Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

フル・モンティ

2006-12-30 | 外国映画(は行)
★★★★ 1997年/イギリス 監督/ピーター・カッタネオ

「なかなか捨てられぬ男のプライド」


鉄鋼所をリストラされた冴えない男たちが一発儲けるためにストリップショーを行うまでのハートフルコメディ。

この映画は音楽がいいね。そもそも音楽を聴くために映画を見ているワケじゃないけど、イギリス映画って「アリもの」の音楽を実に上手く使いこなしているなあ、と思う。ハリウッドばりに映画音楽を作るのもいいけど、なじみのある曲をストーリーに絡めてうまく聴かせるのも音楽監督の腕の見せ所だと思う。ソウル好きの私としてはホット・チョコレートの「you sexy thing」がツボだった。これ、ブギーナイツでもかかってたような。

それにしても、この手のストーリーは一つの「型」ができあがってしまったなあ、と思う。
●自己実現が難しい時代背景
●無謀なことにチャレンジする主人公
●ひびの入った親子関係
このあたりが3本柱か。今作はぷっと吹き出す笑いのエッセンスがあちこちで見られるのがイギリス映画らしいところ。おじけづくオヤジを一喝する息子、デブ夫を励ます妻など泣かせるポイントも当を得ている。

ただチャレンジものとして捉えると、ラストのパフォーマンスが物足りない。もうちょっとストリップショーとしての完成度を上げて欲しい。このあたりのユルさがイギリス映画のテイストなのかも知れないんだけど。まあ、ラストショットが全く引き締まってないお尻たちってのもリアルでそれはそれでいいんだけど、やっぱり演出的にもうちょっと盛り上げて欲しかった。

男ってのはプライドの固まりみたいな生き物。リストラされてるのに妻に言わない。払えもしない養育費を必ず払うと見栄を張る。よその男の裸を見に行く妻を非難する。どの登場人物も男としてのプライドが惨めな状況をさらに惨めにしていることになかなか気づかない。その余計なプライドをかなぐり捨て、リスタートすることが「フル・モンティ=すっぽんぽん」になること。

男の人が見たらこういう心理ってもっと共感できるんだろうな。貧乏ならすぐに売られる女の性の価値観とは雲泥の差があるもんで、いざ本番って時におじけづくガズを見ていたら「はよ、腹くくらんかい!」と突っ込んでしまった。いざという時に開き直れるのは女。だけど、女が主人公だとここまでコミカルにできたかどうか。なかなかすっぽんぽんになれない男たちの情けない心理や行動の描写だからこそ、ここまで笑える。ああ、男って本当に哀しい生き物だね。