遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

北方四島 露が帰してもよいと考えている(?)国後島

2016-07-29 23:58:58 | ロシア全般
 G7を前に、安倍首相は欧州の出席国を事前訪問しましたが、その帰途、ソチでプーチン大統領と会談しました。会談内容は公表されませんでしたが、「新たなアプローチ」というキーワードが流布されました。
 それはどんなことを指すのか、話題になりましたが、そのまますっかり忘れていました。
 東海大海洋学部の山田吉彦教授が、北方領土を訪問されたたのだそうですが、ロシアの各島の扱いに差があり、「返還問題の要諦は国後島にあるのではないか。この島は、条件次第で返ってくる可能性がある」との感触を得られた様です。
 

国後島 「返してもいい島」見せかけの街 (7/29 産経 【北方領土を行く】(上))

 
北海道根室市の根室港から船で約3時間、島影にカラフルなロシア風の建物が見えてきた。北方領土の玄関口、国後(くなしり)島の古釜布(ふるかまっぷ)は人口約3千人の街。戦前は島全体で約7千人の日本人が住んでいたが、今はロシアの一部に溶け込んでいる。
 街中を行くと、ロシアの実効支配を強調するかのように主要な道路は舗装され、集合住宅が立ち並ぶ。商店や教会、学校も急速に整備された印象を受ける。
 ただ、突貫工事によるであろう粗雑さも目立つ。道路は舗装されているが、砂利道に直接アスファルトをかぶせたのか、路面が波打ち、陥没も見える。地面と土台に隙間が生じた集合住宅や、古い外壁を張り替えただけの商店もあった。
 3年ぶりに古釜布を訪れたという
東海大海洋学部の山田吉彦教授は「このエリアしか開発していない気がする。デモンストレーションかなとも感じてしまう。『外交カード』にするために、見せかけの街づくりを行っているようだ
」とみる。

 「ここはロシアの領土。歴史的にそうなったのだ」。ソロムコ・ワシーリ・ドミトリエヴィチ地区長は22日、「南クリール(千島)地区」の行政府でこう主張し、日本の領有権に真っ向から反論した。
 サハリン州に属する南クリール地区は、国後、色丹(しこたん)両島や歯舞(はぼまい)群島などを管轄する。ソロムコ氏によると、地区の人口は約1万900人。水産業が主要産業だが、豊かな自然を生かした観光業にも力を入れているとし、「ホテルの部屋が足りない」と日本側の進出を促した。ただ、昨年の観光客数は約1200人で、成果が表れているようには思えない。
 クリール諸島(千島列島と北方領土)の「発展計画」は2025年までに600億ルーブルを投じ、この地区には3割が配分されるという。ただ、山田氏は「この島で産業を興そうという雰囲気はない。一方で公共投資はどんどん進めており、
産業がないのに都市があるのは不思議なことだ」と話す。さらに「数年前に訪れた択捉島は完全に企業化され、産業を興そうという雰囲気にあふれていた
」と両島の違いを強調した。

 日本は北方四島の一括返還を求めるが、ロシアは決して首を縦に振らない。山田氏は「
各島の扱いに差があり、交渉の過程が見えてきた」という。分割返還も見据えた条件闘争の準備を着々と進めているようにも映る国後島は4島の中で「返してもいい島なのだろう」
(山田氏)。張りぼてのような街が物語っている。山田氏はこう指摘した。

 「
返還問題の要諦は国後島にあるのではないか。この島は、条件次第で返ってくる可能性がある
」  (小野晋史)


 戦後70年以上が経過してもロシアによる不法占拠が続く北方領土。5月の日露首脳会談では「新たな発想」に基づくアプローチで交渉を進めることに合意したが、解決策は見えない。21~25日に日本側代表団の一員として北方領土を訪れると、交渉をめぐるロシア側の思惑が透けてみえた。

 数年前に訪れた択捉島は、完全に企業化され、産業を興そうという雰囲気にあふれていたが、国後島は、産業がないのに都市があるのは不思議なことで、『外交カード』にするために、見せかけの街づくりを行っているようだと述べておられるのだそうです。
 分割返還も見据えた条件闘争の準備を着々と進めているようにも映る。国後島は4島の中で「返してもいい島なのだろう」とも。

 プーチン大統領が主張しているのは、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという、1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名した、「日ソ共同宣言」の実現ですね。

 ロシアは、国境問題の解決では、面積等分の形での解決実績を持ち、2008年、アムール川(中国名・黒竜江)とウスリー川の合流点の中州にある大ウスリー島を二分することで中国との国境を画定しましたし、2010年にはノルウェーとの係争海域を2等分し、40年に及ぶ境界線論争に終止符を打ったのでした。
 北方四島でも、歯舞群島、色丹島、国後島に加え、択捉島の一部を含めた面積2等分論はありますが、日本はあくまでも四島返還を求めていることは、諸兄がご承知の通りです。

 そこで膠着している日露の北方四島の交渉。四島を要求するから、二島の話しか出てこない。サンフランシスコ条約に参加していないロシアと日本の間の領土交渉の締結済の条約は、樺太の北緯50°以南と千島列島・全島が日本領というポーツマス条約ですから、そこをスタートラインで交渉すれば良いとの説もあります。
 四島返還、面積等分、二島返還の他の新たな選択肢としての国後島を加えた三島返還が、「新たなアプローチ」なのでしょうか。

 ドーピング問題で、新たに国際社会との対立を増してしまったロシア・プーチン大統領の支持率が低下しているのだそうで、国内の抵抗が強い領土問題の解決に踏み切る余力があるのか。経済制裁を受け、原油価格下落で苦しい経済立て直しに、日本他の投資が必要なロシア。過去の面積等分より優位な形となる、国後島までの三島返還で国内を説得しようとしているのか。
 延び延びとなっているプーチン大統領の来日。それが実現する時が、ソチで踏み出した、「新たなアプローチ」が見えてくるときなのでしょうか。
 山田教授の、国後島の評価。「新たなアプローチ」の候補として注目に値しますね。



 # 冒頭の画像は、イシンバエア選手の涙に困惑するプーチン大統領




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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交



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