落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

灯台の思い出

2018年01月25日 | movie
『嘘を愛する女』

5年間同棲した恋人・桔平(高橋一生)がくも膜下出血で倒れ、名前も職業も嘘だったことを知った由加利(長澤まさみ)。親族も友人もおらず携帯電話もパソコンももたず、クレジットカードも銀行口座も健康保険証すらない桔平の身元を、由加利は何も知らなかった。
いつ桔平の意識が回復するかわからないまま、コインロッカーに隠されていたノートPCに残された小説を頼りに、瀬戸内海で桔平の身元を調べてまわるのだが・・・。

観ている最中、ふと昔の彼のことをふと思いだした。
穏やかで優しくて、ちょっと頼りないところはあったけどいつも私のことをとても大事にしてくれた、すてきな男性だった。
丸い眼鏡がちょっとミステリアスで、頼めば大抵のことは何でもしてくれたところは映画の桔平に少し似ている。そのころの私は、映画の由加利同様しゃかりきに働いていて、常にへとへとに疲れていた。あまりにも疲れていて、電話しながら私が寝てしまっても、せっかく会えてもどこにも出かけられなくても、彼は決して怒らなかった。
もちろん私はそんな彼のことが大好きで、いっしょにいるだけでとにかく幸せいっぱいだったけれど、彼は私に嘘をついていた。
この映画の桔平がついたような大それた嘘ではなかったにせよ、その嘘は、大人が交際相手についてもいい範囲は完全にこえていた。
彼は嘘をついていたことを自ら告白したし、私も聞いた当初は大した嘘じゃないと思った。騙されたわけじゃない、私から問いつめなくても、ちゃんと自分から白状したんだからと。それくらい彼のことが好きだった。
でも最終的に私が彼から離れた最大の理由はやはり、その嘘だった。
嘘が、時間をかけて、彼を恋する気持ちから熱を奪っていった。
いまではもう彼の何が好きだったのか、びっくりするぐらいさっぱり思い出せない。
どれだけ眺めていても飽きないほど、長い指が綺麗だったことぐらいしか覚えていない。
それが、時間が経って記憶が薄れたからなのか、恋愛感覚そのものを失ってしまったからなのも、わからない。

予告編はすごく良くできていたし、キービジュアルもなかなかオシャレにまとまっていたと思う。ストーリーの入り口も悪くないと思う。
だがしかし、それだけが魅力の映画になってしまっていて非常に残念だった。
シナリオも画面構成も色彩設計もライティングもプロダクションデザインも衣装も編集も音響も音楽も、何もかもが信じられないくらい古臭すぎる。昭和臭さ満載です。回想にちょいちょいハイスピード撮影は挟んでるけど、観ててときめくとかドキドキするとか、観客の感情を動かす描写はいっさい皆無。芸がないにもほどがある。
構成もクドすぎる。ワンシーンが無駄にだらだら長くて、展開にメリハリも何もない。この内容だったら117分もいらないね。90分でも余ると思う。テレビの2時間ドラマ(といっても何年も観てもいないけど)でも冗長で怒られるレベルだろう。
長澤まさみも高橋一生も旬のいい役者だし、主演二人の演技は文句のつけようがない。観ていてとにかくもったいない、残念という気持ちしかわいてこなかった。監督含めてクルーが何をモチベーションにこの作品をつくったのか、全然わからなかった。設定決めてキャスティングしただけで仕事終わった気分になってたんじゃないかという印象も拭えない。
だから上映中ずっと、昔の彼の記憶を手繰りまくっていた(それでもやっぱりほとんど何も思い出せなかったんだけど)。

観終わってからアタマにきて監督の経歴を調べたけど、劇場用長編映画はこれが初めてっぽいですね。
だからしょうがないのか。うーん。