遊爺雑記帳

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好況、浙江省の習近平VS苦境、遼寧省の李克強 両者の争いが表面化

2016-08-19 23:58:58 | 中国 全般
 中国共産党の党中央政治局常務委員(チャイナセブン)の改選を来年に控え、その椅子取り争いが激化していることは諸兄がご承知の通りです。
 その人事について協議される「北戴河会議」が8月初旬に開催され、行方に注目していました。
 政治汚職追放の御旗のもと、政敵を駆逐し着々と独裁色を強めてきた習近平ですが、経済成長の低迷と、南シナ海の覇権拡大の論拠の「九段線」がちゅさい裁判所により否定されるなどの外交失政で窮地に立たされたことから、長老や対抗勢力(江沢民・上海閥、胡錦濤・共青団派)からの巻き返し攻勢があり、行方が注目されていますね。
 その政局争いで、低迷する経済の責任につて、本来は経済担当の首相の李克強に、過去の慣例を破り習近平が越権行為で口出しすることで、両者の争いがありましたが、いよいよ表面化が顕著となった様です。

 
失政つづきの習近平 外交政策はこれからどこへ向かうのか - 遊爺雑記帳
 習近平政権が今やっていることのすべては、中国という国を破滅の道へと導いている - 遊爺雑記帳
 
マイナス成長危機と北戴河「習・李」戦争  編集委員 中沢克二 :日本経済新聞

<前略>
■遼寧省の落ち込み
 
遼寧省鞍山市の中央国有企業、鞍山鋼鉄集団公司の2015年の粗鋼生産量は世界鉄鋼協会によると3250万トンで、世界第7位である。
 
中国政府が示す20年までの鉄鋼生産能力の削減目標は1億~1.5億トン
。そのうち今年の目標は4500万トン減としている。日本の粗鋼生産の半分弱というとてつもない大きさの削減である。これを達成するには、東北の主力重工業地帯、遼寧省だけでも数百万トンも削る必要がある。
 
既に削減は始まっている
。鞍山鋼鉄の関連会社で働く40代の男性は「首を切られず、前より少なくても給与をもらえれば良しとしなければならない」と苦笑いする。鞍山市の商店街も空き店舗が目立つ。
 遼寧省の省都、瀋陽でも新しいオフィスビルがなお建設中だが、完成しても借り手は極めて少ない。それは経済統計からみても当然だった。
 
16年1~3月の遼寧省の実質経済成長率は前年同期比でマイナス1.3%
――。
 遼寧省が他の省より遅れて発表した数字は衝撃的だった。全国では6.7%の成長率なのに東北経済の中心地、遼寧省はマイナス成長になったのだ。
1~6月でみても1%強のマイナス
だという。
 既にその兆候は昨年から表れていた。石炭、マグネサイトなど鉱産品の出荷に頼ってきた遼寧省の
一部地域は、マイナス10~20%という信じがたい数字になっている。
<中略>


■「李克強指数」は遼寧省での経験から
 遼寧省は統計数字ではいわくつきの場所だ。首相の李克強は就任前、中国の国内総生産(GDP)統計について「人為的」と明かしている。当時の駐中国米大使に語った内容だ。そして自らは電力消費量、鉄道輸送量、中長期新規貸出残高の3つの経済指標だけを信頼している、と述べている。
 後に
「李克強指数」として有名になる数値は、彼が遼寧省トップだった時代の経験を踏まえた発言だ。遼寧省でなお「かさ上げ」が常態化しているなら、発表数字を真面目に分析しても意味がない、という結論になる。

 
中国は広い。東北地域の経済の落ち込みが全てを代表しているわけではない。例えば、9月に20カ国・地域(G20)首脳会議を開く浙江省の杭州市は、なお好況に沸いている

 新興住宅地のマンションは1平方メートル4万~5万元(65万~80万円)。瀋陽の4~5倍で、中国で最も高い北京の郊外にある住宅地並みだ。100平方メートル強の平均的な杭州の住宅なら日本円で1億円を超す。これは東京の都心部と変わらない。
 杭州の庶民の所得水準は、一部の優良企業の従業員や経営者を除けば、なお先進国に追い付いていない。土地の公有制を前提とする中国では、マンションを買っても期限付きの土地使用権を持つだけだ。恒久的な財産としての価値にも疑問符が付く。それでも高値になるのは、転売益を期待するバブルの臭いがする。
 中国のネット通販最大手、アリババ集団の本部も杭州にある。中国では日用品を中心とする消費市場は極めて好調だ。庶民はネットを使ってほぼ全ての買い物をする。その波に乗ってアリババは業容を拡大中だ。

 確かに
浙江省は中国でも比較的、活力のある民営企業が多く、過剰設備も問題は限られる。一方、長く重工業基地だった遼寧省など東北地方、内陸都市は、生産能力の削減で四苦八苦
している。
 面白いのは国家主席、
習近平が、00年代半ばに浙江省のトップを務め、李克強はほぼ同じ時期に遼寧省のトップだった経歴である。ライバル2人が足跡を残した地域の経済は今、明暗が分かれている

 しかも遼寧省の方は今年3月、トップだった王珉が汚職で摘発されるという不名誉な事件まで起きた。「
遼寧省は今、政治的に標的にされている
」。そんな声も現地では聞かれた。
 
遼寧省のGDP発表は1~3月、4~6月とも他の地域に比べ遅れた。これを中央の共産党系メディアが批判的に伝えている。さらに遼寧省の数字が著しく悪い点についてこうも指摘した。「東北振興という政策を10年以上も実施し、国が巨額の資金を投入して新産業を支えたにもかかわらず、底をはっている。考えなければいけない地域
だ」

■好況、浙江省の習近平VS苦境、遼寧省の李克強
 
一般に政府批判が許されない中国でここまで書かれるのは、政治的な意味がある。過去のリーダーを批判
しているのだ。
 
標的は、既に無期懲役となったかつての遼寧省長、薄熙来。そして元遼寧省党委員会書記、李克強
である。だが、薄熙来は省長というナンバー2の地位にすぎなかった。李克強はナンバー1だった。現首相への「含み」があることは想像に難くない。

 
習近平と李克強の2人は今、経済政策づくりの主導権を巡ってなお闘っている。8月上旬、河北省の保養地で開かれていた「北戴河会議」でも、下押し圧力の強い中国経済のかじ取りをどうするのかが焦点の一つだった
とみられる。

 「習近平は見た目は温厚そうでも自分で全てを決めたいタイプの人間だ」
 地方指導者だった時代の習近平を知る人物の分析である。党中央に各テーマを扱う「小組」を次々につくったのもそのためだ。9月には、かつての過ごした杭州でのG20も控える。主役の習近平としては、ここで広範囲なリーダーシップを改めて確立したい。
 李克強も負けていない。
7月初旬、国有企業改革を巡る2人の指示が真っ向から対立困った国営の中国中央テレビ、中国政府ネットなどは、仕方なく2人の指示を並列して伝えた

 見出しは「習近平と李克強はそれぞれ国有企業改革を巡る指示を出した」。そして「
習主席は強く優れた大きな国有企業を、と。李首相は市場規律を守る細身の国有企業にするため、劣った生産能力の淘汰を進めよ、と」。2人が主導権を競っているだけではなく、方向性が違う
のには驚く。

 公式報道だけに、これを聞いたり見たりしたネットユーザーの間でも「違い」が話題になった。ネット上では、それを揶揄(やゆ)する書き込みもみられた。
かつてない事態だ。これでは「習・李」の争いが一般国民にも分かってしまう


 
習近平VS李克強。2人の勝負の帰趨(きすう)を決めるのは、現在の深刻な景気減速の責任と今後の処方箋をどう考えるかである。そこには長老らの思惑も大きく影響する。純粋な経済問題ではないだけに結果はまったく予想できない。(敬称略)

 経済政策の路線は、習近平は国有企業を中心に進める方向で、李克強は、民間企業による活力を活かし成長を促す、鄧小平以来今日の経済発展を支えた改革・解放経済路線です。
 ところが、習近平が地方政治を治めたのが、民間企業の活力で栄える浙江省で、李克強は過剰設備で経済成長率がマイナスに陥った遼寧省のトップだったという皮肉な組み合わせだったのですね。
 国が巨額の資金を投入して新産業を支えたにもかかわらずマイナス成長に陥った遼寧省の過去のトップの李克強批判を共産党系紙が行ったのだそうです。政府批判が許されない中国で、首相を批判するのは、習近平の容認が無ければ出来ないことですね。
 また、7月初旬、国有企業改革を巡る2人の指示が真っ向から対立。困った国営の中国中央テレビ、中国政府ネットなどは、仕方なく2人の指示を並列して伝えたのだそうです。公式報道なので、両者の争いが表面化されてしまったのですね。

 「北戴河会議」の行方に注目していましたが、12日に終わったとの情報があります。
 今回の「北戴河会議」の焦点は3つありひとつ目は、習近平主席の権力を更に集中させるかどうか。二つ目は、習近平の盟友・王岐山を残すことが出来るかどうかの、中央常務委員の定年制度の「七上八下」のルール改正の可否。三つ目が、中国のトップである総書記兼国家主席の選出方法(「隔世後継者選出」)を変更するか否かという報道や、党中央政治局常務委員の椅子の争奪戦にとどまらず定数見直し、定年制度のルール改正といった報道もありました。
 
「北戴河会議」が始まった模様 - 遊爺雑記帳

 ところが、福島香織氏によると、会議で、習近平は人事の話題を回避したのだそうです。そこには、次期で習近平の任期も終わるのが慣例ですが、次々期も居座るつもりのようだとのことです。

 福島香織 習近平独裁強化へ 北戴河会議に尖閣侵犯をぶつける 2016年8月17日
 

 江沢民・上海閥、胡錦濤・共青団、その他の長老は、それで治まるのでしょうか?
 続報を待ちます!



 # 冒頭の画像は、G20前の好況に沸く浙江省杭州市(右)と、マイナス成長で減産を迫られる遼寧省鞍山市の鞍山鋼鉄(左)




  ホソバテンジクメギ


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