原題:FROST/NIXON
アメリカ
重量感のある映画である。ウォーター・ゲート事件で、アメリカ史上はじめて任期なかばで大統領を辞職したニクソン。フォード大統領の特別恩赦によって自由の身になり、再びの政界復帰を目論む。かたや、オーストラリアやイギリスで人気の司会者。こちらは、更なる飛躍を目指して野心満々のフロスト。
フロストがインタビューを申し入れ、ニクソンがそれに応じる。成功に賭ける双方の思惑。ニクソンを謝罪に追いこめられるのか。はたまた、ニクソンは上手く逃げおおせてイメージを払拭できるのか。3大ネットワークをはじめ、TV局はいまさらニクソン・インタビューなど食指を動かすわけもなく、膨大な契約料を借金で賄う。
4回にわたるインタビューの経過が映画のハイライト。舞台と同じニクソン役はフランク・アンジェラ。容貌は似ても似つかないが、観ているうちにニクソンその人になる。ニクソン以上にニクソンといったら言い過ぎか。これはもう、才知と傲慢と自信と後悔というあらゆる心理的演技の見事さゆえと言うほかはない。そう、アカデミー賞主演男優賞は彼でなければならなかった。
CGも使わず、冒険活劇の派手なアクションも無く、旬の女優の裸も無い。しかし、これだけ充実した作品が出来る。アメリカ国民にとって、ウォーター事件は、思い出したくない歴史の一つだろう。にも拘わらず、敢えて作品にしたロン・ハワードという監督はやはり並みではない。
日比谷シャンテシネ