毎日がしあわせ日和

ほんとうの自分に戻れば戻るほど 毎日がしあわせ日和

それは苦痛か祝福か。。。。またもや登場 「インセプション」

2018年04月18日 11時15分27秒 | 大好きな本・映画・ほか


先日BSで放送された映画 「インセプション」 、父が録画しておいてくれたので 以来何度か観ていますが、今回はどうも以前は氣に留めていなかった場面にたびたび意識が向きます。

いちおうネタバレ注意ということで。













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もうあとちょっとで任務成功というところで コブの意識の投影であるモルにロバートを撃たれてしまい 大ピンチの一味、アリアドネのとっさの発案で 三層の夢からさらにもう一階層下りて 虚無落ちとなったロバートを連れ戻すことになります。

以前モルと二人で創った夢の世界、今は廃墟の街に ロバートを探しに向かうコブとアリアドネ。

二人を待ち受けていたモルとコブの会話の中で、新たな事実が判明します。

モルの死は、コブのモルへのインセプションが 思いがけない展開を見せたことが原因だったと。

現実世界に戻りたがらないモルをなんとか連れ戻そうと コブが植えつけた 「ここは夢の中だから 自殺することで目覚めなければならない」 という考えが、彼の意図を超えて 夢から覚めたモルの意識の中で増殖し続け、夢と現実の区別がつかなくなったモルは (目覚めるつもりで) コブの目の前で高層ビルから飛び降りて 命を落としてしまったのでした。

これがコブの罪悪感の原因だったことが 終盤にさしかかったこの場面で初めて明かされるのですが、今回このシーンで思ったのです、「よかったねぇコブ」 と。

いくら消そうとしても消えない罪悪感を抱え続けていたからこそ、彼は夢の世界にのまれることなく 子どもたちの待つ現実世界に戻れたのですもの。

彼が自分だけの記憶の世界をたびたび訪れて 幻のモルとの逢瀬にふけっていたのは、妻恋しさからだと思っていましたが、実は耐え難い罪の意識から逃れようとしてのことでもあったのです。

が いくらごまかそうとしてもごまかし切れるものではなく、それはコブにとって絶えざる責め苦となりましたが、この切羽詰った場面で初めてそれを率直に明かし認めたことで、ようやっと幻のモルと決別し 夢と現実どっちつかずの不安定な意識から抜け出すことができたのです。




空想の世界というのは いくらでも都合よく創ることができます。

そしてその心地よさにのめり込めばのめり込むほど 意識が現実から乖離して 夢と現実の境が見えにくくなり、高じれば現実の世界を疎ましく思うようにさえなります。

貴秋は幼いころ 本やアニメを通じて 空想の世界に入り込むことで 親の厳しい監視や圧迫から逃れていましたが、この癖は長じるにつれてひとくなり、高校生のころには 「本の世界に入ったきりになれるものなら こんな重苦しいだけの現実世界なんか喜んで捨ててやるのに」 と本氣で思い込むまでになっていました。

まさに辛い現実から逃げようとしたコブや 夢の世界から抜け出すのを拒んだモルと同じ、だから彼らの氣持ちもわかります。

と同時に、夢の世界だけでは 生身の人間はやはり生きていけないということも よくわかるのです。

「空想のハンバーガーではお腹一杯になれない」 とおっしゃったのは岩月謙二さんだったと思いますが、夢が満たすのは脳 ・ マインドだけで、全存在が丸ごと満たされるのとは明らかに違います。

一時的な避難場所としては有効な空想の世界も、のめり込めば現実を見失い まさに虚無に落ち込んだような状態に陥ります。

生き辛いばかりの現実から無意識のうちに心が離れる貴秋の癖は 成人後もひどくなる一方で、ついにはうつ病一歩手前までいってしまいました。

あの時点で 見えない力によって和歌山行きを強く促されたのは、いやおうなしに現実世界に引き戻すための大きな救いだったと 今ではよくわかります。

空想の快感に思いっきり浸り込もうとする氣持ちに冷水を浴びせるようなネガティブな感情や出来事は、幻に引っ張られて舞い上がり ふらふら漂い続ける意識をぐいっと現実に引き戻し、鉛のようにのしかかる現実の重みが 「このままではダメだ、なんとかしなくちゃ」 と揺さぶりをかけて 目を覚まそうとしてくれます。

少し前に書きましたが、「ネガがグラウンディング (地に足つけて生きる) につながる」 とは そういうことなのです。




ただ、その不快さを直視し 現実世界の何がそんなに苦痛なのかをはっきり見極め ほんとうの自分の氣持ちを知るまで、空想と現実のせめぎ合いは続きます。

コブは アリアドネの助けもあって 初めて罪の意識を認め、自ら生んだ幻のモルに引導を渡して任務を成功させ、望んでいた子どもたちとの暮らしに戻ることができたのでした。




人がネガティブな出来事や感情をつい避けようとしてしまうのは、自己防衛反応というものでしょう。

それが苦痛しか与えないと思えば 無理もない反応です。

が、使い方次第で 人としての器を成長させ 幸福度を増すアイテムに変換させることもできると知っていればどうでしょう。

五感の世界と五感を超えた世界、複数の視点を持つことの意味が ここにあります。