ということは、忙しい最中に訪問して時間をとらせ迷惑がられて帰ってくるという、逆効果を産むだけの訪米になるのではないでしょうか。
今日の日経と読売の社説を読み合わせると、TPPの推進と、そこで欠かせない農業改革の両方が、国内で放置され蓋をされたままであることが指摘されています。偶然の一致なのでしょうが、ついつい政治パフォーマンスショーに眼を奪われてしまっている日本のマスコミと国民に、警鐘を鳴らそうと両紙の心ある論説委員様が期を一にして筆をとられた。今の日本は、そんな状況にあるということなのでしょう。
時事ドットコム:日本政府、公表遅れ懸念=「首相訪米意義薄れる」-米軍再編
野田訪米控え TPP反対議員200人余 「日本を滅ぼすな」 (田中龍作) - BLOGOS(ブロゴス)
日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に向けた動きが止まっている。国内の産業界や米国政府には、30日に開く日米首脳会談で野田佳彦首相が参加表明に踏み込む期待が高いが、首相は時期尚早と考えているようだ。
野田首相は決断を遅らせるべきではない。日本不在のまま、いま現在もTPP交渉は進んでいるからだ。参加が遅れるほど、貿易・投資のルールづくりに日本の国益を反映できなくなってしまう。
たとえば技術基準の統一では、TPP交渉は製品・食品の安全規格を、日本主導で戦略的にアジアに定着させる好機となるはずだ。金融や通信、知的財産権などの扱いでは、現在の交渉国の中で米国の発言力が圧倒的に強いため、米国だけに都合がよい条文が出来上がる可能性もある。
消費税引き上げや原子力発電所の稼働再開など、首相が国内で多くの政治的難題を抱えているのは事実だ。すべて同時に突破するのは難しい局面だが、TPP交渉国は日本を待ってはくれない。
問題は、TPPをめぐり賛否両論に割れる民主党内で、両陣営の見解が全くかみ合わず、建設的な議論がなされていないことだ。このまま党内の意見調整を待っても容易に結論は出ないだろう。
TPPが日本経済の成長戦略の柱となる理由を、首相は大局的な観点から説明すべきだ。農業や医療、輸出業界など個別分野の損得だけでなく、消費者が得る恩恵を具体的に示すべきだ。経済全体の押し上げ効果など机上の試算も、多くの国民にはピンと来ない。
地政学的なTPPの意義も語るべきだ。中国が台頭するアジア太平洋地域で、日本が発展し続けるためには、新しい通商秩序が欠かせない。国家が政策的に市場競争に介入する「国家資本主義」を防ぐためにも、次世代のルールの体系が必要となる。日本は国益に沿って、またアジア代表として、具体的な提案を示すべきである。
国内農業などの反対勢力は、保護の撤廃による目先の所得減少を心配している。これを説得するには、日本の農業を立て直す農政改革に道筋をつける必要がある。
日米首脳会議の後も、5月には米国で主要国(G8)の、6月にはメキシコで20カ国(G20)の首脳会議が開かれる。野田首相が交渉参加を表明する機会は続くが、経済外交と農政への真剣な取り組みを避けた先送りは許されない。
税と社会保障の一体改革に政治生命を懸けると、最近の歴代総理にはない、ブレの比較的少ない姿勢で邁進している野田氏の姿には、相対論になりますが、賛意を贈っています。
しかし、消費税増税が突出しているきらいがあり、最も効果がありみんなが唱えている経済の立て直しによる税収アップへの取り組みが、真剣になされているとは思えません。
納税額の大きい大手製造業は軒並み史上最多の赤字決算を出すなど、税収は減少の方向ですね。更に電力の供給不安や値上げで、企業収益は悪化=雇用や賃金低下の見通しです。
もともとの少子高齢化での国内市場の縮小、農林畜水産業の次世代の担い手不足といった基本構造の閉塞といった課題も継続して存在します。
これらを打破するには、成長に世界が注目するアジア市場の活力に溶け込む方法があり、その手段にTPPがあるのです。
日中韓FTP等は、あの社会主義経済(為替も税類も強烈な管理)の中国がどこまで本気で取り組んでいくのかははなはだ疑わしく、米豪加などのTPPに日本が傾斜したことに歯止めをかけるためのポーズと考えるのが自然です。
日経の社説の言を借りるまでもなく、TPPの加入への検証と国内世論への説得は活発に行うべきで、一夜漬けの土壇場での大騒ぎをしなくて良い様、先送りせず迅速に取り組むべきです。
医師会がTPP参加反対の新聞広告をしていますが、反対派のほうの宣伝が先行している感があります。
注目されている農業は、TPPとか、FTPとかに係らず、その改革が必要なことは既に解り切っていることです。
就労者の老齢化、兼業農家など小規模農家のコスト高と票集めのためのバラまき資金での改革逆行現象の発生は、民主党に政権交代を招いた原動力となりました。
改革が必要と、多くの人々が認める中、改めて改革の進展を促しているのが、読売の今日の社説です。
環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加をにらみ、農業再生は待ったなしである。
それなのに、貿易自由化を乗り切る強い農業への転換は進んでいない。
農林水産省がまとめた2011年度農業白書は、改革の遅れを改めて浮き彫りにしたと言える。
白書は、民主党政権が10年に策定した食料・農業・農村基本計画に基づく政策を検証した。
政府が10年度からコメ農家を対象に導入した戸別所得補償については、加入者が増加し、農業経営の改善や生産調整の推進に効果があった、と評価している。あまりに偏った分析ではないか。
農業所得の平均は8年ぶりに増え、とくにコメ農家は3割以上伸びたが、所得全体の約6割は所得補償の給付金である。
これほどの補助金頼みでは、足腰の強い農業は実現できない。
日本の農業生産額の8割は、畜産、野菜、果実などが占め、コメは2割にとどまる。しかし、コメ農家は、全農家のほぼ半分に当たる約120万戸と多い。
問題は、年2兆円の農業予算の3分の1が、兼業や零細のコメ農家にも一律に補助金をばらまく所得補償に使われていることだ。
予算は限られている。その中で農業の競争力を高めるには、経営意欲のある中核的な農家に財政支援を集中すべきである。
生産性を向上させて農業を強化するカギとなる農地の規模拡大も全く不十分だ。大規模化を促すため、11年度に導入された新たな補助事業への申請は約3割と低調だった。兼業農家などの農地の「出し渋り」が要因だろう。
コメ農家の平均的な農地面積を5年間で2ヘクタールから20~30ヘクタールに広げるという政府の目標が、絵に描いた餅に終わるのは必至だ。
1次産業に加工(2次)、流通(3次)を組み合わせた「6次産業化」にしても、農水省の掛け声通りには進展していない。
取り組んでいる農家の割合は10年間で倍増したが、それでも全農家の2割程度と少ない。直接販売が中心で、付加価値の高いアグリビジネスにはほど遠い。人材確保や資金調達などの課題に政策が対応できていないのが現状だ。
農業の活性化には、国内市場に安住せず、もっと輸出戦略にも力を入れるべきではないか。
日本の農産物は食味や品質などで評価は高いが、一部の農家や農協などが独自に開拓する販路だけでは限界がある。政府主導の総合的な取り組みが必要だろう。
赤松や山田氏が大臣時代には、改革逆行のばら撒きが進みこそすれ、改革がすすむことは期待できませんでした。鹿野氏に変わり、その後野田政権となり、かすかな期待はしたのですが?
政治家は、ばら撒きをマニフェストで謳う政党の人ですからダメとして、官僚の中に、現状のまま放置すれば消えてなくりそうな日本の農業を、ばら撒きでの単なる延命治療ではなく、構造改革をして立ち直らせようと考える人は居ないのでしょうか。
政党もダメ、担当官僚もダメとなれば、政権交代をして、政府側を刷新し、その意を汲む官僚を重用するしかないことになりますね。
とは言え、自民党も見解が定まらず党内が割れている。
政策を中心にした、政界再編が必要ですが、政策より自己利益を優先する輩ばかりでは、それも進まない。このまま船頭がいない状態がつづけば、沈没するしかない。
# 冒頭の画像は、日米首脳会談を前に東京・日比谷公園で集会を開催(25日)した農林漁業団体など
この梅の花の名前は、幾夜寝覚
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