中国での金利上昇と株価急落で、「7月危機」説が注目されました。中国のバブル崩壊説が出て久しいのですが、今回こそやばいのか、まだバブルにはならないのか、両方の記事を見比べてみました。
中国の昨年末の公的債務残高は、シャドーバンキングなどの隠れ債務を含めると、GDP比100%になり、大規模な財政出動の余力がなくなってきていると言うのが、第一生命経済研究所の西濱氏。
日本の政府総債務残高は、2013年にはGDP比245%に達すると推定されているのですから、大きなことは言える立場にはないのですが、今回注目されているシャドーバンキングなどの中国の公的債務残高は巨額に達しているのです。
しかも、それが内需促進のための地方政府の投資の財源。
中国経済の成長値は、シャドーバンキングの資金による投資で支えられていたのです。その地方政府の投資は、都市化への投資であり、人が住んでいないマンション群の乱立を産んでいることは、諸兄がご承知のことです。
[世] 日本の政府債務残高の推移
上海株急落は、「7月バブル崩壊説」の予兆か - 遊爺雑記帳
これに対し、中国の高成長終焉論に異議ありと言うのが、日立(中国)の小久保総経理。
春を待つモチツツジ
↓よろしかったら、お願いします。
中国の昨年末の公的債務残高は、シャドーバンキングなどの隠れ債務を含めると、GDP比100%になり、大規模な財政出動の余力がなくなってきていると言うのが、第一生命経済研究所の西濱氏。
中国の危機対応に「次」はない:日経ビジネスオンライン
世界経済を牽引してきた新興国が揺れている。経済の減速に投資資金の流出が重なり、市場は波乱含みの展開が続く。新興国の政治・経済の分析を専門とする西濱徹・第一生命経済研究所主任エコノミストに、今後の見通しを聞いた。 (聞き手は渡辺康仁)
<中略>
━━シャドーバンキング(影の銀行)の膨張が金融市場を揺さぶりました。中国は日本のバブル期と同じような状況にあるのでしょうか。
西濱:似たようなところはあります。中国の政府内部でも日本のバブルとその後の不良債権処理の研究をしています。急に対処するとハードランディングになりかねないということは勉強している。ただし、共産党の組織内部の問題とも絡んできますから、一足飛びに答えを見いだすのは難しくなっています。
地方政府や国有企業のトップは共産党の幹部です。彼らは党内の序列を上げるために、自分のテリトリーをいかに成長させて、業績を上げるかということを考えています。合成の誤謬を繰り返した結果、マクロで見ると経済の過熱につながっていったのです。地方政府は独自財源が乏しく、シャドーバンキングに手を付けざるを得なかったという面もあります。税財政改革などを本気でやらないと、抜本的な解決にはならないでしょう。
━━米国がQEを縮小するという観測で市場が混乱しました。実際に縮小に動いたらまた波乱が起こりますか。
西濱:米国の短期金融市場を含めて資金需給に影響が出ることは考えられます。金利が上がれば米国にお金をとどめておく誘因が増える。マネーの巻き戻しに拍車がかかる可能性はありますが、バーナンキFRB議長が早いタイミングで縮小に言及したのは、市場との対話を重視したからだと思います。
━━金融緩和の「出口」の時期は日米欧で違いが出てきます。日本からのマネーはどうなるのでしょうか。
西濱:日本からも相当の資金がアジアなどに向かっていました。円安の流れの中で、資金を国外に分散する動きが続いています。日銀は長い期間、金融緩和を続けると言っていますから、距離的に近いアジアには資金が入りやすいと思います。安倍政権が成長戦略でアジアを重要視していることも、この流れを後押しします。
━━新興国の中でも中国の今後に注目が集まっています。成長ペースの鈍化は避けられませんか。
西濱:状況はかなり変わってきています。昨年末の段階では、成長率は何とか8%はクリアできるのではないかと見ていましたが、足元の状況を見ると難しくなっています。外需が振るわないのは想定済みですが、内需の回復ペースもかなり遅いと言えます。
背景にあるのは投資の抑制です。投資に支えられてきたのが過去十数年の中国経済の流れです。2000年代半ばにGDP(国内総生産)に占める個人消費と固定資産投資の割合が逆転し、その差は開き続けています。そこを抑制しようとしているのですから、必然的に成長率は下がることになります。
━━シャドーバンキングの規模はどの程度になるのでしょうか。
西濱:公式統計では出てきませんが、シャドーバンキングを通じた融資の総額はGDP比で5割を上回るという見方もあります。ここ数年の固定資産投資の拡大を見ると、そのくらいあってもおかしくはありません。
━━仮に融資を一気に縮小すると影響は大きいのではないですか。
西濱:金融システムリスクも意識しなければなりません。しかし、影響を考える上で難しいのは、中国の金融市場が閉鎖的で外国人投資家が自由に売買できる状況ではないということです。その意味で、国際金融市場への影響は不透明ですね。
ただし、海外の資金が全く入っていなかったということではありません。昨年の秋口から香港など保税地域向けの輸出が異常に増え、そのバックマージンとして中国に資金が入り込んでいるという話もあります。中国当局は市場に流動性を供給するなどして軟着陸を目指す姿勢を示しています。しかし、当局のスピード感と金融市場のスピード感には差があるように思えます。市場との対話能力を強化して、当局の意図を明確にする必要があるのではないでしょうか。
━━中国政府はリーマンショックの後に大規模な財政支出をしました。当時と比べると対処する余力は落ちていませんか。
西濱:やろうと思えば今回まではできる。しかし、次はない、ということだと思います。IMFによると、中国の昨年末の公的債務残高はGDP比で二十数%です。これなら安全圏だと思いますが、シャドーバンキングや年金関連などの隠れ債務なども含めるとGDP比で100%に届くとも言われています。そうなると一気に危険水域です。景気が減速しても対策は打てない。ソフトランディングを模索するにしても、隘路だと思いますね。
━━尖閣諸島を巡る対立で、日本企業には「チャイナ・プラス・ワン」の動きが広がっています。企業は中国に対してより慎重になった方がいいのでしょうか。
西濱:消費市場としての中国の重要性には大きな変化はありません。しかし、金融市場としての中国の見方は変える必要があります。中国に片足をどっぷり突っ込んできたのを、小指をかけるくらいにスタンスを変えるべきではないでしょうか。私自身も、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国に関する照会を受けることが増えています。ASEANを軸にどうアジアを見るのか、という流れになりつつあります。
━━とはいえ、ASEAN各国の市場も動揺しています。
西濱:ASEANの市場もトリプル安の様相でしたが、一番厄介なのはインドネシアです。経常赤字を抱えて資金が逃げやすい状況です。通貨が安くなると物価高につながるリスクもあります。フィリピンも株安、通貨安になりましたが、GDPの1割程度が海外からの送金ですので、通貨の下落にはプラスの面もあります。中長期では国内に雇用が生まれないことが最大のネックになるでしょう。
タイも輸出依存度が高い国ですから、バーツが安くなるのは悪い面だけではありません。円安の進行で円に対してはバーツ高になっていましたが、日本から部品を輸入して組み立てている企業にはプラスになっています。日本との関係では心地良い水準ではないでしょうか。
<後略>
世界経済を牽引してきた新興国が揺れている。経済の減速に投資資金の流出が重なり、市場は波乱含みの展開が続く。新興国の政治・経済の分析を専門とする西濱徹・第一生命経済研究所主任エコノミストに、今後の見通しを聞いた。 (聞き手は渡辺康仁)
<中略>
━━シャドーバンキング(影の銀行)の膨張が金融市場を揺さぶりました。中国は日本のバブル期と同じような状況にあるのでしょうか。
西濱:似たようなところはあります。中国の政府内部でも日本のバブルとその後の不良債権処理の研究をしています。急に対処するとハードランディングになりかねないということは勉強している。ただし、共産党の組織内部の問題とも絡んできますから、一足飛びに答えを見いだすのは難しくなっています。
地方政府や国有企業のトップは共産党の幹部です。彼らは党内の序列を上げるために、自分のテリトリーをいかに成長させて、業績を上げるかということを考えています。合成の誤謬を繰り返した結果、マクロで見ると経済の過熱につながっていったのです。地方政府は独自財源が乏しく、シャドーバンキングに手を付けざるを得なかったという面もあります。税財政改革などを本気でやらないと、抜本的な解決にはならないでしょう。
━━米国がQEを縮小するという観測で市場が混乱しました。実際に縮小に動いたらまた波乱が起こりますか。
西濱:米国の短期金融市場を含めて資金需給に影響が出ることは考えられます。金利が上がれば米国にお金をとどめておく誘因が増える。マネーの巻き戻しに拍車がかかる可能性はありますが、バーナンキFRB議長が早いタイミングで縮小に言及したのは、市場との対話を重視したからだと思います。
━━金融緩和の「出口」の時期は日米欧で違いが出てきます。日本からのマネーはどうなるのでしょうか。
西濱:日本からも相当の資金がアジアなどに向かっていました。円安の流れの中で、資金を国外に分散する動きが続いています。日銀は長い期間、金融緩和を続けると言っていますから、距離的に近いアジアには資金が入りやすいと思います。安倍政権が成長戦略でアジアを重要視していることも、この流れを後押しします。
━━新興国の中でも中国の今後に注目が集まっています。成長ペースの鈍化は避けられませんか。
西濱:状況はかなり変わってきています。昨年末の段階では、成長率は何とか8%はクリアできるのではないかと見ていましたが、足元の状況を見ると難しくなっています。外需が振るわないのは想定済みですが、内需の回復ペースもかなり遅いと言えます。
背景にあるのは投資の抑制です。投資に支えられてきたのが過去十数年の中国経済の流れです。2000年代半ばにGDP(国内総生産)に占める個人消費と固定資産投資の割合が逆転し、その差は開き続けています。そこを抑制しようとしているのですから、必然的に成長率は下がることになります。
━━シャドーバンキングの規模はどの程度になるのでしょうか。
西濱:公式統計では出てきませんが、シャドーバンキングを通じた融資の総額はGDP比で5割を上回るという見方もあります。ここ数年の固定資産投資の拡大を見ると、そのくらいあってもおかしくはありません。
━━仮に融資を一気に縮小すると影響は大きいのではないですか。
西濱:金融システムリスクも意識しなければなりません。しかし、影響を考える上で難しいのは、中国の金融市場が閉鎖的で外国人投資家が自由に売買できる状況ではないということです。その意味で、国際金融市場への影響は不透明ですね。
ただし、海外の資金が全く入っていなかったということではありません。昨年の秋口から香港など保税地域向けの輸出が異常に増え、そのバックマージンとして中国に資金が入り込んでいるという話もあります。中国当局は市場に流動性を供給するなどして軟着陸を目指す姿勢を示しています。しかし、当局のスピード感と金融市場のスピード感には差があるように思えます。市場との対話能力を強化して、当局の意図を明確にする必要があるのではないでしょうか。
━━中国政府はリーマンショックの後に大規模な財政支出をしました。当時と比べると対処する余力は落ちていませんか。
西濱:やろうと思えば今回まではできる。しかし、次はない、ということだと思います。IMFによると、中国の昨年末の公的債務残高はGDP比で二十数%です。これなら安全圏だと思いますが、シャドーバンキングや年金関連などの隠れ債務なども含めるとGDP比で100%に届くとも言われています。そうなると一気に危険水域です。景気が減速しても対策は打てない。ソフトランディングを模索するにしても、隘路だと思いますね。
━━尖閣諸島を巡る対立で、日本企業には「チャイナ・プラス・ワン」の動きが広がっています。企業は中国に対してより慎重になった方がいいのでしょうか。
西濱:消費市場としての中国の重要性には大きな変化はありません。しかし、金融市場としての中国の見方は変える必要があります。中国に片足をどっぷり突っ込んできたのを、小指をかけるくらいにスタンスを変えるべきではないでしょうか。私自身も、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国に関する照会を受けることが増えています。ASEANを軸にどうアジアを見るのか、という流れになりつつあります。
━━とはいえ、ASEAN各国の市場も動揺しています。
西濱:ASEANの市場もトリプル安の様相でしたが、一番厄介なのはインドネシアです。経常赤字を抱えて資金が逃げやすい状況です。通貨が安くなると物価高につながるリスクもあります。フィリピンも株安、通貨安になりましたが、GDPの1割程度が海外からの送金ですので、通貨の下落にはプラスの面もあります。中長期では国内に雇用が生まれないことが最大のネックになるでしょう。
タイも輸出依存度が高い国ですから、バーツが安くなるのは悪い面だけではありません。円安の進行で円に対してはバーツ高になっていましたが、日本から部品を輸入して組み立てている企業にはプラスになっています。日本との関係では心地良い水準ではないでしょうか。
<後略>
日本の政府総債務残高は、2013年にはGDP比245%に達すると推定されているのですから、大きなことは言える立場にはないのですが、今回注目されているシャドーバンキングなどの中国の公的債務残高は巨額に達しているのです。
しかも、それが内需促進のための地方政府の投資の財源。
中国経済の成長値は、シャドーバンキングの資金による投資で支えられていたのです。その地方政府の投資は、都市化への投資であり、人が住んでいないマンション群の乱立を産んでいることは、諸兄がご承知のことです。
[世] 日本の政府債務残高の推移
上海株急落は、「7月バブル崩壊説」の予兆か - 遊爺雑記帳
これに対し、中国の高成長終焉論に異議ありと言うのが、日立(中国)の小久保総経理。
「中国の高成長終焉論」に異議あり:日経ビジネスオンライン
中国経済は高度成長期を終え、調整期に入ったとの見方が強い。最近の株価の動きも不安定になっている。だが、これからも市場の拡大が続き、ビジネスチャンスもあると見て、依然として積極策を継続する日本企業もある。日立製作所の中国拠点、日立(中国)の小久保憲一・総経理に、その理由を聞いた。 (聞き手は宮澤 徹)
━━中国経済が減速し、バブル崩壊の瀬戸際に来ているとも言われます。
小久保:そうでしょうか。確かに、2010年末からの経済引き締め、インフレ抑制、投資減速は非常に大きな打撃でした。鉄道の建設や公共投資を抑制したので、私たちの中国ビジネスもかなりの影響を受けました。
ですが、ここに来て建設機械の受注が戻ってきました。今年の3月ぐらいに底を打って、需要が伸び始めたというリポートが、社内で続々と上がってきています。鉄道の建設と凍結が2年間も続いていましたが、動きが出てきました。
新しい分野としては、中国の各都市が一生懸命やろうとしているスマートシティが挙げられます。中央政府が打ち出した城鎮化(都市化)政策で、農村を都市に変える全国的なプロジェクトが始まりました。既に、200ぐらいの都市が私のところへ、スマートシティを作りたいから協力してほしい、と言ってきています。少子高齢化への対応、ヘルスケアビジネスの広がりなども注目です。いずれも日立が得意とする分野だけに、期待が持てます。
<中略>
━━でも、これまでと同じというわけにはいかないのでは。
小久保:そうした面はあります。建てたけれども誰も入居していないゴーストビルの問題は、その一例です。でも、今のところ、ビルはどんどん建っているので、私たちにとっては商品のエレベーターは売れるし、資金回収もできているんです。
もちろん、中国の成長の中身は今までとは変わっていきます。大きくなればいいというものではなくなるでしょう。その変化は、中国単独ではやりきれない部分がたくさんあります。経済が大きくなるからというよりも、成長の中身が変わっていく中で、その変化をサポートできる日立に対する期待が一段と強まるのではないでしょうか。
中国のバブルがはじけるという話は、ずいぶん前からあります。中国崩壊論は、1980年代からよく言われています。でも、中国政府は日本のバブルの状況などをよく勉強していて、(日本の)轍を踏まないように、うまくやっていると思います。いろいろなことが言われていますが、今のところ、中国はそんなにひどいことにはならないと考えています。
人件費が上がっても脱中国はない
━━中国の人件費がずいぶんと上がっています。その点から中国依存を減らそうという動きも出ています。
小久保:その問題については、業種によって事情は大きく違うと私は思っています。中国は人件費が上がったから、東南アジアへ事業を移すべきだという考え方もあります。それは、衣料業界のように安く簡単なものを作って、世界中に売っている業種では当てはまるでしょう。バングラデシュとか、ミャンマーの方が、中国よりはるかに安く作れますから。
日立グループも以前は、中国で安く作ってほかの国で売ることを目的に、中国へ進出していました。しかし、今では中国進出の目的は、中国市場に移ってきました。現地で作って売って儲けて、再投資してまた作る。それがうまく回せるのは、購買力も人口も大きい中国だからこそです。
人件費が上がったから東南アジアにシフト、というのは、日立については当てはまりません。成長が見込まれる中国市場を見据え、地産地消で、現地で作ってそこで売る、というビジネスをしていきます。
━━中国の中でも、内陸での事業の可能性をどう見ていますか。
小久保:中国での年間売上高を8200億円から1兆2000億円にしていく過程で、内陸の売上比率が高まっていくと思います。沿岸部でのビジネスと並行してやっていきますが、今までよりは内陸を重視していくということです。
特に、内陸のインフラ関係に期待しています。都市化政策のもと、農村を次々と都市にしていくわけですから、ビルはどんどん建つはずです。中国のビルは平均18階建てで、低いビルはあまりない。だからエレベーターは必須で、よく売れています。
━━具体的な取り組みは進んでいますか。
小久保:内陸市場を見据えて、四川省成都に新しいエレベーター工場を建てる予定です。これまでは上海や広州、天津など沿岸部が事業の中心でした。最近は、内陸でビルの建設が増えています。
水ビジネスも手を打っています。昨年、成都にある上水道事業会社を買収しました。ここは、内陸での水利施設の開発や建設、運営管理ノウハウを豊富に持っています。一方、日立は水処理や制御、省エネシステムの技術、エンジニアリング力を持っている。これから中国の内陸で、上下水施設の新設とか改造が数多くあります。両社の強みを融合させて事業を拡大していきます。
中国経済は高度成長期を終え、調整期に入ったとの見方が強い。最近の株価の動きも不安定になっている。だが、これからも市場の拡大が続き、ビジネスチャンスもあると見て、依然として積極策を継続する日本企業もある。日立製作所の中国拠点、日立(中国)の小久保憲一・総経理に、その理由を聞いた。 (聞き手は宮澤 徹)
━━中国経済が減速し、バブル崩壊の瀬戸際に来ているとも言われます。
小久保:そうでしょうか。確かに、2010年末からの経済引き締め、インフレ抑制、投資減速は非常に大きな打撃でした。鉄道の建設や公共投資を抑制したので、私たちの中国ビジネスもかなりの影響を受けました。
ですが、ここに来て建設機械の受注が戻ってきました。今年の3月ぐらいに底を打って、需要が伸び始めたというリポートが、社内で続々と上がってきています。鉄道の建設と凍結が2年間も続いていましたが、動きが出てきました。
新しい分野としては、中国の各都市が一生懸命やろうとしているスマートシティが挙げられます。中央政府が打ち出した城鎮化(都市化)政策で、農村を都市に変える全国的なプロジェクトが始まりました。既に、200ぐらいの都市が私のところへ、スマートシティを作りたいから協力してほしい、と言ってきています。少子高齢化への対応、ヘルスケアビジネスの広がりなども注目です。いずれも日立が得意とする分野だけに、期待が持てます。
<中略>
━━でも、これまでと同じというわけにはいかないのでは。
小久保:そうした面はあります。建てたけれども誰も入居していないゴーストビルの問題は、その一例です。でも、今のところ、ビルはどんどん建っているので、私たちにとっては商品のエレベーターは売れるし、資金回収もできているんです。
もちろん、中国の成長の中身は今までとは変わっていきます。大きくなればいいというものではなくなるでしょう。その変化は、中国単独ではやりきれない部分がたくさんあります。経済が大きくなるからというよりも、成長の中身が変わっていく中で、その変化をサポートできる日立に対する期待が一段と強まるのではないでしょうか。
中国のバブルがはじけるという話は、ずいぶん前からあります。中国崩壊論は、1980年代からよく言われています。でも、中国政府は日本のバブルの状況などをよく勉強していて、(日本の)轍を踏まないように、うまくやっていると思います。いろいろなことが言われていますが、今のところ、中国はそんなにひどいことにはならないと考えています。
人件費が上がっても脱中国はない
━━中国の人件費がずいぶんと上がっています。その点から中国依存を減らそうという動きも出ています。
小久保:その問題については、業種によって事情は大きく違うと私は思っています。中国は人件費が上がったから、東南アジアへ事業を移すべきだという考え方もあります。それは、衣料業界のように安く簡単なものを作って、世界中に売っている業種では当てはまるでしょう。バングラデシュとか、ミャンマーの方が、中国よりはるかに安く作れますから。
日立グループも以前は、中国で安く作ってほかの国で売ることを目的に、中国へ進出していました。しかし、今では中国進出の目的は、中国市場に移ってきました。現地で作って売って儲けて、再投資してまた作る。それがうまく回せるのは、購買力も人口も大きい中国だからこそです。
人件費が上がったから東南アジアにシフト、というのは、日立については当てはまりません。成長が見込まれる中国市場を見据え、地産地消で、現地で作ってそこで売る、というビジネスをしていきます。
━━中国の中でも、内陸での事業の可能性をどう見ていますか。
小久保:中国での年間売上高を8200億円から1兆2000億円にしていく過程で、内陸の売上比率が高まっていくと思います。沿岸部でのビジネスと並行してやっていきますが、今までよりは内陸を重視していくということです。
特に、内陸のインフラ関係に期待しています。都市化政策のもと、農村を次々と都市にしていくわけですから、ビルはどんどん建つはずです。中国のビルは平均18階建てで、低いビルはあまりない。だからエレベーターは必須で、よく売れています。
━━具体的な取り組みは進んでいますか。
小久保:内陸市場を見据えて、四川省成都に新しいエレベーター工場を建てる予定です。これまでは上海や広州、天津など沿岸部が事業の中心でした。最近は、内陸でビルの建設が増えています。
水ビジネスも手を打っています。昨年、成都にある上水道事業会社を買収しました。ここは、内陸での水利施設の開発や建設、運営管理ノウハウを豊富に持っています。一方、日立は水処理や制御、省エネシステムの技術、エンジニアリング力を持っている。これから中国の内陸で、上下水施設の新設とか改造が数多くあります。両社の強みを融合させて事業を拡大していきます。
「中国は、日本のバブル崩壊を研究しているから大丈夫」とは、元在中国大使の丹羽氏と同じ発言です。
在外大使と一流商社は、一体となって情報収集集・分析を行っていますが、一流製造業の総経理も当然交流されているでしょうから、同じ考えなのですね。
中国のバブルを警戒する論も、楽観視して投資を続ける論も全く同じ「地方の都市化」に注目しているのが面白い。
金融の専門家は、そこに不良債権が溜まり危機を招いていると指摘し、建設設備にかかわる製造業は、建設が進み需要が伸びると工場建設投資をするというのです。
どっちが正しいか、答えはいずれ出るでしょう。
日立の水技術の展開は興味深いですね。
中国の国内でも深刻な問題とされていますが、アフリカ他の新興国への技術輸出で欧州の企業を先頭に、グローバルなビジネス競争が展開されていますね。新幹線の川崎重工の轍を踏まない様、成功をお祈りします。
黄河断流 - 遊爺雑記帳
# 冒頭の画像は、中国人民銀行
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