原題:MEI LANFANG
中国
チェン・カイコー(陳凱歌)監督が、カンヌでパルムドール賞に輝いた『 さらば、我が愛 / 覇王別姫 』以来15年ぶりに京劇を扱った作品。
梅蘭芳は現代京劇最高の女形男優。のみならず、大戦を挟んだ激動期の時代にあって、世界に京劇を中国の”国劇”として認めさせた功労の人でもあった。
師匠との対立、芸の改革、男形女優との恋、アメリカ公演、侵略日本軍との対峙と復活など、波乱万丈の半生が描かれる。
十代に女形のスターとして頂点を極める。後にマネージャー的な存在となる司法長官邱如白と進める伝統芸の改革を主旋律に据えた物語の前半では、舞台における京劇そのものをじっくり堪能することが出来て、満足感に充たされる。時代の追い風を受けた弟子に敗北する師匠十三燕の姿は、胸を打つ。
それに較べ、後半、日本軍との絡みの部分になると、ぐっと面白くなくなるのはどうしたものか。観る我々日本人に拘りがあるからか、作った中国人に懲らしめ心があるからか。
梅蘭芳を呼び出し、拘束し、脅す日本軍人が、中国映画によくある日本の典型として、登場する。その直前の部分が、スタンディング・オベーションで熱狂するアメリカ公演のシーンだけに、やり切れない思いがする。 映画の冒頭の「この物語は、事実である」のことわりの重さを感ぜずにはいられない。
梅蘭芳の日本公演には少なからぬ我が国壮士が献身をし、新しい数多くのファンも獲得。芥川龍之介や二代目市川猿之助との親交も衆知の事実である。未来志向で描くならこちらと思うがどうだろう。
陳凱歌監督
完成度において、『 さらば、我が愛 / 覇王別姫 』の方が優っている。
新宿ピカデりー・シアター7