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中国の経済回復は絶望的、コロナ禍より深刻な消費低迷でシャッター街続出…2025年の政策に消費刺激の具体策ゼロ

2024-12-26 01:33:55 | 中国 全般
 来年の中国経済の方向性を決める党中央経済工作会議が12月11〜12日まで開催された。その内容をみると2025年の経済回復はかなり困難、というより絶望的だ。経済回復の鍵となる消費を刺激するような具体策が1つもない。トランプ政権の対中関税引き上げに備えて人民元の切り下げ方針が示されているが、その結果、輸入品物価が上がり消費はますます縮小していきそうだと、ジャーナリストの福島香織さん。
 
中国の経済回復は絶望的、コロナ禍より深刻な消費低迷でシャッター街続出…2025年の政策に消費刺激の具体策ゼロ | JBpress (ジェイビープレス) 2024.12.25(水) 福島 香織:ジャーナリスト

 来年の中国経済の方向性を決める党中央経済工作会議が12月11〜12日まで開催されたその内容をみると2025年の経済回復はかなり困難、というより絶望的だ経済回復の鍵となる消費を刺激するような具体策が1つもないトランプ政権の対中関税引き上げに備えて人民元の切り下げ方針が示されているが、その結果、輸入品物価が上がり消費はますます縮小していきそうだ。中央経済工作会議の中味を分析しながら、来年の中国経済の見通しをみてみよう

 
中央経済工作会議では9点の重点任務が打ち出されている

 ① 
消費拡大、投資効率引き上げ、全方位的な国内需要の拡大
 ② 
ハイテク・イノベーションによりニュークオリティ生産力を発展させ産業体系を現代化させる
 ③ 
経済体制改革による影響力を発揮させるための画期的なイニシアティブを実施
 ④ 
対外開放レベルを拡大し、対外貿易、対外投資を安定させる
 ⑤ 
主要分野のリスクを効果的に防止・解決するマクロプルーデンスを実施し、システミック・リスクから利益を守る
 ⑥ 新しい形の都市化と農村部の全面的な振興を包括的に推進し、
都市と農村の融合・発展の促進
 ⑦ 地域発展の活力増強のために地域戦略の実施をパワーアップ
 ⑧ 炭素削減、汚染削減、グリーン成長を相乗的に推進し、経済・社会を発展させる包括的なグリーン転換を強化
 ⑨ 民生の保障、改善パワーを増強し、
人民群衆の幸福感、安全感を増強

 
 
今年の会議の特徴は、重点任務の筆頭に消費拡大が置かれていることだ昨年まではハイテクを使った現代化産業体系の構築が首位の任務だった

 
中国紙21世紀経済報道の解説を参考に意図を整理すると、来年の経済目標としては、経済の安定成長雇用の維持物価の総体的安定国際収支の基本バランスを維持、住民の所得増と経済成長の同ペースでの促進などが挙げられている。印象としては、「穏」(安定)という文字が多用され、いわゆる経済成長至上主義から社会の安定に軸足を置いた表現となっている。

 また、
来年の経済成長目標は5%前後とされているが、実際に来年春の全人代でこの数字が政府活動報告に盛り込まれるかは分からない。この数字は、実現可能という観点からではなく2035年の中国現代化目標を実現するためには1人当たりGDPが中等先進国家のレベルに達しなければならず、そのためには2020年から2035年までの年平均経済成長を4.72%に維持することが必須という計算から設定された数字にすぎない。

 もし
今年のGDP目標5%が達成できなかった場合、すでに共産党の目標値は達成できなくともよい、という意味になり、目標値を設定すること自体をやめてしまうかもしれない

 
財政政策としては、積極財政を打ち出し、財政赤字率を引き上げるとした今年の中央経済工作会議で「財政規律」という言葉が使われなくなった。2024年に3%と設定された赤字率はおそらく4%かそれ以上に引き上げられるだろう。

■デフレ傾向で「適度な緩和」

 
すでに今年、超長期特別国債1兆元分が発行され、うち7000万元が両重(国家重大戦略、重点領域安全建設)、3000万元が両新(企業設備一新、消費財の新旧買い替え)方面に投じられる手配が指示されている。地方政府特別債の新規発行額は3.9兆元。多くの体制内エコノミストたちの予測では来年の超長期特別国債は1.5兆元から2兆元、地方特別国債枠は4.5兆元になると見込まれている。

 
ただ、こうした今の中国経済の構造で、大型財政出動がカンフル剤として効くかどうかは疑問の声が多い。2008年のリーマンショック時の4兆元の財政出動は、不動産市場やインフラ建設市場という成長期待のある受け皿産業があった。だが、今の中国は、不動産も在庫があまり、新幹線や地下鉄などのインフラ建設は飽和状態で、経済の新たな動力産業が見いだせてない

 
金融政策については「適度な緩和」という表現が登場した。2011年以来のトーンとはあきらかに変化してきており、来年にどのような金融政策が実施されるかに市場関係者は注目している。適時に基準金利を引き下げ、流動性を十分に維持し、社会融資規模とマネーサプライの増加を経済成長のスピードに合わせ、価格水準が目標値になるようにするとしている。

 
人民元を合理的なレートで安定させ、中央銀行のマクロコントロール、金融安定機能を開拓し、金融ツールを創造して金融市場を安定させる、としている

 
注目すべきは、社会への融資規模とマネーサプライ、経済成長、物価の全体的な水準を同じ成長スピードにさせることが言及されたことだ。この表現は2023年の中央経済工作会議にも出ている。これは物価に対する金融政策の重要性を反映した表現とみられており、物価抑制が依然として中国共産党にとって大きな関心であるということだ。

 
金融システム全体のリスクを把握し安定を図るマクロプルーデンスに関しては中央銀行がマクロプルーデンス政策ガイドライン(試行版)をすでに発表している。潘功勝・人民銀行総裁が今年の金融フォーラムで、金融リスクを観測、予防、予警するメカニズム、枠組みを確立していくことを言明している。

 金融市場の安定化のために、人民銀行は、株式の買い戻しと保有株の借り換え、証券・資金・保険会社スワップ・ファシリティ(SFISF)オペを導入したが、その実施効果はまだ見えていない。

 おそらく
来年は、マクロ政策も焦点を消費拡大に向けられ、人民の消費金融や消費環境の整備に注力されるだろう娯楽や旅行、サービス産業への投資が支援されるかもしれない

「両新」の一つである消費財の買い替え促進政策の中には、電気自動車の買い替え支援なども引き続き行われ、電気自動車の中古取引の利便性を高めるような政策が期待されている

■消費の拡大はスローガンばかり

 
消費拡大のためには、民営経済促進法実施、企業ルールに関する法執行アクションを展開、全国統一大市場建設の指導を制定、プラットフォーム経済の健康発展を促進、包括的な税制改革、資本市場投融資総合改革の深化などのキーワードが躍った

 
だが、それをどのように実行するかはあいまいなままだった。中央政府は退職者の基本養老金の適度な引き上げ、都市農村の住民基礎養老金の引き上げ、都市農村の医療保険の政府補助基準引き上げなどについては具体的に地方政府に対して要請している。だが、若者の個人消費を刺激するためにどうするかについての見通しはあまり出ていない

 
中国経済にとって来年の最大の懸念は米トランプ政権の関税引き上げが中国経済にどれほどのインパクトを与えるかだ。一部エコノミストは、中国の景気刺激策がうまくいけば、GDP成長4.5%くらいは維持できるという甘い予測をする人もいる。

 
しかし、不動産市場、社会福祉市場の回復は今のところ見込みがたっておらず、消費の拡大も、スローガンばかりが大きいが、実際に庶民に消費意欲の向上が見えていない本質は大衆の所得が圧迫されていることだ。習近平政権が目下進めている増税政策や、いわゆる統制強化による罰金の増額などが、声高に打ち出す景気刺激策のムードを相殺している。

 中央経済工作会議前に、
付鵬や高善文ら中国の著名なエコノミストたちが、中国経済の問題について忌憚なく指摘し警告する講演を行っていただが、彼らの発言が引用されたSNSやセルフメディアの記事はことごとく削除され、中国経済の問題点を指摘するエコノミストの発言すら、「国家安全上の問題」として規制、取り締まりの対象になることが明らかになった。

■経済政策、実は打てる手がほとんどない

 
高善文は、はっきりと中国が発表する経済データの信頼性に問題があることを指摘し、現在の失業者が正常時よりも4700万人多いとしているここに2025年の新卒生1222万人が加われば、おそらく中国史上最高の失業率を更新し、非常に厳しい社会不安に直面するだろう。

 中国の
家政サービスプラットフォーム「58到家」の報告書によると、最近、家政サービス業務の高学歴化と若返り化が顕著で、今年の大学卒業生の家政業務登録は2023年の4.2倍になっているという。ここに空前の非婚と低出生率問題が重なり少子高齢化が加速度的に進むとみられている

 こうした経済構造の
問題点を指摘して対策を公に討論するということが、習近平独裁体制では封じ込められているそのため、地方官僚たちは自らの意見や見識をもって自由な政策を試すことはできず、結局、上の指示を聞く以外なにもしない「躺平主義」に陥り、そのことが経済の活力を削ぎ落すことになっている

 つまり
内需が急速に縮小し、外需は厳しい制裁的関税に直面し、中国として効果的な経済政策の打つ手が実はほとんどない、ということになる。
 
 こうした
中国経済先行きの絶望感を反映する形で、年末に向かって大量のテナント解約ブームが起きていると、中国のセルフメディアで話題になっている。いわゆる個人事業主がやっている売店、飲食店、ネイルショップ、マッサージ店、理容店などが経営を維持できなくなって来年のテナント契約更新をやめているらしい。その状況が、テナント家賃の急暴落という形で示されているという。

 これは公式な統計発表が出されているわけではない。SNSで、「テナントを解約するといったら1万5000元だったテナント料がいきなり8000万元に値下げされた」といった証言が年末に向けて急激に増えたことで、テナント解約ブームが起きていると人々が噂しあっているのだ。

■コロナ禍よりも深刻な消費低迷

 
武漢のショッピングモールがシャッター街になっている様子の写真がアップされていたり、「この1年でテナント料が30万元から3万元に値下がった」といった書き込みが話題になったりしている。ちなみに、こうしたテナント料の爆下がり現象は香港でも起きているようだ。

 新型コロナ流行時も個人経営店が軒並みつぶれテナント料暴落現象が起きていたが、2024年の北京、上海、広州、深圳、重慶のテナント料平均は2021年よりもそれぞれ10.3%、24.1%、11.5%、16.2%、38.3%下がっている(万得資訊)。

 もちろん消費の中心が店舗からオンラインに変わったということもある。それでも、
中国のネット世論は、これは今の若者の消費能力、あるいは消費意欲の激減を反映しているとみている

 景気が社会の気分に大きく影響を受けるというなら、
経済回復の最大の障害は、中国社会を覆う抑圧されたムードだ。そしてそのムードを作り出しているのが、習近平政権政治であり、中国の経済問題とは、すなわち政治体制の問題であるとしかいえない

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福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。
 

 中央経済工作会議では9点の重点任務が打ち出されていると、福島さん。
 会議の特徴は、重点任務の筆頭に消費拡大が置かれていることだ。昨年まではハイテクを使った現代化産業体系の構築が首位の任務だった。

 中国紙21世紀経済報道の解説を参考に意図を整理すると、来年の経済目標としては、経済の安定成長、雇用の維持、物価の総体的安定、国際収支の基本バランスを維持、住民の所得増と経済成長の同ペースでの促進などが挙げられている。
 いわゆる経済成長至上主義から社会の安定に軸足を置いた表現となっていると、福島さん。

 来年の経済成長目標は5%前後とされているが、実際に来年春の全人代でこの数字が政府活動報告に盛り込まれるかは分からない。この数字は、実現可能という観点からではなく、2035年の中国現代化目標を実現するためには、2020年から2035年までの年平均経済成長を4.72%に維持することが必須という計算から設定された数字にすぎないと。

 財政政策としては、積極財政を打ち出し、財政赤字率を引き上げるとした。今年の中央経済工作会議で「財政規律」という言葉が使われなくなったのだそうです。
 すでに今年、超長期特別国債1兆元分が発行済。
 ただ、今の中国経済の構造で、大型財政出動がカンフル剤として効くかどうかは疑問の声が多いと、福島さん。

 今の中国は、不動産も在庫があまり、新幹線や地下鉄などのインフラ建設は飽和状態で、経済の新たな動力産業が見いだせてない。
 
 金融政策については「適度な緩和」という表現が登場した。
 来年にどのような金融政策が実施されるかに市場関係者は注目している。
 人民元を合理的なレートで安定させ、中央銀行のマクロコントロール、金融安定機能を開拓し、金融ツールを創造して金融市場を安定させる、としている。
 注目すべきは、社会への融資規模とマネーサプライ、経済成長、物価の全体的な水準を同じ成長スピードにさせることが言及されたことだと、福島さん。

 物価抑制が依然として中国共産党にとって大きな関心であるとも。
 金融システム全体のリスクを把握し安定を図るマクロプルーデンスに関しては、中央銀行がマクロプルーデンス政策ガイドライン(試行版)をすでに発表している。潘功勝・人民銀行総裁が今年の金融フォーラムで、金融リスクを観測、予防、予警するメカニズム、枠組みを確立していくことを言明しているのだそうです。

 おそらく来年は、マクロ政策も焦点を消費拡大に向けられ、人民の消費金融や消費環境の整備に注力されるだろう。娯楽や旅行、サービス産業への投資が支援されるかもしれない。

 「両新」の一つである消費財の買い替え促進政策の中には、電気自動車の買い替え支援なども引き続き行われ、電気自動車の中古取引の利便性を高めるような政策が期待されていると、福島さん。
 各種キーワードが躍っているが、それをどのように実行するかはあいまいなままだと。
 中央政府は退職者の基本養老金の適度な引き上げ、都市農村の住民基礎養老金の引き上げ、都市農村の医療保険の政府補助基準引き上げなどについては具体的に地方政府に対して要請している。だが、若者の個人消費を刺激するためにどうするかについての見通しはあまり出ていないのだそうです。

 中国経済にとって来年の最大の懸念は米トランプ政権の関税引き上げが中国経済にどれほどのインパクトを与えるかだと、福島さん。
 
 不動産市場、社会福祉市場の回復は今のところ見込みがたっておらず、消費の拡大も、スローガンばかりが大きいが、実際に庶民に消費意欲の向上が見えていない。本質は大衆の所得が圧迫されていることだ。習近平政権が目下進めている増税政策や、いわゆる統制強化による罰金の増額などが、声高に打ち出す景気刺激策のムードを相殺していると。

 付鵬や高善文ら中国の著名なエコノミストたちが、中国経済の問題について忌憚なく指摘し警告する講演を行っていた。
 高善文は、はっきりと中国が発表する経済データの信頼性に問題があることを指摘し、現在の失業者が正常時よりも4700万人多いとしている。ここに2025年の新卒生1222万人が加われば、おそらく中国史上最高の失業率を更新し、非常に厳しい社会不安に直面するだろうと。

 家政サービスプラットフォーム「58到家」の報告書によると、最近、家政サービス業務の高学歴化と若返り化が顕著で、今年の大学卒業生の家政業務登録は2023年の4.2倍になっているという。ここに空前の非婚と低出生率問題が重なり少子高齢化が加速度的に進むとみられていると、福島さん。

 
 こうした経済構造の問題点を指摘して対策を公に討論するということが、習近平独裁体制では封じ込められている。そのため、地方官僚たちは上の指示を聞く以外なにもしない「躺平主義」に陥り、そのことが経済の活力を削ぎ落すことになっている。
 つまり内需が急速に縮小し、外需は厳しい制裁的関税に直面し、中国として効果的な経済政策の打つ手が実はほとんどない、ということになると。

 中国経済先行きの絶望感を反映する形で、年末に向かって大量のテナント解約ブームが起きていると、中国のセルフメディアで話題になっている。
 経営を維持できなくなって来年のテナント契約更新をやめているらしいと、福島さん。

 武漢のショッピングモールがシャッター街になっている様子の写真がアップされていたり、「この1年でテナント料が30万元から3万元に値下がった」といった書き込みが話題になったりしているのだそうで、コロナ禍よりも深刻な消費低迷がしょうじているのだそうです。

 中国のネット世論は、これは今の若者の消費能力、あるいは消費意欲の激減を反映しているとみていると。
 経済回復の最大の障害は、中国社会を覆う抑圧されたムードだ。そしてそのムードを作り出しているのが、習近平政権政治であり、中国の経済問題とは、すなわち政治体制の問題であるとしかいえないと、福島さん。



 # 冒頭の画像は、マーケットの風景



  冬のガクアジサイ


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