Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

大統領の理髪師

2012-05-05 | 外国映画(た行)
★★★☆ 2004年/韓国 監督/イム・チャンサン
(DVDにて観賞)

「その場所でその時を、ただ生きる」


韓国においては、比較的現代に近い政治事件を描くのはなかなか難しい問題があるようで、
そのあたりの重さを取り払うためにか、かなり笑いの演出が盛り込まれています。
しかしね。私にはこれらのユーモアがどうも面白いと思えなくて、そこのところは好き嫌いもありましょうが、
もう少し減らして欲しいところですね。特に繰り返される便意ネタはもうええやんかとげんなりしてしまいました。
テロリストが森の中でお尻をおさえて、こそこそと逃げ回るシーンなんて、まるでドリフターズのコントのようでねえ。
私はあまり好きではないんです、この手の笑いを誘うシーン。

そこを除けば、ひょんなことで大統領の専属理髪師になった男の悲喜こもごもを庶民の視点から語る秀作だと思います。
一介の理髪師ゆえに時代の流れにのまれるままに生きるしかない男をソン・ガンホが好演しています。
そして、演技派ムン・ソリが実に平凡な主婦役。
あまりに普通なので最初、彼女だと気づきませんでした。

政治に翻弄される庶民ということなんだけど、
結局のところ、私も含めただの平凡な市民というのは、何もできない、ということなんですよね。
それをこの映画では、なすすべもなく悲嘆にくれるように描いているわけでもないし、
間違って政府に囚われた息子を取り返すために、主人公が大活躍するように描いてもいない。
ただ、ひたすら与えられた場所で粛々と生きるしかないってこと。
それが、全ての人の生きる姿であって、それを実にリアルに描いていると思う。