速報では、トラック上の仮設配電版での、ネズミの様な小動物によるショート発生が原因と推測されるとのことです。
いいえ、それは現象であり、真の原因は、今回の大事故発生と同じ東電などの安全管理思想の欠如がまた繰り返されていることです。
大事故の直接原因は、全電源喪失でした。そしてそのことの対策は施す機会は数度あったにも関わらず、歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の「逆転関係」が起き、規制当局は電力事業者の「虜(とりこ)」となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していて、対策が東電の都合で先送りされていたという人災が原因と国会事故調が指摘していたことは諸兄がご承知の通りです。
地震や津波であろうと、ネズミであろうと、形あるものは故障します。故障した時に備えた対策が必要で、電源であればその多重化です。原因が何であろうが、電源復旧を急ぐことが必要で、そのためには多重化が欠かせないのです。
事故が起きてから泥縄式に原因追及と対策を講じては、時間制限がある電源復旧には間に合わない可能性があり、そのことが原因で大事故を招いたのに、電源の多重化に漏れがあったのです。厳しい作業環境のなかで、やらねばならないことが多すぎる状況は理解しますが、全電源喪失時の恐怖を、忘れてしまっていたのでしょう。
使用済み核燃料プールの冷却装置などが、ほぼ丸一日にわたり停止した、東京電力福島第一原子力発電所の停電トラブル。故障したのは、事故直後に設置した仮設配電盤で、予備の電源システムもなかった。原子炉への注水は維持され、周辺の放射線量の変動もなかったが、重要な電源の復旧に手間取ったことは、同原発の安全管理に依然、多くの課題が残ることを示した。 (科学部安田幸一、伊藤崇)
■野ざらし状態
「複数の重要施設の冷却装置が同時に、これだけ長期にわたり停止したのは初めて。判断や対応に甘さがあったと指摘されれば、否定できない」
東電の尾野昌之・原子力立地本部長代理は19日夕、東電本店(都内)で開いた記者会見でこう述べ、苦渋の表情を浮かべた。
トラブルが起きたのは、燃料プールの冷却装置に電気を供給していた仮設配電盤だった。停電後、東電が配電盤を一つずつ点検した結果、故障が判明。当初、配電盤の修理を目指したが、結局、故障原因を突きとめられず、非常用ディーゼル発電機など別の電源にケーブルをつなぎ替えて、復旧を目指す作戦に切り替えた。
この配電盤は事故直後、電源回復を最優先する中、トラックで運び込まれ、荷台に積まれたまま、野ざらしの状態で使用されていた。有冨正憲・東工大教授(原子炉工学)は「ここ数日の強風で、海水や浜辺の砂が飛んできた可能性がある。それらに含まれた塩分により、配電盤がショートしたのではないか」との見方を示す。こうしたトラブルを避けるため、ほかの配電盤はタービン建屋内などに設置されていた。
東電関係者も「屋外用の配電盤だったが、屋内に設置する場合より安定性に欠ける」と認め、仮設システムの脆弱性は認識していた。一昨年末から本来の電源システムを修復し、仮設システムから順次切り替える作業を進めていた。故障した仮設配電盤は未交換のまま残った最後の1台。2週間以内にケーブルをつなぎ替えて取り外す予定で、今回の故障はその矢先の出来事だった。
■教訓生かせず
さらに、早期のトラブル収拾を妨げたのが、迅速な切り替えが可能な予備の電源システムが整備されていなかったこと。溶融した燃料を冷却するため、どんな場合でも注水が途切れないように、電源もポンプも多重化している原子炉の安全管理に比べると、明らかに備えが手薄だった。
尾野本部長代理は「燃料プールの冷却が止まっても、温度上昇には時間的に余裕がある。原子炉のような電源多重化の必要はないと判断していた」と説明する。だが、東日本大震災では、地震で送電鉄塔が倒れ、外部電源が途絶。非常用電源も津波で水没し、全電源を失った結果、炉心溶融という重大事故につながった。今回の経緯を見る限り、こうした事故の貴重な教訓を、東電が十分に生かしていたとは言い難いだろう。
諸葛宗男・東京大特任教授(原子力規制)は「使用済み燃料の安全管理は、海外からも注目されている。事故直後は応急措置でも仕方ないが、2年以上が経過したにもかかわらず、東電の対応はあまりにお粗末だ。配電盤を含めて、どんな機器も故障するという前提に立たなければならない」と指摘している。
福島第1原発停電:小動物の感電が原因か- 毎日jp(毎日新聞)
安倍内閣は、野田内閣が行った事故終息宣言を撤回していました。
安倍首相、原発事故収束宣言を撤回 - MSN産経ニュース
国会事故調の報告の出だしは、「福島原子力発電所事故は終わっていない。」です。野村修也委員は、このことを重く受け取ってほしいと今朝も強調しておられました。
国会事故調 | 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会のホームページ
事故の公表は、東電も遅れましたが、新たに期待を担って発足した原子力規制委員会も同罪でした。田中委員長は反省の弁をしておられましたが、国会事故調が指摘した「規制する立場とされる立場の「逆転関係」が起き、規制当局は電力事業者の「虜(とりこ)」となっていた。」という状況がまだ続いているとみられてもいたしかたない結果でした。
福島第一の事故調査は、いろいろな機関が実施し報告書が提出されていますが、国会事故調の報告が最も的確だと受け取っているのは、遊爺だけではありません。
事故調の調査時に、暗いことを理由に故意と思われる現場視察拒否があったと最近問題になった、津波ではなく地震でも破壊があったどうかは未解決です。
それに、最も重要なことは、事故調の報告は単なる報告ではなく、数々の提言もしています。
政権に左右されない挙党一致の国会が儲けた事故調の提言は、国会が実行につなげる立法などの責任があります。
与党が自民党に代わり、素人集団の民主党時代とは異なり、決断と実行がなされると期待していますが、気配が感じられません。
福島第一の大事故は、「人災」と結論付けた国会事故調の報告。重く受け止めて、活かすべく、国会も政府も動いていただけることを願います。
今回は大事に至る前に、暫定処置で食い止めることができましたが、「福島第一原子力発電所の事故はまだ終わっていない」ことと、人災とされる原因の明確化と、想定外で起きた時のアクシデントへの対処方法の実施を進める事の必要性を、改めて教えてくれた事故でした。
# 冒頭の画像は、記者会見で発表する東電担当者
この花の名前は、アキチョウジ 撮影場所;六甲高山植物園 (2012年10月 撮影)
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