落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

最終兵器ママ

2007年11月10日 | movie
『ヘアスプレー』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B0012EGLLA&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

おもしろかったよー。
舞台を元にしたミュージカルコメディとは聞いてたけど、全編のほとんどがミュージカルシーンで、ストレートプレイのシーンはほとんどない。だからストーリーがすごく軽いというか、薄っぺらというか、上っ面な感じはする。
それはそれでかまわないんじゃないかという気もする。ヒロイン(ニッキー・ブロンスキー)のノー天気さも、相手役(ザック・エフロン)の軽薄さも、むしろ却ってギャグとして素直に受け入れられる。
けどそれはやっぱり、この映画を彩る名曲の数々の力が大きい。とにかくいい曲ばっかりだもん。ダンスもみなさん素晴らしいです。

観ていて心から楽しめる映画ではあるけど、テーマが人種差別のわりには観た後に何も残らないのは確かに少し物足りない。ほんとにコレでいいのかな?とはちょっと思う。
ただし、おそらく、この映画は単に「差別はいけない」なんて正義を主張したいわけではないのだろう。もっと広義に、既存の価値観を疑え、前進しろ、挑戦しろ、という、人生への応援歌を歌いあげたかったのだろうとは思う。それはわかるし、過激なダイエットや美容整形が当たり前になり、若いことや美しいことへのこだわりが強迫観念となってしまった現代社会への、強烈な抗議は感じることは感じる。
でもたぶん、オリジナルの方にはあったと思われるもっとガッツなメッセージが、全体の雰囲気の暢気さで薄まってしまっているのではないかという印象は否めない。

舞台版のそのまたオリジナルの1988年版はぐりは未見なのだが、こちらは実際にあった事件を元にしていて、微妙に物語が違っているらしい。この機会に是非とも一度観てみたくなりましたです。
ヒロイン・エドナの父(クリストファー・ウォーケン)が経営する雑貨店がウォーターズの『I love ペッカー』に登場した主人公の両親の雑貨店そっくりで、それも1988年版に出てくるのか確かめてみたくなった。
ぐりはボルチモアって行ったこともないしどんなところなのかも全然知らないけど、知ってる人が観ればウォーターズ作品もまた違った見え方になるんだろうなと思う。そこがこの映画ではちょっと歯がゆくは感じました。


笑いの力

2007年11月10日 | movie
『やじきた道中 てれすこ』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B0013KHCR0&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

あーーーーーおもしろかった!笑ったー。サイコー。
「東海道中膝栗毛」の弥次喜太を主人公にしたロードムービーといえば『真夜中?フ弥次さん喜太さん』が記憶に新しいが、こちらは大人版。
『真夜中〜』で喜太さんを演じた中村七之助の父・勘三郎が弥次さんに、のんのんを演じた柄本佑の父・明が喜太さんに扮しているように、この映画の登場人物は徹頭徹尾全員立派な大人である。キャストもほぼ全員が30代後半以上、メインキャストは40代以上という、完全なアダルトチームで構成されている。唯一「若手売れっ子女郎」としてワンシーンだけ登場するほしのあきすら既に30歳という徹底ぶり。
この映画のおもしろさは「いい年をした大人が一生懸命馬鹿をやる」というところにある。だから出演者が全員大人なのだ。それぞれは決して、わざと人を笑わせようとしておかしなことをしているわけではない。本人はマジメなのに、おかしい。しかも、大人。だからもっとおかしい。
気取ったところもないし、くどさもない。これぞ大人のエンターテインメント。すばらしい。

キャストがごくチョイ役に至るまで豪華というか、全員が超ナイスキャスト。
冒頭の淡路恵子と笑福亭松之助の心中シーンからして傑作。演出に凝ってるとか会話が新鮮とか、そういうことはないのよ。でもこの組合せで真っ白な白髪のヅラで心中ってだけで既におもしろすぎる。素晴らしい。
大阪の奉行役は間寛平。これがものすごくおかしい。絶対にボケないのに、めちゃくちゃ真剣!に奉行役に徹してるだけでもうボケなの。画面に映ってるだけで笑いがこみあげてくるってトクな人だよなあ〜。
吉川晃司と鈴木蘭々の浪人夫婦もステキ。てゆーか吉川晃司、浪人キャラがハマりすぎてて最初誰だかわかりませんでした。声は間違いなく吉川晃司なんだけど、それにしても芝居がウマすぎるし、イメージにあってないし・・・と思ったらやっぱ吉川晃司でビックリ。ふたりとも茨城弁があまりに似合いすぎててヤバいです。
その他の麿赤兒もラサール石井も松重豊も國村隼も笹野高史も藤山直美も、みんなみんな、この人たちはこういう仕事のためにここまで何十年もキャリアを積んできたんだなあ、というのがひしひしと伝わるよーな、まさに天晴れなボケっぷり炸裂でございます。

しかし中でも柄本明のブチキレ方はスゴイです。つかちょっとコワイ。まともじゃない。意外とまともな勘三郎とのコンビでどーにかうまくバランスがとれているようにもみえる。
そんな全員ボケなキャラにひとりだけツッコミなのが小泉今日子。41歳で29歳役、劇中でもやれ落ち目だのトウがたってるだの好き勝手いわれてるけど、相変わらず綺麗だし粋だ。
というか、この映画は若さだけを賛美する世の中へのアンチテーゼでもあるのだ。若くてつるつるピカピカなだけが売りのガキだらけの、やれ純愛だの難病だのと観客に感動を強制する三流映画なんかより、酸いも甘いも噛みわけた芸達者な本当のプロの映画の方がずっとおもしろいに決まってるでしょ!どうだ!という映画。その象徴が、自然に年相応でもちゃんと綺麗な小泉今日子というヒロインなのだ。
ぐりはこの映画、大好きです。プロが隅から隅まできっちり仕事して、かつ心底楽しんでモノをつくってて、それで観客がしっかり笑える。娯楽って、こうあるべきなんじゃないかな?