遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国の隠れたリスク 進むことも引くことも出来ない

2013-10-25 23:43:32 | 中国 全般
 13億の人口の中国市場は、世界の企業が進出してしのぎを削ってきた大きな市場でした。その市場の成長に、最初に火をつけたのは、日米の企業が低コストで生産できると工場を投資・進出したビジネスモデル構築でした。結果、世界の工場の役割をになうこととなり、成長が進むにつれ国内の消費も成長しその市場の需要が魅力となり、更に諸国からの投資が進んだことで今日の繁栄を招いたのでしたね。
 しかし、経済成長は同時に格差を産み出し、その格差是正のためには高度成長が必要となり、政府の財政出動での公共投資で高度成長を支えてきました。こうした、演出された高度成長が不動産バブルをまねき、シャドウバンキング・理財商品といったゆがみを生じ、今日では、バブル崩壊が懸念されるようになったのでした。
 他方、経済力がついた中国は、軍備を拡大増強させ、資源の確保の必要性もあいまって、海洋覇権の拡大を推進したり、国内で生じた社会問題での政府への不満を逸らす為の反日政策を推進しました。
 これらの過程の中で、中国進出を進めてきた日本企業ですが、チャイナリスクが生じ始めた今、中国市場の成長の果実を追い求めるのか、反日のリスクを鑑み撤退するのか、岐路に立たされていますが、進むリスクの他に、撤退するリスクも明らかになり、進むことも引くことも出来ず蟻地獄に落ち込んでしまっている状況が発生しているのですね。
 

明治粉ミルク 中国撤退 「日本ブランド」に厚い壁 (10/25 産経)

■物流網の構築困難/根強い反日感情
 明治が粉ミルク販売休止を決めた中国事業では、他業界の日本企業の多くも苦戦を強いられている。約13億人の有望市場である一方で、
根強い反日感情や独特の商習慣などが事業拡大の障害
となっているためだ。中国経済の成長ペースの減速とも相まって、期待通りの“果実”を受け取ることが困難になっている。

 「中国マーケットは世界中の企業がしのぎを削る、最大の競争市場」。中国ビジネスに詳しい西村あさひ法律事務所の野村高志弁護士はこう強調する。生き馬の目を抜く環境の中では、わずかなつまずきも命取り。
日本産粉ミルクの輸入禁止に泣いた明治
も、「ビジネスの前提が変わってしまった」と嘆く。
 
自動車市場も、BMWやアウディといったドイツ勢の低価格攻勢が、ただでさえ欧米志向の強い中国人の需要を取り込み、日本車離れ
を後押しする。「燃費の良い日本車が注目されるような意識変化が起きない限り、日本勢が優位にならない」。証券アナリストからは悲観的な声が上がる。

 
独特の商習慣も日本企業の進出をはばむ。ヤマダ電機は今年、販売不振を理由に5月に南京、6月に天津の店を相次いで閉店した。最大の理由は、「省が違えば隣の国に行くくらい異なる」という中国で、複数の省にまたがる物流網を構築できなかった
ためだ。

 
反日感情も根強い
。日本貿易振興機構(ジェトロ)が9月に発表した実態調査では、中国消費者の7割以上が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題が日本製品の買い控えにつながっていると回答。不買の理由は「本当は買いたいが愛国心が優先する」が50%を超え、「日本に腹が立つ」も42・2%に上った。
 昨年12月、上海に中国1号店を出店した
高島屋は、反日デモに配慮。「ほとんど開店のPRができなかった
」(広報)結果、当初130億円を見込んだ初年度売上高を60億円に引き下げた。
 平成24年度決算で中国事業が初の減収減益となった
資生堂も日用品などが店頭から撤去された

 最近は日系メーカーの新車販売台数が前年超えするなど、「不買運動は沈静化してきた」(ジェトロ)。だが百貨店関係者は、韓国が東京電力福島第1原発の汚染水漏れを理由に、水産物の一部輸入を禁じたことなどを挙げ、「
解決策の見えない反日感情はくすぶり続ける
」とみる。

 こうした中、今年1~6月の
日本企業の中国向け直接投資が前年同期比で約3割落ち込む一方、東南アジア諸国連合への投資は約2倍に増えるなど「脱中国」の動きも広がる

 ただ「中国で一度構築した物流網や技術を移管する体力のない企業も少なくない」(野村弁護士)ほか、
会社清算には当局の税務調査が入るなど手続きが煩雑になる
ケースもある。
 ある日系中堅アパレルメーカーの上海法人は撤退を決断したところ、地元当局に圧力をかけられた。
「中国は進むもひくもできない」隠れた中国リスクに頭を抱えている。

 撤退や縮小を余儀なくされた原因は、反日規制、世界の企業がひしめく激しい価格競争での脱落、省の壁と言った商慣習(記事では触れられていませんが、税制も中国固有の煩雑さと反日格差があることは、経験しご存知の方も多いことです)、消費者の中での反日不買の浸透があります。
 致命傷は、記事で書かれている「本当は日本製品を買いたいが、愛国心を優先させる」という不買の理由が、50%を超えていることですね。
 品質や価格などがいくら優れていても、愛国心の為に買わない(買えない?)というのですから、いくら努力しても無駄ということです。

 そこで、撤退しようとしたら地方政府や税務の壁がはだかるという、もう一方のリスクが発生するというのですね。
 進むことも退くことも容易ではない地獄にはまるというのです。

 余談ですが、買いたくても愛国心の為に買わない(変えない?)という不買理由が50%を超えるという致命的な状況の中でも、熱心に中国進出を説き、セミナーも開催しているのが日経。巨大市場が、更なる成長を遂げると言う、中国の企業誘致用PRをそのまま鵜呑みにして、そのの先棒を担いでいるのはなぜなのでしょう。
 中国は今、政府の財政出動頼りの経済成長維持に、減少した海外から投資を呼び戻そうと躍起になっていることは、重々承知しているはずですが。
 

中国の成長率はどこまで下がるのか:日経ビジネスオンライン

<以下文末のみ抜粋>
 
もちろん十年展望で描かれた中国の輝かしい未来が到来する保証はない。中国の成長を阻害する要因は山積しており、そのどれもが解決が困難なものばかりだ(中国が抱える課題については日経ビジネス10月7月号の特集「『中国失速』の真実」をご覧下さい)。

 ただし、潜在的な成長力を中国が有しているのは紛れもない事実だ。これから中国の経済成長率は鈍化していくが、それは中国が成熟していく過程でむしろ自然なことだ。
 2012年9月に尖閣諸島を国有化してから日系企業の中国ビジネスは大きな試練に晒された。日中関係は政治的には緊張状態が続いているとは言え、経済分野から改善に向けた地ならしが確実に進んでいる。来たるべき2014年に向けて、中国ビジネスの戦略を見直す時期が来ていると言えるだろう。

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 日経BP社は11月11日~13日に「アジア会議2014」を開催します。11日は中国セッションで、逆境下の中国市場で事業をどう盛り返していくかを、最前線で指揮をとる現地トップが解説します。
 また、中国セッション受講者限定で「中国 最新統計データブック2014」を進呈します。
 事業戦略を立てるためには精緻なデータが欠かせません。2013年10月に発行されたばかりの「中国統計年鑑2013」などから日本企業に有用な統計データをピックアップして、すべて日本語に翻訳して提供します。各データは解説付きで、ここでしか手に入らない貴重な1冊です。あなた様の中国事業戦略策定にぜひお役立てください。


 中国が潜在的成長力を有しているのは、本当に紛れもないことなのでしょうか?
 先進国のビジネスモデル変革で出発した経済成長。先進国の後を急速度で追いかけてくることで急成長を遂げました。しかし、追いついてきた今、抱え始めた社会問題は未解決のままです。ひたすら追いかけるだけでよかったこれまでから、人民の為の経済成長に転換を計る=コストと手間暇がかかる先進国としての独自のモデル構築段階にさしかかり、潜在的リスクが表面化するのではないでしょうか。



 # 冒頭の画像は、財政破綻が間近な地方都市として中国で注目を集める陝西省楡林市神木県で建設中の鬼城と化していくマンション群。中国の成長率はどこまで下がるのか:日経ビジネスオンラインより



  この花の名前は、ムシトリナデシコ


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