無観客となった東京五輪の開会式が模様され、相前後し競技が始まりました。
開催に批判的だった私も含め、少なくない人々の、競技の内容や競技者の個々には、ドラマや感動があり、引き込まれていき始めています。
海外ではどのように報じられているのか。
特に米メディアの論調を中心に、ジャーナリストの高濱賛氏がレポートされています。
米メディアが憤りの矛先を向けているのは国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ第9代会長ら五輪エスタブリッシュメントだと。
米主要メディアは始まる前から「完全な失敗に向かっている。『おもてなし』の心は偏狭で内向きな外国人への警戒に変化した」(ワシントン・ポスト)と酷評していた。
だが、「シュールな(現実を超越した)開会式」(CNN)を見た米メディアの記者たちは、「コロナ禍による死者を弔い、孤独と戦いながらトレーニングを強いられてきたアスリートたちへの賛歌を歌い上げた」(公共放送NPR)と一定の評価をしていると、高濱氏。
遊爺も、ソフトの上野・後藤(最年少)の継投接戦勝利。柔道の渡名喜の銀と観て、極めつけの高藤さんの「開催して頂いたおかげです」の勝利・感謝辞で、すっかり嵌められて観戦してます。
高藤直寿が金メダル獲得で男泣き「開催して頂いたおかげです」(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
海外、特に米国の評価は、高濱氏が紹介いただいている、「ザ・デイリー・ビースト」が東京に派遣したエンターテインメント担当記者、ケビン・ファーロン氏の現地報告に集約されているのでしょう。
「東京五輪は呪われている」と言い切ったのは麻生太郎副総理(兼財務相)の発言を米メディアは好んで引用してきたと高濱氏。
それでも、米メディア報道を精査していて気づくのは、非常事態宣言下でも東京五輪をせざるを得なかった菅義偉首相の「不甲斐なさ」を指摘はしても糾弾はしていないことだと。
それに反して、米メディアが憤りの矛先を向けているのは国際オリンピック委員会(IOC)のドイツ人弁護士、トーマス・バッハ第9代会長ら五輪エスタブリッシュメントだと高濱氏。
「7月8日は、今から168年前にペリー提督率いる黒船が江戸湾に現れ、開国を迫った日だ」
「バッハ氏は日本政府に1年延期された東京五輪を何としても今年夏に開催するよう迫ったのだ。日本はこの要求に社会的、政治的混乱状態に突き落とされた」
と、米高級誌「ニューヨーカー」のマット・アルト記者。
IOC幹部は、五輪が開催され、米TV局からの放映料の収入が確保されることが最優先とは、誰の眼にも明か。
IOCの上から目線のスタンスは、日本での反対の声が出始める中でもいかんなく発揮された。
スポークスパーソンのマーク・アダムス氏は、こう言い放っていた。
「我々は(世論の声は)聞く。だが(決定する際に)世論に左右されることはない」
炎天下のマラソンは選手に負担をかけるとして、東京から札幌に変更した際にも、IOCは東京都の小池百合子知事と事前協議は一切しなかった。
今、炎天下のハードコートで開催中のテニスでは、時間帯をズラす様、有力選手から要望が出ていますが、どうなるのでしょう。
米TV局様のご意向次第?
アダムス氏はまた、「何か重要なアジェンダを決定するときはIOC、日本政府、東京都、日本五輪委員会、東京五輪組織委員会の5者で決めてきたというのは“神話”のようなもののだ」と。
ロサンゼルス・タイムズのジュリス・ボイコフ氏はIOCと五輪開催国との関係について、「IOCはまるで『ジキルとハイド』のような駆け引きに終始していた」とみていると高濱氏。
高濱氏は、IOC批判に燃え上がる米国では、これだけ巨大化したオリンピックは東京五輪を最後に発祥の地であるギリシャに戻してはどうかという奇抜な提案が出ているとも。
2032年に候補に名乗りを上げたのはブリスベンだけだったのだそうですね。
開催資金は膨れ上がり、中小国では財政的に賄い切れなくなっているのが原因。
五輪誘致熱は急速に冷え込んでいると高濱氏。
そこで、「ギリシャを夏季五輪の半永久的開催地にせよ」と唱えているのは、月刊誌「ワシントン・マンスリー」の編集主幹、ギリシャ系米国人のポール・グラストリス氏。
ジャーナリストのテモシー・ノア氏の代弁が以下。
「もともと五輪はギリシャ人が始めたスポーツの祭典だ。五輪を元の鞘に収めてはどうか」
「五輪は肉体的な豪勇さに優雅さと美を見つけ出すというギリシャ人の理想を実現しようとしたものだ。それが世界中から認められた」
「4年に一度持ち回りで開催地を選ぶ理由などどこにもないはずだ」
「問題は開催にかかる費用だ。そうならば五輪に参加したい国から参加費用を払わせるのだ」
「東京五輪を最後にもう五輪はやめるべきだ」という強硬論まで出ている中で「ギリシャ五輪里帰り」構想。意外に良いアイデアで、一考する価値はありそうだと高濱氏。
開催中止の世論が高まっていた今回の東京五輪。問題・トラブルが続出の今回の東京五輪。
前回開催では、日本の復興・成長にも大きく貢献があった五輪。何故今回はこうなったの?
そして、冒頭で触れさせていただいたように、競技が始まれば、その内容や、選手のヒストリーには感動させられる。
五輪の開催のあり方について、再考が必要な岐路に至っていることが顕在化したのが、今回の東京五輪なのかも。
# 冒頭の画像は、金メダル獲得は「開催して頂いたおかげです」と男泣きの高藤さん
この花の名前は、ツユクサ
↓よろしかったら、お願いします。
開催に批判的だった私も含め、少なくない人々の、競技の内容や競技者の個々には、ドラマや感動があり、引き込まれていき始めています。
海外ではどのように報じられているのか。
特に米メディアの論調を中心に、ジャーナリストの高濱賛氏がレポートされています。
米メディアが憤りの矛先を向けているのは国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ第9代会長ら五輪エスタブリッシュメントだと。
世界の記者が見た東京五輪:これを最後にアテネに戻せ IOCのバッハ会長の傲慢さに米メディア猛反発 | JBpress (ジェイビープレス) 2021.7.25(日) 高濱 賛;ジャーナリスト
度肝を抜く花火の後に何が起こるのか
パンデミック非常事態宣言下で始まった東京オリンピック・パラリンピックを世界はどう見ているか。
米主要メディアは始まる前から「完全な失敗に向かっている。『おもてなし』の心は偏狭で内向きな外国人への警戒に変化した」(ワシントン・ポスト)と酷評していた。
だが、「シュールな(現実を超越した)開会式」(CNN)を見た米メディアの記者たちは、「コロナ禍による死者を弔い、孤独と戦いながらトレーニングを強いられてきたアスリートたちへの賛歌を歌い上げた」(公共放送NPR)と一定の評価をしている。
一方、こうした開会式の荘厳さとは裏腹に、競技場外から聞こえてくる東京五輪反対デモ参加者たちの罵声に日本が抱える複雑さも厳しく指摘している。こうした報道については読者諸兄姉もすでにご承知だろう。
こうした紋切り型報道ではなく、インテリ若年層に圧倒的人気のあるニュースサイト「ザ・デイリー・ビースト」が東京に派遣したエンターテインメント担当記者、ケビン・ファーロン氏の現地報告をご紹介しよう。
デイリー・ビーストはインディペンデントのリベラル系、1日のアクセス数は100万を超えている。
「人っ子一人いない観客に向かって言い放たれた(開会式の)メッセージは内向きで、はにかむような大言壮語だった」
「オリンピックは、嫌われ者のウイルスをまき散らすスーパースプレッダー(超感染拡散者)だ。オリンピックが、観客席は空っぽの国立競技場でこの夜デビューした」
「度肝を抜く華やかな花火が打ち上げられた。だが、その後に何が起こるのか。控えめな言い方をすれば、誰も五輪はやりたくなかったはずだ(つまり、一部の人間を除き、みな反対だった)」
「開会式は短かったが、実にビューティフルだった。すべてが抑え気味だった。演壇に立った人たちのスピーチは口々に国際的な団結と忍耐を強調していた」
「だがこの夜の開会式を見ていて気づくのは、なぜこんなに慇懃な(Respectful)なのか、もっと言えば、なぜこんなにくだらない(Stupid)のか、ということだった」
「通常な時であれば日本という国は、こんなウイルスなど撲滅していた。ところが、今や、第4波のパンデミック禍で国民を家に閉じ込めている」
「世論調査では日本国民の多くが東京五輪の中止か、再延長を望んでいた。観客がいないのになぜ世界中から集まった選手たちを歓迎し、祝福することができるのだろうか」
「家から出られないのに日本国民はどうやってグローバルなイベントを楽しめる特権を享受できるというのだろう」
「(この競技場の記者席から見ていると)東京五輪の開会式は気が滅入る(Depressing)だけだった」
(https://www.thedailybeast.com/the-tokyo-olympics-opening-ceremony-was-depressing-as-hell)
東京五輪は最初から呪われていた
「東京五輪は呪われている」と言い切ったのは麻生太郎副総理(兼財務相)だった。その発言を米メディアは好んで引用してきた。
まず新競技場のデザインにケチがつく。エムブレム盗作疑惑。森喜朗大会組織委員長の男尊女卑発言での辞任。それにコロナウイルスの爆発的な感染拡大による1年延期。
さらには開催寸前に噴出した五輪関係者のいじめ体質やホロコーストを茶化した発言発覚などなど、確かに呪われ続けた。
しかも感染力の強い「デルタ株」が猛威を振う中で菅政権の不手際でワクチン供給が遅れ、ワクチン接種は遅々として進まない。
だがプラス面もあったと、日米関係に長いこと携わってきた米元政府高官は言う。
「皮肉なことだが、東京五輪は日本人のメンタリティに潜む男女不平等、弱者軽視を炙り出し、ジェノサイドなどについての国際的なコモンセンスがいかに欠如しているかを露呈させてしまった」
「日本も他国に指摘されるなら反論もしただろうが、相手が五輪となるとそうはいかない」
「葵の御紋の印籠(五輪の精神)を突きつけられて『これが目に入らぬか』とやられると、ぐうの音も出なかった。そのこと自体は長い目で見れば、日本にとっては良かったはずだ」
バッハ会長は黒船のペリー提督だ
それでも、米メディア報道を精査していて気づくのは、非常宣言下でも東京五輪をせざるを得なかった菅義偉首相の「不甲斐なさ」を指摘はしても糾弾はしていないこと。
(海外から来た記者たちの意地悪い質問にも冷静さを保ち続ける橋本聖子五輪相を高く評価する記事も目についた)
国民の8割以上が中止や延期を望んでいるのに菅首相はなぜ、ごり押ししたのかという点では、日本の国家としてのプライドや経済的なメリットがあるのだろうと一応の理解を示している。
それに反して、米メディアが憤りの矛先を向けているのは国際オリンピック委員会(IOC)のドイツ人弁護士、トーマス・バッハ第9代会長ら五輪エスタブリッシュメントだ。
米高級誌「ニューヨーカー」のマット・アルト記者は、東京五輪を一方的に日本に押しつけたバッハ会長を1853年の黒船に例えてこう指摘している。
「7月8日は、今から168年前にペリー提督率いる黒船が江戸湾に現れ、開国を迫った日だ」
「バッハ氏は日本政府に1年延期された東京五輪を何としても今年夏に開催するよう迫ったのだ。日本はこの要求に社会的、政治的混乱状態に突き落とされた」
「菅首相は、ウイルス感染が拡大しているにもかかわらず『東京五輪はウイルスを撲滅したという証しにさせる』と主張、バッハ氏は『五輪は日本国民にウイルス・リスクを与える可能性ゼロだ』と空約束。すでに選手村からは感染者が十数人出ている」
(https://www.newyorker.com/sports/sporting-scene/tokyos-olympics-have-become-the-anger-games)
IOCの上から目線のスタンスは、日本での反対の声が出始める中でもいかんなく発揮された。
スポークスパーソンのマーク・アダムス氏は、こう言い放っていた。
「我々は(世論の声は)聞く。だが(決定する際に)世論に左右されることはない」
炎天下のマラソンは選手に負担をかけるとして、東京から札幌に変更した際にも、IOCは東京都の小池百合子知事と事前協議は一切しなかった」
「日本で報道されているように何か重要なアジェンダを決定するときはIOC、日本政府、東京都、日本五輪委員会、東京五輪組織委員会の5者で決めてきたというのは“神話”のようなもののだ」
ロサンゼルス・タイムズのジュリス・ボイコフ氏はIOCと五輪開催国との関係について、「IOCはまるで『ジキルとハイド』のような駆け引きに終始していた」とみている。
「開催を希望する国を選考する段階では優しく抱擁するが、いったん決まるやバイズ・グリップ(締め上げる)していく」
「東京五輪自体、中止するか、再延期するか菅首相(前任者の安倍晋三前首相)が提案するチャンスはあったのだ」
「菅氏は今頃になって、『IOCはすべての権限を持っている。IOCは東京五輪を今年開催することをすでに決定していた』と述べている」
(https://www.latimes.com/opinion/story/2021-07-22/tokyo-olympics-ioc-international-olympic-committee-los-angeles-olympics-2028)
五輪参加国は参加費をギリシャに払え
IOC批判に燃え上がる米国では、これだけ巨大化したオリンピックは東京五輪を最後に発祥の地であるギリシャに戻してはどうかという奇抜な提案が出ている。
今後、夏季五輪は2024年はパリ、2028年はロサンゼルス、2032年はブリスベンまで決まっている。
2032年に候補に名乗りを上げたのはブリスベンだけだった。
開催資金は膨れ上がり、コロナウイルス感染のような不測の事態や地球温暖化の影響を受けているとされる自然災害への対応など中小国では財政的に賄い切れなくなっている。
五輪誘致熱は急速に冷え込んでいる。
そこで、「ギリシャを夏季五輪の半永久的開催地にせよ」と唱えているのは、月刊誌「ワシントン・マンスリー」の編集主幹、ポール・グラストリス氏だ。ギリシャ系米国人だ。
同氏の構想をジャーナリストのテモシー・ノア氏が代弁してこう書いている。
「もともと五輪はギリシャ人が始めたスポーツの祭典だ。今や、世界中から『Boondoggle』(無用の長物)と言われている五輪を元の鞘に収めてはどうか」
「ザルツブルグ音楽祭をオハイオ州のアクロンではやらない、ローズボウルは西アフリカのバルキナファソではやらないのと同じ発想だ」
「五輪は肉体的な豪勇さに優雅さと美を見つけ出すというギリシャ人の理想を実現しようとしたものだ。それが世界中から認められた」
「かといって4年に一度持ち回りで開催地を選ぶ理由などどこにもないはずだ」
「問題は開催にかかる費用だ。近代ギリシャはそれほど豊かな国ではない。そうならば五輪に参加したい国から参加費用を払わせるのだ」
「欧州連合(EU)も一肌脱ぐべきだし、欧州中央銀行も拠出金を出すだろう。かつて財政面でメルトダウンしたギリシャは五輪開催で潤うこともできる」
(Give Greece Back the Olympics | Washington Monthly)
「東京五輪を最後にもう五輪はやめるべきだ」という強硬論まで出ている中で「ギリシャ五輪里帰り」構想。
意外に良いアイデアで、一考する価値はありそうだ。
度肝を抜く花火の後に何が起こるのか
パンデミック非常事態宣言下で始まった東京オリンピック・パラリンピックを世界はどう見ているか。
米主要メディアは始まる前から「完全な失敗に向かっている。『おもてなし』の心は偏狭で内向きな外国人への警戒に変化した」(ワシントン・ポスト)と酷評していた。
だが、「シュールな(現実を超越した)開会式」(CNN)を見た米メディアの記者たちは、「コロナ禍による死者を弔い、孤独と戦いながらトレーニングを強いられてきたアスリートたちへの賛歌を歌い上げた」(公共放送NPR)と一定の評価をしている。
一方、こうした開会式の荘厳さとは裏腹に、競技場外から聞こえてくる東京五輪反対デモ参加者たちの罵声に日本が抱える複雑さも厳しく指摘している。こうした報道については読者諸兄姉もすでにご承知だろう。
こうした紋切り型報道ではなく、インテリ若年層に圧倒的人気のあるニュースサイト「ザ・デイリー・ビースト」が東京に派遣したエンターテインメント担当記者、ケビン・ファーロン氏の現地報告をご紹介しよう。
デイリー・ビーストはインディペンデントのリベラル系、1日のアクセス数は100万を超えている。
「人っ子一人いない観客に向かって言い放たれた(開会式の)メッセージは内向きで、はにかむような大言壮語だった」
「オリンピックは、嫌われ者のウイルスをまき散らすスーパースプレッダー(超感染拡散者)だ。オリンピックが、観客席は空っぽの国立競技場でこの夜デビューした」
「度肝を抜く華やかな花火が打ち上げられた。だが、その後に何が起こるのか。控えめな言い方をすれば、誰も五輪はやりたくなかったはずだ(つまり、一部の人間を除き、みな反対だった)」
「開会式は短かったが、実にビューティフルだった。すべてが抑え気味だった。演壇に立った人たちのスピーチは口々に国際的な団結と忍耐を強調していた」
「だがこの夜の開会式を見ていて気づくのは、なぜこんなに慇懃な(Respectful)なのか、もっと言えば、なぜこんなにくだらない(Stupid)のか、ということだった」
「通常な時であれば日本という国は、こんなウイルスなど撲滅していた。ところが、今や、第4波のパンデミック禍で国民を家に閉じ込めている」
「世論調査では日本国民の多くが東京五輪の中止か、再延長を望んでいた。観客がいないのになぜ世界中から集まった選手たちを歓迎し、祝福することができるのだろうか」
「家から出られないのに日本国民はどうやってグローバルなイベントを楽しめる特権を享受できるというのだろう」
「(この競技場の記者席から見ていると)東京五輪の開会式は気が滅入る(Depressing)だけだった」
(https://www.thedailybeast.com/the-tokyo-olympics-opening-ceremony-was-depressing-as-hell)
東京五輪は最初から呪われていた
「東京五輪は呪われている」と言い切ったのは麻生太郎副総理(兼財務相)だった。その発言を米メディアは好んで引用してきた。
まず新競技場のデザインにケチがつく。エムブレム盗作疑惑。森喜朗大会組織委員長の男尊女卑発言での辞任。それにコロナウイルスの爆発的な感染拡大による1年延期。
さらには開催寸前に噴出した五輪関係者のいじめ体質やホロコーストを茶化した発言発覚などなど、確かに呪われ続けた。
しかも感染力の強い「デルタ株」が猛威を振う中で菅政権の不手際でワクチン供給が遅れ、ワクチン接種は遅々として進まない。
だがプラス面もあったと、日米関係に長いこと携わってきた米元政府高官は言う。
「皮肉なことだが、東京五輪は日本人のメンタリティに潜む男女不平等、弱者軽視を炙り出し、ジェノサイドなどについての国際的なコモンセンスがいかに欠如しているかを露呈させてしまった」
「日本も他国に指摘されるなら反論もしただろうが、相手が五輪となるとそうはいかない」
「葵の御紋の印籠(五輪の精神)を突きつけられて『これが目に入らぬか』とやられると、ぐうの音も出なかった。そのこと自体は長い目で見れば、日本にとっては良かったはずだ」
バッハ会長は黒船のペリー提督だ
それでも、米メディア報道を精査していて気づくのは、非常宣言下でも東京五輪をせざるを得なかった菅義偉首相の「不甲斐なさ」を指摘はしても糾弾はしていないこと。
(海外から来た記者たちの意地悪い質問にも冷静さを保ち続ける橋本聖子五輪相を高く評価する記事も目についた)
国民の8割以上が中止や延期を望んでいるのに菅首相はなぜ、ごり押ししたのかという点では、日本の国家としてのプライドや経済的なメリットがあるのだろうと一応の理解を示している。
それに反して、米メディアが憤りの矛先を向けているのは国際オリンピック委員会(IOC)のドイツ人弁護士、トーマス・バッハ第9代会長ら五輪エスタブリッシュメントだ。
米高級誌「ニューヨーカー」のマット・アルト記者は、東京五輪を一方的に日本に押しつけたバッハ会長を1853年の黒船に例えてこう指摘している。
「7月8日は、今から168年前にペリー提督率いる黒船が江戸湾に現れ、開国を迫った日だ」
「バッハ氏は日本政府に1年延期された東京五輪を何としても今年夏に開催するよう迫ったのだ。日本はこの要求に社会的、政治的混乱状態に突き落とされた」
「菅首相は、ウイルス感染が拡大しているにもかかわらず『東京五輪はウイルスを撲滅したという証しにさせる』と主張、バッハ氏は『五輪は日本国民にウイルス・リスクを与える可能性ゼロだ』と空約束。すでに選手村からは感染者が十数人出ている」
(https://www.newyorker.com/sports/sporting-scene/tokyos-olympics-have-become-the-anger-games)
IOCの上から目線のスタンスは、日本での反対の声が出始める中でもいかんなく発揮された。
スポークスパーソンのマーク・アダムス氏は、こう言い放っていた。
「我々は(世論の声は)聞く。だが(決定する際に)世論に左右されることはない」
炎天下のマラソンは選手に負担をかけるとして、東京から札幌に変更した際にも、IOCは東京都の小池百合子知事と事前協議は一切しなかった」
「日本で報道されているように何か重要なアジェンダを決定するときはIOC、日本政府、東京都、日本五輪委員会、東京五輪組織委員会の5者で決めてきたというのは“神話”のようなもののだ」
ロサンゼルス・タイムズのジュリス・ボイコフ氏はIOCと五輪開催国との関係について、「IOCはまるで『ジキルとハイド』のような駆け引きに終始していた」とみている。
「開催を希望する国を選考する段階では優しく抱擁するが、いったん決まるやバイズ・グリップ(締め上げる)していく」
「東京五輪自体、中止するか、再延期するか菅首相(前任者の安倍晋三前首相)が提案するチャンスはあったのだ」
「菅氏は今頃になって、『IOCはすべての権限を持っている。IOCは東京五輪を今年開催することをすでに決定していた』と述べている」
(https://www.latimes.com/opinion/story/2021-07-22/tokyo-olympics-ioc-international-olympic-committee-los-angeles-olympics-2028)
五輪参加国は参加費をギリシャに払え
IOC批判に燃え上がる米国では、これだけ巨大化したオリンピックは東京五輪を最後に発祥の地であるギリシャに戻してはどうかという奇抜な提案が出ている。
今後、夏季五輪は2024年はパリ、2028年はロサンゼルス、2032年はブリスベンまで決まっている。
2032年に候補に名乗りを上げたのはブリスベンだけだった。
開催資金は膨れ上がり、コロナウイルス感染のような不測の事態や地球温暖化の影響を受けているとされる自然災害への対応など中小国では財政的に賄い切れなくなっている。
五輪誘致熱は急速に冷え込んでいる。
そこで、「ギリシャを夏季五輪の半永久的開催地にせよ」と唱えているのは、月刊誌「ワシントン・マンスリー」の編集主幹、ポール・グラストリス氏だ。ギリシャ系米国人だ。
同氏の構想をジャーナリストのテモシー・ノア氏が代弁してこう書いている。
「もともと五輪はギリシャ人が始めたスポーツの祭典だ。今や、世界中から『Boondoggle』(無用の長物)と言われている五輪を元の鞘に収めてはどうか」
「ザルツブルグ音楽祭をオハイオ州のアクロンではやらない、ローズボウルは西アフリカのバルキナファソではやらないのと同じ発想だ」
「五輪は肉体的な豪勇さに優雅さと美を見つけ出すというギリシャ人の理想を実現しようとしたものだ。それが世界中から認められた」
「かといって4年に一度持ち回りで開催地を選ぶ理由などどこにもないはずだ」
「問題は開催にかかる費用だ。近代ギリシャはそれほど豊かな国ではない。そうならば五輪に参加したい国から参加費用を払わせるのだ」
「欧州連合(EU)も一肌脱ぐべきだし、欧州中央銀行も拠出金を出すだろう。かつて財政面でメルトダウンしたギリシャは五輪開催で潤うこともできる」
(Give Greece Back the Olympics | Washington Monthly)
「東京五輪を最後にもう五輪はやめるべきだ」という強硬論まで出ている中で「ギリシャ五輪里帰り」構想。
意外に良いアイデアで、一考する価値はありそうだ。
米主要メディアは始まる前から「完全な失敗に向かっている。『おもてなし』の心は偏狭で内向きな外国人への警戒に変化した」(ワシントン・ポスト)と酷評していた。
だが、「シュールな(現実を超越した)開会式」(CNN)を見た米メディアの記者たちは、「コロナ禍による死者を弔い、孤独と戦いながらトレーニングを強いられてきたアスリートたちへの賛歌を歌い上げた」(公共放送NPR)と一定の評価をしていると、高濱氏。
遊爺も、ソフトの上野・後藤(最年少)の継投接戦勝利。柔道の渡名喜の銀と観て、極めつけの高藤さんの「開催して頂いたおかげです」の勝利・感謝辞で、すっかり嵌められて観戦してます。
高藤直寿が金メダル獲得で男泣き「開催して頂いたおかげです」(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
海外、特に米国の評価は、高濱氏が紹介いただいている、「ザ・デイリー・ビースト」が東京に派遣したエンターテインメント担当記者、ケビン・ファーロン氏の現地報告に集約されているのでしょう。
「東京五輪は呪われている」と言い切ったのは麻生太郎副総理(兼財務相)の発言を米メディアは好んで引用してきたと高濱氏。
それでも、米メディア報道を精査していて気づくのは、非常事態宣言下でも東京五輪をせざるを得なかった菅義偉首相の「不甲斐なさ」を指摘はしても糾弾はしていないことだと。
それに反して、米メディアが憤りの矛先を向けているのは国際オリンピック委員会(IOC)のドイツ人弁護士、トーマス・バッハ第9代会長ら五輪エスタブリッシュメントだと高濱氏。
「7月8日は、今から168年前にペリー提督率いる黒船が江戸湾に現れ、開国を迫った日だ」
「バッハ氏は日本政府に1年延期された東京五輪を何としても今年夏に開催するよう迫ったのだ。日本はこの要求に社会的、政治的混乱状態に突き落とされた」
と、米高級誌「ニューヨーカー」のマット・アルト記者。
IOC幹部は、五輪が開催され、米TV局からの放映料の収入が確保されることが最優先とは、誰の眼にも明か。
IOCの上から目線のスタンスは、日本での反対の声が出始める中でもいかんなく発揮された。
スポークスパーソンのマーク・アダムス氏は、こう言い放っていた。
「我々は(世論の声は)聞く。だが(決定する際に)世論に左右されることはない」
炎天下のマラソンは選手に負担をかけるとして、東京から札幌に変更した際にも、IOCは東京都の小池百合子知事と事前協議は一切しなかった。
今、炎天下のハードコートで開催中のテニスでは、時間帯をズラす様、有力選手から要望が出ていますが、どうなるのでしょう。
米TV局様のご意向次第?
アダムス氏はまた、「何か重要なアジェンダを決定するときはIOC、日本政府、東京都、日本五輪委員会、東京五輪組織委員会の5者で決めてきたというのは“神話”のようなもののだ」と。
ロサンゼルス・タイムズのジュリス・ボイコフ氏はIOCと五輪開催国との関係について、「IOCはまるで『ジキルとハイド』のような駆け引きに終始していた」とみていると高濱氏。
高濱氏は、IOC批判に燃え上がる米国では、これだけ巨大化したオリンピックは東京五輪を最後に発祥の地であるギリシャに戻してはどうかという奇抜な提案が出ているとも。
2032年に候補に名乗りを上げたのはブリスベンだけだったのだそうですね。
開催資金は膨れ上がり、中小国では財政的に賄い切れなくなっているのが原因。
五輪誘致熱は急速に冷え込んでいると高濱氏。
そこで、「ギリシャを夏季五輪の半永久的開催地にせよ」と唱えているのは、月刊誌「ワシントン・マンスリー」の編集主幹、ギリシャ系米国人のポール・グラストリス氏。
ジャーナリストのテモシー・ノア氏の代弁が以下。
「もともと五輪はギリシャ人が始めたスポーツの祭典だ。五輪を元の鞘に収めてはどうか」
「五輪は肉体的な豪勇さに優雅さと美を見つけ出すというギリシャ人の理想を実現しようとしたものだ。それが世界中から認められた」
「4年に一度持ち回りで開催地を選ぶ理由などどこにもないはずだ」
「問題は開催にかかる費用だ。そうならば五輪に参加したい国から参加費用を払わせるのだ」
「東京五輪を最後にもう五輪はやめるべきだ」という強硬論まで出ている中で「ギリシャ五輪里帰り」構想。意外に良いアイデアで、一考する価値はありそうだと高濱氏。
開催中止の世論が高まっていた今回の東京五輪。問題・トラブルが続出の今回の東京五輪。
前回開催では、日本の復興・成長にも大きく貢献があった五輪。何故今回はこうなったの?
そして、冒頭で触れさせていただいたように、競技が始まれば、その内容や、選手のヒストリーには感動させられる。
五輪の開催のあり方について、再考が必要な岐路に至っていることが顕在化したのが、今回の東京五輪なのかも。
# 冒頭の画像は、金メダル獲得は「開催して頂いたおかげです」と男泣きの高藤さん
この花の名前は、ツユクサ
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