ロシア本土とクリミア半島を結ぶ大動脈のクリミア大橋が、8日破壊された。
これを受けて、露国家安全保障・国防会議が10日開かれた。プーチン氏最大の課題は「特別軍事作戦」の失敗と最大100万人の予備役動員に対し噴き出す国民の怒りをかわすことにある。
議長を務めるプーチン氏は「国防省の提案と参謀本部の計画に従い、ウクライナのエネルギー、軍事、通信施設に対し空・海・陸の長距離精密兵器による大規模な攻撃が行われた。わが国の領土でテロ攻撃を行う試みがさらに行われた場合、ロシアの報復は厳しく、もたらされた脅威に見合ったものになる」と述べたのだそうです。
しかし、この報復で、プーチンは逆に「出口戦略」を失い、自らを追い込むことになったと説いていただいているのは、元産経新聞ロンドン支局長で、国際ジャーナリストの木村正人氏。
クリミア大橋(鉄道道路併用橋)はクリミアを併合した、プーチン氏のレガシーを象徴する建造物。
このところの戦況は、ウクライナ軍の反攻で、敗退が見られ、国内では、部分的徴兵で国民に動揺がひろがり、国外脱出者が大量に発生。
プーチン氏は9月21日、国民向けビデオ演説で大規模な予備役動員について理解を求めるとともに「ワシントン、ロンドン、ブリュッセルは核の威嚇に手を染めている。北大西洋条約機構(NATO)主要国高官はロシアに対し核兵器を使う可能性を容認している。ロシアにもさまざまな兵器があり、中にはNATO諸国の兵器より近代的なものもある」と牽制。
えっ。プーチンの方が、核兵器使用をちらつかせて、けん制しているのが現状なのに!
国内世論誘導向け発言。
核兵器使用の懸念が膨らむ中、露大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10月9日、RIAノーボスチとのインタビューで「クリミア大橋爆破はロシアの重要民間インフラの破壊が目的だということはロシアが核戦力を行使する可能性があり、核ドクトリンに該当するか」と質問され、「いいえ。完全に間違った質問の組み立てだ」と全面的に否定したのだそうです。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)はクリミア大橋爆破が引き起こした波紋について詳細に検討している。「クリミア大橋への攻撃はロシア軍の失敗や予備役動員とも相まってロシアの好戦ナショナリストからプーチンとクレムリンに対する直接的な批判を生み出している。軍事ブロガーは両者が重大な出来事に対処していないと批判している」のだそうです。
黒海艦隊旗艦モスクワ撃沈やアゾフスターリ製鉄所で最後まで戦ったウクライナ兵の捕虜交換にプーチン氏とクレムリンは一貫して対処してこなかったとの批判が渦巻いている。その一方で、プーチン氏を支持し続け、これまでの失敗をロシア軍司令部や国防省になすりつける軍事ブロガーもいる。プーチン氏の頭の中にあるのは今や自らの生き残りだけだろうと。
メドベージェフがクリミア大橋爆破はレッドラインだと公言したものの、プーチンが頷かなかったことが軍事ブロガーをさらに失望させたと、ISW。
ロシア国民はすでに動員される恐怖で頭がいっぱいだ。プーチン氏とクレムリンはロシア軍と国防省を軍事的失敗のスケープゴートにするため軍事ブロガーの嫌悪感を誘導しているとも考えられる。愛国的な民族主義者や国家主義者は治安組織や国防省を非難しているが、長期的にみるとプーチン政権を弱体化させかねない現象だとISWは分析しているのだそうです。
ISWは「ロシア軍がウクライナの人口密集地や重要インフラへの攻撃を拡大しても、あるいはプーチンがウクライナに対して戦術核を使用することを望んでもウクライナ軍の反攻を一時的に止めることができるだけだ。その代償として残されたロシアの軍事力は壊滅的な打撃を受けることになる」と結論付けているのだそうです。
米シンクタンク、ランド研究所の上級政治科学研究員サミュエル・チャラップ氏は「プーチンは賭けに出た。政治指導者が『ハッタリではない』と言わなければならない時、自分への信頼性が損なわれていることを認識している。ロシアは敵の意思決定に影響を与える努力は失敗したと結論付けたと言える」とツイートしたと、木村氏。
バイデン米大統領は、上院選挙資金調達パーティーで、「プーチンの出口は何なのか。彼はどこに出口を見つけるつもりなのか」と戦術核兵器使用の選択肢をチラつかせ続けるプーチン氏を強く牽制したのだそうです。
一方、ベン・ウォレス英国防相は、英与党・保守党大会のミニ集会で「戦術核使用がロシアの軍事ドクトリンにあるのは明白だ。ロシアの戦術核は広島に投下された原爆の5~10倍の威力がある。プーチンが戦術核を使用する可能性は極めて低い」との見方を示したと。
米紙ワシントンポストは、側近の1人がウクライナ戦争におけるプーチン氏の「広範な軍事的欠陥」を直接批判したとの情報を米情報機関が入手したと報じた。ウクライナ戦争の出口がなくなったプーチン氏はいよいよ崖っぷちに追い詰められていると木村氏。
崖っぷちのプーチンが、どう動くのでしょうか。
# 冒頭の画像は、クリミア大橋爆破の瞬間
ケブカワタ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
これを受けて、露国家安全保障・国防会議が10日開かれた。プーチン氏最大の課題は「特別軍事作戦」の失敗と最大100万人の予備役動員に対し噴き出す国民の怒りをかわすことにある。
議長を務めるプーチン氏は「国防省の提案と参謀本部の計画に従い、ウクライナのエネルギー、軍事、通信施設に対し空・海・陸の長距離精密兵器による大規模な攻撃が行われた。わが国の領土でテロ攻撃を行う試みがさらに行われた場合、ロシアの報復は厳しく、もたらされた脅威に見合ったものになる」と述べたのだそうです。
しかし、この報復で、プーチンは逆に「出口戦略」を失い、自らを追い込むことになったと説いていただいているのは、元産経新聞ロンドン支局長で、国際ジャーナリストの木村正人氏。
クリミア大橋爆破にキレたプーチン、キーウへの報復で逆に失った「出口戦略」 「ハッタリではない」と戦術核をチラつかせたプーチン、核使用はありえるのか | JBpress (ジェイビープレス) 2022.10.11(火) 元産経新聞ロンドン支局長 国際ジャーナリスト・木村正人
[ロンドン発]ロシア本土とクリミア半島を結ぶ大動脈のクリミア大橋が破壊された。
これを受けて、ウラジーミル・プーチン露大統領が「国家存立危機事態」を口実に核兵器を使用するとの懸念が膨らむ中、露国家安全保障・国防会議が10日開かれた。プーチン氏最大の課題は「特別軍事作戦」の失敗と最大100万人の予備役動員に対し噴き出す国民の怒りをかわすことにある。
同会議の議長を務めるプーチン氏は「国防省の提案と参謀本部の計画に従い、ウクライナのエネルギー、軍事、通信施設に対し空・海・陸の長距離精密兵器による大規模な攻撃が行われた。わが国の領土でテロ攻撃を行う試みがさらに行われた場合、ロシアの報復は厳しく、もたらされた脅威に見合ったものになる」と述べた。
クリミア大橋はプーチンの「レガシー」
クリミア大橋(鉄道道路併用橋)はプーチン氏がクリミアを併合した後の2015年、クリミア半島とロシア本土を結ぶケルチ海峡フェリーの代替手段として着工された。道路部分は18年開通し、プーチン氏がコンボイのトラック1台を運転して開通を祝った。鉄道部分は19年に開通した。全長18.1キロメートル。まさにプーチン氏のレガシーを象徴する建造物だ。
プーチン氏は9日、クリミア大橋爆破を捜査するアレクサンドル・バストリキン捜査委員会委員長と対応を協議し「極めて重要なロシアの民間インフラを破壊することを目的としたテロ攻撃であることは間違いない。計画し、実行した黒幕はウクライナの情報機関だ」とウクライナを指弾した。
プーチン氏の発言は、バストリキン委員長の「爆発したトラックの手配に関わった人物を特定した。明らかなテロ行為だ。クリミアにとって極めて重要な大規模民間インフラ施設を破壊することを目的にウクライナの特殊部隊によって準備されたテロ行為だとの明確な結論に達した。共犯者としてロシア市民と外国人が関わっている」との報告を受けたものだ。
偶然でなければ、相当高度な作戦
ロシア国営タス通信によると、前露大統領で現在は露国家安全保障・国防会議の副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ氏は「犯罪者であるキーウ政権によるテロ行為であり破壊工作だ。ロシアはこの犯罪に対し世界の他の場所で行われているのと同じようにテロリストを直接殺害するしかない。これがロシア国民の期待するところだ」と述べた。
バストリキン委員長の説明では、爆発物を積んだトラックはブルガリア、ジョージア(旧グルジア)、北オセチア、クリミア半島につながるロシアのクラスノダールを経由している。7つの燃料タンクを積んだ列車が並走するタイミングでトラックが橋の上で爆発し、燃料タンクに引火しており、偶然でなければ、相当高度な作戦とみなすことができる。
14年にクリミアを併合した際、プーチン氏は「ロシアが主要な核保有国の一つであることを忘れないでほしい。われわれに干渉しないことが最善であることを理解すべきだ」と米欧を牽制した。この時は核戦力を今回のウクライナ侵攻時のように「特別警戒態勢」に引き上げなかったものの、そうすることも考えたと後に明らかにしている。
18年には「潜在的な侵略者がロシアを攻撃していると確信した時にだけ核兵器を使用する」と明言。20年の大統領令で(1)自国及び同盟国に対する核兵器など大量破壊兵器が使用される(2)通常兵器を使った侵略により国家の存立そのものが脅かされる(国家存立危機事態の)場合には核兵器の使用を検討する「核ドクトリン」を明らかにしている。
クリミア大橋爆破は核ドクトリンに該当するのか
プーチン氏は9月21日、国民向けビデオ演説で大規模な予備役動員について理解を求めるとともに「ワシントン、ロンドン、ブリュッセルは核の威嚇に手を染めている。北大西洋条約機構(NATO)主要国高官はロシアに対し核兵器を使う可能性を容認している。ロシアにもさまざまな兵器があり、中にはNATO諸国の兵器より近代的なものもある」と牽制した。
「領土保全への脅威が生じた場合、ロシアと国民を守るため、われわれは利用可能なあらゆる兵器システムを必ず使用する。これはハッタリではない。祖国の領土保全、独立と自由は、利用可能なすべてのシステムによって防衛されている。ロシアに対して核の威嚇を使う人たちは状況が変わることがあることを自覚するべきだ」と強調した。
同月30日にはクレムリンで上下両院議員らを前に演説し、占領するウクライナの東部ドネツク、ルハンスク、南部ザポリージャ、ヘルソン計4州(ウクライナ国土の約15%)の併合を宣言した。4 州への攻撃は核兵器使用が認められる「国家存立危機事態」とみなすための布石とみられていた。
核兵器使用の懸念が膨らむ中、露大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10月9日、RIAノーボスチとのインタビューで「クリミア大橋爆破はロシアの重要民間インフラの破壊が目的だということはロシアが核戦力を行使する可能性があり、核ドクトリンに該当するか」と質問され、「いいえ。完全に間違った質問の組み立てだ」と全面的に否定した。
はっきりしないプーチン氏のレッドライン
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)はクリミア大橋爆破が引き起こした波紋について詳細に検討している。「クリミア大橋への攻撃はロシア軍の失敗や予備役動員とも相まってロシアの好戦ナショナリストからプーチンとクレムリンに対する直接的な批判を生み出している。軍事ブロガーは両者が重大な出来事に対処していないと批判している」という。
黒海艦隊旗艦モスクワ撃沈やアゾフスターリ製鉄所で最後まで戦ったウクライナ兵の捕虜交換にプーチン氏とクレムリンは一貫して対処してこなかったとの批判が渦巻いている。その一方で、プーチン氏を支持し続け、これまでの失敗をロシア軍司令部や国防省になすりつける軍事ブロガーもいる。プーチン氏の頭の中にあるのは今や自らの生き残りだけだろう。
「プーチンはウクライナ侵攻前、NATOの東方拡大と核兵器を含む戦略兵器システムのウクライナへの供与をレッドライン(越えてはならない一線)としたが、侵攻後はこのレッドラインを公には調整していない。メドベージェフがクリミア大橋爆破はレッドラインだと公言したものの、プーチンが頷かなかったことが軍事ブロガーをさらに失望させた」(ISW)
ロシア国民はすでに動員される恐怖で頭がいっぱいだ。プーチン氏とクレムリンはロシア軍と国防省を軍事的失敗のスケープゴートにするため軍事ブロガーの嫌悪感を誘導しているとも考えられる。愛国的な民族主義者や国家主義者は治安組織や国防省を非難しているが、長期的にみるとプーチン政権を弱体化させかねない現象だとISWは分析している。
キーウやリビウへの報復攻撃
10日、クリミア大橋爆破への報復として、首都キーウや西部リビウなどウクライナの主要都市に少なくとも75発のミサイルが一斉に撃ち込まれた(英BBC放送)。キーウへのミサイル攻撃で少なくとも8人の民間人が死亡、24人が負傷した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ロシアはわれわれを地球上から抹殺しようとしている」と非難した。
ISWは「ロシア軍がウクライナの人口密集地や重要インフラへの攻撃を拡大しても、あるいはプーチンがウクライナに対して戦術核を使用することを望んでもウクライナ軍の反攻を一時的に止めることができるだけだ。その代償として残されたロシアの軍事力は壊滅的な打撃を受けることになる」と結論付ける。
米シンクタンク、ランド研究所の上級政治科学研究員サミュエル・チャラップ氏は「プーチンは賭けに出た。政治指導者が『ハッタリではない』と言わなければならない時、自分への信頼性が損なわれていることを認識している。ロシアは敵の意思決定に影響を与える努力は失敗したと結論付けたと言える」とツイートした。
元カザフスタンやジョージアの米国大使を務めた非常勤上級研究員ウィリアム・コートニー氏は「プーチン政権は賭け金を増やし、より大きなリスクを取った。戦場での損失が長引いたり、制裁が経済に影響したり、エリートや治安部門の一部が政権に不満を持ったり、国民の不安が高まったりすれば、不人気な予備役動員は政権交代も誘発しかねない」と指摘する。
出口を失ったプーチン氏
プーチン氏が70歳の誕生日を迎える前日の10月6日、ジョー・バイデン米大統領はニューヨークのジェームズ・マードック氏(メディア王ルパート・マードック氏の次男)邸で行われた上院選挙資金調達パーティーで「ジョン・F・ケネディ米大統領と1962年のキューバ・ミサイル危機以来、われわれはハルマゲドンの恐怖に直面したことはない」と切り出した。
「私がよく知る男がいる。彼が戦術核兵器や生物・化学兵器使用の可能性について話す時、冗談を言っているわけではない。しかしハルマゲドンを避けながら戦術核を簡単に使用できる方法などない。プーチンの出口は何なのか。彼はどこに出口を見つけるつもりなのか」と戦術核兵器使用の選択肢をチラつかせ続けるプーチン氏を強く牽制した。
一方、ベン・ウォレス英国防相は同月2日、バーミンガムでの英与党・保守党大会のミニ集会で「戦術核使用がロシアの軍事ドクトリンにあるのは明白だ。ロシアの戦術核は広島に投下された原爆の5~10倍の威力がある。プーチンが戦術核を使用する可能性は極めて低い」との見方を示した。
「9月にウズベキスタンで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議でインドや中国の首脳と会談した際、何が受け入れられ、何が受け入れられないかを非常に明確に理解させられたはずだ」とウォレス氏は言う。この無謀な戦争は、ウクライナはロシアの一部だという間違った歴史観とプーチン氏のレガシー構築のためだけに行われた。
プーチン氏の体裁を保つだけの自暴自棄の核兵器使用で得をする人は誰もいない。米紙ワシントンポストは、側近の1人がウクライナ戦争におけるプーチン氏の「広範な軍事的欠陥」を直接批判したとの情報を米情報機関が入手したと報じた。ウクライナ戦争の出口がなくなったプーチン氏はいよいよ崖っぷちに追い詰められている。
[ロンドン発]ロシア本土とクリミア半島を結ぶ大動脈のクリミア大橋が破壊された。
これを受けて、ウラジーミル・プーチン露大統領が「国家存立危機事態」を口実に核兵器を使用するとの懸念が膨らむ中、露国家安全保障・国防会議が10日開かれた。プーチン氏最大の課題は「特別軍事作戦」の失敗と最大100万人の予備役動員に対し噴き出す国民の怒りをかわすことにある。
同会議の議長を務めるプーチン氏は「国防省の提案と参謀本部の計画に従い、ウクライナのエネルギー、軍事、通信施設に対し空・海・陸の長距離精密兵器による大規模な攻撃が行われた。わが国の領土でテロ攻撃を行う試みがさらに行われた場合、ロシアの報復は厳しく、もたらされた脅威に見合ったものになる」と述べた。
クリミア大橋はプーチンの「レガシー」
クリミア大橋(鉄道道路併用橋)はプーチン氏がクリミアを併合した後の2015年、クリミア半島とロシア本土を結ぶケルチ海峡フェリーの代替手段として着工された。道路部分は18年開通し、プーチン氏がコンボイのトラック1台を運転して開通を祝った。鉄道部分は19年に開通した。全長18.1キロメートル。まさにプーチン氏のレガシーを象徴する建造物だ。
プーチン氏は9日、クリミア大橋爆破を捜査するアレクサンドル・バストリキン捜査委員会委員長と対応を協議し「極めて重要なロシアの民間インフラを破壊することを目的としたテロ攻撃であることは間違いない。計画し、実行した黒幕はウクライナの情報機関だ」とウクライナを指弾した。
プーチン氏の発言は、バストリキン委員長の「爆発したトラックの手配に関わった人物を特定した。明らかなテロ行為だ。クリミアにとって極めて重要な大規模民間インフラ施設を破壊することを目的にウクライナの特殊部隊によって準備されたテロ行為だとの明確な結論に達した。共犯者としてロシア市民と外国人が関わっている」との報告を受けたものだ。
偶然でなければ、相当高度な作戦
ロシア国営タス通信によると、前露大統領で現在は露国家安全保障・国防会議の副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ氏は「犯罪者であるキーウ政権によるテロ行為であり破壊工作だ。ロシアはこの犯罪に対し世界の他の場所で行われているのと同じようにテロリストを直接殺害するしかない。これがロシア国民の期待するところだ」と述べた。
バストリキン委員長の説明では、爆発物を積んだトラックはブルガリア、ジョージア(旧グルジア)、北オセチア、クリミア半島につながるロシアのクラスノダールを経由している。7つの燃料タンクを積んだ列車が並走するタイミングでトラックが橋の上で爆発し、燃料タンクに引火しており、偶然でなければ、相当高度な作戦とみなすことができる。
14年にクリミアを併合した際、プーチン氏は「ロシアが主要な核保有国の一つであることを忘れないでほしい。われわれに干渉しないことが最善であることを理解すべきだ」と米欧を牽制した。この時は核戦力を今回のウクライナ侵攻時のように「特別警戒態勢」に引き上げなかったものの、そうすることも考えたと後に明らかにしている。
18年には「潜在的な侵略者がロシアを攻撃していると確信した時にだけ核兵器を使用する」と明言。20年の大統領令で(1)自国及び同盟国に対する核兵器など大量破壊兵器が使用される(2)通常兵器を使った侵略により国家の存立そのものが脅かされる(国家存立危機事態の)場合には核兵器の使用を検討する「核ドクトリン」を明らかにしている。
クリミア大橋爆破は核ドクトリンに該当するのか
プーチン氏は9月21日、国民向けビデオ演説で大規模な予備役動員について理解を求めるとともに「ワシントン、ロンドン、ブリュッセルは核の威嚇に手を染めている。北大西洋条約機構(NATO)主要国高官はロシアに対し核兵器を使う可能性を容認している。ロシアにもさまざまな兵器があり、中にはNATO諸国の兵器より近代的なものもある」と牽制した。
「領土保全への脅威が生じた場合、ロシアと国民を守るため、われわれは利用可能なあらゆる兵器システムを必ず使用する。これはハッタリではない。祖国の領土保全、独立と自由は、利用可能なすべてのシステムによって防衛されている。ロシアに対して核の威嚇を使う人たちは状況が変わることがあることを自覚するべきだ」と強調した。
同月30日にはクレムリンで上下両院議員らを前に演説し、占領するウクライナの東部ドネツク、ルハンスク、南部ザポリージャ、ヘルソン計4州(ウクライナ国土の約15%)の併合を宣言した。4 州への攻撃は核兵器使用が認められる「国家存立危機事態」とみなすための布石とみられていた。
核兵器使用の懸念が膨らむ中、露大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10月9日、RIAノーボスチとのインタビューで「クリミア大橋爆破はロシアの重要民間インフラの破壊が目的だということはロシアが核戦力を行使する可能性があり、核ドクトリンに該当するか」と質問され、「いいえ。完全に間違った質問の組み立てだ」と全面的に否定した。
はっきりしないプーチン氏のレッドライン
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)はクリミア大橋爆破が引き起こした波紋について詳細に検討している。「クリミア大橋への攻撃はロシア軍の失敗や予備役動員とも相まってロシアの好戦ナショナリストからプーチンとクレムリンに対する直接的な批判を生み出している。軍事ブロガーは両者が重大な出来事に対処していないと批判している」という。
黒海艦隊旗艦モスクワ撃沈やアゾフスターリ製鉄所で最後まで戦ったウクライナ兵の捕虜交換にプーチン氏とクレムリンは一貫して対処してこなかったとの批判が渦巻いている。その一方で、プーチン氏を支持し続け、これまでの失敗をロシア軍司令部や国防省になすりつける軍事ブロガーもいる。プーチン氏の頭の中にあるのは今や自らの生き残りだけだろう。
「プーチンはウクライナ侵攻前、NATOの東方拡大と核兵器を含む戦略兵器システムのウクライナへの供与をレッドライン(越えてはならない一線)としたが、侵攻後はこのレッドラインを公には調整していない。メドベージェフがクリミア大橋爆破はレッドラインだと公言したものの、プーチンが頷かなかったことが軍事ブロガーをさらに失望させた」(ISW)
ロシア国民はすでに動員される恐怖で頭がいっぱいだ。プーチン氏とクレムリンはロシア軍と国防省を軍事的失敗のスケープゴートにするため軍事ブロガーの嫌悪感を誘導しているとも考えられる。愛国的な民族主義者や国家主義者は治安組織や国防省を非難しているが、長期的にみるとプーチン政権を弱体化させかねない現象だとISWは分析している。
キーウやリビウへの報復攻撃
10日、クリミア大橋爆破への報復として、首都キーウや西部リビウなどウクライナの主要都市に少なくとも75発のミサイルが一斉に撃ち込まれた(英BBC放送)。キーウへのミサイル攻撃で少なくとも8人の民間人が死亡、24人が負傷した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ロシアはわれわれを地球上から抹殺しようとしている」と非難した。
ISWは「ロシア軍がウクライナの人口密集地や重要インフラへの攻撃を拡大しても、あるいはプーチンがウクライナに対して戦術核を使用することを望んでもウクライナ軍の反攻を一時的に止めることができるだけだ。その代償として残されたロシアの軍事力は壊滅的な打撃を受けることになる」と結論付ける。
米シンクタンク、ランド研究所の上級政治科学研究員サミュエル・チャラップ氏は「プーチンは賭けに出た。政治指導者が『ハッタリではない』と言わなければならない時、自分への信頼性が損なわれていることを認識している。ロシアは敵の意思決定に影響を与える努力は失敗したと結論付けたと言える」とツイートした。
元カザフスタンやジョージアの米国大使を務めた非常勤上級研究員ウィリアム・コートニー氏は「プーチン政権は賭け金を増やし、より大きなリスクを取った。戦場での損失が長引いたり、制裁が経済に影響したり、エリートや治安部門の一部が政権に不満を持ったり、国民の不安が高まったりすれば、不人気な予備役動員は政権交代も誘発しかねない」と指摘する。
出口を失ったプーチン氏
プーチン氏が70歳の誕生日を迎える前日の10月6日、ジョー・バイデン米大統領はニューヨークのジェームズ・マードック氏(メディア王ルパート・マードック氏の次男)邸で行われた上院選挙資金調達パーティーで「ジョン・F・ケネディ米大統領と1962年のキューバ・ミサイル危機以来、われわれはハルマゲドンの恐怖に直面したことはない」と切り出した。
「私がよく知る男がいる。彼が戦術核兵器や生物・化学兵器使用の可能性について話す時、冗談を言っているわけではない。しかしハルマゲドンを避けながら戦術核を簡単に使用できる方法などない。プーチンの出口は何なのか。彼はどこに出口を見つけるつもりなのか」と戦術核兵器使用の選択肢をチラつかせ続けるプーチン氏を強く牽制した。
一方、ベン・ウォレス英国防相は同月2日、バーミンガムでの英与党・保守党大会のミニ集会で「戦術核使用がロシアの軍事ドクトリンにあるのは明白だ。ロシアの戦術核は広島に投下された原爆の5~10倍の威力がある。プーチンが戦術核を使用する可能性は極めて低い」との見方を示した。
「9月にウズベキスタンで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議でインドや中国の首脳と会談した際、何が受け入れられ、何が受け入れられないかを非常に明確に理解させられたはずだ」とウォレス氏は言う。この無謀な戦争は、ウクライナはロシアの一部だという間違った歴史観とプーチン氏のレガシー構築のためだけに行われた。
プーチン氏の体裁を保つだけの自暴自棄の核兵器使用で得をする人は誰もいない。米紙ワシントンポストは、側近の1人がウクライナ戦争におけるプーチン氏の「広範な軍事的欠陥」を直接批判したとの情報を米情報機関が入手したと報じた。ウクライナ戦争の出口がなくなったプーチン氏はいよいよ崖っぷちに追い詰められている。
クリミア大橋(鉄道道路併用橋)はクリミアを併合した、プーチン氏のレガシーを象徴する建造物。
このところの戦況は、ウクライナ軍の反攻で、敗退が見られ、国内では、部分的徴兵で国民に動揺がひろがり、国外脱出者が大量に発生。
プーチン氏は9月21日、国民向けビデオ演説で大規模な予備役動員について理解を求めるとともに「ワシントン、ロンドン、ブリュッセルは核の威嚇に手を染めている。北大西洋条約機構(NATO)主要国高官はロシアに対し核兵器を使う可能性を容認している。ロシアにもさまざまな兵器があり、中にはNATO諸国の兵器より近代的なものもある」と牽制。
えっ。プーチンの方が、核兵器使用をちらつかせて、けん制しているのが現状なのに!
国内世論誘導向け発言。
核兵器使用の懸念が膨らむ中、露大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10月9日、RIAノーボスチとのインタビューで「クリミア大橋爆破はロシアの重要民間インフラの破壊が目的だということはロシアが核戦力を行使する可能性があり、核ドクトリンに該当するか」と質問され、「いいえ。完全に間違った質問の組み立てだ」と全面的に否定したのだそうです。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)はクリミア大橋爆破が引き起こした波紋について詳細に検討している。「クリミア大橋への攻撃はロシア軍の失敗や予備役動員とも相まってロシアの好戦ナショナリストからプーチンとクレムリンに対する直接的な批判を生み出している。軍事ブロガーは両者が重大な出来事に対処していないと批判している」のだそうです。
黒海艦隊旗艦モスクワ撃沈やアゾフスターリ製鉄所で最後まで戦ったウクライナ兵の捕虜交換にプーチン氏とクレムリンは一貫して対処してこなかったとの批判が渦巻いている。その一方で、プーチン氏を支持し続け、これまでの失敗をロシア軍司令部や国防省になすりつける軍事ブロガーもいる。プーチン氏の頭の中にあるのは今や自らの生き残りだけだろうと。
メドベージェフがクリミア大橋爆破はレッドラインだと公言したものの、プーチンが頷かなかったことが軍事ブロガーをさらに失望させたと、ISW。
ロシア国民はすでに動員される恐怖で頭がいっぱいだ。プーチン氏とクレムリンはロシア軍と国防省を軍事的失敗のスケープゴートにするため軍事ブロガーの嫌悪感を誘導しているとも考えられる。愛国的な民族主義者や国家主義者は治安組織や国防省を非難しているが、長期的にみるとプーチン政権を弱体化させかねない現象だとISWは分析しているのだそうです。
ISWは「ロシア軍がウクライナの人口密集地や重要インフラへの攻撃を拡大しても、あるいはプーチンがウクライナに対して戦術核を使用することを望んでもウクライナ軍の反攻を一時的に止めることができるだけだ。その代償として残されたロシアの軍事力は壊滅的な打撃を受けることになる」と結論付けているのだそうです。
米シンクタンク、ランド研究所の上級政治科学研究員サミュエル・チャラップ氏は「プーチンは賭けに出た。政治指導者が『ハッタリではない』と言わなければならない時、自分への信頼性が損なわれていることを認識している。ロシアは敵の意思決定に影響を与える努力は失敗したと結論付けたと言える」とツイートしたと、木村氏。
バイデン米大統領は、上院選挙資金調達パーティーで、「プーチンの出口は何なのか。彼はどこに出口を見つけるつもりなのか」と戦術核兵器使用の選択肢をチラつかせ続けるプーチン氏を強く牽制したのだそうです。
一方、ベン・ウォレス英国防相は、英与党・保守党大会のミニ集会で「戦術核使用がロシアの軍事ドクトリンにあるのは明白だ。ロシアの戦術核は広島に投下された原爆の5~10倍の威力がある。プーチンが戦術核を使用する可能性は極めて低い」との見方を示したと。
米紙ワシントンポストは、側近の1人がウクライナ戦争におけるプーチン氏の「広範な軍事的欠陥」を直接批判したとの情報を米情報機関が入手したと報じた。ウクライナ戦争の出口がなくなったプーチン氏はいよいよ崖っぷちに追い詰められていると木村氏。
崖っぷちのプーチンが、どう動くのでしょうか。
# 冒頭の画像は、クリミア大橋爆破の瞬間
ケブカワタ
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA