Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

グレイハウンド

2021-01-10 | 外国映画(か行)
★★★★ 2020年/アメリカ アーロン・シュナイダー

驚異的。ほとんどの台詞が軍艦内の報告と命令。方位091度敵船2隻、方位098度26キロに輝点…。これで映画って成り立つんだなと感動。敵艦情報だけでなく船の故障から船員の体調まで。途切れる事のない報告に即座で指示を出し続ける、その描写が艦長のずば抜けた能力を示す。力作。

艦長が敬虔なクリスチャンであることがわずかなシークエンスで示されるのみ、湿っぽいシーンは皆無で、ほぼ海上での戦闘シーンだけというソリッドな構成。Uボートとの丁々発止の攻防がかなりの迫力。一瞬の気の緩みも許されない艦内の緊張感がすごい。ここまで削ぎ落とされた映画は滅多にない。

ゼイリブ

2021-01-09 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/ジョン・カーペンター

サングラスをかけると見えてくる宇宙人による支配社会。地球人は完全に骨抜きにされ底辺で生きている。格差社会に価値観の分断。無能な政府にOBEYする我ら、彼らに金目的に擦り寄る人々、コロナ禍というのに高騰する株価。まさに今見るべき、B級と侮れぬ普遍的な問題を突きつける作品。

主人公の言うことをなかなか信じない友人フランク。サングラスをかける、かけないで延々殴り合い。このくだりはB級ならではのグダグダ感とも取れるが、自分の信じる価値観がひっくり返されるのを人は何としても拒むことを表しているようにも思える。


旅のおわり世界のはじまり

2021-01-08 | 日本映画(た行)
★★★☆ 2019年/日本 監督/黒沢清

遠く離れたウズベキスタンという全く見慣れぬ風景の連続。それがさらに葉子の孤独を際立たせている。撮影クルーの度重なる無茶ぶり、現地の人の好奇の目、警察にまで追われて、まるで受難の旅。その旅の最後で自由を手にした彼女の朗々と歌い上げる姿に女優魂を感じた。

葉子が追い込まれる様子はAKB時代を彷彿とさせるし、異国で黒沢組と撮影するプレッシャーをも想像させる。これが二階堂ふみや小松菜奈ならここまでの痛々しさはない。部屋で寝転ぶシーンは一番ギョッとしたシーンで無防備な姿で殺された少女のよう。しかしカメラが回った時のあの笑顔。この人、想像以上に芯が強いんだな。


ブックスマート

2021-01-07 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2019年/アメリカ 監督/オリビア・ワイルド

まぶしい。あまりにまぶしすぎる。そのままのあなたを受け止めますという受容の世界。ここは楽園か?他者を知れば道は広がる。今世界中の人々が最も取り組まねばならない命題をしかめ面せず、高校生のたった一夜のバカ騒ぎで伝える。青春映画に新たな地平が出現した。

ヘタレ男子高校生の成長譚を単に女子バージョンにしたのではないというのが肝。モリーがガリ勉ででからかわれても、容姿についてからかわれることはない。ルッキズムの問題はここにはない。人種やジェンダーも同様だ。個性を互いに認め合う世界が大前提としてある事に作り手の強いメッセージを感じる。

サマータイムマシン・ブルース 

2021-01-07 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 2005年/日本 監督/本広克行

昨年ドロステ見たので久しぶりに再見 壊れたリモコンを取り戻すためタイムマシンで昨日と今日を行き来するコメディ。肩の力抜いて楽しめる。瑛太や上野樹里は覚えていたがムロツヨシ(若い!)もいたか。ヨーロッパ企画、同じ事をずっとやってるのが偉い。継続は力なり。

劇中、何度も「タイムマシンには矛盾がある」というセリフ。そこは置いといて楽しもうと割り切って鑑賞できる。BTTFオマージュもあちこちに散見。よって未来から来たアイツの正体も容易に推測できるがそこはご愛嬌。ヨーロッパ企画の面々も全員勢揃いじゃないか。みんな若いよ!

プロジェクト・ブルーブック

2021-01-06 | TVドラマ(海外)
★★★
UFOにまつわる陰謀論とか好きなジャンルだし、ロバートゼメキスってことで期待したけど全体的にユルイ。数多のドラマを見てきた経験で図らずも、この人KGBだよねってすぐわかってしまう悲しみ。Netflixの見過ぎだろう、刺激が足りない。UFO登場はワクワクするけど。

ウルフウォーカー

2021-01-06 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2020年/アイルランド・ルクセンブルク 監督/トム・ムーア ロス・スチュアート

水彩タッチの森のシーンの美しさにため息。森とは対照的に街の景色は平安時代の絵巻のような平面タッチ。これが実にユニーク。線もわざと粗さを残し、手描きの温もりを感じる。3DCGアニメが苦手なので、この世界観大好き。

歴史的事実として狼は全滅したことを考えるとラストも切ない。ケルト三部作の完結編とのこと。他作品も見たくなった。

さよならくちびる

2021-01-06 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 2019年/日本 監督/塩田明彦

邦画に出ずっぱりの(ある種見飽きたとも言える)3人だが、この生き生きとしたリアリティはどうだ。演出本も出している塩田監督だが解散ツアーを時系列で描くというオーソドックスさゆえに、3名の演技に魂が宿ったように思える。ハルレオ、何と魅力的。メロディが頭から離れない。

しつこいようだが。将来見えなくてぐずってる、みたいな役は成田凌も散々やっているし、他作品と何か演技が変わっているかというとそうでもないし。じゃあ何が違うかというと、この3人の醸し出す空気感としか言えない。この三角関係は最高。見てて解散が辛くなってきたもん。映画館で見たかったなー。

ハスラーズ

2021-01-04 | 外国映画(は行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/ローリーン・スカファリア

ポールダンサー・ラモーナを演じるJロペスが圧倒的。冒頭のポールダンスで脳天やられる。しかし、物語は証券マンから大金ふんだくる痛快犯罪劇から転調。金を出す側と踊る側。2者しかいない資本主義の中で、踊る側にしかなれない女たちの悲哀を描き出す。女たちに未来はあるのか。

ラモーナが単純なキャラクターじゃないのがいい。相棒のデスティニーの度重なる忠告を振り切り、無謀な詐欺を続ける。そこまでの金への執着はどこから来るのか。作中、その理由は明確にされず、余白がある。 で、なんでジェニファーロペス、アカデミーにノミネートされなかったの。最高だったよ!