落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

Boys don't cry

2007年03月03日 | movie
『家』

一昨年100歳で没した文豪巴金の傑作『家』の映画化作品。1956年制作。こないだのミゾケンまつりに続いてクラシック映画ブーム。
こういうときに観るのにはまったく向いてない作品だけど(笑)、なかなかフィルムで観る機会がないので観れるだけありがたいのかも。つかビデオやDVDでだって観れるものかどーか?
原作の「悲劇と喜劇が表裏一体となった重厚なホームドラマ」といった雰囲気は忠実に再現されている。ただただ従順で泣き虫の長男覚新(孫道臨←ミョーに色っぽいのはナゼ?)、理想主義で才気煥発な三男覚慧(張輝)、薄幸を絵に描いたような憂いのある美女・梅少姐(黄宗英)、やけに美人でゼンゼン召使には見えない鳴鳳(王丹鳳←スターなのね)などなど、俳優はそれぞれ魅力的だし、演技もいいと思う。
けど原作が長い話なのでストーリーをマジメに追おうとするとどーしてもダイジェスト的になってしまって、観ていて「これは原作読んでない人はついていけるのか?」と不安になるとこも数ヶ所ありました。たとえば三兄弟の父が序盤に登場するんだけど、覚新の結婚後いつの間にか死んだことになっている。次男の覚民(章非)はなんの前触りもなくいきなりでてくるし、登場人物がやたら多くて人間関係が複雑なうえに、男も女もみんな似たよーな衣装や髪型で(しかもモノクロ)見分けがつきにくい。

ダイジェストというからには省略されたパートがあるわけで、覚民・覚慧・琴少姐(汪漪)の学生生活や政治活動に関するエピソードはかなり景気良くごっそりとなくなっている。なので覚民と琴少姐は画面にはほとんど出てこない。
逆にこの映画でメインになっているのは覚新と瑞珏(張瑞芳)の跡継ぎ夫妻である。美人でも聡明でもなく単に善良なだけの瑞珏だが、主体性というものを持たない夫・覚新を愛してしまった彼女の不幸と、たったひとりの妻さえ満足に幸せにできない覚新の不甲斐なさは、相当力を入れて丁寧に描写されている。あ〜〜〜イライラする!このダメ夫があ〜〜〜!みたいな。メロドラマよ。
ぐりが拍子抜けしたのは当主・高老大爺(魏鶴齢)の最期など、高家の崩壊の予兆がろくに描写されてなかったところ。クライマックスなんだけどなあ。
そんな具合で原作を読んでない人の感想が激しく聞いてみたい。ぐりは原作にあって映画に出てこない部分ばっかし気になってしまったです。字幕をリアルタイムで手付けしてたみたいで、そのせいで理解不足なのかもしれませんが。

音楽が妙に大仰かと思えば相当な部分で音楽がまったくなかったり、編集がボロくて明らかに別の作品の絵が混ざってたり、フィルムの状態が悪かったのか画面が上下にガタガタ揺れっぱなしだったり、正直あんまり落ち着いて観れるプログラムではなかったです。貴重なものが観れて満足はしたけど。
爆音でイビキかいて寝てる人とか私語してる人もけっこういたしね。こういう上映会でそういうことする人ってよくわからない。