米半導体大手インテルは3年前、時価総額が現在の2倍以上あり、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は企業買収を模索していた。
それが今では、インテル自身が買収の標的となっている。戦略上の失敗と人工知能(AI)ブームが相まって、米国で最も有名な半導体企業の運命は大きく変わったと、WSJ・Asa Fitch。
WSJは20日、米同業クアルコムがインテルに買収を打診したと報じた。
これは56年に及ぶインテルの歴史でほとんど見られなかった脆弱(ぜいじゃく)性を映している。同社が問題を抱えるようになったのは、ゲルシンガー氏が就任する前の製造分野での失敗がきっかけだった。
AIに対する関心が爆発的に高まり、競合相手のエヌビディアが製造する製品の一種に半導体需要が根本的にシフトすることを予見していなかった。
CFRAリサーチのベテラン業界アナリスト、アンジェロ・ジーノ氏は「過去2~3年間のAIシフトは、彼ら(インテル)にとって本当のとどめとなった」とし、「単に、彼らには適切な能力がなかったということだ」と述べたと、Asa Fitch。
スマートフォン用半導体で高いシェアを握るクアルコムがインテルを買収するという構想は、少し前まではほとんど考えられなかったことだとも。
インテルは数十年にわたり時価総額で世界最大の半導体企業として君臨し、同社製の半導体はほぼ全てのパソコンやサーバーに搭載されていた。
ところが、2021年初めにゲルシンガー氏がCEOに就任した頃には、インテルの魅力に陰りが生じ、最小のトランジスタと最速のチップを製造する競争でアジアのライバルに後れを取っていたのだそうです。
最高技術責任者(CTO)を務めたこともあるゲルシンガー氏は、アンディ・グローブ氏やポール・オッテリーニ氏などがCEOを務めていた時代のインテルの威信を取り戻そうとした。
そのためには、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国・サムスン電子といったアジアのライバルに追いつく必要があった。
ゲルシンガー氏は、インテルの製造事業強化のために重点的に投資し、クアルコムなどの半導体企業に生産能力を売り込んで、TSMCやサムスンが支配するファウンドリー(受託製造)事業に参入する計画を立てていたと、Asa Fitch。
ゲルシンガー氏は、CEO就任後の夏には、米半導体受託製造大手のグローバルファウンドリーズを約300億ドル(現在のレートで約4兆3000億円)で買収する交渉に入った。この買収計画は失敗に終わったが、買収を狙い続ける姿勢を示していたのだそうです。
インテルの受託製造事業は、2030年までにこの分野で世界2位の企業になるという、ゲルシンガー氏が定めた目標に向かって進み始めたが、出だしのペースは遅かった。
潜在的顧客の多くが技術的なつまずきを背景に事業の縮小・撤退に動いていたからだと、Asa Fitch。
インテルのコスト負担が急増する中で、生成AIがブームを迎え始めた。それに伴って半導体需要は、インテルのCPU(中央演算処理装置)から、米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)へと移っていったのだと。
エヌビディア製品の設計は独特で、インテル製品よりも最先端AIシステムの構築・開発に適していた。インテル製CPUの多くは在庫として積み上がったと、Asa Fitch。
ゲルシンガー氏はコスト削減を強いられ、数千人の人員削減に乗り出し、23年には配当を削減した。それでも十分ではなかった。
今年8月、1万5000人の人員削減計画を明らかにするとともに、来年の事業コストを100億ドル削減し、配当を見送る考えを示したのだそうです。
インテルの運命が好転する見込みは薄くなりつつあるが、まだ可能性はある、というのがアナリストの見方だと、Asa Fitch。
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏によると、インテルの将来は、来年生産開始見込みの次世代チップ製造技術が成功するか否かにかかっていると。
技術面で業界をリードする立場を回復すれば、利益率の改善や顧客からの信頼獲得につながる可能性がある。
それでも、インテルには消え去ることのない根本的な問題がある。中核半導体事業の早期回復が見込めないことだと、Asa Fitch。
ラスゴン氏は「戦略の是非を議論するのはよいが、問題は中核事業がその道筋を下支えしていないことだ」とした上で、この時点では「止めるには遅過ぎるかもしれない」と述べたのだそうです。
クアルコムにとって、インテルの買収は半導体産業の新分野参入の助けとなる可能性がある。
だが、買収が実現した場合、クアルコムがインテルの製造事業を維持するかどうかは定かでない。製造事業を手掛けるインテルは、製造を外部委託するクアルコムとはビジネスモデルが大きく異なる。物作りは非常に複雑で高いコストがかかる。インテルの昨年の設備投資は258億ドルで、売上高に対する比率は約48%だった。クアルコムの昨年の設備投資は15億ドルで、売上高の4%強に過ぎないと、Asa Fitch。
「インテル入ってる」のCM。当然入っていて世界を凌駕していたインテル。
技術革新の激しいこの業界。そのインテルが買収される話が出る世の中。「ドッグイヤー」と言う言葉がかつてはやりましたが、AIブームの到来で、更に大きな変革が進んでいるのですね。
# 冒頭の画像は、インテル社屋
この花の名前は、チトニア フィエスタ デル ソル
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それが今では、インテル自身が買収の標的となっている。戦略上の失敗と人工知能(AI)ブームが相まって、米国で最も有名な半導体企業の運命は大きく変わったと、WSJ・Asa Fitch。
インテルの転落劇、業界トップから買収標的に - WSJ
戦略上の失敗と予想外のAIブームで経営が弱体化 By Asa Fitch 2024年9月24日
米半導体大手インテルは3年前、時価総額が現在の2倍以上あり、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は企業買収を模索していた。
それが今では、インテル自身が買収の標的となっている。戦略上の失敗と人工知能(AI)ブームが相まって、米国で最も有名な半導体企業の運命は大きく変わった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は20日、米同業クアルコムがインテルに買収を打診したと報じたが、これは56年に及ぶインテルの歴史でほとんど見られなかった脆弱(ぜいじゃく)性を映している。同社が問題を抱えるようになったのは、ゲルシンガー氏が就任する前の製造分野での失敗がきっかけだった。そして経費のかさむ再生戦略を同氏が推し進める中で、状況は悪化した。この戦略は、AIに対する関心が爆発的に高まり、競合相手のエヌビディアが製造する製品の一種に半導体需要が根本的にシフトすることを予見していなかった。
CFRAリサーチのベテラン業界アナリスト、アンジェロ・ジーノ氏は「過去2~3年間のAIシフトは、彼ら(インテル)にとって本当のとどめとなった」とし、「単に、彼らには適切な能力がなかったということだ」と述べた。
インテルがクアルコムの買収提案を受け入れたとしても、規制上のハードルなどがあるため、買収が実現するかは不透明だ。しかし、スマートフォン用半導体で高いシェアを握るクアルコムがインテルを買収するという構想は、少し前まではほとんど考えられなかったことだ。
インテルは数十年にわたり時価総額で世界最大の半導体企業として君臨し、同社製の半導体はほぼ全てのパソコンやサーバーに搭載されていた。専門分野への特化がますます一般的になっていた業界において、インテルは独自の半導体の設計と製造の両方を手掛けるまれな存在であり、その両方で世界をリードしていた。
ところが、2021年初めにゲルシンガー氏がCEOに就任した頃には、インテルの魅力に陰りが生じ、最小のトランジスタと最速のチップを製造する競争でアジアのライバルに後れを取っていた。
かつてインテルに数十年勤務し、同社初の最高技術責任者(CTO)を務めたこともあるゲルシンガー氏は、アンディ・グローブ氏やポール・オッテリーニ氏などがCEOを務めていた時代のインテルの威信を取り戻そうとした。
そのためには、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国・サムスン電子といったアジアのライバルに追いつく必要があった。ゲルシンガー氏はまた、インテルの製造事業強化のために重点的に投資し、設計のみを手掛けるクアルコムなどの半導体企業に生産能力を売り込んで、TSMCやサムスンが支配するファウンドリー(受託製造)事業に参入する計画を立てていた。
それは多額の支出を伴う野心的な賭けだったが、成功させるための材料はそろっているように見えた。同社には、パソコンやサーバー向けにチップを製造する堅調な中核事業のほか、次の成長段階の資金調達に役立つかもしれない一連のサイドビジネスがあった。
ゲルシンガー氏は早急にインテルの財源を活用して、半導体受託生産事業を構築しようとした。CEO就任後の夏には、米半導体受託製造大手のグローバルファウンドリーズを約300億ドル(現在のレートで約4兆3000億円)で買収する交渉に入った。この買収計画は失敗に終わったが、同氏は2021年8月のWSJによるインタビューで、買収を狙い続ける姿勢を示し、「業界再編が起きる。(中略)このトレンドは続くだろう。われわれは再編を仕掛ける側になると思う」と述べていた。
ゲルシンガー氏はその後、イスラエルの半導体受託生産企業タワー・セミコンダクターを50億ドル超で買収するという考えに至った。だが、中国の規制当局が承認しなかったため、インテルは昨年、この計画を断念した。
インテルの受託製造事業は、2030年までにこの分野で世界2位の企業になるという、ゲルシンガー氏が定めた目標に向かって進み始めたが、出だしのペースは遅かった。同事業のトップが何度も交代した上、潜在的顧客の多くが技術的なつまずきを背景に事業の縮小・撤退に動いていたからだ。
エヌビディアの台頭
インテルのコスト負担が急増する中で、生成AIがブームを迎え始めた。それに伴って半導体需要は、インテルのCPU(中央演算処理装置)から、米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)へと移っていった。エヌビディア製品の設計は独特で、インテル製品よりも最先端AIシステムの構築・開発に適していた。供給の限られたエヌビディア製品にハイテク企業からの需要が殺到する一方、インテル製CPUの多くは在庫として積み上がった。
ゲルシンガー氏はインテルの再生計画を維持するためにコスト削減を強いられた。同社は2022年から数千人の人員削減に乗り出し、23年には配当を削減した。それでも十分ではなかった。ゲルシンガー氏は今年8月、1万5000人の人員削減計画を明らかにするとともに、来年の事業コストを100億ドル削減し、配当を見送る考えを示した。
同氏はその際、「AIの急激な台頭は私の想像をはるかに超えていた」とした上で、「(人員・コストの削減は)私のキャリアの中で最もつらい決断だった」と語った。
インテルは先週、新たな対策を発表し、追加のコスト削減策や、設計部門と製造部門の分離をさらに進めることなどを明らかにした。ただしゲルシンガー氏は、一部投資家が求めていた製造部門の売却やスピンオフ(分離・独立)にまでは踏み込まなかった。
ゲルシンガー氏は従業員に向けて「われわれは徹底的に戦い、これまで以上の成果を上げなければならない」とし、「それが当社を批判する人々を黙らせ、結果を示すための唯一の道だからだ。われわれは自分たちにその能力があることを知っている」と語った。
インテルの運命が好転する見込みは薄くなりつつあるが、まだ可能性はある、というのがアナリストの見方だ。同社は株価が下がっているため、買収の標的になりやすく、アクティビスト(物言う株主)の影響を受けやすくなっているものの、コスト削減はこの苦境を切り抜けるのに役立つだろう。
インテルの株価は19日の取引終了時点で、ドットコム・バブル後の最高値を記録した2020年初めの水準から70%近く下落していた。同じ期間に、エヌビディアの株価は18倍超に膨らんでいる。
インテルの株価は20日、クアルコムがインテルに買収提案をしたとWSJが報じたことを受け、3.3%高で終えた。週明け23日も3.3%高となった。
遅過ぎるかもしれない
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏によると、インテルの将来は、来年生産開始見込みの次世代チップ製造技術が成功するか否かにかかっている。インテルは、少なくとも技術的にはライバルを超えられると期待しているという。技術面で業界をリードする立場を回復すれば、利益率の改善や顧客からの信頼獲得につながる可能性がある。
それでも、インテルには消え去ることのない根本的な問題がある。AI向け半導体への積極的な投資が続く中で、中核半導体事業の早期回復が見込めないことだ。
ラスゴン氏は「戦略の是非を議論するのはよいが、問題は中核事業がその道筋を下支えしていないことだ」とした上で、この時点では「止めるには遅過ぎるかもしれない」と述べた。
クアルコムにとって、インテルの買収は半導体産業の新分野参入の助けとなる可能性がある。クアルコムは携帯電話向け半導体に特化し、アップルのiPhone(アイフォーン)などのサプライヤーである一方、近年では車載用やIoT(モノのインターネット)向け半導体も製品構成の中に加えている。インテルを買収すれば、パソコンやサーバー向け半導体という大規模部門が加わることになる。
だが、買収が実現した場合、クアルコムがインテルの製造事業を維持するかどうかは定かでない。製造事業を手掛けるインテルは、製造を外部委託するクアルコムとはビジネスモデルが大きく異なる。物作りは非常に複雑で高いコストがかかる。インテルの昨年の設備投資は258億ドルで、売上高に対する比率は約48%だった。クアルコムの昨年の設備投資は15億ドルで、売上高の4%強に過ぎない。
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Asa Fitchは、ウォールストリートジャーナルのサンフランシスコ支局の半導体企業(Intel、Nvidia、Qualcommなど)をカバーするレポーター
戦略上の失敗と予想外のAIブームで経営が弱体化 By Asa Fitch 2024年9月24日
米半導体大手インテルは3年前、時価総額が現在の2倍以上あり、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は企業買収を模索していた。
それが今では、インテル自身が買収の標的となっている。戦略上の失敗と人工知能(AI)ブームが相まって、米国で最も有名な半導体企業の運命は大きく変わった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は20日、米同業クアルコムがインテルに買収を打診したと報じたが、これは56年に及ぶインテルの歴史でほとんど見られなかった脆弱(ぜいじゃく)性を映している。同社が問題を抱えるようになったのは、ゲルシンガー氏が就任する前の製造分野での失敗がきっかけだった。そして経費のかさむ再生戦略を同氏が推し進める中で、状況は悪化した。この戦略は、AIに対する関心が爆発的に高まり、競合相手のエヌビディアが製造する製品の一種に半導体需要が根本的にシフトすることを予見していなかった。
CFRAリサーチのベテラン業界アナリスト、アンジェロ・ジーノ氏は「過去2~3年間のAIシフトは、彼ら(インテル)にとって本当のとどめとなった」とし、「単に、彼らには適切な能力がなかったということだ」と述べた。
インテルがクアルコムの買収提案を受け入れたとしても、規制上のハードルなどがあるため、買収が実現するかは不透明だ。しかし、スマートフォン用半導体で高いシェアを握るクアルコムがインテルを買収するという構想は、少し前まではほとんど考えられなかったことだ。
インテルは数十年にわたり時価総額で世界最大の半導体企業として君臨し、同社製の半導体はほぼ全てのパソコンやサーバーに搭載されていた。専門分野への特化がますます一般的になっていた業界において、インテルは独自の半導体の設計と製造の両方を手掛けるまれな存在であり、その両方で世界をリードしていた。
ところが、2021年初めにゲルシンガー氏がCEOに就任した頃には、インテルの魅力に陰りが生じ、最小のトランジスタと最速のチップを製造する競争でアジアのライバルに後れを取っていた。
かつてインテルに数十年勤務し、同社初の最高技術責任者(CTO)を務めたこともあるゲルシンガー氏は、アンディ・グローブ氏やポール・オッテリーニ氏などがCEOを務めていた時代のインテルの威信を取り戻そうとした。
そのためには、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国・サムスン電子といったアジアのライバルに追いつく必要があった。ゲルシンガー氏はまた、インテルの製造事業強化のために重点的に投資し、設計のみを手掛けるクアルコムなどの半導体企業に生産能力を売り込んで、TSMCやサムスンが支配するファウンドリー(受託製造)事業に参入する計画を立てていた。
それは多額の支出を伴う野心的な賭けだったが、成功させるための材料はそろっているように見えた。同社には、パソコンやサーバー向けにチップを製造する堅調な中核事業のほか、次の成長段階の資金調達に役立つかもしれない一連のサイドビジネスがあった。
ゲルシンガー氏は早急にインテルの財源を活用して、半導体受託生産事業を構築しようとした。CEO就任後の夏には、米半導体受託製造大手のグローバルファウンドリーズを約300億ドル(現在のレートで約4兆3000億円)で買収する交渉に入った。この買収計画は失敗に終わったが、同氏は2021年8月のWSJによるインタビューで、買収を狙い続ける姿勢を示し、「業界再編が起きる。(中略)このトレンドは続くだろう。われわれは再編を仕掛ける側になると思う」と述べていた。
ゲルシンガー氏はその後、イスラエルの半導体受託生産企業タワー・セミコンダクターを50億ドル超で買収するという考えに至った。だが、中国の規制当局が承認しなかったため、インテルは昨年、この計画を断念した。
インテルの受託製造事業は、2030年までにこの分野で世界2位の企業になるという、ゲルシンガー氏が定めた目標に向かって進み始めたが、出だしのペースは遅かった。同事業のトップが何度も交代した上、潜在的顧客の多くが技術的なつまずきを背景に事業の縮小・撤退に動いていたからだ。
エヌビディアの台頭
インテルのコスト負担が急増する中で、生成AIがブームを迎え始めた。それに伴って半導体需要は、インテルのCPU(中央演算処理装置)から、米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)へと移っていった。エヌビディア製品の設計は独特で、インテル製品よりも最先端AIシステムの構築・開発に適していた。供給の限られたエヌビディア製品にハイテク企業からの需要が殺到する一方、インテル製CPUの多くは在庫として積み上がった。
ゲルシンガー氏はインテルの再生計画を維持するためにコスト削減を強いられた。同社は2022年から数千人の人員削減に乗り出し、23年には配当を削減した。それでも十分ではなかった。ゲルシンガー氏は今年8月、1万5000人の人員削減計画を明らかにするとともに、来年の事業コストを100億ドル削減し、配当を見送る考えを示した。
同氏はその際、「AIの急激な台頭は私の想像をはるかに超えていた」とした上で、「(人員・コストの削減は)私のキャリアの中で最もつらい決断だった」と語った。
インテルは先週、新たな対策を発表し、追加のコスト削減策や、設計部門と製造部門の分離をさらに進めることなどを明らかにした。ただしゲルシンガー氏は、一部投資家が求めていた製造部門の売却やスピンオフ(分離・独立)にまでは踏み込まなかった。
ゲルシンガー氏は従業員に向けて「われわれは徹底的に戦い、これまで以上の成果を上げなければならない」とし、「それが当社を批判する人々を黙らせ、結果を示すための唯一の道だからだ。われわれは自分たちにその能力があることを知っている」と語った。
インテルの運命が好転する見込みは薄くなりつつあるが、まだ可能性はある、というのがアナリストの見方だ。同社は株価が下がっているため、買収の標的になりやすく、アクティビスト(物言う株主)の影響を受けやすくなっているものの、コスト削減はこの苦境を切り抜けるのに役立つだろう。
インテルの株価は19日の取引終了時点で、ドットコム・バブル後の最高値を記録した2020年初めの水準から70%近く下落していた。同じ期間に、エヌビディアの株価は18倍超に膨らんでいる。
インテルの株価は20日、クアルコムがインテルに買収提案をしたとWSJが報じたことを受け、3.3%高で終えた。週明け23日も3.3%高となった。
遅過ぎるかもしれない
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏によると、インテルの将来は、来年生産開始見込みの次世代チップ製造技術が成功するか否かにかかっている。インテルは、少なくとも技術的にはライバルを超えられると期待しているという。技術面で業界をリードする立場を回復すれば、利益率の改善や顧客からの信頼獲得につながる可能性がある。
それでも、インテルには消え去ることのない根本的な問題がある。AI向け半導体への積極的な投資が続く中で、中核半導体事業の早期回復が見込めないことだ。
ラスゴン氏は「戦略の是非を議論するのはよいが、問題は中核事業がその道筋を下支えしていないことだ」とした上で、この時点では「止めるには遅過ぎるかもしれない」と述べた。
クアルコムにとって、インテルの買収は半導体産業の新分野参入の助けとなる可能性がある。クアルコムは携帯電話向け半導体に特化し、アップルのiPhone(アイフォーン)などのサプライヤーである一方、近年では車載用やIoT(モノのインターネット)向け半導体も製品構成の中に加えている。インテルを買収すれば、パソコンやサーバー向け半導体という大規模部門が加わることになる。
だが、買収が実現した場合、クアルコムがインテルの製造事業を維持するかどうかは定かでない。製造事業を手掛けるインテルは、製造を外部委託するクアルコムとはビジネスモデルが大きく異なる。物作りは非常に複雑で高いコストがかかる。インテルの昨年の設備投資は258億ドルで、売上高に対する比率は約48%だった。クアルコムの昨年の設備投資は15億ドルで、売上高の4%強に過ぎない。
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Asa Fitchは、ウォールストリートジャーナルのサンフランシスコ支局の半導体企業(Intel、Nvidia、Qualcommなど)をカバーするレポーター
WSJは20日、米同業クアルコムがインテルに買収を打診したと報じた。
これは56年に及ぶインテルの歴史でほとんど見られなかった脆弱(ぜいじゃく)性を映している。同社が問題を抱えるようになったのは、ゲルシンガー氏が就任する前の製造分野での失敗がきっかけだった。
AIに対する関心が爆発的に高まり、競合相手のエヌビディアが製造する製品の一種に半導体需要が根本的にシフトすることを予見していなかった。
CFRAリサーチのベテラン業界アナリスト、アンジェロ・ジーノ氏は「過去2~3年間のAIシフトは、彼ら(インテル)にとって本当のとどめとなった」とし、「単に、彼らには適切な能力がなかったということだ」と述べたと、Asa Fitch。
スマートフォン用半導体で高いシェアを握るクアルコムがインテルを買収するという構想は、少し前まではほとんど考えられなかったことだとも。
インテルは数十年にわたり時価総額で世界最大の半導体企業として君臨し、同社製の半導体はほぼ全てのパソコンやサーバーに搭載されていた。
ところが、2021年初めにゲルシンガー氏がCEOに就任した頃には、インテルの魅力に陰りが生じ、最小のトランジスタと最速のチップを製造する競争でアジアのライバルに後れを取っていたのだそうです。
最高技術責任者(CTO)を務めたこともあるゲルシンガー氏は、アンディ・グローブ氏やポール・オッテリーニ氏などがCEOを務めていた時代のインテルの威信を取り戻そうとした。
そのためには、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国・サムスン電子といったアジアのライバルに追いつく必要があった。
ゲルシンガー氏は、インテルの製造事業強化のために重点的に投資し、クアルコムなどの半導体企業に生産能力を売り込んで、TSMCやサムスンが支配するファウンドリー(受託製造)事業に参入する計画を立てていたと、Asa Fitch。
ゲルシンガー氏は、CEO就任後の夏には、米半導体受託製造大手のグローバルファウンドリーズを約300億ドル(現在のレートで約4兆3000億円)で買収する交渉に入った。この買収計画は失敗に終わったが、買収を狙い続ける姿勢を示していたのだそうです。
インテルの受託製造事業は、2030年までにこの分野で世界2位の企業になるという、ゲルシンガー氏が定めた目標に向かって進み始めたが、出だしのペースは遅かった。
潜在的顧客の多くが技術的なつまずきを背景に事業の縮小・撤退に動いていたからだと、Asa Fitch。
インテルのコスト負担が急増する中で、生成AIがブームを迎え始めた。それに伴って半導体需要は、インテルのCPU(中央演算処理装置)から、米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)へと移っていったのだと。
エヌビディア製品の設計は独特で、インテル製品よりも最先端AIシステムの構築・開発に適していた。インテル製CPUの多くは在庫として積み上がったと、Asa Fitch。
ゲルシンガー氏はコスト削減を強いられ、数千人の人員削減に乗り出し、23年には配当を削減した。それでも十分ではなかった。
今年8月、1万5000人の人員削減計画を明らかにするとともに、来年の事業コストを100億ドル削減し、配当を見送る考えを示したのだそうです。
インテルの運命が好転する見込みは薄くなりつつあるが、まだ可能性はある、というのがアナリストの見方だと、Asa Fitch。
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏によると、インテルの将来は、来年生産開始見込みの次世代チップ製造技術が成功するか否かにかかっていると。
技術面で業界をリードする立場を回復すれば、利益率の改善や顧客からの信頼獲得につながる可能性がある。
それでも、インテルには消え去ることのない根本的な問題がある。中核半導体事業の早期回復が見込めないことだと、Asa Fitch。
ラスゴン氏は「戦略の是非を議論するのはよいが、問題は中核事業がその道筋を下支えしていないことだ」とした上で、この時点では「止めるには遅過ぎるかもしれない」と述べたのだそうです。
クアルコムにとって、インテルの買収は半導体産業の新分野参入の助けとなる可能性がある。
だが、買収が実現した場合、クアルコムがインテルの製造事業を維持するかどうかは定かでない。製造事業を手掛けるインテルは、製造を外部委託するクアルコムとはビジネスモデルが大きく異なる。物作りは非常に複雑で高いコストがかかる。インテルの昨年の設備投資は258億ドルで、売上高に対する比率は約48%だった。クアルコムの昨年の設備投資は15億ドルで、売上高の4%強に過ぎないと、Asa Fitch。
「インテル入ってる」のCM。当然入っていて世界を凌駕していたインテル。
技術革新の激しいこの業界。そのインテルが買収される話が出る世の中。「ドッグイヤー」と言う言葉がかつてはやりましたが、AIブームの到来で、更に大きな変革が進んでいるのですね。
# 冒頭の画像は、インテル社屋
この花の名前は、チトニア フィエスタ デル ソル
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
月刊Hanada2024年2月号 - 花田紀凱, 月刊Hanada編集部 - Google ブックス