『山の郵便配達』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000065BHM&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
80年初頭、中国・湖南省の山岳地帯。僻地を歩いて郵便物を配っていた配達夫(滕汝駿)が引退することになり、後任の息子?i劉燁)といつもの集配コースを引き継ぐ2泊3日120キロの旅に出る。1998年、霍建起監督作品。99年中国金鶏奨(中国アカデミー賞)最優秀作品賞・最優秀主演男優賞ほか全5部門受賞。同年モントリオール映画祭観客賞受賞。
ストーリーったってこれしかないんですよ。ホントこれだけ。湖南省の緑したたる美しい山々、寡黙な父と純情素朴な息子と愛犬がひたすら歩く。集落に着くと歓迎してくれる村人との交流がある。父は若かりし頃を回想し、息子は仕事で不在がちだった父との距離を縮めていく。いつも母親を気づかっていたひとり息子をどこか頼りなく思っていた父親も、彼がいつの間にか自分の代りに田畑や家庭を守る自立した大人に成長していることを知る。
台詞はすごく少ないです。特にとーちゃんめちゃ無口です。その代りと云うか息子のモノローグが多い。こうして聞くと北京語ってメロディアスで耳に心地よい言語です。劉燁のソフトな声音がまた詩的な語り口にあっている。
風景が綺麗でメインキャストはおっさんとイモいにいちゃん、台詞が少なくてドラマ展開にも乏しい淡々とした文芸作品と云えばなんとなく眠そうなゲージュツ映画を想像しますが(ぐりは公開当時=2002年はそう思ってた。ずびばぜん)、意外にも見てるとアッと云う間に時間が過ぎる。実際ナニが面白かったんだと訊かれてもようは分からんのやけども。父と息子の世代間の葛藤みたいなものは勿論ある。息子は合理的に仕事を楽しもうとするけど、父は頑なに自分がこれまで貫いたやり方にこだわろうとする。息子はそんな父に反抗はしない。でも思ったことはきちんと云う。普段あまり顔をあわせない父親をどこかで「こわい」と思ってはいても、ただ黙って無闇に云うことを聞いている訳ではない。そしてやんわりととーちゃんの体調を思い遣る。冷たい川を渡る時、息子の背に背負われた父は思わず涙する。このシーンぐりはすごく好きです。
この話が面白いのは、こうしたふたりのやりとりの描写の細やかさもあるけど、地味な仕事に対してあくまで真摯な主人公たちの純粋さや、陸の孤島に暮す少数民族の普遍的な豊かさに向ける語り手の目線のあたたかさ、愛情の深さゆえではないかと思う。歩いて郵便を配るのは苛酷な仕事ではあっても目立つ成果は残らない。父は信頼し感謝してくれる村人のためだけにただただ寡黙に淡々と働く。息子はそんな父をおそれつつちゃんと尊敬している。息子が山の人が山に住み続ける意味を語る。山の人は山に住むのがいちばんあっているからだと彼は云う。自然と共存し父祖伝来受け継いで来たものに価値を見い出す人々は確かに充足して見える。そんな彼らをみつめる作家の目線が快い。ヘンにリスぺクトしたりはしない。これはこのままで最高に美しいじゃないか、そう思わない?みたいな感じ。
ただみょーに若くて綺麗なおかーさん(いっつもすごい不安げ)や息子と仲良くなる美しい娘(なにかっちゅーところころ笑ってばっかり)の存在がステレオタイプだったり、回想シーンの入れ方に全くセンスがなかったりってとこに大陸映画の古臭さが鼻につかないこともなかったです。強いて云えばね。一昔前のNHKのドラマみたいで。
これが映画デビューとなった劉燁は当時20歳でまだ北京中央戯劇学院の学生。ういういしいです。演技もウマイ・・・と云うかほとんど素に見える。まぁあんまりテクニックを必要とされる役柄ではない。それよりは彼自身が本来持つ空気感─無邪気で屈託がなくて純朴でいかにも健康そうなんだけどぼちぼち普通の現代っ子─みたいなものがたぶん役柄と作品の世界観にマッチしたのであろーと思われる。『藍宇』でブイブイ発射してた“目力”はこの作品ではまだそれほど目立たない(監督はこの目力に惚れて彼を採用したそーですが、聞けばこのヒトすんごいド近眼だそーで演技??ヘあんまり周りが見えてないらしい)。はにかんだようなまぶしそうな、えも云われないあの笑顔は既に健在です。たまにボケッとと云うかポカンとした白痴みたいな表情をするんだけどそれも結構可愛い。なんか動物っぽくて。
ちなみにコレが公開された年は日本では張芸謀の『あの子を探して』と『初恋のきた道』も公開されてます。ぐりはこの2本は劇場で観ました(そんで号泣した)。しかし本国でも同じ年に公開された『あの子を探して』は金鶏奨の下馬評では圧倒的優位だったそうですが、結果的には『山の郵便配達』が主要5部門を制覇している。シブイね。
すごく風景が綺麗なので、劇場で観れば良かったと悔やむことしきり。まぁでももう2年前のことだからしゃーないね。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000065BHM&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
80年初頭、中国・湖南省の山岳地帯。僻地を歩いて郵便物を配っていた配達夫(滕汝駿)が引退することになり、後任の息子?i劉燁)といつもの集配コースを引き継ぐ2泊3日120キロの旅に出る。1998年、霍建起監督作品。99年中国金鶏奨(中国アカデミー賞)最優秀作品賞・最優秀主演男優賞ほか全5部門受賞。同年モントリオール映画祭観客賞受賞。
ストーリーったってこれしかないんですよ。ホントこれだけ。湖南省の緑したたる美しい山々、寡黙な父と純情素朴な息子と愛犬がひたすら歩く。集落に着くと歓迎してくれる村人との交流がある。父は若かりし頃を回想し、息子は仕事で不在がちだった父との距離を縮めていく。いつも母親を気づかっていたひとり息子をどこか頼りなく思っていた父親も、彼がいつの間にか自分の代りに田畑や家庭を守る自立した大人に成長していることを知る。
台詞はすごく少ないです。特にとーちゃんめちゃ無口です。その代りと云うか息子のモノローグが多い。こうして聞くと北京語ってメロディアスで耳に心地よい言語です。劉燁のソフトな声音がまた詩的な語り口にあっている。
風景が綺麗でメインキャストはおっさんとイモいにいちゃん、台詞が少なくてドラマ展開にも乏しい淡々とした文芸作品と云えばなんとなく眠そうなゲージュツ映画を想像しますが(ぐりは公開当時=2002年はそう思ってた。ずびばぜん)、意外にも見てるとアッと云う間に時間が過ぎる。実際ナニが面白かったんだと訊かれてもようは分からんのやけども。父と息子の世代間の葛藤みたいなものは勿論ある。息子は合理的に仕事を楽しもうとするけど、父は頑なに自分がこれまで貫いたやり方にこだわろうとする。息子はそんな父に反抗はしない。でも思ったことはきちんと云う。普段あまり顔をあわせない父親をどこかで「こわい」と思ってはいても、ただ黙って無闇に云うことを聞いている訳ではない。そしてやんわりととーちゃんの体調を思い遣る。冷たい川を渡る時、息子の背に背負われた父は思わず涙する。このシーンぐりはすごく好きです。
この話が面白いのは、こうしたふたりのやりとりの描写の細やかさもあるけど、地味な仕事に対してあくまで真摯な主人公たちの純粋さや、陸の孤島に暮す少数民族の普遍的な豊かさに向ける語り手の目線のあたたかさ、愛情の深さゆえではないかと思う。歩いて郵便を配るのは苛酷な仕事ではあっても目立つ成果は残らない。父は信頼し感謝してくれる村人のためだけにただただ寡黙に淡々と働く。息子はそんな父をおそれつつちゃんと尊敬している。息子が山の人が山に住み続ける意味を語る。山の人は山に住むのがいちばんあっているからだと彼は云う。自然と共存し父祖伝来受け継いで来たものに価値を見い出す人々は確かに充足して見える。そんな彼らをみつめる作家の目線が快い。ヘンにリスぺクトしたりはしない。これはこのままで最高に美しいじゃないか、そう思わない?みたいな感じ。
ただみょーに若くて綺麗なおかーさん(いっつもすごい不安げ)や息子と仲良くなる美しい娘(なにかっちゅーところころ笑ってばっかり)の存在がステレオタイプだったり、回想シーンの入れ方に全くセンスがなかったりってとこに大陸映画の古臭さが鼻につかないこともなかったです。強いて云えばね。一昔前のNHKのドラマみたいで。
これが映画デビューとなった劉燁は当時20歳でまだ北京中央戯劇学院の学生。ういういしいです。演技もウマイ・・・と云うかほとんど素に見える。まぁあんまりテクニックを必要とされる役柄ではない。それよりは彼自身が本来持つ空気感─無邪気で屈託がなくて純朴でいかにも健康そうなんだけどぼちぼち普通の現代っ子─みたいなものがたぶん役柄と作品の世界観にマッチしたのであろーと思われる。『藍宇』でブイブイ発射してた“目力”はこの作品ではまだそれほど目立たない(監督はこの目力に惚れて彼を採用したそーですが、聞けばこのヒトすんごいド近眼だそーで演技??ヘあんまり周りが見えてないらしい)。はにかんだようなまぶしそうな、えも云われないあの笑顔は既に健在です。たまにボケッとと云うかポカンとした白痴みたいな表情をするんだけどそれも結構可愛い。なんか動物っぽくて。
ちなみにコレが公開された年は日本では張芸謀の『あの子を探して』と『初恋のきた道』も公開されてます。ぐりはこの2本は劇場で観ました(そんで号泣した)。しかし本国でも同じ年に公開された『あの子を探して』は金鶏奨の下馬評では圧倒的優位だったそうですが、結果的には『山の郵便配達』が主要5部門を制覇している。シブイね。
すごく風景が綺麗なので、劇場で観れば良かったと悔やむことしきり。まぁでももう2年前のことだからしゃーないね。