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落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

松ヶ根乱射事件

2007年03月17日 | movie
『松ヶ根乱射事件』
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舞台は90年代、とある北国。
光太郎(新井浩文)は交番勤務の巡査。実家は酪農家だが父(三浦友和)が浮気をして家出、家業は姉の陽子(西尾まり)夫婦が継いでいる。光太郎には双子の兄・光(山中崇)がいるが、真面目な光太郎とは顔も性格も似ても似つかず、家業もろくに手伝わず、適当に遊んでばかりいる。
ある日、この光がひき逃げ事件を起こしたのがきっかけに物語が展開してくんだけど、大抵「〜事件」なんてタイトルの映画で主役が警官ったら、観客は事件が起きて警官がそれを解決する話だと思うじゃないですか。違うんだよね。

これいってみれば日本版『ファーゴ』みたいな映画です。
いや、話は全然違うよ。誰も誘拐されないし、死人も(ほとんど)でないし、あんなに暴力的な話じゃない。けど舞台がみるからに凍えそうな雪国で、絵に描いたように退屈な田舎で、主役が警官で、登場人物全員なーんかかっこわるい、ゆるーくて黒ーい、乾いたダークコメディっつーと、ぐりはどうしても『ファーゴ』を思い出す。冒頭に「実話を基にしている」とゆー(いささか胡散臭い)テロップが出るとこも似てるし。
あの映画もストーリーはどーっちゅーことないのよね。登場人物がいちいちなんかヘンで、1シーン1シーンがなんかヘンとゆー「奇妙さ」のディテールの積み重ねで映画ができている。この『松ヶ根〜』ももろにそれと同じで、1シーンそれぞれが独立しておかしいの。それも爆笑、ってほどのことはなくて「えへへ」「ぷぷぷ」みたいなこそっとした笑いなの。光太郎が「警察いこう」ってゆーシーンは場内爆笑だったけどね。さすがに。
ぐり的には虎舞竜の「ロード」とかclassの「夏の日の1993」なんとゆー、90年代を象徴するよーな(爆)選曲も爆笑もんだったけど。

新井浩文はやっぱいいですよねえ。この人、決して目立つ二枚目ではないんだけどすらっとしてて見栄えのするプロポーションしてるし、お肌もキレイだし、実はナニゲにかっこいい。警官の制服とか剣道の胴着もバッチリきまってたし。作品ごとにまったく違う演技をするし、存在感もあるし、邦画じゃ今いちばんの若手有望株じゃないでしょーか。人気じゃ松ケン@『デスノ』にゃ負けてるかもしんないけどね。
しかし山中崇はキモかったあ・・・彼が演じた光を、もうちょっとソフィスティケートさせて「母性本能くすぐり系」のだめんずとして描くこともできたと思うし、従来の邦画なら大体そうしてたと思うんだけど、あえてあそこまでキモいダメ兄に設定したことで作品の完成度がより高くなったんじゃないかと思う。

最前列にマスコミ席が設置されてて上映前に予告編が流れなかったので何かと思ってたら、上映後に山下敦弘監督と木村祐一のトークショーがあった。
とくにレポしたいよーな話はなくって、ぐりはもう山下監督の髪の毛に思いっきり寝癖がついてたことしか印象に残らなかった(爆)。いやホントすごかったの。
あとありえない続編のことで話が盛り上がりすぎて、進行を気にした監督が司会者に「あ、続編の話はもういいですか」と訊くと「考えるだけならいくらでもお好きなだけ」とものすごい返され方をしてたことくらいか。

春のめざめ

2007年03月17日 | movie
『春のめざめ』
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イワン・シメリョフ著『愛の物語』を油絵アニメーションという驚異の技法で映画化した短編。
油絵をアニメーションてまたすごいこと思いつきますよねえ。アレクサンドル・ペトロフ監督はバックライトを照射したガラス板に指で油彩画を描き、一コマ撮影するごとに少しずつ絵を描き変えていく、という手法で油絵をアニメーションさせている。旧ソビエト時代から実験アニメーションが盛んだったロシアという国柄らしい作風の映画だ。
ストーリーそのものはまあぐりはあんまりお好みではない三島由紀夫の『春の雪』みたいな、上流階級の童貞のおぼっちゃまのホヤホヤした夢幻のような恋愛と性の目覚め、そんな子どもの周囲で現実を生きる若い女性たちの悲しい運命。
ただのこの映画の魅力は、まさにすべての生命が萌えいずる春のむずがゆいようなときめきを身内に抱えた思春期の少年の、女性や恋愛や性に対する熱い憧憬と深い畏れが、春先の陽炎の向こうに揺らめくような情緒的な映像に見事に表現されている、そのヴィジュアルの美しさがすべてだ。
ぐりは申し訳ないが若者のこうした青い性にはいっさい興味も共感ももてないので話には感動できなかったけど、感情を映像に表現するという意味では確かにものすごくキレイな映画でした。
同時上映の超短編『岸辺のふたり』もよかったです。ぐりはどっちかといえばこっちのが好みだ。