フジテレビ 平成21年4月12日放送
松本清張生誕100年記念番組
久し振りに息を詰めてテレビ・ドラマを観た。
まず配役が申しぶんない。よく練られて、他に考えようの無いほどぴったりの役者起用。唐十郎や中島ひろ子がチョイ役とは恐れ入る。レーティング狙いのお笑いやジャリタレの起用も無い。
通俗の推理小説における犯人探しと異なる清張の原作をよく汲み、登場人物のバック・グラウンドが丁寧に描かれる。自由を求め、幸せを目指し、富を得んために、もがき苦しみ、人生の暗部に落ちゆく人間の性が、万感胸に迫ってくる。刑事役は役所広司。誰を演じても失敗作品は無い。心温かな刑事が番組を救っている。
’脚本・向田邦子’’清張生誕100年’がこの番組の売りとなっている。それだけ局も注力し、スポンサーも集め、番宣に相努めたこととは思うが、いい番組を作るのは当たり前だ。大騒ぎをしなくても視聴者は選ぶべきものは選ぶ。結果は付いてくるものだ。ちなみに演出は杉田成道。
松本清張 向田邦子
「アルハンブラの思い出」「真珠採り」「バーバーのアダージョ」などの挿入曲の使い方も文句ない。あるいは大きくあるいは小さく、二人の絡みには同じ曲と。物語に安定感と奥行きを与えている。ひょっとしてプロデューサーは同じ世代かな。