『蝴蝶 羽化する官能』
女子高教師の蝶(何超儀ジョシー・ホー)はある日スーパーマーケットで万引きしたお菓子を食べている少女(田原ティエン・ユエン)と出会い、ひと目で恋に堕ちてしまうが、彼女には優しい夫(葛民輝エリック・コット) と一歳に満たない娘がいた。一途に思いをぶつけてくる少女との交流のなかで、彼女は少女時代のつらい恋を思い出す。
激しく不完全燃焼。うーん。期待しすぎたのかなー?
映像はとても綺麗だし、フレンチポップスみたいな音楽もかわいい。8ミリフィルムやビデオ撮影など質感の違う映像を交互につかってみたり、過去と現在がオーバーラップする構成などにもすごく気を使ってるなという感じはする。全体にかなり丁寧につくりこんだ映画だとは思う。
しかし何かが足りない。リアリティだろうか?といってもぐりは同性愛者ではないのでレズビアンの「リアル」な恋愛がどんなものなのかまったく想像はつかない。だからどうしても自分の経験と重ねあわせると男女の恋愛に似たものをそこに求めてしまう。すると自ずと足りないものはハッキリしてくる。
綺麗すぎるのだ。彼女たちの恋が。
この物語には何組かの女性同士のカップルが登場するのだが、そのどれもがとにかく常にちゃらちゃらいちゃいちゃと楽しそうなんである。それはそれで構わないのだが、恋愛関係にはお天気のいいときもあれば雨が降ることも嵐が来ることもあるはずだ。ここに登場する彼女たちの関係にはそれがない。長く交際していても互いの汚い部分や都合の悪い部分をさらけだしたりはしないし、少々気まずくなっても正直な思いをぶつけあったりもしないし、そうなると当然修羅場にもならない。そういうふにゃふにゃとなまぬるい恋愛関係も実際にはあるだろうが、フィクションとして描くならもっとしっかり立体的な描写をしなければ説得力は出てこない。
演じている女性たちはそれぞれに魅力的だし頑張ってはいるのだが、もうひとつ「本気」で愛しあっているようには見えないのはそのせいなのかもしれない。
おそらくヒロインがおとなしく優柔不断な女であることが物語の上で重要であるがためにそうしたヘビーな描写を避けたのだろうが、逆にそれがあだになってしまっている。何超儀の演技がいつでもこつでも淡々としすぎているのも物足りない。ぐりは日本のドラマ「魔女の条件」の松嶋菜々子の芝居を連想したね。キャラ設定もちょっと似てるし。
公開当時は同性愛を描いていて物語の背景に天安門事件があるということで『藍宇』と比較されたそうだが、これはちょっと可哀想だったなと思う。どうみても比較にならないからだ。たぶん予算的には『蝴蝶』の方がお金がかかっている。だが見た目の道具立てに手がかかっているだけに、役者の演技力、監督の描写力に歴然と差があるのが誰の目にも明らかに分かってしまう。
特に分かりやすい点として、『藍宇』に直接的な性行為が描かれないのに対して『蝴蝶』には男女・女性同士の性行為が何度もくりかえし描かれるのだが、その頻度や長さの割りにあまり全体の印象が「官能的」にはなっていない。肌の露出が少ないとかそういう問題ではないと思う。官能的なシーンに不可欠な「必然的な感情描写」というものが、ハッキリと足りないからだと思う。あなたにさわりたい、あなたでなくてはダメなのだ、どうしてもあなたが欲しい、という切迫感、あなたとやれてうれしい、幸せだという充足感が、いまひとつ明快に伝わってこない。だから全然いやらしくもないし気持ち良さそうにも見えない。
女優さんたちがかわいらしいだけに、ああいうラブシーンで終わってしまってるのはなんだかもったいない気がする。なかでもぐりはヒロインの少女時代の恋人(演じているのはどなたなのか存じ上げませんが。分かる方おられたら教えてください)がすごくいいなと思ったデス。ちょっと少年ぽくて、いかにも女子高でモテそーなタイプの、爽やかできりっとした女の子。傍に寄るとミントの香りとかしそうな感じ。
久々に演技してる葛民輝を見たけど、この人いい俳優さんですねー。感情を出す芝居も出さない芝居もフツーっぽくて。あとヒロインのおとーさんが曾江(ケネス・ツァン)ってのは笑ったね。『美少年の恋』じゃ息子がホモ、『蝴蝶』じゃ娘がレズ。参るよな(笑)。
そういやこの映画、恋愛関係に家庭環境が影を落としていく物語という点ではむしろ『藍宇』よりも『美少年~』の方がこの作品の対照になるのかも。アレもちょー乙女な世界~♪だったし。『美少年~』が好きな方は『蝴蝶』もきっとお気に召すのでしょー。ぐりは残念ながらどっちも好きではないけど、『蝴蝶』の方法論で『美少年~』がつくられてたら好きになってたかもしれない。そのくらいつくりは丁寧だから。
全体にくっきりとしたシティーノイズをきれいにかぶせた音響設計が印象に残りました。美術も豪華だし、香港映画でもここまで繊細緻密なガールズムービーが撮れるという意味では新鮮な映画だと思う。
それにしても最近の香港映画の邦題はなんでこんなんばっかしなの~?まぁ回転させるにはイヤでもこれくらい思わせぶりなのつけなきゃいけないんだろーけど・・・品がなさすぎ。アタマ悪そー。愛がないね。
女子高教師の蝶(何超儀ジョシー・ホー)はある日スーパーマーケットで万引きしたお菓子を食べている少女(田原ティエン・ユエン)と出会い、ひと目で恋に堕ちてしまうが、彼女には優しい夫(葛民輝エリック・コット) と一歳に満たない娘がいた。一途に思いをぶつけてくる少女との交流のなかで、彼女は少女時代のつらい恋を思い出す。
激しく不完全燃焼。うーん。期待しすぎたのかなー?
映像はとても綺麗だし、フレンチポップスみたいな音楽もかわいい。8ミリフィルムやビデオ撮影など質感の違う映像を交互につかってみたり、過去と現在がオーバーラップする構成などにもすごく気を使ってるなという感じはする。全体にかなり丁寧につくりこんだ映画だとは思う。
しかし何かが足りない。リアリティだろうか?といってもぐりは同性愛者ではないのでレズビアンの「リアル」な恋愛がどんなものなのかまったく想像はつかない。だからどうしても自分の経験と重ねあわせると男女の恋愛に似たものをそこに求めてしまう。すると自ずと足りないものはハッキリしてくる。
綺麗すぎるのだ。彼女たちの恋が。
この物語には何組かの女性同士のカップルが登場するのだが、そのどれもがとにかく常にちゃらちゃらいちゃいちゃと楽しそうなんである。それはそれで構わないのだが、恋愛関係にはお天気のいいときもあれば雨が降ることも嵐が来ることもあるはずだ。ここに登場する彼女たちの関係にはそれがない。長く交際していても互いの汚い部分や都合の悪い部分をさらけだしたりはしないし、少々気まずくなっても正直な思いをぶつけあったりもしないし、そうなると当然修羅場にもならない。そういうふにゃふにゃとなまぬるい恋愛関係も実際にはあるだろうが、フィクションとして描くならもっとしっかり立体的な描写をしなければ説得力は出てこない。
演じている女性たちはそれぞれに魅力的だし頑張ってはいるのだが、もうひとつ「本気」で愛しあっているようには見えないのはそのせいなのかもしれない。
おそらくヒロインがおとなしく優柔不断な女であることが物語の上で重要であるがためにそうしたヘビーな描写を避けたのだろうが、逆にそれがあだになってしまっている。何超儀の演技がいつでもこつでも淡々としすぎているのも物足りない。ぐりは日本のドラマ「魔女の条件」の松嶋菜々子の芝居を連想したね。キャラ設定もちょっと似てるし。
公開当時は同性愛を描いていて物語の背景に天安門事件があるということで『藍宇』と比較されたそうだが、これはちょっと可哀想だったなと思う。どうみても比較にならないからだ。たぶん予算的には『蝴蝶』の方がお金がかかっている。だが見た目の道具立てに手がかかっているだけに、役者の演技力、監督の描写力に歴然と差があるのが誰の目にも明らかに分かってしまう。
特に分かりやすい点として、『藍宇』に直接的な性行為が描かれないのに対して『蝴蝶』には男女・女性同士の性行為が何度もくりかえし描かれるのだが、その頻度や長さの割りにあまり全体の印象が「官能的」にはなっていない。肌の露出が少ないとかそういう問題ではないと思う。官能的なシーンに不可欠な「必然的な感情描写」というものが、ハッキリと足りないからだと思う。あなたにさわりたい、あなたでなくてはダメなのだ、どうしてもあなたが欲しい、という切迫感、あなたとやれてうれしい、幸せだという充足感が、いまひとつ明快に伝わってこない。だから全然いやらしくもないし気持ち良さそうにも見えない。
女優さんたちがかわいらしいだけに、ああいうラブシーンで終わってしまってるのはなんだかもったいない気がする。なかでもぐりはヒロインの少女時代の恋人(演じているのはどなたなのか存じ上げませんが。分かる方おられたら教えてください)がすごくいいなと思ったデス。ちょっと少年ぽくて、いかにも女子高でモテそーなタイプの、爽やかできりっとした女の子。傍に寄るとミントの香りとかしそうな感じ。
久々に演技してる葛民輝を見たけど、この人いい俳優さんですねー。感情を出す芝居も出さない芝居もフツーっぽくて。あとヒロインのおとーさんが曾江(ケネス・ツァン)ってのは笑ったね。『美少年の恋』じゃ息子がホモ、『蝴蝶』じゃ娘がレズ。参るよな(笑)。
そういやこの映画、恋愛関係に家庭環境が影を落としていく物語という点ではむしろ『藍宇』よりも『美少年~』の方がこの作品の対照になるのかも。アレもちょー乙女な世界~♪だったし。『美少年~』が好きな方は『蝴蝶』もきっとお気に召すのでしょー。ぐりは残念ながらどっちも好きではないけど、『蝴蝶』の方法論で『美少年~』がつくられてたら好きになってたかもしれない。そのくらいつくりは丁寧だから。
全体にくっきりとしたシティーノイズをきれいにかぶせた音響設計が印象に残りました。美術も豪華だし、香港映画でもここまで繊細緻密なガールズムービーが撮れるという意味では新鮮な映画だと思う。
それにしても最近の香港映画の邦題はなんでこんなんばっかしなの~?まぁ回転させるにはイヤでもこれくらい思わせぶりなのつけなきゃいけないんだろーけど・・・品がなさすぎ。アタマ悪そー。愛がないね。