中国南部・湖南省の株州市にある花果山幼稚園。この幼稚園に通う200人の子供の4分の3は、以前は普通の幼稚園に通っていた。親たちは、儒教の儀礼のおかげで子供が落ち着き、集中力が高まったと話しているという。
昨年9月に開園したばかりだが、入園希望者が殺到。
幼稚園は、中国全土で盛り上がっている「国学」人気にあやかっている。
花果山幼稚園では、子供たちがお辞儀の仕方を習い、道で会った時に丁寧にあいさつする方法を学ぶ。背筋を伸ばし、手は膝の上に静かに置く丁寧な座り方も教わる。
また、昔の染め物の作り方を習ったり、別の部屋では詩の朗読、書道の練習、茶の湯、中国のチェスなどに取り組む。
ここの先生たちに言わせれば、スキルを身につけるのは二の次で、大事なのは人格形成だと。
チェスでは「ライバルを尊重し、敗北を受け入れる」ことを学び、茶室では「壊れやすいものを茶碗と同じように大切にする」ことを体得するのだという。
多くの人々がそうした伝統に興味を持つようになっているのだと。
2500年にわたって尊ばれてきた孔子は、20世紀に貶められた。
文化大革命の際、毛沢東は古いものはどれもこれも壊してしまえと人民に説いて聞かせた。紅衛兵は孔子の生地・曲阜に押し寄せ、この賢者の墓を爆破した。
孔子の誕生日を再度祝えるようになったのは、毛沢東の死から10年近くも経った1980年代半ばのことだと。
中国の伝統回帰の背景には、文化的な喪失感もある。
中国には、数十年に及ぶ共産党支配によって剥ぎ取られた国民の遺産を再発見したいと思っている人が少なくないと、The Economist。
この動きが盛んになっているのは政府当局の思惑とかみ合うためでもあると。
習近平国家主席は儒教思想の地位を高めることに、近代のどの指導者よりも熱心に取り組んできたと、The Economist。
古くから伝わるこの思想体系は、権威を尊び、祖先を敬い、年長者に従うことに重きを置いている。
歴代の皇帝は、市民に従順さを植え付けるためにこの思想を利用した。習氏も同じことをやりたいと思っている。
共産党の指導部も、社会主義とは異なり国産の思想であることから、儒教を認めている。「文化自信」を求める党に喝采を送る若いナショナリストたちは儒教に魅力を感じている。
今年5月には教育省が、若者たちを「国に仕える」愛国心を持った「徳の高い中国人に育てる」ことが重要だと述べ、シラバス(授業計画)を承認した。
国家が認めた国学の授業は「中国国家への帰属意識と誇りを強める」ことになる。
多くの中国国民は、これとは異なる魅力を孔子の思想に感じ取っていると、The Economist。
親たちは、儒教の儀礼のおかげで子供が落ち着き、集中力が高まったと話している。少なくとも幼少期には、果てしない競争から子供を守る手段だととらえている人も多いと。
米国で中国教育を研究している学者のティアン・ユー氏によれば、一部の親には国学の学校が、政治的な思想を教え込む国の制度を回避する手段として映っているらしい。
国学の教育者たちは内々に、忘れられた文化の復活はボトムアップで行われるべきだと語っている。
7月、創設100年を迎える中国共産党。
文化大革命で失った中国古来の文化を取り戻すのか、毛沢東の専制政治への復古を目指す習近平が、「中国国家への帰属意識と誇りを強める」国学として推奨するのか。
儒教ブームの行方に注目ですね。
# 冒頭の画像は、孔子像
この花の名前は、チングルマ
↓よろしかったら、お願いします。
昨年9月に開園したばかりだが、入園希望者が殺到。
幼稚園は、中国全土で盛り上がっている「国学」人気にあやかっている。
子供に孔子の教えを、中国の親の間で儒教教育ブーム 文化大革命の巻き戻し、愛国心の高揚狙う政府も便乗 | JBpress (ジェイビープレス) 2021.5.24(月) The Economist
愛国心の高揚とモラル欠如の改善を期待する中国政府も、儒教教育に意欲的だ。
中国南部・湖南省の株州市にある花果山幼稚園は、ちょっと見ただけではほかの施設とほとんど変わらない。
明るい色に塗られた4つの遊戯室にはカラフルで柔らかいマットが敷かれており、積み木の入ったカゴがいくつか見える。
だが、上階にある教室は質素だ。
提灯がぶら下がり、壁と天井の境目に黒い瓦が1列貼り付けてあるところは、中国の昔の建物を彷彿させる。
園児たちも、マンダリンカラー(詰め襟)にフロッグ(飾りボタン)留めがついた淡青色の伝統的な上着を着ている。何も飾り気のない壁に、孔子の大きな肖像画が数枚貼られている。
昨年9月に開園したばかりだが、入園希望者が殺到し、すでに1年待ちの長いリストができている。
幼稚園は、中国全土で盛り上がっている「国学」人気にあやかっている。国学とは通常、古代中国の思想、文献、道徳、特に孔子に関係のある教えを学ぶことを指す。
花果山幼稚園では、子供たちがお辞儀の仕方を習い、道で会った時に丁寧にあいさつする方法を学ぶ。背筋を伸ばし、手は膝の上に静かに置く丁寧な座り方も教わる。
ある部屋では、キャラコの袋に大きな音を立てながら葉っぱを押しつけ、昔の染め物の作り方を習う。別の部屋では詩の朗読、書道の練習、茶の湯、中国のチェスなどに取り組む。
伝統への回帰
しかし、ここの先生たちに言わせれば、スキルを身につけるのは二の次で、大事なのは人格形成だ。
チェスでは「ライバルを尊重し、敗北を受け入れる」ことを学び、茶室では「壊れやすいものを茶碗と同じように大切にする」ことを体得するのだという。
外国のトレンドをありがたがる数十年間を経て、多くの人々がそうした伝統に興味を持つようになっている。
例えばテレビでは「中国詩詞大会」という、一般視聴者が漢詩のクイズに答える番組が放送されている。公の場に伝統的な衣装を着て現れる若者もいる。
教育がこうしたトレンドの中心にある。
データ会社フロスト・アンド・サリバンの推計によれば、子供向け国学教育の市場規模は2018年時点で4660億元(730億米ドル)にのぼり、2014年のほぼ2倍に増加している。
学校の授業料は非常に高い。花果山幼稚園の経営母体は非営利団体で、寄付も頼りにしている。この団体は教育哲学をソーシャルメディアで広めようとしており、そこには伝統的な装いで漢詩をそらんじる園児の写真が配されている。
2500年にわたって尊ばれてきた孔子は、20世紀に貶められた。国学好きはこれを「空白の100年間」と呼んでいる。
1905年、衰えていた清朝は4冊の儒教の経典「四書」に基づく国家公務員試験を廃止した。近代化の邪魔になるとの判断からだ。
最もひどい攻撃は、1949年に共産党が権力を握った後に行われた。文化大革命の際、毛沢東は古いものはどれもこれも壊してしまえと人民に説いて聞かせた。
紅衛兵は孔子の生地・曲阜に押し寄せ、この賢者の墓を爆破した。孔子の誕生日を再度祝えるようになったのは、毛沢東の死から10年近くも経った1980年代半ばのことだ。
中国政府が抱く思惑
中国の伝統回帰の背景には、文化的な喪失感もある。
中国には、数十年に及ぶ共産党支配によって剥ぎ取られた国民の遺産を再発見したいと思っている人が少なくない。
しかし、この動きが盛んになっているのは政府当局の思惑とかみ合うためでもある。
習近平国家主席は儒教思想の地位を高めることに、近代のどの指導者よりも熱心に取り組んできた。
2013年には権力を手に入れて間もなく、かつての皇帝たちと同じように曲阜を訪れた。そして儒教に「新しい積極的な役割」を求めた。
古くから伝わるこの思想体系は、権威を尊び、祖先を敬い、年長者に従うことに重きを置いている。
孔子は、個人として道徳的卓越性を達成するにはそのような価値観が欠かせないと教えた。そしてそのような高潔な人々がいれば、社会全体の調和と政治の安定の礎を築いてくれると説いた。
歴代の皇帝は、市民に従順さを植え付けるためにこの思想を利用した。習氏も同じことをやりたいと思っている。
共産党の指導部も、社会主義とは異なり国産の思想であることから、儒教を認めている。自国の文化への高い評価、すなわち「文化自信」を求める党に喝采を送る若いナショナリストたちは儒教に魅力を感じている。
厳密に言えば、幼稚園は大半が私立だとはいえ、小中学生は全員、国家が管理する学校に通う必要がある。
古代の漢詩のような国学の内容は、国家が管理する中学校のカリキュラムに以前から組み込まれている。
2014年には大学入試の出題範囲になる古典が増やされ、学校で教えられる文献の数も14件から72件に増加した。
2017年には、小中学校で国学の包括的なシラバスを2025年までに作成するためのガイドラインを政府が設けた。
今年5月には教育省が、若者たちを「国に仕える」愛国心を持った「徳の高い中国人に育てる」ことが重要だと述べ、シラバスを承認した。
国家が認めた国学の授業は「中国国家への帰属意識と誇りを強める」ことになるだろうと語っていた。
国民が感じ取る異なる魅力
多くの中国国民は、これとは異なる魅力を孔子の思想に感じ取っている。
教育者たちは、無視されている儒教の道徳のなかに、現代社会の諸問題の解決策になるかもしれない価値観を見いだしている。
ちょうど、伝統的なキリスト教の価値観に目を向ける西洋人がいるのと同じだ。
花果山のほかにも2つの幼稚園を立ち上げたジャ・ホン氏は「最近では、いじめとか、甘やかされて生意気な振る舞いをする子供の話をとにかくよく耳にする」と語る。
これについては、礼儀を知らないことがいけないのだと多くの人が思っている。
ジャ氏の幼稚園に通う200人の子供の4分の3は、以前は普通の幼稚園に通っていた。同氏によれば、親たちは、儒教の儀礼のおかげで子供が落ち着き、集中力が高まったと話しているという。
若い親の多くは、受験への国民的な執着のせいで自分たちはほかの教育の形に目を向けてこなかったと考えていると、陝西師範大学のツァオ・シェンガオ氏は指摘する。
国学で、あるいはツィター(弦楽器の一種)の練習で規律を教え込むやり方は、子供が受験競争でほかの子を引き離せるようにする新たな手法の一つでしかない、と考える向きもある。
実際、国学を教える教育機関では、課外授業を取ればテストの成績を上げるのに役立つと示唆されることが多いという。
だがその一方で、合法的な国学の幼稚園や法的なグレーゾーンで運営されている国学の小中学校は、少なくとも幼少期には、果てしない競争から子供を守る手段だととらえている人も多い。
スキャンダルも発生しており、政府は黒に近いグレーの学校の取り締まりに乗り出した。
2019年には、全寮制の学校で少年1人の体調が悪化した際、教師たちが伝統的な薬を使うからと言い張って病院に連れて行かず、そうこうするうちに死亡する出来事があった。
昨年には、インターネット中毒が治るという触れ込みの国学のキャンプで虐待行為が発覚し、創設者が3年の懲役刑に処された。
政府はこれに加え、女性の従順さを褒め称える儒教の文章など「封建制の残骸」を教えることも禁じている。
トップダウンとボトムアップ
ジャ氏のような教育関係者は取り締まりを支持している。
しかし、年長の子供を受け入れる国学の人気校の多くは、できることならすべて自分たちでやりたいと考えており、一緒にやろうという地元の教育委員会からの申し出を断っている。
米国で中国教育を研究している学者のティアン・ユー氏によれば、一部の親には国学の学校が、政治的な思想を教え込む国の制度を回避する手段として映っているらしい。
国学の教育者たちは内々に、忘れられた文化の復活はボトムアップで行われるべきだと語っている。
だが、伝統と見なされるものが何かを定義する議論になれば、共産党が必ず口をはさみたがる。
愛国心の高揚とモラル欠如の改善を期待する中国政府も、儒教教育に意欲的だ。
中国南部・湖南省の株州市にある花果山幼稚園は、ちょっと見ただけではほかの施設とほとんど変わらない。
明るい色に塗られた4つの遊戯室にはカラフルで柔らかいマットが敷かれており、積み木の入ったカゴがいくつか見える。
だが、上階にある教室は質素だ。
提灯がぶら下がり、壁と天井の境目に黒い瓦が1列貼り付けてあるところは、中国の昔の建物を彷彿させる。
園児たちも、マンダリンカラー(詰め襟)にフロッグ(飾りボタン)留めがついた淡青色の伝統的な上着を着ている。何も飾り気のない壁に、孔子の大きな肖像画が数枚貼られている。
昨年9月に開園したばかりだが、入園希望者が殺到し、すでに1年待ちの長いリストができている。
幼稚園は、中国全土で盛り上がっている「国学」人気にあやかっている。国学とは通常、古代中国の思想、文献、道徳、特に孔子に関係のある教えを学ぶことを指す。
花果山幼稚園では、子供たちがお辞儀の仕方を習い、道で会った時に丁寧にあいさつする方法を学ぶ。背筋を伸ばし、手は膝の上に静かに置く丁寧な座り方も教わる。
ある部屋では、キャラコの袋に大きな音を立てながら葉っぱを押しつけ、昔の染め物の作り方を習う。別の部屋では詩の朗読、書道の練習、茶の湯、中国のチェスなどに取り組む。
伝統への回帰
しかし、ここの先生たちに言わせれば、スキルを身につけるのは二の次で、大事なのは人格形成だ。
チェスでは「ライバルを尊重し、敗北を受け入れる」ことを学び、茶室では「壊れやすいものを茶碗と同じように大切にする」ことを体得するのだという。
外国のトレンドをありがたがる数十年間を経て、多くの人々がそうした伝統に興味を持つようになっている。
例えばテレビでは「中国詩詞大会」という、一般視聴者が漢詩のクイズに答える番組が放送されている。公の場に伝統的な衣装を着て現れる若者もいる。
教育がこうしたトレンドの中心にある。
データ会社フロスト・アンド・サリバンの推計によれば、子供向け国学教育の市場規模は2018年時点で4660億元(730億米ドル)にのぼり、2014年のほぼ2倍に増加している。
学校の授業料は非常に高い。花果山幼稚園の経営母体は非営利団体で、寄付も頼りにしている。この団体は教育哲学をソーシャルメディアで広めようとしており、そこには伝統的な装いで漢詩をそらんじる園児の写真が配されている。
2500年にわたって尊ばれてきた孔子は、20世紀に貶められた。国学好きはこれを「空白の100年間」と呼んでいる。
1905年、衰えていた清朝は4冊の儒教の経典「四書」に基づく国家公務員試験を廃止した。近代化の邪魔になるとの判断からだ。
最もひどい攻撃は、1949年に共産党が権力を握った後に行われた。文化大革命の際、毛沢東は古いものはどれもこれも壊してしまえと人民に説いて聞かせた。
紅衛兵は孔子の生地・曲阜に押し寄せ、この賢者の墓を爆破した。孔子の誕生日を再度祝えるようになったのは、毛沢東の死から10年近くも経った1980年代半ばのことだ。
中国政府が抱く思惑
中国の伝統回帰の背景には、文化的な喪失感もある。
中国には、数十年に及ぶ共産党支配によって剥ぎ取られた国民の遺産を再発見したいと思っている人が少なくない。
しかし、この動きが盛んになっているのは政府当局の思惑とかみ合うためでもある。
習近平国家主席は儒教思想の地位を高めることに、近代のどの指導者よりも熱心に取り組んできた。
2013年には権力を手に入れて間もなく、かつての皇帝たちと同じように曲阜を訪れた。そして儒教に「新しい積極的な役割」を求めた。
古くから伝わるこの思想体系は、権威を尊び、祖先を敬い、年長者に従うことに重きを置いている。
孔子は、個人として道徳的卓越性を達成するにはそのような価値観が欠かせないと教えた。そしてそのような高潔な人々がいれば、社会全体の調和と政治の安定の礎を築いてくれると説いた。
歴代の皇帝は、市民に従順さを植え付けるためにこの思想を利用した。習氏も同じことをやりたいと思っている。
共産党の指導部も、社会主義とは異なり国産の思想であることから、儒教を認めている。自国の文化への高い評価、すなわち「文化自信」を求める党に喝采を送る若いナショナリストたちは儒教に魅力を感じている。
厳密に言えば、幼稚園は大半が私立だとはいえ、小中学生は全員、国家が管理する学校に通う必要がある。
古代の漢詩のような国学の内容は、国家が管理する中学校のカリキュラムに以前から組み込まれている。
2014年には大学入試の出題範囲になる古典が増やされ、学校で教えられる文献の数も14件から72件に増加した。
2017年には、小中学校で国学の包括的なシラバスを2025年までに作成するためのガイドラインを政府が設けた。
今年5月には教育省が、若者たちを「国に仕える」愛国心を持った「徳の高い中国人に育てる」ことが重要だと述べ、シラバスを承認した。
国家が認めた国学の授業は「中国国家への帰属意識と誇りを強める」ことになるだろうと語っていた。
国民が感じ取る異なる魅力
多くの中国国民は、これとは異なる魅力を孔子の思想に感じ取っている。
教育者たちは、無視されている儒教の道徳のなかに、現代社会の諸問題の解決策になるかもしれない価値観を見いだしている。
ちょうど、伝統的なキリスト教の価値観に目を向ける西洋人がいるのと同じだ。
花果山のほかにも2つの幼稚園を立ち上げたジャ・ホン氏は「最近では、いじめとか、甘やかされて生意気な振る舞いをする子供の話をとにかくよく耳にする」と語る。
これについては、礼儀を知らないことがいけないのだと多くの人が思っている。
ジャ氏の幼稚園に通う200人の子供の4分の3は、以前は普通の幼稚園に通っていた。同氏によれば、親たちは、儒教の儀礼のおかげで子供が落ち着き、集中力が高まったと話しているという。
若い親の多くは、受験への国民的な執着のせいで自分たちはほかの教育の形に目を向けてこなかったと考えていると、陝西師範大学のツァオ・シェンガオ氏は指摘する。
国学で、あるいはツィター(弦楽器の一種)の練習で規律を教え込むやり方は、子供が受験競争でほかの子を引き離せるようにする新たな手法の一つでしかない、と考える向きもある。
実際、国学を教える教育機関では、課外授業を取ればテストの成績を上げるのに役立つと示唆されることが多いという。
だがその一方で、合法的な国学の幼稚園や法的なグレーゾーンで運営されている国学の小中学校は、少なくとも幼少期には、果てしない競争から子供を守る手段だととらえている人も多い。
スキャンダルも発生しており、政府は黒に近いグレーの学校の取り締まりに乗り出した。
2019年には、全寮制の学校で少年1人の体調が悪化した際、教師たちが伝統的な薬を使うからと言い張って病院に連れて行かず、そうこうするうちに死亡する出来事があった。
昨年には、インターネット中毒が治るという触れ込みの国学のキャンプで虐待行為が発覚し、創設者が3年の懲役刑に処された。
政府はこれに加え、女性の従順さを褒め称える儒教の文章など「封建制の残骸」を教えることも禁じている。
トップダウンとボトムアップ
ジャ氏のような教育関係者は取り締まりを支持している。
しかし、年長の子供を受け入れる国学の人気校の多くは、できることならすべて自分たちでやりたいと考えており、一緒にやろうという地元の教育委員会からの申し出を断っている。
米国で中国教育を研究している学者のティアン・ユー氏によれば、一部の親には国学の学校が、政治的な思想を教え込む国の制度を回避する手段として映っているらしい。
国学の教育者たちは内々に、忘れられた文化の復活はボトムアップで行われるべきだと語っている。
だが、伝統と見なされるものが何かを定義する議論になれば、共産党が必ず口をはさみたがる。
花果山幼稚園では、子供たちがお辞儀の仕方を習い、道で会った時に丁寧にあいさつする方法を学ぶ。背筋を伸ばし、手は膝の上に静かに置く丁寧な座り方も教わる。
また、昔の染め物の作り方を習ったり、別の部屋では詩の朗読、書道の練習、茶の湯、中国のチェスなどに取り組む。
ここの先生たちに言わせれば、スキルを身につけるのは二の次で、大事なのは人格形成だと。
チェスでは「ライバルを尊重し、敗北を受け入れる」ことを学び、茶室では「壊れやすいものを茶碗と同じように大切にする」ことを体得するのだという。
多くの人々がそうした伝統に興味を持つようになっているのだと。
2500年にわたって尊ばれてきた孔子は、20世紀に貶められた。
文化大革命の際、毛沢東は古いものはどれもこれも壊してしまえと人民に説いて聞かせた。紅衛兵は孔子の生地・曲阜に押し寄せ、この賢者の墓を爆破した。
孔子の誕生日を再度祝えるようになったのは、毛沢東の死から10年近くも経った1980年代半ばのことだと。
中国の伝統回帰の背景には、文化的な喪失感もある。
中国には、数十年に及ぶ共産党支配によって剥ぎ取られた国民の遺産を再発見したいと思っている人が少なくないと、The Economist。
この動きが盛んになっているのは政府当局の思惑とかみ合うためでもあると。
習近平国家主席は儒教思想の地位を高めることに、近代のどの指導者よりも熱心に取り組んできたと、The Economist。
古くから伝わるこの思想体系は、権威を尊び、祖先を敬い、年長者に従うことに重きを置いている。
歴代の皇帝は、市民に従順さを植え付けるためにこの思想を利用した。習氏も同じことをやりたいと思っている。
共産党の指導部も、社会主義とは異なり国産の思想であることから、儒教を認めている。「文化自信」を求める党に喝采を送る若いナショナリストたちは儒教に魅力を感じている。
今年5月には教育省が、若者たちを「国に仕える」愛国心を持った「徳の高い中国人に育てる」ことが重要だと述べ、シラバス(授業計画)を承認した。
国家が認めた国学の授業は「中国国家への帰属意識と誇りを強める」ことになる。
多くの中国国民は、これとは異なる魅力を孔子の思想に感じ取っていると、The Economist。
親たちは、儒教の儀礼のおかげで子供が落ち着き、集中力が高まったと話している。少なくとも幼少期には、果てしない競争から子供を守る手段だととらえている人も多いと。
米国で中国教育を研究している学者のティアン・ユー氏によれば、一部の親には国学の学校が、政治的な思想を教え込む国の制度を回避する手段として映っているらしい。
国学の教育者たちは内々に、忘れられた文化の復活はボトムアップで行われるべきだと語っている。
7月、創設100年を迎える中国共産党。
文化大革命で失った中国古来の文化を取り戻すのか、毛沢東の専制政治への復古を目指す習近平が、「中国国家への帰属意識と誇りを強める」国学として推奨するのか。
儒教ブームの行方に注目ですね。
# 冒頭の画像は、孔子像
この花の名前は、チングルマ
↓よろしかったら、お願いします。