遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国 経済成長の壁『中所得国の罠』を乗り越えられるか

2011-08-28 00:05:03 | 中国 全般
 いつも言い続けていることですし、諸兄もご承知のことですが、中国の経済発展は日米が始めたビジネスモデルの「世界の工場」の役割に負うものでした。安価な労働力や投資環境(土地や建設費)と人民元の安値維持などによる輸出競争力により実現されました。そして、世界第二位のGDPを誇る国家となったのですね。
 それでも中国は、時によって発展途上と立場を使い分けますが、一人当たりGDPでみると、4,500ドルと"中進国"になったばかりだという事実があるからです。さすがに発展途上国は言い過ぎです。
 そして少子高齢化の顕在化が迫ってきている今、『中所得国(中進国)の罠』が中国で話題になっているのだそうです。
 







【緯度経度】北京・山本勲 中国を待ち受ける「中所得国の罠」(8/27 産経)

 
中国で「中所得国(中進国)の罠(わな)」をめぐる論議がにぎやかになっている。昨年、日本を抜きGDP(国内総生産)世界第2位の経済大国となったが、1人当たりGDPでは約4500ドルと、まだ中進国入りして間もない。ところが中南米や東アジアでは中進国の多くがさまざまな壁にぶつかり、低迷を続けている。中国も同じ失敗を繰り返すのでは、との懸念からだ。

 
「中所得国の罠」という言葉は、世界銀行が2007年にまとめた報告「東アジアのルネサンス」で登場した。中南米やアジアの多くの国が発展途上国から抜け出し、中所得国まできたところで貧富差拡大や汚職、都市のスラム化など難題に直面。長期停滞に陥る
傾向がみられる。
 先行例はチリやアルゼンチンなどの中南米諸国で、アジアではマレーシア、タイ、インドネシアで似た現象がみられる。1人当たりGDPが1万ドルを超えた日本、韓国、台湾、シンガポールは、数少ない例外だ。
 そこで過去30年で最貧国から中所得国入りした中国はどの道をたどるのか。「罠にはまるか、先進国入りできるか。そのためにどうすべきか」といった研究や議論がにわかに活発化しているわけだ。関心の高さは、問題の重要さを端的に物語っていよう。
 中国内の研究によると、罠にはまったアルゼンチンでは1964年に1人当たりGDPが1千ドルを超え、90年代に8千ドルまで上昇後、2002年には2千ドルまで急落した。
 対照的に63年に142ドルだった韓国は、08年に2万ドル弱まで上昇した。大きな違いは韓国が研究開発費をGDPの約3%に高めて技術革新を進めたのに対し、アルゼンチンはわずか0・4%に低迷したことだ。
 さらに後者は、
所得格差指標のジニ係数社会騒乱多発の警戒ライン(0・4)
を上回る0・5を超えたのに対し、韓国は0・3と、いち早く格差縮小に成功した。この点は日本、台湾も同様で、共に技術革新を進めると同時に、民主化によって権力の腐敗や極端な所得格差を国民がチェックできる仕組みを整えた。
 一方、長期独裁政権下で縁故主義や汚職が蔓延(まんえん)したインドネシア、フィリピンは現在も2千ドル台前半で低迷している。
 
そこで中国だが、安価な労働力やエネルギー・公共料金と人民元の安値維持などを通じた投資と輸出主導の高成長を続けた。しかしこの数年、労賃上昇が加速する一方、再来年ごろから新規の労働人口が減り始め高齢化が急速に進む

 一党独裁下で党・政府幹部一族や、彼らと結託した経済人らが特権層を形成。「
1%の家庭が国富の4割を占有する
」(杜伝忠・南開大学教授)現象が顕著になっている。
 
役人の腐敗による国家損失は「GDPの1~2割」(汪丁丁・北京大学教授)とされる一方、ジニ係数は0・5前後
と中南米並みで、全土で大規模な抗議行動や暴動が多発している。

 人民論壇誌の昨年7月調査(専門家50人、一般大衆約6600人)では、対照的な結果が出た。大衆の過半数が「中所得国の罠を回避するのは困難」とみる一方、専門家の大部分が「罠にはまる可能性は低い」との楽観論だった。
 どちらが当たるかは「神のみぞ知る」だが、筆者は楽観できない。中華民族の優秀さからみて、先端技術開発や新たなビジネスチャンスへの挑戦で成功する可能性は十分ありえよう。
 課題は腐敗や格差是正のための、政治を含めた体制改革に踏み込めるか否かだ。改革・開放政策に移行して以来の30年間先送りしてきた難題に立ち向かうには、よほどの覚悟が必要だ。しかし独裁体制の安定維持に大わらわの現・次期指導部には、とてもその余裕はないようにみえる。


 『中所得国(中進国)の罠』にはまるかどうかの指標は、ひとつが技術革新の為の研究開発費のGDPに占める割合。もうひとつが、所得格差指標のジニ係数
 中国についてどうかとなりますが、記事では、先端技術開発や新たなビジネスチャンスへの挑戦では成長持続力を認めていますが、ジニ係数が警戒ラインの「0.4」を上回り、「0.5」前後と中南米並みである事を取り上げています。
 「1%の家庭が国富の4割を占有する」、役人の腐敗による国家損失は「GDPの1~2割」、全土で大規模な抗議行動や暴動が多発していると実例も示されています。労賃上昇が加速する一方、再来年ごろから新規の労働人口が減り始め高齢化が急速に進むといった、世界の工場の利点がなくなっていく社会構造の変化も発展の阻害要件ですね。

 腐敗や格差是正のための、政治を含めた体制改革について、「独裁体制の安定維持に大わらわの現・次期指導部には、とてもその余裕はないようにみえる。」と結ばれています。
 素人の遊爺が評論するのはおこがましい話ですが、胡錦濤主席、温家宝首相コンビでは、それはここ数年危機意識を強め、政策にも打ち出していると考えます。しかし、人民解放軍や、江沢民派(上海閥)(=富を寡占する既得権を有している人々)に足を引っ張られてきたのです。習近平新政権は、人民解放軍や上海閥の支援で産まれる政権であり、太子党(=富を寡占する既得権を有している人々)所属です。指導部は、今日の繁栄がもたらされたのは中華の国(長い歴史と広大な国土を誇る世界の中心民族)の共産党による管理体制の賜と考えていて、前述の経済発展が、小平によって導入された改革開放経済が日米のビジネスモデルの変革といった資本主義社会の変革とマッチしたことでもたらされていると言う意識はない(または知らぬふりをしている)のです。
 反日や、米国に追いつき追い越して世界の覇権を握ることを目指しています。
 米・バイデン副大統領の訪中で、習近平氏は、米国債を米国外で最も多く所有する債権国であることをかさに、米国に資産の目減りの苦情や、軍事費の圧縮を迫っています。つまり、対米姿勢を上から目線に切り替えています。
 低賃金、人権無視の社会環境、安全や環境保護を無視した産業構造、為替管理によるハンディ戦での経済競争で短期間に中進国にたどり着いた経済モデルを、一流先進国になるべく改革し、世界に貢献出来る構造の国になって初めて他国にとやかく言えるのであって、上から目線など、10年早い話です。
 
 驕る平家は久しからず。ジニ係数改善を意識していた胡錦濤、温家宝体制から、覇権制覇を目指し続ける習近平と人民解放軍主導政権への移行は、その改善の認識は薄く軍備増強に拍車をかけて、少子高齢化社会への転換期とあいまって、『中所得国(中進国)の罠』にはまると考えますがいかがでしょう。

 参考; 国庫証券の主要な外国人の所有者

            中国が米国債を大量に売り、日本が買い増したため、一時的に日本が一位の座に返り咲いた時がありましたね。
     日本、中国抜き最大の米国債保有国に 2年ぶり

     それでも中国は米国債を買い続ける:日経ビジネスオンライン

        ↑
      人民元レートの完全な変動相場制への移行(遊爺も最近唱え続けています)を唱えています。

# 冒頭の写真は上海の街の若者 (リンクなのでクリックでリンク元が参照できます。)



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中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
中国人民解放軍の正体―平和ボケ日本人への警告!!



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