落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

レディースデイの巡礼

2006年05月03日 | movie
『グッドナイト&グッドラック』
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うーん。ジョージ・クルーニーすばらしい。かっこいい。クールだ。オトナだ。
けど問題の赤狩りそのものに対する知識がぐりになさすぎました。勉強して出直します。ごめんなさい。本もさっそく買いました。だから許して。
それはそれとして、ホントにすごくいい映画だと思います。当時の記録映像との境目がわからないくらいつくりこまれたドキュメンタリータッチの白黒映像、50年代当時の報道現場のぴりっとした緊張感あふれる会話のトーン、常に人物に寄りこみ気味なカメラワーク、BGMを排した生々しい音響設計、全ての完成度がすばらしい。父の職場であり子ども時代放課後のほとんどを過ごしたという報道局へのクルーニーの憧憬とノスタルジーが、これでもかとあふれんばかりの愛情をもって表現されている。登場人物も全員非常に魅力的。知的で勇敢で冷静沈着で、ジャーナリスト魂という職業意識に静かに激しく燃える男たち。ステキですー。
あと赤狩りに無知なぐりはつい『ホテル・ルワンダ』を思いだしました。ど?ソらもプロフェッショナルな人たちがそのプロ意識をもって人々を救う話だ。でも決して彼らは“英雄”ではないし、映画でもあえてそう描こ?、とはしていない。彼らのしたことは、いってみればその道のプロなら誰にでもできたはずの当然の役割だった。だが現実の非常時に「できて?魔闡O」のプロ意識を失わないでいるのがどれほど難しいことか。
この映画の勝因は登場人物たちをヒロイックに描かず、ほとんどTV局からカメラを出さない室内劇としてとにかくシンプルにとらえたところだと思う。会話の大半が会議やニュース原稿といった仕事上の言葉で、彼らのプライベートはまったくといっていいほど描かれない。デヴィッド・ストラザーン演じるエド・マロウに至ってはニュースコメント以外の台詞がほんのわずかしかないし、画面のなかでもとりたてて目立つような撮られ方はしていない。これはもともとマロウ本人が平素穏やかでもの静かな人だったという個人的な人物造形にもよるが、映画全体の中でもあくまでCBSの一キャスター、「シー・イット・ナウ」という番組の顔、ジャーナリズムの本道を貫こうとしたスタッフたちの象徴という扱いになっている。
そういう決して押しつけがましくない「正義の主張」だからこそ胸に響く。オスカーは獲れなかったけど、間違いなく映画史に残る名作のひとつだと思います。

レディースデイの巡礼

2006年05月03日 | movie
『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』
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元戯曲らしく会話劇が巧みな父娘の愛憎劇。想像してたよりもずっと“みせる映画”でした。やっぱあの予告編はなんか違うよなあ。
というかこれ簡単に説明しづらい物語なんだよね。かつては世紀の大天才だった偉大な父(アンソニー・ホプキンス)、敬愛する父が病み衰えて死んでいったことにひどく傷ついている娘(グウィネス・パルトロー)、決して妹を理解はしてくれないどうしようもなく俗物な姉(ホープ・デイヴィス)。そんな近くて遠い家族の、他人はおろか身内同士ですらわかちあえない葛藤、よるべない懊悩がこの物語のメインテーマだからだ。
つまり正直観ていて気持ちのいい話ではない。才能の枯渇、老人介護、精神病、家族の不仲。自分の身に置き換えただけで息が苦しくなるような重い課題ばかり。そうしたヒロインのみるも無惨な心の傷を、映画ではおそれることなく正面から率直に繊細に再現している。彼女の胸の痛みは、それこそ観客にも痛いほどしっかりと伝わってくる。
それだけの強さはあるものの、103分というコンパクトな尺のわりに長さを感じさせる微妙に冗長な構成は欠点かもしれない。主人公たちが数学者ってだけでもシンドイのに(笑)、こんなに隅から隅まできっちり詰めこまれたのでは観てて肩が凝ってしょうがないです。
グウィネス・パルトローは舞台でもこのヒロインを演じていて、かつ撮影前に実父を喪うという実体験も伴っているせいかおそろしーほどの大熱演。上手いです。アンソニー・ホプキンスはどーなんでしょーね?芝居がどーとかではなくて、「世紀の大天才」役だからホプキンスだったのか(爆)。ジェイク・ギレンホールは個性的な登場人物たちと観客との間の触媒のようなキャラクター。ヒロインとのロマンスはまあ後づけだよね(笑)。しかしぐりのみたところでは未だかつてなく美男子になってました。このヒトって基本「へんな顔」だとぐりは思うんだけど、『プルーフ〜』でのジェイクはうつくしーです。ちゃんと色男でした。

レディースデイの巡礼

2006年05月03日 | movie
『ブロークン・フラワーズ』
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サイコー。超おもしろかったー。
ストーリーはシンプルなロードムービーだし、登場人物も少ない。お金もヒマも有り余ってる主人公(ビル・マーレイ)、お節介な隣人(ジェフリー・ライト)、20年ぶりとはいえどの人もとびきり美しい元恋人たち、一種のオトナのファンタジーだ。
それでも、車の外に流れる風景とその匂い、空気の肌触りのなんとリアルなことか。季節は秋。ちょうど人生の盛りを過ぎた彼を象徴するように、色づき半ば枯れかけた草木の香りとつめたく乾燥した埃っぽい空気が画面からあふれだしてくる。人は故郷を離れ見知らぬ土地にいくと防衛本能から感覚が鋭敏になる。その身内がきりりとひきしまるような何ともいえず快い軽い興奮を、ただ映画を観ているだけで感じさせてくれる作品はそうはないのではないか。おそらく、ジム・ジャームッシュが常に異郷で仕事をしている作家だからこその表現だと思う。
ビル・マーレイは1950年生まれで設定もほぼ実年齢、元恋人たちも全員それなりの年なのに、見事にみんなとてつもなくチャーミングだ。ちなみにローラ役シャロン・ストーンは1958年、ドーラ役フランセス・コンロイは1953年、カルメン役ジェシカ・ラングは1949年、ペニー役ティルダ・スウィントンが1960年の生まれ。50歳前後、それぞれ若づくりでもなんでもなくて大体年相応なのに、キチンと女らしく色っぽい。ぐりも出来れば彼女たちのような年の重ね方がしたい。
現恋人シェリー役のジュリー・デルピーは1969年生まれだけど、ひさびさみたらエライ歳の食い方しててビビり(爆)。昔はぐりのアイドルだったんですけどーっ。
音楽やキーカラーの“ピンク”をオシャレに配したプロダクションデザインも非常にキュート。ドンがいつも着てたジャージとか、衣装もさりげなくてステキでした。