日本はガソリンや灯油などになる原油の99%以上を輸入に頼っていることは衆知のことですが、輸入先はサウジアラビアが35.7%、アラブ首長国連邦(UAE)が24.5%となっており、中東地域が8割以上を占めているのだそうです。
そのUAEからの輸入量の約4分の 1にあたる量の油田権益保有期限切れが2018年3月に迫り、契約更新に向けた交渉が、英BPや仏トタルなど石油メジャー、更には中国、韓国の参入もあって競争激化が進んでいるのだそうです。
キーマンとされるのが、アブダビ首長国のムハンマド皇太子。国の収益源の多様化などを進めてきた実力者ですね。
世耕経産相は、石油化学製品の生産や中小企業支援など資源開発以外の分野でも新たな協力関係を結び、貢献度をアピールしたい考えを明らかにしています。
また、国際石油開発帝石(1NPEX)は、石油メジャー首位の米エクソンモービルなどと連携するなど、国際的な連合での権益維持も視野に入れているのだそうです。
「パリ協定」の発効や電気自動車の普及などで、需要は頭打ちになるとの見方がありますが、契約が打ち切られれば、生産した原油を日本が優先的に輸入するのが難しくなるおそれがあり、当面の日本のエネルギー安全保障への影響は大きいと言えます。
日本の交渉団の手腕に期待ですね。
# 冒頭の画像は、アラビア石油 上部ザクム油田
ボケの蕾
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そのUAEからの輸入量の約4分の 1にあたる量の油田権益保有期限切れが2018年3月に迫り、契約更新に向けた交渉が、英BPや仏トタルなど石油メジャー、更には中国、韓国の参入もあって競争激化が進んでいるのだそうです。
UAE油田権益争奪戦 日本企業 来春契約切れ (10/7 読売朝刊)
日本企業がアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ沖のペルシャ湾に持つ複数の油田権益の保有期限が2018年3月に迫り、契約更新に向けた交渉が大詰めを迎えつつある。UAEは日本の主要な原油輸入先で、権益を維持できるかどうかは日本のエネルギー調達に大きく影響する。欧米の資源大手や中国なども権益確保を狙って攻勢を強めており、交渉の行方は楽観できない情勢だ。 (関根晃次郎)
欧米や中韓攻勢
■4割が集中
アブダビ沖のペルシャ湾には、国際石油開発帝石(1NPEX)や大手商社など日本企業が世界に持つ油田権益の約4割が集中している。
今回、契約見直しの対象となるのは、日本企業の権益がある油田では10か所前後になる模様だ。日本勢の持ち分は日量20万バレル規模とされ、これが18年3月に期限を迎える。日本のUAEからの輸入量(2016年日量82万バレル)の約4分の1にあたる規模だ。
経済産業省は「契約が打ち切られれば、生産した原油を日本が優先的に輸入するのが難しくなるおそれがある」と懸念する。
■競争激化
現時点で、日本勢との契約延長が決まったのは、小規模な油田「ウムアダルク」と「サター」の2か所にとどまる。延長が未確定の権益は産油量ベースで約9割に上る。特に注目される油田が大型の「下部ザクム」や「ウムシャイフ」などで、日本にとって「絶対落とせない案件」(日本の資源大手)だ。
アブダビ沖で取れる原油は、周辺のイラクなどに比べて不純物が少ない特徴がある。高値での販売が見込めるため、英BPや仏トタルなど石油メジャーと呼ばれる欧米の資源大手も期限切れを見越して権益獲得に動いている。
「今回のように、まとまった大規模な油田権益の期限切れは約40年ぶり」(交渉関係者)とされることも競争に拍車をかけている。
資源大手の中には、高い掘削技術などを売りに、契約期限がまだ先のアブダビ沖の最大油田「上部ザクム」も含めて、効率的に原油を生産する体制整備を提案している企業もあるという。
現在は権益を持たない中国や韓国も、国を挙げてUAE側との交渉を続けている模様だ。
■キーマン
アブダビの油田権益の開発方針の決定権は、アブダビ首長をトップとする最高石油評議会が握っている。評議会のメンバーの中でもキーマンとされるのが、副議長を務めるアブダビ首長国のムハンマド皇太子だ。
ムハンマド皇太子は内政も取り仕切っており、潤沢な「オイルマネー」に依存した経済構造から脱却するため、国の収益源の多様化などを進めてきた実力者だ。
UAEは毎年11月、「アブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)」を開く。石油メジャーのトップら有力者が集まる世界最大級のイベントとされ、油田権益の契約方針が示されるとの見方が強い。
日本政府は会議に先立ち、10月8、9日に世耕経産相がUAEを訪問し、ムハンマド皇太子ら要人と会談する。世耕氏は6日の閣議後の記者会見で「非常に重要な権益であり、しっかり交渉したい」と述べた。
日本としては、石油化学製品の生産や中小企業支援など資源開発以外の分野でも新たな協力関係を結び、貢献度をアピールしたい考えだ。
INPEXは石油メジャー首位の米エクソンモービルなどと連携するなど、国際的な連合での権益維持も視野に入れている模様だ。
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Q 日本のエネルギー事情は
原油99%を輸入に依存
Q 日本はどの程度、エネルギーを海外に頼っているのか。
A 日本はガソリンや灯油などになる原油の99%以上を輸入している。2016年の輸入量は約1億9461万キロ・リットルだった。輸入先はサウジアラビアが35.7%、アラブ首長国連邦(UAE)が24.5%となっており、中東地域が8割以上を占める。
発電所の燃料などになる液化天然ガス(LNG)も95%以上を輸入している。16年は約8333万トンを輸入した。輸入先はオーストラリアが26.9%、マレーシアが18.6%などとなっている。日本はエネルギーの海外依存度の高い国といえる。
Q エネルギーの安定調達に向けた取り組みは。
A 政府は第1次石油危機で経済が混乱した反省から、輸入先の分散化を目指してきた。それでも産油量の多さなどから、中東依存は解消していない。
このため、日本企業が開発の権利を持つ海外の油田・ガス田(自主開発権益)からの輸入量を増やす方向に軸足を移している。
原油と天然ガスの輸入量と国内生産量の合計に占める自主開発権益の割合は、少しずつ高まっており、16年度は27.4%だった。政府は10年に策定したエネルギー基本計画で、この割合を30年に40%以上とする目標を掲げている。
Q 世界のエネルギー需給の見通しは。
A 国際エネルギー機関(IEA)は、新興国の経済発展などで、今後数十年は原油の需要が拡大する可能性が高いと予想している。一方で、温室効果ガスの排出削減を目指す「パリ協定」の発効や電気自動車の普及などで、需要は頭打ちになるとの指摘もある。
近年は原油や天然ガスの価格は下落傾向にあるが、エネルギー価格は中東の政治情勢や産油国の減産などによって大きく変動する。国民生活への影響は大きいため、今後も安定調達に向けた努力が求められる。
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日本企業がアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ沖のペルシャ湾に持つ複数の油田権益の保有期限が2018年3月に迫り、契約更新に向けた交渉が大詰めを迎えつつある。UAEは日本の主要な原油輸入先で、権益を維持できるかどうかは日本のエネルギー調達に大きく影響する。欧米の資源大手や中国なども権益確保を狙って攻勢を強めており、交渉の行方は楽観できない情勢だ。 (関根晃次郎)
欧米や中韓攻勢
■4割が集中
アブダビ沖のペルシャ湾には、国際石油開発帝石(1NPEX)や大手商社など日本企業が世界に持つ油田権益の約4割が集中している。
今回、契約見直しの対象となるのは、日本企業の権益がある油田では10か所前後になる模様だ。日本勢の持ち分は日量20万バレル規模とされ、これが18年3月に期限を迎える。日本のUAEからの輸入量(2016年日量82万バレル)の約4分の1にあたる規模だ。
経済産業省は「契約が打ち切られれば、生産した原油を日本が優先的に輸入するのが難しくなるおそれがある」と懸念する。
■競争激化
現時点で、日本勢との契約延長が決まったのは、小規模な油田「ウムアダルク」と「サター」の2か所にとどまる。延長が未確定の権益は産油量ベースで約9割に上る。特に注目される油田が大型の「下部ザクム」や「ウムシャイフ」などで、日本にとって「絶対落とせない案件」(日本の資源大手)だ。
アブダビ沖で取れる原油は、周辺のイラクなどに比べて不純物が少ない特徴がある。高値での販売が見込めるため、英BPや仏トタルなど石油メジャーと呼ばれる欧米の資源大手も期限切れを見越して権益獲得に動いている。
「今回のように、まとまった大規模な油田権益の期限切れは約40年ぶり」(交渉関係者)とされることも競争に拍車をかけている。
資源大手の中には、高い掘削技術などを売りに、契約期限がまだ先のアブダビ沖の最大油田「上部ザクム」も含めて、効率的に原油を生産する体制整備を提案している企業もあるという。
現在は権益を持たない中国や韓国も、国を挙げてUAE側との交渉を続けている模様だ。
■キーマン
アブダビの油田権益の開発方針の決定権は、アブダビ首長をトップとする最高石油評議会が握っている。評議会のメンバーの中でもキーマンとされるのが、副議長を務めるアブダビ首長国のムハンマド皇太子だ。
ムハンマド皇太子は内政も取り仕切っており、潤沢な「オイルマネー」に依存した経済構造から脱却するため、国の収益源の多様化などを進めてきた実力者だ。
UAEは毎年11月、「アブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)」を開く。石油メジャーのトップら有力者が集まる世界最大級のイベントとされ、油田権益の契約方針が示されるとの見方が強い。
日本政府は会議に先立ち、10月8、9日に世耕経産相がUAEを訪問し、ムハンマド皇太子ら要人と会談する。世耕氏は6日の閣議後の記者会見で「非常に重要な権益であり、しっかり交渉したい」と述べた。
日本としては、石油化学製品の生産や中小企業支援など資源開発以外の分野でも新たな協力関係を結び、貢献度をアピールしたい考えだ。
INPEXは石油メジャー首位の米エクソンモービルなどと連携するなど、国際的な連合での権益維持も視野に入れている模様だ。
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Q 日本のエネルギー事情は
原油99%を輸入に依存
Q 日本はどの程度、エネルギーを海外に頼っているのか。
A 日本はガソリンや灯油などになる原油の99%以上を輸入している。2016年の輸入量は約1億9461万キロ・リットルだった。輸入先はサウジアラビアが35.7%、アラブ首長国連邦(UAE)が24.5%となっており、中東地域が8割以上を占める。
発電所の燃料などになる液化天然ガス(LNG)も95%以上を輸入している。16年は約8333万トンを輸入した。輸入先はオーストラリアが26.9%、マレーシアが18.6%などとなっている。日本はエネルギーの海外依存度の高い国といえる。
Q エネルギーの安定調達に向けた取り組みは。
A 政府は第1次石油危機で経済が混乱した反省から、輸入先の分散化を目指してきた。それでも産油量の多さなどから、中東依存は解消していない。
このため、日本企業が開発の権利を持つ海外の油田・ガス田(自主開発権益)からの輸入量を増やす方向に軸足を移している。
原油と天然ガスの輸入量と国内生産量の合計に占める自主開発権益の割合は、少しずつ高まっており、16年度は27.4%だった。政府は10年に策定したエネルギー基本計画で、この割合を30年に40%以上とする目標を掲げている。
Q 世界のエネルギー需給の見通しは。
A 国際エネルギー機関(IEA)は、新興国の経済発展などで、今後数十年は原油の需要が拡大する可能性が高いと予想している。一方で、温室効果ガスの排出削減を目指す「パリ協定」の発効や電気自動車の普及などで、需要は頭打ちになるとの指摘もある。
近年は原油や天然ガスの価格は下落傾向にあるが、エネルギー価格は中東の政治情勢や産油国の減産などによって大きく変動する。国民生活への影響は大きいため、今後も安定調達に向けた努力が求められる。
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キーマンとされるのが、アブダビ首長国のムハンマド皇太子。国の収益源の多様化などを進めてきた実力者ですね。
世耕経産相は、石油化学製品の生産や中小企業支援など資源開発以外の分野でも新たな協力関係を結び、貢献度をアピールしたい考えを明らかにしています。
また、国際石油開発帝石(1NPEX)は、石油メジャー首位の米エクソンモービルなどと連携するなど、国際的な連合での権益維持も視野に入れているのだそうです。
「パリ協定」の発効や電気自動車の普及などで、需要は頭打ちになるとの見方がありますが、契約が打ち切られれば、生産した原油を日本が優先的に輸入するのが難しくなるおそれがあり、当面の日本のエネルギー安全保障への影響は大きいと言えます。
日本の交渉団の手腕に期待ですね。
# 冒頭の画像は、アラビア石油 上部ザクム油田
ボケの蕾
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