中国共産党が自分たちの統治の正当性を国民にアピールするうえで最大の根拠になってきたとも。
 特に1990年代以降の豊かな中国で生まれ育った若い世代には、共産党体制に肯定的な傾向が強い。
 だが、今回のコロナ禍は、単なる不景気現象ではなく、庶民に中国共産党政権のレーゾンデートル(存在理由)を疑わせかねない危険性を強くはらんだ非常事態だと。

 中国共産党の統治の危機は、経済問題以外の面でも深刻だ。習近平の共産党内や中国社会の内部における求心力は確実に低下したと考えられると安田氏。
 
 定年制を廃止し、専制政治体制を築きつつあった習近平。
 今回の新型コロナ流行に際して、1月末に新設された国務院の対策指導特別チームの組長は珍しく李克強になったのですが、当局が「失敗」する可能性が高いかとみられたコロナ問題の解決に自分が関わることで、責任を負うことを避けたためかとも思えると安田氏。安田氏ならずとも世界中の誰もがそう思いましたし、現実に湖北省と武漢市のトップは交代させられましたね。
 中国、湖北省と武漢市のトップ更迭-新型ウイルス感染の中心地 - Bloomberg

 ところが、早々に現地視察に入った李克強と、雲隠れしていたものの批判の声が高まると、北京視察でお茶を濁しただけの習近平。(収束宣言のいいとこどりでは武漢に背理したが。)
 平時は独裁者然としていたのに大規模なピンチの際には他人に処理と責任を丸投げし、成果だけを横取りするようなトップに人心が集まらないことは想像に難くないと安田氏。

 国際政治上の影響については、中国が主要各国から「世界の敵」として認定されていく点も無視できないと。
 アメリカのコロナ禍が深刻化しはじめた3月中旬から、トランプ大統領の中国批判は非常に激烈になった。
 コロナの原因究明について、米仏独豪などの各国が連携して国際調査を検討しはじめたという話も出ているのだと。全地球規模のパンデミックを生んでしまった中国は、全世界からその責任を追及される段階に入りつつあるとも。
 
 更に安田氏は、国内的な経済停滞と政権の危機、さらに国際的に「世界の敵」認定を受けて吊し上げされ・・・と、今後数年間の中国が置かれる環境はかなり厳しいものになると。

 日本は、科学的な現状調査(PCR検査等)は制限し、ひたすら国民の自粛協力に頼る専門家委員会の提言に従う政府の政治決断の欠如のなか、大阪府や日本医師会・東京都医師会などの先行発案(科学的常識)が、医療崩壊と患者救済を進め、国民の多数の協力で、なんとかパンデミックを防げている状況ですね。
 連休で人の移動が収まるなか、何処まで感染・発症が収まるか。医療崩壊が防げるか。日本国民の社会意識の優秀さを示す時ですね。
 10万円一律配布も、自粛で減収となった方々の救済が本来の目的だが、急ぐためにとられた措置。自粛協力への支援は、引き続き政策決定し続けていただきたい。



 # 冒頭の画像は、新型コロナウイルス感染症の犠牲者を追悼し黙祷を捧げる、習近平、李克強をはじめとする中国の国家指導者たち


 

 この花の名前は、シュウメイギク


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写真素材のピクスタ


Fotolia




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