Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ヴァイブレータ

2006-03-13 | 日本映画(あ行)
★★★★★ 2003年/95分
監督/廣木隆一 主演/寺島しのぶ、大森南朋

「トラックに乗って王子様がやってきた」


痛い。痛すぎる。グサッと胸を刺された上にさらにナイフをねじ曲げられたような痛さが走る。しかし、見終わった後のこの爽快感は何だ。主人公は「もうひとりの自分の声」に悩まされている、という設定だが、これは何も精神的な病気ということでも何でもないと私は思う。女なら誰だってあるさ。自分で自分にツッコミ入れることが。とりわけ30過ぎればね。アタシ、このままでいいんかい?流されてないか?将来どうすんだ?結婚は?出産は?いつまでも若くないぞ。毎日、毎日そんな声と闘ってる。

正直、この映画は女のロマンの具現化だと思う。アルコール依存、食べ吐きを繰り返す31歳のルポライターが、ある日何かの啓示を受けたかのようにふらふらとひとりのトラック乗りのにいちゃんと一夜を過ごし、そのまま道連れにしてもらう。それは女の癒しの旅。こんなトラッカーおらんぞ、とツッコミを入れながら、見ている私も癒しの旅の同乗者に。もしかしたら、全てはこの女の妄想かも、と思ってしまうほどの夢物語。実際、冒頭とラストが同じコンビニのシーンであるが故にあながちそう考えるのも間違っていないように思える。

寺島しのぶがいいのはもちろんで、彼女の限りない「普通さ」が全ての女性観客の気持ちを主人公に同化させる。しかし、大森南朋だって最高。中卒で、ヤクザの世界にも片足つっこんでて、委託でトラック運転しているにいちゃんで、こんなに優しくて、おしゃべりがうまくて、人の話もちゃんと聞いてくれる奴なんか絶対いない!と思うんだけど、そこで引いてしまうどころか、時間が経つに連れてこの男にどんどん前のめりな私。(笑)それもこれも、大森南朋の巧さにつきると思う。ともかく、さっき目が合っただけの女が助手席に乗りこんできて、開口一番、「ようこそ」。もうこれで私はクラクラしちゃいました。

東京ー新潟往復間の風景も美しいし、音楽のセンスもとてもいい。運転中にトラッカーが話してくれるどうでも話も、まさにどうでもいいんだけど、見ていて飽きないし、いいシーンになってる。ほんと、全編に渡って無駄がないです。

それにしても寺島しのぶの脱ぎっぷりなんて話題が先行することが、非常にもったいない。この映画はそれ以上ですよ。100%とは言わないけど、映画って「生」や「死」を扱うものでしょ。「生」を描くには「性」は不可欠なもの。そこだけ取り上げてグダグタ言うんじゃない!と言いたくなりました。ただ、「こんな女はかなわねえ」「30女の妄想話に付き合わされた」という意見が、もしかしたら男性諸君からは出るのかも。なんかね、それもある意味納得。(笑)だって、それくらいせっぱ詰まってますから、この映画。私も知り合いの男性に見てもらって、ぜひこの映画の感想を聞いてみたい、と思いました。女への思いやりがどれだけ持てる男なのかを判断するのにも、ベストな映画なのかも。


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