遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

福島第一の汚染水対策 漁師さんの苦悩

2014-05-05 23:01:58 | 東日本大震災
 福島第一の廃炉対策と言うのか、未だ続いている汚染と被害の拡大というのか、毎日400トンづつ増え続けている汚染水対策は、時々注目されますが遅々として進みませんし、解決の道筋が見えてきませんね。
 罪はないのに人生を一変させられた漁師さんにとっても、加害者の東電の社運も、その今後を左右する重要な課題のひとつが増え続ける汚染水対策ですが、さわらぬ神にたたりなしというのか、先送り姿勢の政府には決断が求められる時がきています。
 

「東電と漁師は運命共同体」被災地の苦渋(ルポ迫真):日本経済新聞

 「福島の漁師の責任として苦渋の決断だ
 福島県漁業協同組合連合会は3月25日、東京電力福島第1原子力発電所の原子炉建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げ、海に放出する東電の計画を受け入れた。風評被害の懸念は拭えない。
1日400トンずつ増える汚染水を少しでも減らすため、拒絶できなかった

 「はっきり言って、漁師は東電や国を信頼していない。我々を裏切らないような厳格な運用をお願いしたい」。相馬双葉漁協組合長、佐藤弘行(58)は東電常務執行役、新妻常正(59)に不満をぶつけた。貯蔵タンクからの汚染水漏れ、海への流出と不手際が続く。新妻は「放出の基準は厳格に守ります」と深く頭を下げた。
 
東電は今月中旬にも地下水放出を始める予定で、地下水の放射性物質濃度を測るなど準備を続ける。敷地内の約900基のタンクにたまった汚染水は46万トン。原発事故収束のためにも漁師のためにも、汚染水処理の失敗は許されない。「東電と漁師は運命共同体だ」。県漁連会長の野崎哲(59)はうめいた。
<中略>


 地下水放出が迫り、
漁師たちが何より恐れるのは「福島産」への風評被害の高まりだ。
 「消費者は二極化している」。相馬市のスーパーシシド店長、浜名良一(53)は実感する。震災前は新鮮な地元産の魚介類が看板商品で、発泡スチロールの箱ごと買っていく客も多かった。
 今、売り場では試験操業で取れた魚の横に放射性物質の検査結果を表示し、安全性をPRする。高齢者は「地元を応援したい」と積極的に地元産を買ってくれる。一方、小さな子供をもつ親は健康への影響を心配して地元産を手に取らない。

 漁師の苦悩はほかにもある。福島第1原発の港湾内で取れるアイナメ、ソイといった魚の放射性物質濃度は1キロあたり最高で1万ベクレルを超え、基準値の100倍以上。「港湾内の魚が沖合に出てサンプル検査で数値が跳ね上がり、出荷制限の解除が遠のく」と漁協関係者はこぼす。
 東電は原発事故の収束作業に使う大型資機材を船で運び入れており、港湾を閉鎖することはできないという。相双漁協の遠藤和則(59)は「港湾を埋めてしまうのが一番だが、収束作業を止めるわけにはいかない」

 「人間は働かねえとダメだ。職を奪われることがどれだけ苦痛か」。同県新地町の漁師、小野春雄(62)は語気を強める。激震に襲われた3年前のあの日、小野は港に駆けつけ船を守るために沖に出た。同じ行動を取った弟(当時56)は津波の犠牲になった。
 東電から原発事故前の収入の8割ほどが補償される。「漁師は補償金で酒を飲んでいる」といった心ない陰口もある。だが金銭であがなえない苦しみが被災者にはある。肉親を亡くし、漁もできないストレスで一時体重が20キロ近く増えた。ようやく始まった試験操業で週2回、漁に出た。「漁師は魚が網に掛かるのが喜びなんだ」
 試験操業の底引き網漁の水揚げ量はおおむね30分の1だ。昨年10月に試験操業を始めたいわき市漁協は大半の魚を福島県内の市場に出荷する。
 一部は宮城、茨城県の市場に出荷され、宮城産や茨城産と遜色ない値がつく。だが、福島県産は扱わない仲買人もいる。
大消費地の築地などに出荷できるだけの漁獲高に回復した時、どう評価されるのか。同漁協の新妻隆(54)は覚悟する。「風評被害との本当の闘いはそれからだ
」(敬称略)

 東日本大震災で沿岸部の被害は甚大だった。それでも海と共に生きる被災者を追った。


 漁師さんの苦渋の決断で、海洋放出できることになる汚染前の地下水は、今、日々流入している400トンの内の100トン=1/4にすぎません。
 未だ、300トン/日は増え続けるのですね。これらに対しては、凍土壁で囲って地下水の流入を防ぐとのことで実験が始まっていますが、本格着工のめどはたっていません。
 
【福島第1原発の現状】(2014年4月28日) 凍土遮水壁に強い懸念 6月着工不透明に : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)

 未知の新技術で問題点も予測され、成功の目途がたたない凍土壁ですが、現状では上記の、汚染前の地下水の海洋放水の他には、流入する地下水対策としてはこの未知の方法しか検討されていません。
 東電の大小諸々の対策は、複数の対策案があっても、いつもひとつしか検討しません。普通の企業の重大クレーム対策は、あらゆる方策を同時並行で検討し、素早い解決に最大限の努力をします。そうしないと、顧客にも自社にとっても被害が大きくなり、顧客を失うことになるからです。東電の独占企業の体質なのでしょうか?
 馬淵氏が提唱した、土木工事として(今回も原子力関連技術ではなく土木工事技術)実績のある遮蔽壁工事は却下され馬淵氏は更迭されたという報道が問題になったことがありましたが、そのまま放置されています。
 
echo-news - 「遮水壁を作ろうとしたが更迭された」民主・馬淵氏がいま語る汚染水対策

 凍土壁は、工事もさることながら、維持管理にも未経験の問題があります。素人の遊爺でも一番最初に思い浮かぶのが、電源喪失です。そもそも、福島第一の事故原因は電源喪失です。そこまで考えていては事業が出来ないと、班目氏が言って対策を怠ったことが原因です。
 いろいろな理由での停電で代替え電源が無ければ、凍土は溶けて用をなさなくなるでしょう。
 未知で工事に加えて、維持管理にも問題のある凍土壁一本にしほり混んで、実績のある、維持管理が比較的容易な馬淵氏が提案した案を見向きもしない理由はなになのでしょう。
 両者を、東電ではなく、土木技術の世界の叡智を募って両方比較検討すべきです。原発事故の収束、廃炉の推進、代替え電源が見つかるまでの安全な原発稼働に向けて、早急に、総力をあげて取り組むというのなら、増え続ける汚染水の増える元を断つ対策として、凍土壁と馬淵氏が提唱した遮蔽壁や他の方法も併せて検討を進めるべきと考えますが、いかがでしょう。

 以上は、増え続ける汚染水の元を断つ対策。それでも、100%元をたてるのかは未明です。更に、既にタンクに溜められている汚染水。炉心を冷やすための循環冷却水の汚染水対策があります。
 これは、政治決断で解決できるのです。
 つまり、「ALPS」で除染した後に残るトリチウムの残った水をどうするかです。トリチウムによる人体への影響は極めてすくなく、普通の営業稼働している原発から海洋に流出されているレベルと、、「ALPS」で除染した後の水に含まれているトリチウムは同様の問題がないレベルだと言うのです。
 なので、「ALPS」で除染した水も、厳重な管理の元に安全が確認されたものは、海洋放出する決断が必要です。勿論、IAEAの承認を得て、日本国内のみならず、世界の承認をえたうえでの話です。
トリチウムの危険性は低い!フランス原発は福島第一の数百倍流出【青山繁晴】 - YouTube
 
福島第1、トリチウム水処理11の道 :日本経済新聞

 東京電力福島第1原子力発電所の汚染水問題で、浄化装置を通しても最後まで残る「トリチウム水」の処理方法の検討が進んでいる。政府は28日に開いた汚染水処理対策委員会で、海洋や大気への放出のほか貯蔵などの11の選択肢を挙げた。最大の課題は風評被害の回避だ。科学的な安全評価だけでは割り切れない問題も絡み、決定打はまだ見えない。

 汚染水処理の生命線となっているのが放射性物質を取り除く装置「ALPS」。昨年11月から本格稼働しているが、トリチウムだけはどうしても取り切れない。1日約500トンずつ発生しており、最終的には80万トン程度まで増える見込みだ。
 経済産業省は同日、汚染水対策を話し合う政府の会合で、
トリチウム水の最終処理について様々な選択肢を示した。(1)基準値以下に薄めて海洋や大気中に放出(2)タンクなどで長期保管(3)地中に埋設(4)水からトリチウムを分離
――などだ。
 
トリチウムの人体影響は極めて限定的とされ、専門家の間では海洋放出を推す意見が多い。昨年12月に視察した国際原子力機関(IAEA)の調査団は基準値以下に薄めた上での海洋放出を提案
した。日本原子力学会も薄めて海に流すべきだとする見解を発表。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「希釈なりをして放出することになると思う」との見方を示した。
 ただ政府は「現段階では優劣を付けない」(経産省)と慎重だ。これまでの専門家会合で、福島県の流通関係者の代表は「消費者の受け止め方は放射能の強いセシウムも弱いトリチウムも同じ」と発言、海洋放出に懸念を示した。政府内でも「風評被害の影響も評価すべきだ」(水産庁)などと慎重な意見は根強い。

 米スリーマイル島原発事故でもトリチウム水が発生し、日本と同様に様々な処理法を検討した。だが地元の反対もあり処分法が決まらず、長期にわたり保管を続け、最終的にはトリチウム水を加熱して3年かけて蒸発させた。処分が終わるまで約10年かかった。当時、トリチウム処理に関わったチャック・ネギン氏は「河川放流を実施したかったが、裁判で勝てないと判断し、大気拡散法を選んだ」と振り返る。

 東電の担当者は28日の委員会で「リスクに関する合意形成は事故後の大きな反省点」と語った。今後の処分方法の絞り込みにあたっては住民など関係者を交えた丁寧な議論が欠かせない。トリチウム水という難題を解決できるかどうかは、今後の廃炉作業の試金石となる。(古谷茂久)


 安倍首相はオリンピック招致で、原発事故後の日本の安全性をアピールしました。汚染水が増え続ける一方で、タンクに溜め続ける現実を知った外国人は、そのリスクの大きさに驚くことでしょう。
 
 汚染水発生の元を発つ対策を、未知で維持管理の不安定さや高コストな凍土壁一本に頼るのではなく、他の方策と並行検討し早急に確実で安定管理が出来る方法を実施することと、「APLS」で除染した汚染水で、トリチウムがIAEAが認める基準以下のものは海洋放水することの政治決断(=風評被害防止の政府の強い啓蒙・宣伝)が望まれます。
 これなくして、原発事故処理の終焉も廃炉作業開始もありえません。



 # 冒頭の画像は、試験操業で水揚げされた魚を仕分ける相馬双葉漁協の職員




 この花の名前は、マツムシソウ   撮影場所;六甲高山植物園 (2013年 9月 撮影)


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